謁見の間を後にしたホズルとライガット。二人は和泉のものとは別に発見された、もう一台のアンダー・ゴゥレムがある、第118採掘場へと足を運んでいた。
地下を掘り進める形の、およそ20mほどの深さとなっている採掘場を、階段で下ってゆく。
しばらくすると、そこには石英に埋まったゴゥレムの姿があった。
「これがゴゥレム…?」
ライガットが惚けたように言う。
別段声量が大きいわけでもなかったが、声は採掘場全体にこだました。
後ろからついてきたホズルが、ゴゥレムについて順に説明する。
「一ヶ月前にここ、石英採掘場にて発見されたものだ。推定千年前のゴゥレムといったところか。」
「千年…。」
「にわかには信じがたいだろう?しかし、嘘ではない。一ヶ月研究に研究を重ねてきて出た結論だ。」
ゴクリと唾を飲み込むライガット。
千年。それはあまりに莫大な時間。古代人たちの文明、英知の結晶が、久遠の時をこえて、この場所に残っている。
これが事実なら、歴史的発見と言えるだろう。
石英の上からではあるが、ゴゥレムに経年劣化の様子は見られない。
あくまで外見上は。
石英に埋まっていたことで、外気から保護されていたのかもしれない。
そもそも、本当に千年前に造られたのだろうか。ライガットが疑わしく思い、ゴゥレムを反対側から見ようと移動した。
そうして、言葉を失う。
「お??」
階段をさらに降りてみると、シートの上にミイラのような物体が寝かせられていたのだ。
「っうおお!?な、なな。なんじゃこりゃ!!」
無意識に後ずさる。ミイラは、人の原型こそ保っているが、白骨化してしまっている。
腐敗していなかっただけまだマシだ。
かろうじてマシというレベルなだけで、充分グロテスクだが。
「それは、このゴゥレムに登場していた古代人だよ。」
「古代人…」
そう聞いて、ライガットは今一度古代人の白骨死体に目をやる。
骨すらもボロボロになってしまっており、身体的特徴はおろか骨格すら判断できない。
「ここで、疑問があるんだ。」と、ホズルが。
「疑問?」
「この古代人には、魔力を使用した痕跡がない。」
「はあ?本当かよ、それ。だって、今や人々の暮らしは、魔力によって成り立っているだろ。
ゴゥレムを動かすのも、部屋の照明も、お湯を沸かすにも魔力を使用する。魔力もなく、ゴゥレムに乗れるはずがないぜ。」
より正確には、魔力で直接お湯を沸かすのではなく。お湯を沸かす機械を動かすため、その機械に埋め込まれた『石英』へ魔力を流し込むわけだ。
そうすることで、石英から動力部へと信号が送られる。
最後にボソッと小さく、「例外もいるけどよ。」と付け加えるライガット。
「お前のいうとおりだよ、ライガット。が、この古代人が魔力を使用していなかったというのも確かなんだ。」
「じゃあ、このゴゥレムはなんで動くんだ?」
「…動力源はすべて謎だ。」
ゴゥレムのコクピットを調べてみるも、魔力を流すための石英は取り付けられていない。
「どうなってんだ?これじゃあ動くはずないじゃねーか。」
適当にコクピットの操作盤を弄るライガット。
貴重な研究材料でもあるゴゥレムだ。一応、ホズルがライガットの軽率な行動を注意しようとした、まさにその時だった。
一ヶ月間、クリシュナの研究員が何をしても反応すらしなかったゴゥレムが、突如として起動した。
起動にともないコクピットのモニターが光り、両サイドからはレバーらしきものが飛び出てきた。
「なっ!?」
「何!?」
ホズル、ライガットが、ほぼ同時に驚きの声をあげる。
「どうして、今まで反応しなかったゴゥレムが…。いや、それよりも」
ホズルがコクピットにいるライガットへ向き直る。
そう。ただ、ゴゥレムが起動しただけならば、そこまで驚くべきことではない。
たんに研究員の調査不足や、千年もの時を経て、内部に不具合が生じているか。
原因は様々ある。
問題は、ゴゥレムを起動したのがライガット・アローである点だ。
なぜならば、彼は。バイクや耕運機すら動かせず、石英に命令することも出来ない人間。
いわゆる『能無し』と呼ばれる、魔力を持たぬものなのだから。