コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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二十七話 起動

 謁見の間を後にしたホズルとライガット。二人は和泉のものとは別に発見された、もう一台のアンダー・ゴゥレムがある、第118採掘場へと足を運んでいた。

 

 地下を掘り進める形の、およそ20mほどの深さとなっている採掘場を、階段で下ってゆく。

 しばらくすると、そこには石英に埋まったゴゥレムの姿があった。

 

「これがゴゥレム…?」

 

 ライガットが惚けたように言う。

 別段声量が大きいわけでもなかったが、声は採掘場全体にこだました。

 

 後ろからついてきたホズルが、ゴゥレムについて順に説明する。

 

「一ヶ月前にここ、石英採掘場にて発見されたものだ。推定千年前のゴゥレムといったところか。」

「千年…。」

「にわかには信じがたいだろう?しかし、嘘ではない。一ヶ月研究に研究を重ねてきて出た結論だ。」

 

 ゴクリと唾を飲み込むライガット。

 千年。それはあまりに莫大な時間。古代人たちの文明、英知の結晶が、久遠の時をこえて、この場所に残っている。

 これが事実なら、歴史的発見と言えるだろう。

 

 石英の上からではあるが、ゴゥレムに経年劣化の様子は見られない。

 あくまで外見上は。

 

 石英に埋まっていたことで、外気から保護されていたのかもしれない。

 

 そもそも、本当に千年前に造られたのだろうか。ライガットが疑わしく思い、ゴゥレムを反対側から見ようと移動した。

 そうして、言葉を失う。

 

「お??」

 

 階段をさらに降りてみると、シートの上にミイラのような物体が寝かせられていたのだ。

 

「っうおお!?な、なな。なんじゃこりゃ!!」

 

 無意識に後ずさる。ミイラは、人の原型こそ保っているが、白骨化してしまっている。

 腐敗していなかっただけまだマシだ。

 かろうじてマシというレベルなだけで、充分グロテスクだが。

 

「それは、このゴゥレムに登場していた古代人だよ。」

 

「古代人…」

 

 そう聞いて、ライガットは今一度古代人の白骨死体に目をやる。

 骨すらもボロボロになってしまっており、身体的特徴はおろか骨格すら判断できない。

 

「ここで、疑問があるんだ。」と、ホズルが。

 

「疑問?」

 

「この古代人には、魔力を使用した痕跡がない。」

 

「はあ?本当かよ、それ。だって、今や人々の暮らしは、魔力によって成り立っているだろ。

ゴゥレムを動かすのも、部屋の照明も、お湯を沸かすにも魔力を使用する。魔力もなく、ゴゥレムに乗れるはずがないぜ。」

 

 より正確には、魔力で直接お湯を沸かすのではなく。お湯を沸かす機械を動かすため、その機械に埋め込まれた『石英』へ魔力を流し込むわけだ。

 そうすることで、石英から動力部へと信号が送られる。

 

 最後にボソッと小さく、「例外もいるけどよ。」と付け加えるライガット。

 

「お前のいうとおりだよ、ライガット。が、この古代人が魔力を使用していなかったというのも確かなんだ。」

 

「じゃあ、このゴゥレムはなんで動くんだ?」

 

「…動力源はすべて謎だ。」

 

 ゴゥレムのコクピットを調べてみるも、魔力を流すための石英は取り付けられていない。

 

「どうなってんだ?これじゃあ動くはずないじゃねーか。」

 

 適当にコクピットの操作盤を弄るライガット。

 貴重な研究材料でもあるゴゥレムだ。一応、ホズルがライガットの軽率な行動を注意しようとした、まさにその時だった。

 一ヶ月間、クリシュナの研究員が何をしても反応すらしなかったゴゥレムが、突如として起動した。

 

 起動にともないコクピットのモニターが光り、両サイドからはレバーらしきものが飛び出てきた。

 

「なっ!?」

「何!?」

 

 ホズル、ライガットが、ほぼ同時に驚きの声をあげる。

 

「どうして、今まで反応しなかったゴゥレムが…。いや、それよりも」

 

 ホズルがコクピットにいるライガットへ向き直る。

 

 そう。ただ、ゴゥレムが起動しただけならば、そこまで驚くべきことではない。

 たんに研究員の調査不足や、千年もの時を経て、内部に不具合が生じているか。

 原因は様々ある。

 

 問題は、ゴゥレムを起動したのがライガット・アローである点だ。

 

 なぜならば、彼は。バイクや耕運機すら動かせず、石英に命令することも出来ない人間。

 

 いわゆる『能無し』と呼ばれる、魔力を持たぬものなのだから。

 

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