コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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会いたかったぞ、ゴゥレム!


二十八話 ロボットVSゴゥレム

 バルドと別行動をとった和泉は、新型ロボットの性能を遺憾なく発揮していた。

 美由紀がエラン国で進軍していた時は、多くの木々をかき分けながらだったこともあり、速度を最大限には引き出せずにいた。

 

 一方和泉が現在進んでいるのは、地平線が見えるほどに何もない平地。

 何にも気を取られることなく、まさにMAXスピードで、目的地へ近づいていた。

 

「にしても、ちと広すぎやしないか…?バイクで走ってた時から思っていたが。」

 

 走れど走れど、変わることのない景色。日本では絶対に拝めないであろう面積の荒野。

 ビルや森林、人の通行に気を使わずに、これ程全力疾走したことが今まであっただろうか?

 

 こうして進軍してみると、物資の補給等が大変そうではあるが、ロボットの圧倒的性能を堪能する分には最適だ。

 

 ほどなく、峡谷の入口についた。

 

「ここであってるよな?」

 

 バルドに描いてもらった地図で、現在地を確認する。

 この峡谷を進んだ先に、件の採掘場があるはずだ。

 

 ライガットとホズルの救出は、バルドの手腕次第。重要な役目を押し付けてしまったけれど、ゴゥレムが十台もあれば、力負けするはずがない。

 バルドはこのクリシュナで将軍の役をになっているのだし、戦況を見誤る可能性も低い。

 

 和泉の仕事は、撤退してきた敵を仕留めること。

 

(そのためには…っと。)

 

 近くの崖をロボットでよじ登る和泉。

 ホルスターからライフルを取り出し、スコープを覗く。

 

 ここからなら峡谷を遠くまで見渡せる。狙撃ポイントとしては上々。あとは、敵が来るのを待つばかりだ。

 直に他の別働隊メンバーも追いついてくるはず。

 

 シギュンから聞いた話だと、アテネスのゴゥレムは黄色の装甲らしい。

 『エルテーミス』と呼ばれる機体で、機動性に特化した性能なのだとか。

 

 新型ロボットと比較して、果たしてどちらが優秀なのか。

 

(ロボットVSゴゥレム、といったところか。年甲斐もなく胸が熱くなってくるじゃないか。)

 

 強者との戦い。それは、血の気の少ない和泉でも胸躍らせずにはいられない。

 ロボットが完成してからずっと、基地での特訓を強いられてきた。

 特訓の甲斐あって、他の兵器を寄せ付けない強さを見せつけながら、少なくない武勇伝を作った和泉。

 

 けれど、なにかが違った。

 実際には、武勇伝なんて大げに語られるものではなく、ただ淡々と、勝って当たり前の戦いばかりをこなしてきたに過ぎない。

 

 データから推察すると、此度の敵は手練。まさしく相手にとって不足なし。

 

(全く、いつから俺はこんな戦闘マニアになったのかな。どこかの部下に影響されてしまったようだ。)

 

 一人の部下の顔を思い浮かべ、苦笑する。

 彼女が和泉の立場でも、強敵との来る戦いに心をたぎらせたに違いない。

 

 そして。ついに、スコープの先に敵影を捉えた。

 

 黄色い装甲。台数は二。この距離なら、一台は仕留められる。

 

 バルド達が追い詰めたのか、片方は腕を一本失っていた。

 ならば、もう一台の万全なゴゥレムをライフルで仕留め、片腕の敵には接近戦を仕掛けるべきだ。

 

 二台ともライフルで仕留めようなどと都合の良い考えは、捨てる。

 

 まずは一台を確実に潰す。

 

 距離は大分縮まった。スコープを覗かずとも、百発百中の間合い。

 

「…くらえ。」

 

 引き金を引く。

 弾丸がコクピットを貫くイメージが頭を過ぎる。

 

 弾は一直線に、前を走っていた敵ゴゥレムへ。

 

 眼前で味方が死ねば、自然と隙が生まれるだろう。その好機を逃す手はない。

 和泉が近接用の槍に装備を変更しようと考えた矢先。

 

 ホルスターに仕舞おうとしたライフルに、敵の銃弾が被弾した。

 何やら一撃がとても重い。

 かなり銃身が凹んだものの、使用不可までにはならなかったのが救いか。

 

「冗談だろ?」

 

 結論から言うと、敵は二台とも健在だった。

 先頭のゴゥレムは、和泉の存在に気づいたのだろう。

 

 和泉が引き金を引く寸前にはもう、盾を構え終えていた。

 

 敵は盾を用いて和泉の放った弾丸を受け止めつつ、大きく前方へと跳躍する。

 そうして、距離を縮めながら和泉へ反撃してきたのだ。

 

 和泉は峡谷を崖の上から見下ろしていた。

 下から見上げてもわからないよう、ライフルの銃身以外は死角となる位置だったはずだ。

 

 もしかすると、新型ロボットと同様に空間把握機能が備わっているとでも言うのか。

 なんにせよコチラの存在に気づかれ、なおかつ敵は二台とも健在。

 

 和泉は慌てて完全に死角へ身を隠す。

 

(しくじったな。完璧なはずの奇襲が、俺の存在を知らせるだけで終わっちまった。逃げるべきか?…いや。このまま帰っては、ゴゥレムの搭乗許可をくれたシギュンに悪い。今度こそ、完全な捕虜にされるかもしれん。)

 

 とにかく壊れかけの銃は仕舞い、剣を装備する。

 リーチは短めだが、その分片手でも扱いやすい両刃のもの。

 

 もう片方の手には盾を装備した。

 相手が二対一ならば、どうしても守りは必要になってくる。

 

(それと。せっかくゴゥレムと力比べ出来るんだ。たかが奇襲が失敗したくらいで逃げてたまるか。正々堂々、ゴゥレムの性能とやらを見させてもらおう。)

 

 和泉は再び死角から飛び出て、敵の位置を確認する。

 和泉があのまま撤退しないと予想してか、敵は位置を変えることなく待機していた。

 

 今度は片腕のゴゥレムも一緒に、和泉を狙って銃を連射する。

 

 いいように狙い撃ちされるために、姿を現したわけではない。

 銃が凹んでしまったので、近接戦に持ち込むのが望ましい。

 弾幕をくぐるように、和泉は崖から一気に飛び降りた。

 

 それを躱そうと敵二台は跳躍し、和泉の落下点から離れる。

 

「逃がすかっ!」

 

 思い切り脚部を伸ばし、岩壁を蹴った。いわゆる壁キックの要領で、敵の片方へ接近。

 ロボットに蹴られた岸壁は、盛大に砕ける。

 

 勢いを利用して、そのまま縦に剣を振り下ろした。

 壁を蹴って落下点を修正するのは予想外だったようで、敵も慌てて盾を構えなおす。

 

 落下の力を上乗せした斬撃は、敵の盾を完全に破壊。

 

 しかしながら、敵機体にダメージを与えることは叶わなかった。

 

(俺の攻撃を、いなした??)

 

 あらかじめ盾が破壊されることを見越して、盾の硬度を活かしきって使い捨てることで、腕ごと持っていくほどの衝撃を受け流した。

 およそゴゥレムでは不可能なレベルの繊細な技。

 

 目の前の敵は、それを難なくこなしてみせた。

 

「…リィ。」

 

 不意に敵ゴゥレムが音声を発した。

 若い男の声。

 

「ここは食い止める。君はエレクトと先に合流してくれ。到着している別働隊は、まだこの一機だけのようだ。」

 

 もう一台の、片腕のゴゥレムへの言葉らしい。

 おそらく、『リィ』というのはもう一台のゴゥレムに乗る人物の名だろう。

 

 会話の最中でも、全く隙がない…。

 和泉の攻撃を受け流した技術を見るに、資料のとおり、確かに手練らしい。

 

「かしこまりました、ゼス様。」

 

 応えた声は、女性。それも大分若い。

 

 言い残し、片腕のゴゥレムは去ってゆく。もしここで無防備な背中を狙おうものなら、和泉は命を落としていた。

 それほど、相手から伝わる殺気が半端ではない。

 

(待てよ…?今、ゼスって言わなかったか。)

 

 謁見の間にて、ライガット達の親友として会話に登場していた名前。

 もしかして、彼がそうなのか。アテネス軍の指揮を執っている、総司令官の弟。

 

「まさか、あんたがライガット達の親友??」

 

 殺してからライガット達の親友だったと判明するのは気分が悪い。

 先に聞いておけば、無用な心配もなくなるというもの。

 

 返事が帰ってくるかは別問題だが。

 

 ふと、和泉の言葉で、僅かに相手の殺気が弱まった。

 

(………)

 

 しばしの沈黙。

 そして…

 

「何者だ。ライガットを知っているのか?」

 

 凛々しい声で、そう問われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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