和泉が会議室で説明した作戦の概要は、作戦と呼んでも良いのかすらわからないものだった。
敵の秘密基地へ攻撃を仕掛け、敵の手にわたってしまったかもしれないロボットを奪還する。
ただそれだけである。
「まったく。作戦とかいいつつ、中身がまるでないじゃないの。あんた、自分が指揮官だって自覚は
あるわけ??」
場所は変わり、ここは基地内にあるロボットの格納庫。いつでも出撃が可能なように、ロボットを
整備する場だ。
和泉に対し怒りを向けているのは、二十代前半の女性パイロットだ。凛々しく、整った顔立ちで、まだ高校生と名乗っても疑われない外見をしている。
彼女の名前は白川美由紀。一応ロボットを扱えはするものの、仕事はもっぱら事務処理だ。もともとはパイロットになるべく軍隊へ入ったのだが、事務として有能だったため、和泉の補佐役に抜擢された。
「あーあ、私も前線で戦いたいな~。とはいえ、どっかの誰かさんが考えた作戦にだけは参加したく
ないけれどね。」
横目でチラチラと和泉を捉えながらいうあたり、完全に嫌味だった。が、和泉のサポートとなってから一度も戦闘をさせてもらえていない彼女からすれば、上官たる和泉に不満の一つ二つはあって当然なのかもしれない。
普通は命の危険が減って喜ぶべきだと思うのだが・・・。
「あ、そのことなんだが・・・」
思い出したように、和泉が言葉を紡ぐ。
「次の作戦にはお前も参加してもらう。」
「・・・・は?」
間の抜けた美由紀の声。
「あんた、あんな作戦に私を加えるつもり?」
「無論だ。不満か?」
美由紀は軽い頭痛をおぼえた。たった今、自分は和泉の下では戦いたくないと嫌味を言ったばかりだ。だのに、目の前の男ときたら、まったく気にした様子もない。
「あちらさんにロボットの研究を進められては、こちらの優位は消えてしまう。」
「それはそうよ。」
「石井たちが全滅したのは、敵の秘密基地があると思しき廃墟付近だった。おそらく、まともな
研究施設はないだろう。すくなくとも、ロボットを解析できるくらいのものは、な。」
「つまり、秘密基地ではない、もっと大きな施設にロボットを運ぶ必要があると?」
美由紀の言葉に、和泉は一度頷く。
「今ならばまだ、ロボットの解析はすんでいないはずだ。タイムリミットは、敵が研究施設へと
ロボットを運び終えるまで。
本作戦は、なによりもスピードが重要になってくる。」
一応、和泉の考えをなんとなくだが理解した美由紀。しかし・・・
「私をこのタイミングで戦線に出す意味は?」
「・・・確かに、まだ我が国が圧倒的有利だ。けれど、万が一敵もロボットを使用できるように
なれば、ロボット対ロボットの戦いになるだろう。
今のうちに、一度勘を取り戻しておくのも悪くないと思ってね。・・・なにより。」
言葉を一旦区切り、和泉は美由紀をまっすぐ見据える。
「そろそろお前も暴れたいだろう?」
目を丸くする美由紀。それから、にやっと口角を上げた。
「あんた、わかってるじゃないの!」
美由紀の笑顔は、無邪気な少女のそれであった。
原作の世界へはいつ行けるのでしょうか・・・