コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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かなり、やる。


三十話 報告

「ホズルさん、ライガットさん、ご無事でしたか。」

「ああ、イズミも怪我がなくて良かった。」

 

 謁見の間にて、和泉達はお互いの無事を確認する。

 ゼスによる奇襲で、クリシュナ軍は多大な被害を出した。

 

 そもそも、アテネスとクリシュナでは戦力に差がありすぎる。

 出撃前、ホズルとの会話で出てきた限りでは、アテネスの戦力はクリシュナの約5倍程度。

 

 正面から戦ってもまず勝ち目はない。

 

 事実として、現状クリシュナは主要部にゴゥレムを集中させることにより、どうにかアテネスと渡り合っている。

 

「しかし、敵部隊をよく退却させたものです。あの戦況で。さすがはバルド将軍ですね。」

 

 ゼスの部下、リィという少女が、ホズル達のいた採掘場を襲ったらしい。

 和泉は峡谷の出口で敵を待ち伏せていたため、採掘場での出来事は把握していない。

 

 採掘場にはもともと護衛としてのゴゥレムを一台しか配置していなかったようだが、それも、敵の先制攻撃であっさり破壊されてしまったという。

 

 バルドが間に合っていなければ、ホズル、ライガットは無事ではいなかったはずだ。

 

「…それについて、イズミの耳に入れておきたいことがある。」

 

 初対面からずっと、温厚そうで穏やかな顔つきだったホズルが、ここにきて神妙な顔になる。

 重要なことかと、和泉もおもわず姿勢を正す。

 

「なんですか?私の耳に、とは一体どのような…」

「まず、採掘場で敵を撤退させたのは、バルド将軍ではない。そこにいる、ライガットなんだ。」

「そうだったのですか。ライガットさんも、ゴゥレムの操縦に長けているのですね。」

 

 素直に感心する和泉。

 ライガットは農民だと聞いたが、ゴゥレムを操れるとは思わなかった。

 

「…肝心なのは、ライガットは魔力を持っていないということだ。」

 

 続くホズルの言葉に、和泉は微妙な表情になる。

 魔力などといういかがわしい単語を聞いては無理もない。

 

 シギュンの口からもチラッと出た言葉。

 

 これは和泉の仮説にすぎないが、

 

 この国には魔力なるものがあるらしい。

 ゴゥレムの機動には魔力が必要らしい。

 

 シギュンの言葉から判断すると、こうなる。追々詳しく聞いてみるとして。

 

「では、どう敵と戦ったのです?」

 

 今知りたいのは、そこだ。

 よもや、おのが肉体のみでゴゥレムと戦ったわけではあるまい。

 

(おそらく…)

 

 考えられることとして、怪しいのは。

 

「採掘場にあったゴゥレム。あれは、調べによると魔力無しでも動かせるようでな。ライガットはそれを操りゼス達を退けたんだ。」

 

(だろうな。)

 

 シギュンの言葉通り。採掘場で発見されたゴゥレムは、和泉のものと材料や特徴が一致しているとのこと。

 いまだに魔力については謎が多いけれど。

 もしライガットが乗ったゴゥレムが、ゴゥレムではなくロボットだったなら。

 

 魔力を持たぬ身でゴゥレムを起動、及び戦闘をこなしたところで不思議ではない。

 なんといっても、そのように造られているのだから。

 

「念のため確認なんですが、魔力がないと、ゴゥレムは動かせないのですね?」

「ええ、そうよ。ゴゥレムのみならず、バイクや車も、魔力を用いて石英に命令することでうごかしているの。」

 

 説明してくれたのはシギュン。

 彼女の右手には石ころサイズの石英が握られており、説明の途中、それが唐突に発光する。それで終わりではなく、次の瞬間には、石英が宙に浮かび上がった。

 

「うおお…!?どんな原理だよ。」

 

 外見上はどこにでもあるような、普通の石英。

 重力を無視して浮くなど、ありえない。

 

「これが、石英に『命令』した状態です。どうやら和泉も魔力を持っていないようですので、参考までに。」

 

 和泉が、魔力を持っていないどころか、魔力の存在すら知らなかったであろうことは、シギュンも感づいていた。

 だが、たとえそうでも、この世界で生きているならば、程度はあれ嫌でも魔力について学ばなければならない。

 

 魔力を知らないなんてありえない。

 

(彼はいったい、どこから来たの…?)

 

 シギュンの好奇心が、彼女の中で大柳和泉を興味の対象とした。

 話の腰を折るわけにはいかないので、さすがにこの場での質問は控えることにする。

 

(石英が発光した。確か、大島博士がそのようなことを…)

 

 和泉は和泉で、自分の世界に入りかけていた。

 

「イズミ。そっちはどうだったのだ?部下が到着した頃には、敵の退却後だったそうだが。」

 

 バルドがスッと、一歩前に出る。

 

「……え?あ、はい!」

 

 慌てて我に返る和泉。バルドの問いかけから返答まで、若干ラグが生じてしまった。

 サングラスのせいで表情はわからないが、怒っているわけではなさそうだ。

 

「…峡谷の出口付近で、ゼスという方と交戦しました。」

「なに…!?一人でか?」

「ええ。取り逃がしてしまい、大変申し訳ありません。」

 

 ホズル、ライガット、シギュンの三名は、驚きでしばらく呼吸を忘れた。

 

 学生時代。ゴゥレムを使った模擬戦では、教官4人相手に勝利したことがあるゼス。

 その実力は折り紙つき。

 

 採掘場でゼスと刃を交えたライガットも、ゼスとの実力の違いを実感した。

 

 実際のところ、バルドが援軍に駆けつけていなかったら、ライガットはゼスの手であの世に送られていただろう。

 ライガットが互角に戦ったのは、ゼスの部隊の一員、リィだ。もっとも、初めてゴゥレムに乗ったにしては上出来すぎる結果なわけだが。

 

 バルドもホズル救出のため、ゼスとは一戦交えた。

 場所が峡谷だったこともあるが、10台のゴゥレムでも、ゼス一人相手に詰め切ることは出来なかった。

 

 和泉は、そんなゼスと一対一で戦い、ほぼ無傷で帰還した。

 

(この男、全てが謎に包まれているが、ゼス並の実力なのか…?)

 

 和泉に気づかれぬ範囲で、ホズルもまた、しばしの間、彼を好奇の目で見つめていた。

 

 

 

 




まあ、結構ゼスの方が優勢だった気がしますけど。というより、優勢でしたね。
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