コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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二週間に一回すら更新できないなんて…。
情けないです。そして、大変失礼致しました。


三十三話 ナルヴィ

 和泉の知る限り最高の性能を誇るロボットを、いきなり貶した白髪の壮年。

 将軍だろうと、関係ない。頭にくるものはくるのだから。

 

 和泉がクリシュナに属する軍人であったなら、唇を噛み締めてでも堪えたかもしれない。

 ただ、まあ。和泉はクリシュナの軍人では無いわけだ。

 

(さてと、シギュンさんが用意してくれた部屋とやらを探しに行くか。)

 

 和泉が歩き出した瞬間。

 

「おい!まて。」

 

 和泉の将軍に対する態度がよほどお気に召さなかったのか、和泉を追うようにして女性が格納庫から出てくる。

 

 先ほど和泉の手を振り払った褐色肌の、長い黒髪を持つ女性。

 ツヤのある美しい黒髪を、和泉は素直に綺麗だと思った。

 

 気の利く男性であれば褒め言葉の一つでもとばすのだろうか。

 しかし、初対面の女性をいきなり褒めるというのも軟派に見られてしまうだろう。

 

「たしか…、ナルヴィさんだったか?」

 

 無難に相手の名前から確認することにした。

 

 褐色肌の女性は、名前を覚えられていたという点について、やや意外そうな顔になる。

 

「ほう、私の名前は一回しか出てこなかったのだが。まさか覚えられていたとはな。」

 

「人の名前を覚えるのは得意な方なんでね。」

 

 サラリと返答する和泉。

 

「なるほどな。だが、目上のものに対する礼儀はなっていないようだ。」

 

 トゥル将軍に行った行為を指しているのか。

 とはいえ、あれはトゥル将軍に悪いところが無かったとも言い切れないだろう。

 

 操縦士である和泉が近くにいたことを知らなかったからといっても。

 

「俺のゴゥレムをいきなりガラクタ呼ばわりしたのはアンタの上司だがな。」

 

「…ふん、事実だろう。お前、噂の弟と互角に戦ったそうだが、運が良かったんじゃないのか?もっとも、トゥル将軍なら仕留めていただろうがな。」

 

 どれだけトゥル将軍を持ち上げれば気がすむのか。

 それとも、ナルヴィが言う通り、トゥル将軍は相当な実力者なのか。

 

「あー。…そう…ですか。」

 

 なんと返せばナルヴィの神経を逆撫でしないのか、考えている間咄嗟に紡いだ言葉は、やる気のない返事となってしまった。

 

「お、お前!信じていないなっ!?」

 

 クワッと目を見開きながら、唾を飛ばす勢いでナルヴィが声を張り上げた。

 というか、何滴か唾が和泉の顔まで飛んできた。

 

(汚い!どれだけ将軍のことが好きなんだよ!!)

 

「信じるもなにも、実際に戦いを見るまでは判断できないね。」

 

 唾を軍服の裾で拭う和泉。

 

「その言葉、お前にそっくり返してやろう!トゥル将軍も言っていただろ?言葉ではなく態度で示せと。」

 

「はいはい。」

 

(だから、それはお互い様でしょうが。)

 

 若干だがナルヴィの相手がだるくなってきた和泉。

 そろそろ睡魔も本腰を入れて和泉を襲い出す。

 

(うむ…、もうそろそろ寝とかないとな。)

 

 シギュンが和泉の為に用意してくれた部屋に向かうのに、和泉は足を踏み出した。

 

「悪いけど俺、そろそろ寝ますわ。」

 

 ナルヴィから視線をそらす和泉。

 

「ま、待て!!」

 

 歩き出す和泉に慌てて声をかけるナルヴィ。

 

(これ以上相手したくないのだが。ただでさえ、現状を受け入れるのに必死だってのに。)

 

 それでも、足をとめて応える和泉。

 

「…なんだ?まだ用でもあるのか。」

 

「その、お前の名前だが。『イズミ』でよかったか?」

 

「ああ、あってるよ。」

 

 本当は大柳という苗字まで覚えてもらいたいところではあるけれど、この国の人には発音がむつかしいようなので諦めることにする。

 

 

「ふんっ。では、せいぜい頑張ることだ。今度トゥル将軍にあんなことしたら、ナニを吹っ飛ばすからな!!」

 

 プイッと顔を横に向けながら、ナルヴィが。

 

 (え?今さらっと恐ろしいこと言わなかったこの娘。)

 

 きっともって気のせいだろう。気のせいってことで片付けてしまったほうが、精神的に良い気がした。

 

 初対面の男性にこんなセリフを言える女性は、この世界にどれだけいるだろう。

 

(なんか…、勝手な想像だけど結構いそうな気がしないでもないな…。)

 

 ナルヴィを少数派の女性ということにしたかったのだが。

 

(Sな性癖の方とか、躊躇いなく言いそうだわ。って、いかんいかん。)

 

 思考がおかしくなりそうだったことに気づき、慌てて和泉は思考を停止した。

 

「それじゃあな。」

 

「ああ。ナニが無くならないよう、慎むことだ。」

 

 ナルヴィと別れた後、用意された部屋についた和泉。

 

 テーブルとベッドが置かれただけの簡素な部屋。

 それでも贅沢すぎる待遇なのだが。

 

 ベッドに横たわった和泉は、ほどなく深い眠りの世界へと落ちていった…。

 

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