コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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殺せんせー、どれだけ間抜けなんですか!


三十五話 地の利とは

「それで、今はどういった状況なんだ?」

 

 ロボット用のライフル(ゼスに凹まされてしまったもの)を整備しつつ、和泉はナルヴィにたずねた。

 ゼス率いる敵部隊を捜索するとのことだが、具体的にどのエリアを探すのか等、聞きたいことは多い。

 

「そのことだが…」

 

 ナルヴィが口を開いた、まさにその時だった。

 ゴゥレム格納庫、のみならず。王都全体に警報が響き渡る。

 

 警報を聞いた整備士や兵士たちの中には冷静さを欠いてしまっている者もいる。

 

「敵襲!!?」

 

 ナルヴィはほとんど終了していた出撃準備のシメとして、自身が身につけている銃を、一度ホルスターから出し入れしてその感覚を確かめる。

 敵と遭遇してからは、ほんの一瞬が生死を分かつ。

 

 ゴゥレムといった兵器があるにも関わらず、生身で扱う武器の整備も怠らない。

 

(良いことだ。なんといっても、身体が資本だからな。)

 

 和泉も、いつでも出撃可能な状態となった。

 

「ナルヴィ!!イズミ!!出撃するぞ」

 

 ゴゥレムに乗ったトゥル将軍が、二人の名を叫ぶ。

 トゥルの背中には巨大な大剣。

 どうやら気に入ったらしい。

 

「はっ!」

「はいよ。」

 

 各々敬礼してから、ゴゥレムに乗り込む。

ちなみに、やる気なく返事をしたのが和泉だ。

 

 同時刻。

 

 別の場所にて、ライガットもアンダー・ゴゥレムに搭乗していた。

傍にいたシギュンが、驚いた様子でライガットに駆け寄る。

 

「ライガット!一体何をするつもり?」

 

「ゼスと直接話してくる!!アイツが望んでクリシュナに攻め込むなんて、有り得ない。俺がなんとか兵をひかせるよう説得してやる。」

 

 そうして、シギュンが制止する暇もなく、ライガットの乗ったアンダー・ゴゥレムは格納庫を飛び出した。

 

 ~西方環状第3、4内門~

 

 そこでは、和泉も加わったトゥル将軍部隊を、国民皆が見送りに来ていた。

 凄まじい応援の声は、ロボットのコクピットにいてもうるさく感じるほど。

 

「にしても、すげー歓声だ。」

 

 耳の穴を指でほじくりながら、和泉が。 

 

「そうだろう、そうだろう!これも、トゥル将軍の人徳があってこそだ。わかるか?」

 

 あいも変わらず、トゥル将軍を誇りに思っているナルヴィ。和泉はもはや頷くしかない。

 

「賊軍は北方外門を攻めている。回り込んで叩くぞ!!」

 

 トゥルが出撃前に、作戦方針を伝える。

 

「我々ドラウプニル重騎士団は迅速にして臨機応変!いざ、出撃!!!」

 

 声を合図に、皆が駆け出す。

 統率の取れた陣形を保ちながら走る部隊を、和泉は最後尾から眺めていた。

 

(重騎士、というわりには進軍が早いな。このペースならば回り込めるだろう。)

 

 想像以上に鍛えられた部隊。

 むしろ和泉が足を引っ張らぬよう努力しなくてはなるまい。

 

 よどみなく進軍していたドラウプニル重騎士団。

 

 だからこそ、先頭を走っていたゴゥレムが突如として倒れこんだのを見て、和泉はかなり動揺した。

 斜め上。前方に聳える崖の上から、敵に狙い撃たれたようだ。

 

「伏兵か!!?」

 

 誰かが叫ぶ。部隊を中心に、付近の地面に次々と弾丸が撃ち込まれていく。

 

 完全に進軍は停止。足を止められては、後は狙いを定められるばかり。

 

「くそっ!あの崖、従来のゴゥレムじゃあ登れない!」

 

 ナルヴィが舌打ちとともに叫ぶ。

 

 ジワリ、ジワリと。敵の狙撃で装甲を削られていく。たとえ距離が遠かろうと、このままでは全滅も有り得る。

 対して、こちらの銃は全く当たらない。

 崖の上と、下。敵に地の利がありすぎる。

 

 仲間のゴゥレムが、3台ほど大破する。

 

和泉のライフルも、凹んでいるせいか飛距離がでない。

 

(…これを乗り切るには…、俺が行くしかないか。)

 

 誰もが撤退を考え始めた。

 

 そんな状況で。

 

「あれくらい、俺なら登れる。」

 

 和泉が一人、前に出る。

 

「イズミ、何を言っておるか!この状況でそんな冗談…」

 

 トゥルがセリフを発したのとほぼ同じタイミングで、和泉が走り出す。

 

 トゥル達は初めて、アンダー・ゴゥレムの全速力を目にする。

 

「なにっ!!?」

 

 そこから続く大跳躍に、敵も含めたその場の全員が目を見開いた。

 

 アンダー・ゴゥレムは、ゆうゆうと崖の上へ到達した。

 

 

 

 

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