コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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…まあまあだ。


三十七話 間合い

 和泉によって命をおとしたリィ。そのゴゥレムは、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

 

「リィっ!!嘘よ…認めない…!!」

 

 叫びは、リィが命をかけて庇った少女、クレオのもの。

 目の前で親友が殺された。まだこの世に生まれて12年のクレオにとっては、あまりにもショッキングな出来事。咄嗟に和泉に襲いかかろうとしたところでようやく、自分が転倒したままであることに気がついた。

 

「許さない…許さない!!!」

 

「怖いな。そんなに怒らないでくれよ。」

 

 和泉はゆっくりと剣を引き抜く。 

 その様子は、さらにクレオの憎しみを増加させる。

 とはいえ、和泉に罪悪感が無いわけではない。ただ、

 

「戦場にくるってことは、殺される覚悟が出来てるってことでしょう?」

 

 それが全てだ。

 むしろ和泉に理不尽なまでの怒りを向けているクレオのほうが、軍人として異端だとも考えられる。

 

「そんなこと、関係ないわよ…!!!アナタが、私の親友を殺した!それだけが全て!」

 

「やだな。冷静さを欠いた奴は。そんなに怒るな。すぐに会わせてやるさ。」

 

 流れ作業をこなすかのように、和泉はクレオに剣を突き刺そうとした。

 

「!!!」

 

 自分へと近づいてくる剣を前にして、クレオは中途半端に両腕を交差し防御する。

 そのようなことで剣を防げるわけがない。

 

「そうはさせるか!!!」

 

「おっ!?」

 

 瞬間。もう一人のアテネスパイロット、アルガスが和泉の攻撃を防いだ。

 

 和泉の真横からプレスガンで攻撃を仕掛けたのだ。

 

 後ろに下がり躱そうとした和泉だったが、何発か被弾してしまう。

 主に右腕部分を中心に軽微な損傷を負った。

 

「やるな、アテネスのパイロット。」

 

「馬鹿な、あれが致命傷にならないだと!?」

 

 アルガスの銃撃は和泉がクレオに剣を刺す瞬間だった。

 つまり、重心が僅かでも前に傾いていたはず。

 それが、あれだけ瞬時に後ろへさがれるものなのだろうか。

 

 不可能だ。少なくとも、アルガスには。

 

「俺のゴゥレムはちょっとだけ特殊でな。アンタに落ち度はないさ。」

 

 和泉のゴゥレム、つまり日本軍の最新式ロボットには空間把握能力が備わっている。

 例え壁を挟んだ向こう側に敵がいたとしても、察知することが可能だ。

 

 エラン国にて、美由紀がエルク・ラゼルを奇襲で倒したのも、この機能があったからだ。

 

 アルガスの位置は通常であれば和泉の死角。

 空間把握能力がなかったら、和泉も死んでいただろう。

 

「くそっ。クレオ、大丈夫か!?」

 

「はい、アルガスさん!!」

 

 クレオは起き上がり、和泉から離れる。

 さすがに近接戦ではキツイと感じたのだろう。

 

 その判断はおおいに正しい。

 正直、離れられると和泉は何も出来なくなってしまうからだ。

 先ほどリィがプレスガンを構えた際に、貴重なランスを投擲してまで攻撃を防いだのはその為である。

 

(こんな凹んだライフル、あてにしてはいられないからな。)

 

 そう考えると、ライフルをゼスに凹まされたのは辛いものがある。

 シギュンなら直せるかもしれないが、修理をするにも、まずはアテネスの二人を倒してしまわなければなるまい。

 

「貴様、よくも、よくもリィを…!」

 

 アルガスの声は、冷静さの中にも怒りが感じ取れる。

 

 二対一で、まだまだ不利な状況下にいる和泉。

 付け入る隙があるとすれば、アルガスとクレオが冷静ではないところか。

 

「覚悟っ!!」

 

 先に攻めてきたのは、アルガス。

 プレスガンを絶えず連射しながらの突進。

 

 走りながらの射撃なので、命中精度こそイマイチだが、距離が近づくにつれて精度もあがる。

 

(コイツ…!)

 

 瞬時に盾を装備し、ロボットを半身にすることで、全体を盾で覆う和泉。

 

 およそ考えつく中で最高の防御姿勢。

 アルガスの放った弾を全て防いでいる。

 もっとも…

 

(盾が…もつか、もたないかってとこだな。)

 

 命中制度だけでなく、距離が狭まるにつれて威力だってあがる。

 和泉に向かって来ているとはいえ、アルガスとの距離はまだまだ遠い。

 このままでは盾が破壊される。そうなれば和泉を待つのは死、のみだ。

 

「貴様、遠距離武器は無いのか。先程から防戦一方だぞ!!!」

 

「そうだな。んじゃ、撤退させていただこうかな。」

 

 新型ロボットの性能なら、崖下へ落下しても着地が可能だ。

 

 すかさず、崖から飛び降りるべく駆け出す和泉。

 

「!?待て、逃げるのか!!」

 

 慌てて後を追うアルガス。

 リィの敵を逃すわけにはいかない。

 そして、凄まじい性能のゴゥレムを破壊することの意味。

 

 気がつけば、アルガスは全力で和泉を追いかけていた。

 

 そんなアルガスを見て、和泉の目がにわかに細くなった。

 

「馬鹿な奴だ、だから冷静でいられない奴は駄目なんだよ。」

 

 アルガスがジワジワと和泉との距離を詰めた(正確には、距離が縮まるように和泉が速度を調節していたのだが)あたりで、急に和泉が切り返す。

 後を追っていたアルガスと、正面からぶつかり合うように。

 

「なんだと!」

 

「こうすれば、近接戦に持ち込めるよな!」

 

「…っく!!」

 

 和泉とアルガスの間合いは、剣やランスが届くほどに近くなった。

 和泉は剣で。アルガスはプレスガンと一体になった片刃の剣で、それぞれがそれぞれの息の根を全力で止めにかかった。

 

 

 

 

 

 




アレですね。なんと言いますか、やっぱラウラは可愛いですね。
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