石英と鉄。それぞれ違う素材から出来た、二本の剣のぶつかり合い。
アルガスのゴゥレムは、反動で剣を持った腕が大きく後ろにはじかれる。
「むっ…!」
対して。和泉は完全に剣を振り切っていた。
それは、ただ単に機体の性能差によるもの。純粋な力比べならば、やはりロボットが有利。
そうはいっても、それが良い結果と言えるかと聞かれれば、そうでもない。
アルガスの剣は刀身が割れてしまい、もはや剣としての役割を果たせそうにない。
そうなると、プレスガンとして使用する他なくなったわけだ。
が、和泉の剣にもわずかながら亀裂が入ってしまっていた。
「…痛み分け、と言ったところか。」
和泉が自嘲気味に呟く。
あと少しで腕ごと破壊されそうだったアルガスとしては、痛み分けだなどとはとても思えない。
(クリシュナの新型…、思った以上の性能だ。こうなってしまっては、ここでの勝利よりも、コイツの情報をゼス様に持ち帰ったほうが良いのではないだろうか。)
ようやく、冷静さを取り戻してきたのだろう。
ひび割れた自身の武器を見ながら、アルガスは撤退を視野に入れ始めた。
クレオと二人がかりでも倒せるかわからない相手。
リィの仇討ちを、己の手で果たしたい。そうは思うものの、僅かでも気を抜けない相手だ。
ゼスの力を借りたほうがより得策だ。
加えて、崖下にいたクリシュナ部隊が駆けつけてくる可能性もある。
(倒せる可能性はある。しかし、クリシュナ部隊が来るまでという時間制限が…。この男が時間稼ぎに徹した場合、短時間で決着をつけるのは難しい。)
「アルガスさん!!ここは一度引きましょう。」
クレオも同じことを考えていたようだ。
親友を殺した相手を前に、こうも早い段階で冷静さを取り戻せるとは、アルガスも思ってはいなかった。
撤退するにしても、クレオの説得に手間取るのでは懸念していたが、どうやら余計な心配だったらしい。彼女も、ゼスが選んだアテネスの一兵士。流石と言ったところか。
「おっと、今度はおたくらが撤退するのかい?」
目の前で撤退の算段をする敵二名の様子を伺っていた和泉。
二人がだいぶ冷静になっていることに気がついた和泉は、正直撤退してくれることに感謝していた。
勝ちの目があったのは、二人が冷静ではなかったから。
トゥル将軍らが追いついてくるまで時間を稼ぐのも、相当厳しい。
弱気な思考を悟らせるほど愚かでもないものの、尋常じゃないほどの冷や汗が和泉の背中を流れる。相手に姿を晒していないことに救われた形となる。
この戦いで、和泉はリィを倒した。それだけで戦果としては充分だ。
このまま敵二人の逃走を阻止してまで戦闘を続行するのはマズイ。
「…ああ。リィの敵討ちは、必ずや果たすぞ。せいぜい首を洗って待っているが良い、クリシュナの新型。」
アルガスは真っ直ぐ和泉を見据える。殺すべき敵の姿を焼き付けるため。
「…そうかい。」
「…ゆくぞ、クレオ。」
「はい、アルガスさん!」
二台のゴゥレムは颯爽と崖を下ってゆく。
最後に、クレオが和泉に向けてプレスガンを放っていった。
別に和泉を殺そうとしたのではなく、追走を防止するための威嚇行為。
崖下からの弾丸は、和泉が何もしなくとも当たることは無かった。
「…やっぱ、早いとこライフルを直さねーとな。」
遠距離からの攻防が不可能なのは、戦闘においてもはや致命的である。
基地に戻ったら、まず第一にすべき事が決まった和泉。
その後、程なくしてやってきたトゥルやナルヴィに独断専行を咎められたのは言うまでもない。
のんのんびより、癒されますね。