「はあ、やれやれ。酷い目にあった。」
王城へと帰還して、和泉はナルヴィにたっぷりと叱られた。
隣で様子を見ていたトゥル将軍が思わず止めに入ってしまうほど、密度の濃い説教だった。
作戦中、身勝手な行動をした。そのことについては申し訳なく思っている和泉だが、あの不利な状況から敵一人を仕留めるまでに至ったのだ。
あのまま全滅していた可能性を考えれば、結果としては上々のものだろう。
トゥルを敬愛してやまないナルヴィにとっては、和泉がトゥルの指示以外の行動をした時点で許せないようだが。
そんな地獄のような説教も終わり、和泉はようやくといったふうに整備室へ歩を進める。
ロボット専用ライフルをシギュンに修理してもらう為に。
「…おや?」
道すがら、視界にライガットの姿が。
なにやらぼんやりと空を眺め、物思いにふけっている。
和泉はゆっくりと距離を詰め、可能な限り驚かさないよう声をかけた。
「よっ。どうしたんだい?空なんか見て。」
静かに、ライガットも目だけ動かして和泉の姿を確認した。
「イズミさんか。別に、なんでもねーよ。」
「そんな顔で言われても、説得力ゼロだぜ。」
普段のライガットと比べて、顔に覇気がない。ように見える。
何かに軽く絶望しているかのような、そんな顔だった。
「どんな顔してるんだ、俺は。」
「見るからに元気がないな。失恋した奴みたいなオーラを醸し出してるぞ。もう一度聞かせてもらうが、何かあったのか?」
「……。」
和泉の問いかけに、ライガットは無言でかえす。
というよりも、何か言いたげだが躊躇しているようだ。証拠に、口元が僅かにだが動いている。
「別にさ、無理にとは言わないよ。今の俺、正体不明の怪しい人物なわけだし。」
「いや、そんなことはないけど…」
「ま、お前が話したくなったときは遠慮なく言ってくれ。悩み事なんだとしたら、あまり溜め込み過ぎないようにな。」
「ああ。ありがとな、イズミさん。」
「なに、礼なんかいらないよ。」
ライガットと別れ、再び和泉は格納庫を目指した。
………
…
和泉が格納庫に入ると、まずシギュンが歩み寄ってきた。
慌てて、そのあとを護衛が追いかける。
見ると、和泉のライフルは既に作業台の上に置かれていた。
現在絶賛修理中のようだ。
「イズミ、こっちで貴方の武器を修理しているわ。」
シギュンは右手の人差し指で、ライフルを置いた作業台を指す。
「やあ、シギュンさん。悪いね、無理言ってさ。」
シギュンは黙って首を横に振る。
「謝るのはこっちのほうです。せっかく修理を頼まれましたが、まるで手がつけられないの。フレームはともかく、内部の構造なんて、下手に弄れば復元不可能になりそうだわ。」
シギュン風に言えば、和泉のロボット、及び武装には千年前の技術が使用されているとのこと。
使われている技術なんて、根本から違っているだろう。なるほど、そんな代物、易易とは修理できまい。
「せめて、その凹んだ部分だけでも直せませんかね。」
手を合わせるようなジェスチャーをしながら、和泉は頼んでみる。
「…そのくらいなら、なんとかやれます。ただし、内部の不具合等があっても、私達では発見することさえできないわよ?」
「充分です。ほんと、無理をさせて申し訳ない。」
「だいたい、二日くらいあれば直せると思うわ。」
「すみませんが、よろしくお願いします。」
一応、戦闘があってから今まで休憩していない和泉の身体は、もうそろそろ疲労がピークに達しそうだ。
この後、ホズルや軍上層部の前で先の戦闘について細かい報告をしなくてはならない和泉は、僅かでも仮眠をとるため、自室へ帰ることにした。
更新が不定期で、ほんとに申し訳ありません。