「さてと。それでは次の作戦で使用するロボットを見繕おうか。」
ロボットの格納庫を、つかつかと和泉が歩いてゆく。整備中のロボットをはしから順に、その
状態を確認してゆく。
和泉を慌てて追いかける美由紀だが、美由紀自身もロボットのチェックは怠らない。
一言でロボットといっても、すべてが同じ性能なわけではない。
より新しいものほど平均的にスペックが高い。が、古い型のロボットでも使われている素材によっては、新型と遜色ないものも存在するのだ。
「やっぱさ、自分専用のロボットって必要だと思うのよ。」
ロボットの性能チェックを中断することなく、美由紀は和泉へと話しかける。
「そういうロボが完成すれば、出撃の度にこんな動作や性能の確認をする手間が省けるでしょ」
基本的に、ロボットはまだまだ未完成な兵器というのが日本軍全体の認識だ。
制作費にしても、戦車や戦闘機とは比べ物にならないほど高い。
正直なところ、美由紀の案を採用出来るほど、時間と資金に余裕がないのである。
「現実的じゃあないな。いずれはお前の言う個人にあったロボットが作られるかもしれないが。」
和泉はどこか不満そうな顔で言葉をつづける。
「下手したら戦争のほうが先に終わるかもな。ほら、ないものねだりしても仕方ないぞ。とっとと
自分にあう機体を見つけるんだ。」
ロボット奪還任務。敵国に潜入する以上は、ロボットが損壊するかエネルギーが切れれば
その時点で終わりだ。
ロボットを選ぶ基準の一つに、耐久性やエネルギー消費の少ないものがあげられる。
けれど・・・
「あーもう、なんで耐久性の高いロボは機動力が低いのよ!こんなんじゃ複数の戦闘機を
相手にするのは困難じゃないの!」
美由紀が愚痴をこぼす。付近でその耐久性に富んだロボットを整備していた作業員の額に青筋が
浮かぶ。
「ロボットを作った人は、このアンバランスさをどう考えてるのかしらね。」
「俺に言われてもな。」
先程から文句ばかりの美由紀に若干うんざりした様子の和泉。
「ロボット開発に貢献した人物の一人に、大島先生がいる。彼は現在俺たちと同じ基地に私室を
持っている。そんなに鬱憤が溜まっているなら、直接開発者に言ってこいよ。」
「いやいや、そこまでするほどのことでは・・・」
和泉のめんどくさそうな対応に、自分の態度が悪かったことに気づいた美由紀は、黙って確認作業に集中し始めた。
一方で最初から真剣にロボット選びをしていた和泉は、今回搭乗するロボットを決め終えていた。
「ようし、こいつにするか。」
和泉が選んだロボットは、エネルギーの消費は少なく、ギリギリまで装甲を削ることで
機動性も一定以上確保した旧型のものだった。
「あ、あんた。それ、下手したら転倒しただけで木っ端微塵よ?敵の攻撃なんてもってのほかだわ」
心配そうな美由紀とは逆に、和泉の顔は自信に満ちていた。
「なーに、これくらいどうってことないさ。なんなら本作戦、俺一人でもおつりがくるぜ。」
自信過剰は死を招くだけだ。けれど、ロボットの操縦が上手いというそれだけの理由で中尉の
称号を与えられた和泉の言葉には、どこか納得させられてしまう不思議な力があった。
主人公無双はあまり期待しないでください