和泉はジルグによる襲撃を受けたこともあいまって、精神をかなりすり減らせていた。
ジルグが和泉はスパイではないと気がつかなければ、殺されていただろう。
死ななかったとはいえ、殺されかけたことで若干の走馬灯さえ見てしまった。
思いのほかジルグとは気が合いそうでもない和泉だが、この疲労感を与えてきたことだけは許しがたい。
「あの赤毛…。ジルグとか名乗ってやがったか。」
今度顔を合わせることがあれば、一発殴るのは確定としよう。
それだけで和泉の気が済むのなら、ジルグにとっても安いはずだ。
なにせ殺人未遂を犯したのだから。
現在時刻は午前中。
ジルグとの一幕があってからまだ間もない。
和泉は睡眠を諦めて、シギュンがいるはずの格納庫へと足を運ぶ。
シギュンが目的で格納庫に向かっているわけではない。
ただ、あの後部屋に戻ってみると、和泉の部屋の扉にはシギュンからの手紙が貼られていたからだ。
和泉が不在だったためそのような連絡手段を取らざるを得なかったのだろう。
それとも。早朝ゆえ和泉を起こすのは忍びないと、シギュンが感じたからか。
「あら、イズミ。もしかして、張り紙をしたせいで起こしてしまったかしら?」
当然というかなんというか。
やはりシギュンは格納庫にいた。
「…いや。ちょっと部屋を出ていて。」
「そう。なら良いけれど。」
「手紙には、格納庫に来いとしか書かれていなかったが。今日はどういった理由で?」
「…説明するにあたって、ライガットにも来て欲しいんだけど…。彼が起きるのはまだ先みたいね。」
農作業を生業としているのだから、そこそこ朝には強いはずなのに。
そうシギュンは付け足した。
「ライガットがいないと説明できないと?」
和泉こそ寝たい衝動にかられているなか、我慢して活動している。
時間を無駄にはしたくない。
「そういうわけじゃないわ。そうね、イズミだけにでも、先に聞こうかしら。」
「なるべく手短にお願いしますよ。」
「…実はね。和泉、そしてライガットが乗っているゴゥレム。すなわちアンダー・ゴゥレム用に武器を作成しているのよ。」
「ほお…。」
「あのケタ外れの靭帯馬力を考慮してね。ただ、費用と時間の都合があって、当分は一台分の武装しか完成できないの。そこで、まずどちらがそれを装備するか、話し合いたいのよ。」
「そういうことね。」
武装。なるほど、それは大きな問題ではある。
より良い武器は、装備するだけで搭乗士の腕に関係なく戦闘力を上げられるものだ。
和泉も、天才と呼ばれているシギュンが造った武器を使用したい、ある種の好奇心はある。
が、抑えられないほどでもない。
それと。
「別に、俺は後回しでいいですよ。」
目の前のシギュンの顔には、ライガットに武器を使用してもらいたいと書いてある。
旧友の死亡率を少しでも下げたいというのが、彼女の気持ちなのだろう。
なにより。
(俺のゴゥレム、もとい。ロボットには、まだ未使用の装備が幾つかある。)
エネルギー消費が激しい為、迅速なエネルギー供給が望めない現在の状況下において、使用をしていなかった武器が。
ライガットの乗っているロボットにも搭載されているのかはわからないが。
「良いの?本当に…??」
「当たり前です。ライガットの方が俺より実戦経験も少ないわけですし、新武装によって戦闘力の向上を望めるのであれば、それは彼を優先すべきだ。」
「…ごめんなさい、イズミ。」
まだ未使用の武装の存在は、明かさずにいよう。
それゆえに、シギュンは和泉が無条件で新武装の装備を辞退したのだと受け取った。
「謝らなくていいっす。んじゃ、俺はもうちょい惰眠を貪らせてもらいやす。」
「ええ。朝早くから、悪かったわね。」
「いえいえ。」
「今日、また出撃してもらうと思う。今のうちに休んでおいて。」
「はいよ。」
ようやく、眠れそうだ。
すっかり賑わい始めた城下町を尻目に、和泉は軽い足取りで自室に向かう。
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時刻は遡る。
和泉とジルグが戦闘を行っている頃。
偵察隊が、ゼス達の位置を補足していた。
「この足跡…。」
「ええ、恐らくはアタリかと。」
クリシュナ南部の地盤は柔らかく、ゴゥレムの足跡を消すには、少なくとも三回踏みならさなくてはならない。
通常、痕跡隠しの踏みならしは二回。
細かい情報を知らず、敵がヘマをしたのか。
「罠の可能性もあるが、ひとまず、バルド将軍に報告だ。」
偵察隊が得た情報を元に、ゼス討伐隊が編成されることとなる。
相棒最高!!
カイト君、もう違和感もないですね。
ただ、最近展開が淡々としすぎてる感じがするのは私だけ?
ギャグパートがない、バトル要素アリのギャグマンガみたいな。
何を言ってるんですかね、私は。相棒知らない人、すみません