コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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更新が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。



四十五話 先手必勝

 ゼス達の居場所を、偵察部隊に属するクロザワという男が掴んだ。

 奇襲され、常に撹乱されながらの戦いを強いられてきたクリシュナ軍が、ようやく先手を取って戦闘に入ることが出来る。

 

 戦場では先手を取ることが大きなアドバンテージになるのは言うまでもないが、和泉の顔にはやや影が。

 

「あーあ、気が重い。」

 

 不安は、和泉の顔を曇らせるだけにとどまらず、声にまで出るほどだった。

 

「?」

 

 圧倒的優位な状況で、有利に事を運べるはずの、今回の襲撃。

 不満げな顔をする理由は、あまりないはず。

 

 ライガットは、なぜ和泉が気をおとしているのか、すぐにはわからなかった。

 

「イズミさん、なんだって気が重いんだ?」

 

 親友との死闘を前にして、ライガットこそ気が重いはずなのだが。

 部隊の仲間が滅入ってる理由も気になって当然だ。

 

 これでイズミが普段通りの力を発揮できないようなことがあっては、たまったものではない。

 

「ん?いや。特にこれといった理由はないんだけど。」

 

 高速で進軍するゴゥレムの歩を止めることこそなかったが、和泉はなにやら悩んでいるようだ。

 ゴゥレム越しにではあったが、和泉が余計に不安、というよりは不機嫌になった。

そうライガットは思った。

 自分は何か聞いてはならないことを聞いてしまったのだろうか。

 

 和泉の不安が、ライガットにも移りかけた。

 

 和泉はハッとして、慌てて言葉を紡いだ。

 

「ただ、俺さ、あんま先手をとった状態での作戦は好きではないんだよ。奇襲でも夜襲でもなんにしても。」

 

「それは…、なんでだ?」

 

「…俺も、もともと自分の国では部隊を率いていた身なんだ。」

 

「ああ。」

 

 和泉は、体感時間的には少し前の、肉体時間的には千年前の記憶を遡る。

 

「簡単に言えば、奇襲に失敗したことがあるんだ。」

 

「……。」

 

「そのせいで、かけがえのない部下が命を落とした。」

 

「それは…」

 

 ライガットは慰めの言葉をかけようかと思ったが、思いとどまる。

 

「一度や二度ではない。短くない軍人生活の中で、何度も経験した。」

 

 奇襲は、戦闘に勝利する確率こそ上がるが、何も犠牲者を0にするまでには至らない。

 犠牲者の数こそ減るだろうが、一人でも死ねば、和泉は自分を責める。

 

 戦いに勝って、勝負に負ける。

 

 同じ軍の、同じ部隊で苦楽を共にしてきた部下を失ってしまうというのは、司令官にとっては

耐え難いほどの苦しみとなる。

 

 勝利の美酒を楽しむことさえ、苦痛になる。

 

 和泉は、そういったタイプの『隊長』だったのだ。

 

「そういうことがあったからかな。俺の戦闘方針は『後の先』をとることに偏っていった。」

 

「…アンタ、俺が言うのもなんだが、軍人には向いていないかもしれないな。」

 

 ライガットが言う。

 

 元々軍人では無かったライガットにそんなことを言われてしまうとは思っていなかった。

 

「わかってる。」

 

「…同じ思いを、ホズルやバルドにさせない為にも、イズミさんも死んじゃダメだぜ。」

 

「…そう、だな。」

 

 僅かに微笑む和泉。

 

 リィを手にかけた。隊長であるゼスがまともな人間だったなら、死に物狂いで和泉を殺しに来るだろう。

 その点だけは、注意しなければなるまい。

 

 二台のアンダー・ゴゥレムが、平地に差し掛かる。

 その時。

 

 和泉がレーダーに敵の反応を確認した。

 

「!!!

 ライガット!前方に反応。

 数は4。恐らくは…」

 

「ゼス…」

 

 自然と、手に力が入る。

 

「…いいか、ライガット。まず、俺が注意を引く。敵の陣形を崩せれば理想的だが、相手はあのゼスである以上、そこまでは望めない。」

 

 作戦をライガットに伝える和泉だが、デルフィングの速度が急激に上がった。

 和泉が注意を引くと言ったにも関わらず。ライガットの耳には、和泉の言葉が聞こえていなかったようだ。

 

「って、聞けよ!!」

 

 既にデルフィングはかなり前方へと飛び出してしまっている。

 この状況では、敵全員からプレスガンで集中砲火されてしまう。

 

 まだプレスガンの射程距離ではない。

 

「…しょうがない。」

 

 和泉はライフルを構えた。

 

 弾丸が回転する和泉のライフルは、空気抵抗をもろに受けるプレスガンより射程が長い。

 ロボットによるレーダー索敵に、視界拡大を行えば、狙撃も不可能ではない。

 

 敵はこちらに気づいてはいない。

 

 が、このタイミングで狙撃してしまうと、ライガットが敵の視界に到達するより前に存在を気取らせてしまうことになる。

 

(デルフィングが敵に捉えられた瞬間。)

 

 和泉は、的を絞り、機を待つ。

 

 勝負を決めるとすれば、この一瞬。

 

 状況は4対2。

 

 数の差を覆せるだけの力が、ロボットにはある。

 和泉がミスしなければ。

 

「……!」

 

「死ね、リィの仇!!!」

 

 やや焦る和泉を、より焦らせる事態が起こったのは、ライガットが接敵した瞬間だった。

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