コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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力こそパワー!


四十六話 パワー

(敵か!!?)

 

 声が聞こえてから、回避すべく機体を傾けた和泉。

 不意をつかれながらの動作は、かろうじて敵のランスを躱すに至った。

 装甲はいくらか剥ぎ取られたものの、ロボットの動作に支障はない。

 

(こいつは、確か、トゥル将軍の部隊で見た・・・)

 

 和泉をランスで仕留め損ねた相手は、ファブニルと呼ばれる機体に搭乗していた。

 

 ゼスを含む敵全員は、エルテーミスなるアテネスのゴゥレムに乗っているはず。

 

(どういうことだ。敵は全員エルテーミスと聞いていたが。クリシュナに、スパイを仕込んでいたのか?)

 

 トゥル将軍の部隊に紛れ込んでいたのか。

 

(もしくは、ゼス達がファブニルを奪ったか、だな。どのタイミングかまでは見当もつかないが。

 敵をエルテーミスの形状に限定して、レーダーに登録していたのだが、こうした形で裏目に出るとはな。)

 

 完全に意表をつかれた。

 まあ、ゼス達はロボットに備わっているレーダー機能を知らないだろうから、ファブニルで襲うだけで完璧な奇襲となったと考えているだろうが。

 

「っく、ファブニルによる奇襲すら通じぬか!」

 

 アルガスが憎々しげに。

 どうやらファブニルの中身はアルガスだったらしい。

 

(ということは、だ。)

 

 敵の集団の中には、1台全く動かないエルテーミスがいる。

 ライガットが突っ込む際4対1だった状況は、3対1になった。

 そうだとしてもまだまだ不利だが。

 

「まったく、トゥルのオッサンがしょぼいせいで、ややこしいことになったぜ。」

 

「・・・随分と余裕だな。俺一人では不足か?」

 

 平気で将軍を貶す和泉の態度は、とても軍人とは思えない。

 やや呆れながら、アルガスが口を動かした。どうにも、舐められているように感じる。

 

「いや?そんなことはない。前に一回手合わせしたが、あんた相当強いだろ。」

 

「・・・そうか、そう思ってもらえたのは光栄だな。」

 

「何、少数精鋭っていうの??よくわかんないけどさ、あんたらの部隊を構成している奴ら。あんたを含め、一人一人がかなりハイレベルだ。」

 

 手放しで敵を褒めるというのはどうなのだろう。アルガスはやや気を削がれそうになったが、

どうにか気を引き締め直した。それから、殺意のこもった声で言う。

 

「・・・その、ハイレベルな部隊の一員。俺の大切な仲間を、リィという、一人の少女をお前は殺した。」

 

 言葉だけで和泉を殺すぐらいに、殺気のこもった声。

 だが、それだけでは和泉は怯みすらしない。

 

「まあな。」

 

「・・・戦場に身を置いているのだ。誰しもが死と隣り合わせ。そんなこと、わかりきっていたはずなのだがな。それが情けないことに、いざ仲間の敵を前にすると、殺意を芽生えさせずにはいられなくなってくる。」

 

 悪びれない和泉。なんでもないことのように、飄々とした態度で応じる。

アルガスが喋り終えたのを確認して、依然変わらぬ態度のまま。

 そのまま軽い口調で、こう続けた。

 

「それが普通でしょ。でも、さ。リィちゃんだっけ?俺が殺した娘。・・・あの程度で死ぬくらいなら、遅かれ早かれ殺されてたって。逆に良かったんじゃないか?こんな戦いばかりの世界から早めに解放されて。」

 

「な、なに・・?」

 

「あんな程度の実力のものを前線に出しているゼスの采配にも、リィちゃんが死んでしまった原因があるでしょ。」

 

「貴様アアアアァ!!!」

 

 激昂したアルガスのランスは、先ほどの一撃よりもおお振りだった。

 

「っふ。頭に血を上らせてはならないと言ってやったのに、おたくも学習しないね・・・!」

 

 冷静さを失った人間が放つ攻撃は、どうしても単調なものになる。

 我を忘れた人間が攻撃してくる度に、和泉は同じ感想を抱く。

 

 当然、挑発は和泉の作戦だ。こうした状況になると、つくづく思う。

 優しい人間は、軍人になるべきではないと。

 

「鋭いだけの単調な突きなど、恐るるに足らず!だ。」

 

 わかりきった挑発はもう通用しないと思っていた和泉だが、アルガスは相当な仲間思いらしい。

 

 まずは自分に迫るランスを、横から剣を入れてはじこうとする和泉。

 エルテーミスが相手だったなら、それで十分だった。

 

(なっ・・!この馬鹿力は。)

 

 ここで、ファブニルとエルテーミスの単純なパワーの差がでたのだ。

 軽々と、とはいかないが、十分払いのけられるはずだったアルガスのランスは、

大幅にロボットの腹部に食い込んだ。

 

「しまった。・・とはいえ、スピードはやはり見劣りするな。」

 

(ファブニルの力は把握した。もう、次はまともに受けない。

 回避に専念すれば、大きい攻撃をくらうことは無い。)

 

 ロボットのパワーであれば、どうにかファブニルの一撃を弾くことは出来る。

 エルテーミスと比較して、やや力強いだけであり、まだまだロボットの性能を下回っているのには

違いない。

 が、今の度合いを考えると、無理にはじくリスクは高い。

 

「俺のロボットになにしやがる。」

 

 和泉はすかさず振るった剣を返し、アルガスの頭部を狙う。

 

「!」

 

 アルガスは無理にランスを抜こうとはせず、放棄して回避行動に移った。

ランスを回収するための時間が短縮されたことによって、ギリギリ和泉の剣を避けた。

 

「おっと、やるな。だが・・!!」

 

 そこから更に間合いを詰め、斬撃を繰り出してゆく和泉。

2、3回と回避を繰り返す中で自身も剣を引き抜いたアルガスは、続く4太刀目を正面から

受け止めた。

 

 ガキンっ!!!

 剣と剣がぶつかり合う。

 

 これも、エルテーミスであれば体勢を崩されていたかもしれない。

ロボットによる攻撃は、それくらい重いものだった。

 

 他人数同士の戦いであれば、エルテーミスの速度は重宝する。

 だが、1対1の、それも相手が規格外の性能を持つロボットをなれば、

最低でもファブニル程度のパワーは欲しい。

 

 アルガスがファブニルに搭乗した理由は奇襲の為だが、それ以上にプラスの要素があったようだ。

 

(くっそ、やっぱこのアルガスとかいうやつ、まあまあ強いな。これでは、ライガットに加勢できん。エルテーミスが相手だったら、最初のランスを弾くとこで勝負を決められたかもしれないんだがな。)

 

 ゼスを相手に、ライガットはデルフィングの性能だよりでどこまで戦えるのか。

 

 一刻も早く、アルガスを仕留め、ライガットの応援に行かなければ。

 和泉は、背中に流れる一筋の汗を感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔法科、アニメの司波深雪さん可愛いです。

九校戦まではやりそうですね。
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