コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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四十八話 見知らぬ兵器

 もう、何度剣と剣がぶつかり合ったのだろう。

 

 和泉とアルガスの持つ剣は、それぞれが刃こぼれ、あるいはひび割れを

おこしていた。

 

 ライガットが先行してから、どれだけの時間がたったのか、和泉にはわからない。

 いや、恐らく、時間はそれほど経過してはいない。

 

 しかし、ゴゥレム戦ではあっという間に決着がつくこともある。

 

 仮に現時点でライガットが戦闘に入ってから1分程しかたっていなかったとしても、

命を落とす、もしくは奪うには長すぎる。

 

(仕方ない。こんなロクにロボットを調整できない環境下で使用したくは無かったけど、

 奥の手を使うしか・・・。)

 

 和泉のロボットには、幾つか大島博士の開発した武装が備わっている。

 初見のアルガスが対応する前に仕留めてしまえるような、高火力なものも、中にはある。

 

 だが、確実に仕留められる保証は無く、武器が破損してしまった場合、

修復する手立てはない。

 

 一つ、その他に問題がある。

 

(・・・千年間経て、まともに機能するのか?そもそも。

 今のところロボットは動いているものの、だからといって武器まで正常とは

 限らない。

 

 不安要素はある。とはいっても、あまり長引かせるのも・・・。)

 

 一旦アルガスと間合いをとる。

 

 それから、さりげない動作で武装の確認をした。

 

 和泉が握ったのは、特殊な噴進弾発射器。バズーカである。

 

(どうにも、この世界のゴゥレム戦では爆薬の類が使われていないようだ。

 そうであれば、敵が正面から盾で受けてくれるかもしれん。

 まともに爆薬へ対処できなければ。

 

 当たれば、盾の上からだろうが関係なく、敵ゴゥレムを吹き飛ばせる。

 

 ちゃんと爆発するのか、また、このロボットには5発分しか搭載されていない為、

 かなり貴重だ。

 

 おまけに、外せば、再装填しなくてはならない。)

 

 色々と不安要素を見つけてはためらいそうになる和泉だが、

無意識下では発射の用意を進めていく。

 

 バズーカの照準はロボットの視界とリンクしており、今の和泉とアルガスの

位置関係であれば、おおよその向きさえ合わせてやれば、自動でアルガスをめがけて

ロケット弾が飛んでゆく。

 

 和泉は引き金を引けば、それでいい。

 

(・・・実績のある兵器しか使用したくないんだが、もう、そうも言ってられない。)

 

 静かに、バズーカをアルガスに向ける。

 

「・・・?なんだ、その武器は。」

 

 怪訝そうにしながらも、アルガスが盾を構えた。

 

(やはり、な。

 コイツは盾で受け止めるつもりだ。

 ・・・今撃てば、確実に当たる・・・!)

 

 和泉が引き金を引くと同時、ロケット弾が射出された。

凄まじい勢いで風を切ってゆく。

 

 アルガスの反応する暇も無く、それは被弾し、

爆音と共にゴゥレムを吹き飛ばした。

 

 地面をも削るほどの爆発に、思わず和泉は目を細くした。

 圧倒的な破壊力を前に、なんの抵抗も出来ず、アルガスは死んだ。

 

 沸き立つ煙の下には、ゴゥレムの残骸だけが残る。

 

(なんともあっけない。

 まあ、それはそうか。)

 

 これといった感情が湧いてこなかった。

 敵に知識が無かったことが、和泉がこれほどあっさり勝利を掴めた理由だろう。

 

 達成感を得るために戦場にいるのではないが、かすかに虚しさが残った。

 

「さて、ライガットを助けに行かなきゃ・・・と。これは・・・」

 

 ライガットを探そうとするや、ロボットのモニターに味方の情報として、

ライガットの位置が表示された。

 

 位置をつかめるほど、近くにいるのだ。

 

 それも、更に距離が縮みつつある。

 

「こっちに来ているのか?」

 

 そして、ライガットの背後には、敵反応が一つ。

 

(どうやら追われているようだな。この距離なら、またバズーカで仕留められるか・・?)

 

 和泉は素早く付近の崖に上り、ライガットを追う敵を視界に入れる。

 

 やはり、アテネスのエルテーミス。

 ゼスなのか、他の隊員かは判断できない。

 

(・・・どうであろうと、ここで一人仕留められるのは大きい。)

 

 アルガスを仕留めたことで、バズーカを多少信頼した和泉は、

何のためらいもなく引き金を引いた。

 

 一直線に、伸びてゆくロケット弾。

 着弾すれば、確実に葬るであろうことは、先ほど証明済みだ。

 

 ・・・しかし。着弾することなく、僅かに軌道をそらして地面へと落ちた。

 

 丁度エルテーミスの手前で大爆発を起こしたからか、エルテーミスの動きが止まる。

 その間に、デルフィングが敵の視界外まで離脱する。

 

(よかった。何はともあれライガットを逃がすことができた。

 

 ・・・ただ。敵にバズーカの存在は知られてしまったか・・?

 知っているからといって、防ぐすべはないだろうが。)

 

 和泉はライガットと合流した後、王都へ帰還する。

 

 一方、ライガットを見失ったクレオも、ゼスと合流し、一度国境付近まで

撤退した。

 

 バズーカの報告をしたクレオも、報告を受けたゼスも、得体の知れない兵器に対する

不気味さに、しばらくとらわれることとなる。

 

 

 

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