コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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五十二話 仇

何度目の正直だっただろうか。ようやく和泉は奇襲らしい奇襲を成功させた。

まだ和泉を発見していなかったゼスとクレオは、動揺を隠しきれず。片足を砕かれたクレオはそのまま前方に倒れこんでしまった。

 

(これで、ゼスはクレオを庇いながらの戦いを強いられた。ライガットさんと二人でたたみかければ…)

 

ライフルの足をしまい込み、両手で抱えて狙撃ポイントを離脱した和泉。けれど、ゼスがそうそう予想どおりの行動をしてくるはずもない。

 

(!…クレオを置き去りにして、こちらに向かってきたか)

 

クレオを庇う為にゼスがその場にとどまると思い、距離を詰めようとしたものの、向こうから接近してきた。

狙撃が成功した時にゼスがいたポイントは、ここからでは決定打を与えるのは厳しい距離。奇襲だからこそ命中したのであって、盾でも構えて屈まれてしまっては、ライフルでも貫くのは難しい。故の接近。

距離を詰めた分だけ、単純にライフルの殺傷力は高まる。

 

が、ゼスが距離を縮めにきたのなら、狙撃ポイントに居座り続けていた方が優位にたてた。

和泉は既にゼスとは射線上にいない。切り立った崖の下に降りてしまったので、狙撃は行えなくなった。

 

入り組んだ渓谷では、遠距離戦は無い。あっても中距離での牽制。

和泉のロボットにはレーダーがある。接近すればレーダーでゼスを捉えられるので、接近戦であろうが遅れをとるつもりはない。問題は、ライガットである。

 

これでは、いざライガットが交戦した際に、崖上からライフルでサポートすることも出来ない。

現状、ライガットが和泉のサポート無しでゼスを打倒し得ることはまず無いだろう。

ロボットの性能でどれだけ食らいつけるか。

 

詰まる所、和泉がライガットを発見する前に二人が戦いを開始すれば、終わりだ。

崖上に登り直すのも危険が伴う。ゼスの眼前では良い的だろう。

 

その最悪のパターンは、直ぐに現実となった。

 

ライガットは崖の狭間を移動していた。それも、ゼス達をが進軍してきた方向へ。和泉が崖下に降りたということは、奇襲が成功した証。後はライガットも参戦し、二人で接近戦に持ち込む。そういうプランだった。

 

ただ、ゼスとライガットのいるポイントは、プランよりも遥かに近く。

すぐさま出くわしてしまう。

 

「「!?」」

 

打ち合わせしたわけでもなく、二人ともピタッと動きを止めた。

 

「キサマもこの場にいるとはな…、ライガット。」

 

再三にわたる旧友との遭遇。今回ばかりはゼスも悠長に構える気がない。

 

会話の間にも、ゼスはプレスガンの銃口をライガットへ。

 

「ゼス!?なんで、こんなに近くに…!!」

「ほう。なにか、作戦とは違ったのか?ライガット、戦場で全て作戦通りに事が運ぶことは、一切無いと思え。」

 

カシュッ!!

 

乾いた響く音は、プレスガンの銃声。ライガットが屈み、辛うじて回避した。続く第二撃を放たれる前に、ゼスへ飛びかかるデルフィング。武装は片手で振るえる長さの剣。

もっとも、デルフィングの靭帯馬力はゴゥレムと一線を画すものだが。通常の片手剣よりは、いささか大きい代物。

 

「うおおおおおぉおぉ!!!!」

ライガットの咆哮は、ゼスに攻撃された恐怖が出させたものである。太刀筋は素人そのもの。ゼスは難なく見切り、避ける。

 

「…ライガット。キサマは軍人には向かん。」

 

プレスガンで、デルフィングが持つ剣は粉砕された。

ゼスの大口径プレスガンだからこそ、可能な芸当だ。

 

(こ、殺される…!それだけは嫌だ!!)

 

脳が信号を送るよりも早く。気が付いた時にはもう、ライガットは折れた剣でゼスのゴゥレムの肩を砕いていた。

流石に折れた剣を攻撃に使うとは考えなかったのか、ゼスも虚をつかれた。だが、攻撃力としては今ひとつで、ゼスのゴゥレムは動作に問題は無い。

ロボットの腕力を十分に発揮していれば、ゴゥレムは片腕のみとなったはずだが、臆したライガットが中途半端な打撃を行ってしまったのだ。

 

「やるな、だが…!」

 

ゼスは左肩に置かれたままのデルフィングの腕を、あいた右腕で持ち上げる。右脇腹に生じた隙に、片刄のついたプレスガンで斬りつけた。

 

「ぐあぁっ!!」

 

刄は、コクピットまで到達しなかったものの、全身を打ち付けられる程の衝撃と、それ以上の恐怖をライガットに与える。

 

「なに…?やけに硬いな。シギュンが外部装甲を施していたということか。」

 

「ぐっ。ゼス…!お前、今、完全に殺すつもりだったろ」

 

泣き出しそうな、堪えるような声でライガットは叫ぶ。

一方のゼスは、何を今更といった風だ。

 

「無論だ。ライガット、キサマが村で農作業をしていたのであれば、俺は命までは奪わなかった。が、ここは戦場だ。友である前に、俺たちは敵同士なんだ。命を救う義理も、余裕も、今の俺にはない。」

 

「く…、や、やめろおおおおおお!!!!」

 

あわやコクピットに到達しそうな刄を押しのけ、デルフィングは全力で後方へ跳躍した。そして。

空中でランスを取り出し、ゼスに放る。

ライガットも、今度はゼスを殺す気で投擲した。

 

自分が助かるには、ゼスを殺す他道はない。

 

デルフィング…。すなわち、ロボットの全力。

最大馬力で投げ飛ばされたランスは、轟音とともにゼスへ到達。

 

盾で防いだゼス。が、衝撃までは殺しきれず、盾は構えていた腕ごと吹き飛ばされ、まともに踏ん張った両足も亀裂が生じてしまう。

 

「なんという、馬鹿力だ…。」

 

ロボットの最大馬力に、ただただ驚愕するゼス。

「しかし、甘いぞライガット!!!」

 

すかさず、デルフィングの着地際に、プレスガンが射出された。

今度はライガットが受け止めた。盾ではなく、シギュンに施された、左肩に備わる盾代わりの装甲で。だが。

 

着地したのは、やや高い崖の上。大口径プレスガンの威力に押され、デルフィングは足を踏み外した。

 

「な、う、うわぁあ!!」

 

崖の下へ、それも、ゼスの死角側へとデルフィングが落下した。

 

「まだ死にはしなかったようだな。反対へまわるか…」

 

ライガットに追い討ちするべく、 ゼスが足を踏みだした。刹那…

 

「そうはさせるか!!」

 

二発の銃弾が、ゼスの行く手を阻むように撃ち込まれた。

ゼスには着弾せずに、そのまま崖を抉り取る。

 

現れたのは、クレオの足を粉砕させた和泉だ。

 

そして、ゼスにとっては。リィの、アルガスの仇である。

 

「………。キサマだけは、キサマだけは絶対に…!!」

 

「………」

 

満身創痍と表現しても差し支えないゴゥレムで、ゼスは和泉に飛びかかった。

 

 

 

 

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