コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

53 / 59
表紙のクレオけしからんですな本当に!
あと、ナルヴィ可愛すぎて、終わったかと思った。
ライガットは、最近ヤンデレに見えてきました。
なんにせよ、新刊発売嬉しかったですよ。


五十三話 驚愕

和泉は、ゼスの斬撃を受け流して、間合いから出る。

 

「死んだ仲間の敵討ち。まあ、俺も部下を持つ身として、気持ちはわからないでもないさ。ただ、今のアンタは自棄になってるだけだ。俺の首には、そこまでの価値は無いぞ。」

 

無言で重圧を放ってくるゼスに、和泉は適当に言葉を投げかける。ドラウプニル部隊が到達すること。ライガットが体勢を立て直すこと。それらにかかる時間を稼げれば理想的だが、このゼスを見る限り、叶わぬ相談だろう。

「キサマとは会話をする必要もない。構えろ。」

 

ひたすらに低い声音。構える時間をくれるというのだから、思惑はどうあれ、たんに怒り狂っているだけでもないようだ。

和泉としては怒りに身を任せてくれていた方が都合が良かった。リィのように、動作が単調になることを期待できた。

 

「どうした?構えないのか。なら、死ね。」

 

エルテーミスの跳躍は眼を見張るものがあり、和泉もギリギリで斬撃を避ける。多少無理な体勢からでも続く第二撃、三撃と繋げられるのは、ゼスの腕前ありきだ。

 

「むっ…!!」

 

和泉も、エルテーミスの腕の可動域を考慮して、回避に徹する。悔しいが、ゼスの方がゴゥレム戦に慣れている。中々反撃の隙を与えては貰えない。

何回か斬撃を避けた和泉は、妙な違和感を覚えた。

(これは…。俺の回避動作を先読みして、誘導している…?)

 

周囲の崖や、足場の悪さ、回避行動による体勢の悪化。

いずれは決定的な一撃を貰う。和泉は、直感的にその未来を感じ取った。

ゼスは、和泉に連続攻撃を繰り返し、回避不可能な状況を作り出そうとしている。さながら、詰め将棋のように。

 

(冗談じゃないぜ…!!!)

 

未だ反撃さえ許されない和泉。焦る間にもゼスは斬撃を止めない。徐々に和泉の動きも危うくなってくる。

 

状況を打開するには、ゼスが読めない手で反撃する他ない。

 

(やるしかない!)

 

判断するや、和泉はロボットをわざと後方へ転倒させるように、重心を移動させる。

 

ゼスはそれを、好機と見た。大きく踏み込んで、剣を振り下ろす。

だが、ロボットは転倒せず、両腕を地面について機体を維持。すかさず左脚で、振り下ろされるゼスの腕を弾く。

 

「くぅ…!」

ゼスが目を細める。

 

「まだだっ!」

続けて、伸ばしきった左脚を戻すようにゼスを攻撃した。

その際、ロボットの踵部分から鋭いトゲのようなものが出現した。

 

「なにっ!!?」

 

仕込み武器に、ゼスが驚きの声を漏らす。

ロボットの踵が、エルテーミスの左脚の付け根に深く食い込む。

 

「ぐ…!」

 

ライガットが投擲した槍を受け止め、エルテーミスの脚はボロボロになっていた。和泉の踵は左脚を砕く。

敢え無くゼスは地面に平伏した。

 

「この程度で…終わるものか!!」

 

転倒してなお、プレスガンを構えるゼス。

 

「諦めがわるいぜ!」

 

エルテーミスに残された片腕を、渾身の力で蹴り飛ばす。

衝撃で指が2.3吹き飛び、プレスガンを持ち続けることも不可能となった。

 

両腕が無くなり、脚も片方しかない。流石のゼスも、敗北を認めそうになる。

 

「あんた、良い隊長だよ。俺も見習わないとな。一先ず、捕虜になって貰う。悪いな。」

 

「……ふっ。兄上に、これ以上迷惑はかけられん。」

 

コックピットの中で。ゼスはゆっくりプレスガンを取り出した。情報を引き出されたり、人質になるくらいなら、いっそ命を絶つ。

ただ。 捕虜になれば、もう一度ホズルやシギュンと会える。不意に旧友との再会を考える自分に、失笑する。

 

(それが、なんだ。しかも、兄上に合わせる顔もない。)

ゼスの人差し指が、ゆっくり、引き金を引いて行く。

 

様子が変なことに気づいた和泉は、慌てて制止した。

 

「お、おい!まさか…」

 

自殺するつもりなのか?

 

そう、声に出そうとした。死なせるわけにはいかない。

 

しかし、それより早く、甲高い女性の声が聞こえてきた。

 

「クリシュナのゴゥレム!!そこまでだ!!!」

 

「「!?」」

 

声は女性だ。けれど、クレオのものではない。

ゼスも、声の正体はわからない。

 

声と同時に、一台のゴゥレムが和泉目掛けて上空から飛び降りてくる。

 

「崖上かっ!?」

ロボットのレーダーは、新手も捉えていた。

大きく横っ飛びで距離を置く。

 

ゼスと和泉の間に割って入ったのは、黒いゴゥレム。

見るものが吸い込まれそうになる程、黒い。

 

全体的にはスリムなシルエットを持つゴゥレムで、右手には巨大な剣が。

ちなみに、この剣も刀身が漆黒である。

 

一見、ゴゥレムらしくない外見。

 

「な、何者だ…?新手か??」

ゼスを庇う形で剣を構えているということは、アテネスのものなのだろう。しかし、崖上から落ちてきて、なんともなく着地した辺り、かなり頑丈そうだと、和泉は思った。

 

黒いゴゥレムの搭乗士は答えない。ただ静かに、剣の切っ先を和泉に向ける。

「悪いけど、ゼス様は殺させないわ。」

 

「……!!!」

 

ジリジリと、和泉のロボットに切っ先を向け、機を見計らう敵女性パイロット。ここで、和泉の目に、信じられない情報が入り込んだのだった。

 

ピコン

 

簡素な電子音と共に、モニターが一つの情報を表示した。

 

(……!!! ちょっと、まて。どういうことだ??これ!)

 

動揺のし過ぎでロボットの操作にまで影響が出そうな和泉。そこまで彼を動揺させた情報が、コクピット内部のモニターに映し出されていた。

 

《味方情報:声帯認証より確認》

『ユーザー名:シラカワ ミユキ』

『登録済み:日本軍パイロット』









漆黒のゴゥレムとか厨二病こじらせすぎですねー。
でも、好きなんですよね、黒いの。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。