コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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皆様お疲れ様です。
今回は完全に番外編ということで、原作のストーリーには
一切関係もなく。ほぼ会話です。
読み飛ばしても問題ありません。作者の自己満足であります。いつもよりは長い内容となります。

原作にしか興味ないぜっ!という方は、次の更新まで待ってて下さいね!



番外編 人類の滅亡

西暦2113年。

 

時は、和泉がコールドスリープに突入した直後へ遡る。

 

アメリカ部隊に囲まれ、絶体絶命と思われた大柳和泉。しかし、彼が殺される瞬間はハッキリと目撃されず。

 

あくまで、ロボットとの通信により得た情報ではあるが、突然大きく跳躍した後、水の底へと沈んでいった。水底まで沈みきった辺りで、ロボットからの信号が途切れた。

 

和泉との連絡が取れなくなってしばらくした後、日本軍、大島の私室では、ロボットの生みの親である大島博士が、白川美由紀に詰問されていた。

 

「大島博士!和泉はどうなったんですか!何故ロボットから信号が途切れたのですか!?」

文字通り噛みつきそうな距離まで迫られ、大島は引きつった笑みを浮かべる。

 

「近いよ、白川君。」

 

一つ咳払いをしてから。

 

「あれは恐らく、ロボットによる救命措置。コールドスリープが働いたのだろう。」

 

コールドスリープ。美由紀も聞いたことはある。現代の医療では完治が見込めない難病を抱えた人が、未来へ希望を抱きながら、低温を維持し、眠らされることがあると。

 

若しくは。宇宙空間での長い移動の際に、老化を防ぐことを目的とすることもあるらしい。

 

「でも、あいつがそんなコールドスリープされる必要はないですよね?しかも、『恐らく』ってなんですか!?博士がつけた機能なんですよね?」

 

「そう、矢継ぎ早に質問するんじゃない。…私にとっても想定外の事態なのだ。元々は、操縦士の生命力が低下した際にしか作動しないはずの機能なのだよ。現状、ロボットがコールドスリープであるかを確認する術がないから、恐らく、なのだ。」

 

あくまでも保険としての機能だった。開発費もかかることから、新型のみにしか搭載されていない。

まさか誤作動するとは、大島も想定外だ。

 

「でもでも、永久的ではないんですよね??数日とか、長くても数年くらいでしょ?」

 

「いや。あれは、自動的に解除されるものでは無い。一度作動すれば最後。外部からコードを入力しない限りは、数百年経とうが眠ったままだ。」

 

「そんな…!!」

 

大島の回答は、美由紀が望んだものではなかった。

 

「加えて、外部からは生身の人間がキーを操作してコードを打たなければならない。大柳君のように水中に潜ってしまった場合、解除は困難を極めるだろう。」

 

「なによ、それ…。ていうか、殆ど欠陥機能じゃないの。」

 

「だからこそ!テストも兼ねて、今回新型での出動にしてもらったのだよ。」

 

大島が手近な机を叩いた。美由紀はどうにも、大島に反省の色が無いように見える。自分の設計ミスでこのような事態を起こしたというのに。飄々とした態度は、美由紀を若干イラつかせる。

「本当に、すまなかったと思っているよ。戦争終結後に、彼を助ける。それだけは約束しよう。」

 

「そんなの、信用出来ません!!ですが、あいつが助かる為なら、私はこの戦争を一刻も早く終わらせて見せるわ!!」

 

和泉は戦場の真ん中にいる。彼を確実に助け出すには、戦争終結後が望ましい。

 

若き女性パイロット。和泉の為に、さらなる混沌の中へと身を投じる覚悟をした。

 

………………

…………

……

 

大柳和泉を失ってから、更に数年が過ぎる。

アメリカ軍をはじめ、陸上ではロボット同士の戦いが主流となっていた。

天才的な操縦技術に磨きをかけ続けた美由紀は、コールドスリープに突入する前の和泉と同じ年齢で、大尉にまで上り詰めていた。

 

日本軍の中でも、ロボット部隊の功績が認められ、権力も以前とは比べ物にならないほど巨大になった。

 

しかし、全てが順調とはいかず。

元々の軍事力で大きく日本を上回っていたアメリカは、ロボットの基礎を学んだ後、ロボット作りにおといて日本のそれに迫るほどの性能を実現していた。

 

「…このままでは、我々日本軍が負けてしまう…。」

 

美由紀は意を決して、大島を訪ねる。

 

「やあ、白川君。最近の君の戦績、見させて貰ったよ。最早私自身、君には勝てないかもしれないね。」

 

数年の時を経た大島は、以前にも増して老けた。顔の皺が、年月を感じさせる。

 

大島は歓迎とばかりに、早速コーヒーを入れ始めた。

美由紀は手だけで遠慮の意思を示すも、大島は止まらない。

好きにさせておこうと諦め、本題に入る。

 

「今日は折り入って、お願いしたいことがあります。」

 

「…ほう。何かね?」

 

コーヒーメーカーも日進月歩。

大島の手には、既に二人分のコーヒーが。

 

「単刀直入に言います。私専用のロボットを作って貰いたいんです。」

 

「やはり、そうきたね。」

不敵に微笑む。

 

「予想はついてましたか。」

 

大島はコーヒーに砂糖一つ、あまりかき混ぜすぎず、口に含む。

言葉を紡いだのは、カップから口を離し、吐息を漏らしてからだった。

 

「まあ、アメリカ軍は資金にモノを言わせて、ロボット作りに励んでいる。何れは我が日本軍に追いつくと思っていた。…それらに対抗する為にはやはり、君専用の機体が必要になることも、ね。」

 

話が早い。美由紀は案外すんなりとロボット開発に着手してもらえそうで、安心した。

「だが、君にもうロボットは必要ない。」

 

安心したからこそ、この大島の言葉を理解するのに、数秒を要した。

 

「!?…どうしてですか?」

 

「…君と私の仲だ。特別に語りきかせてあげよう。」

 

「………。」

 

美由紀は眉をひそめ、次の言葉を待つ。

 

「この戦争はもうじき終わる。勝者などはなく。」

 

「…?」

 

「正確には、世界…いや。我々の文明が終わると言った方が正しいか。」

 

「どういう意味ですか…?」

 

数年前から変わり者の博士だとは思っていたが、ついに頭がおかしくなってしまったようだと、美由紀は思った。歳も歳だし、仕方ないとも。

 

「数年前に、一度話したことがあるよね?旧択捉島の海底から、新種の石英が発見されたことを。」

 

「そういえば…そんなことも…」

 

あったかもしれない。

 

「それから、ある少年がその石英に触れると、謎の反応を示した事も。」

 

「…ええ。」

 

「我々の誰が触れても、その後石英が光ることは無かった…。何故か。それを解明する為に、我々は尽力していた。ここ数年、私が率先してロボット開発しなくなったのは、それが原因だ。」

 

大島が言う『我々』が、どのようなメンバーを指しているのかはわからない。しかし、美由紀はなんとなく、日本人だけではなく、あらゆる国の研究員が含まれているのではないかと感じた。

 

その勘は正しかったらしい。

 

「世界各国の研究員が協力して、その石英を調べた。もちろん、私の古い友人達が殆どだよ。」

 

大島は懐から、石英を取り出した。

美由紀には判別出来ないが、恐らくは、新種のものなのだろう。

無論、光ることはない。

 

「結果として。これには、ある特殊な力によって『命令』が可能だとわかった。」

 

「なんですって…?命令??」

 

「そう。命令だよ。浮かせたり、飛ばしたり。ある程度、意思通りに動かせられるようだ。」

 

「それは…凄い発見ですね。でも…」

 

美由紀が言わんとしたことは、大島にも伝わったようだ。

 

「我々には、使えない。その通り。」

 

「それで、それと戦争が、なんの関係があるんですか??」

 

大島の前置きは長く、美由紀は痺れを切らす。

 

「この、石英を動かす力。わかりやすいように、『魔力』とでも呼ぼうか。この魔力だが、現在、空気中に一定量含まれていることがわかった。」

 

「…。今ここにも、あるんですか?」

美由紀の視線が部屋のあちこちを泳ぐ。

 

「うむ。で、それが本題だよ。」

 

「え?」

 

「この魔力。我々人間には毒らしい。それも、年々濃度が増してきている。」

 

「なんですって。毒って、どの程度の…?命の危険もあるんですか?」

 

大島はゆっくりと頷く。

 

「我々の予想では、数年後には、人類が生きられない程の濃度にまで達するだろう。」

 

「そんな!?」

美由紀が目を見開く。無理もない。これが正しければ、戦争などしている場合ではない。もうじき戦争が終わるというのは、全人類が死ぬということだったのだ。

 

「再び、我々が暮らせる環境になるのは、約一千年くらいはかかるはずじゃ。こればかりは断定出来ないがな。」

 

「その話が本当なら!こんな戦いしてる場合じゃないでしょ!日本政府にそのことは伝えたの!?」

 

人類滅亡の危機。

 

「すぐに、シェルターとか作って、対策を取らないと…!!」

 

「作ってどうするっ!!」

 

「!?」

 

大島は美由紀の言葉に被せるように怒声をあげる。フルフルと、小刻みに身体全体を震わせているのは、怒りの為か、それとも。

 

「政府は、我々の話を聞きもしない。今すぐ対処しても遅すぎるが、いよいよ時間切れじゃ。これからシェルターを作っても遅すぎる。何人が助かるというのか。一千年もの食料など、シェルター内で自給自足可能にしないと確保不可能だ。」

 

「…じゃあ、諦めるんですか…」

 

「いや。実は、白川君。君だけは助かる可能性がある。」

 

「え?」

 

「ちょっと、場所を変えよう。」

 

促され、大島の後をついていくと、そこはロボット格納庫だった。

奥へ奥へ、大島の歩みは止まらない。美由紀が踏み入ったことがない部屋へ案内された。

 

「こんなところがあったなんて。」

 

増築でもしたのだろうか。

格納庫の奥には、ロボット一台だけ収容出来る部屋があった。

 

「実は、君だけのロボットは、既に完成していたのだよ。」

 

見ると、一台の新型ロボットが。

全体を漆黒の装甲で覆われたそれは、全体的にスリムで、鈍重さは感じさせない。

 

「これが、私専用の…!」

 

完成していたのであれば、どうしてそう言ってくれなかったのか。

きっともって、先ほどまでの話が関係しているのだろう。

 

「白川君。生き残るためには、これしか方法がないと、私は思う。」

 

「まさか…!」

 

数年前、親愛なる上司が陥った状況を思い出した。

 

「コールドスリープを使うってことですか!?」

 

「うむ。君にとっては、あまり聞きたくない言葉だとは思うが。」

 

大柳和泉は、まだ死んだわけではない。美由紀はこの数年間、再び彼に会うことを目標にして、戦い続けてきた。

美由紀がもう一度和泉に会う方法。

 

大島の語った話が真実だったのなら、最早コールドスリープする他ない。

 

「大柳君の時は、紛れもなく誤作動ではあった。しかし、しかしだ。結果的には、彼だけ唯一、生き残ることが出来るかもしれない。私自身の設計ミスを肯定するつもりはないがね。…君への贖罪として、私は、この新型ロボットにもコールドスリープ機能を備え付けた。なんど言ってもコールドスリープ施設を作らせてくれなかった政府も、ロボット製作の一環であれば、突っぱねることもなかった」

 

美由紀は言葉を失う。まだ大島の言葉を信じきれていないこともあるが、この世界を去ることにも、恐怖を覚える。

 

「私も、コールドスリープを試みるよ。君を見送ってからね。」

 

「もう一台、ロボットがあるんですか?」

 

「いや、これから着手するよ。まあ、そこらにある、装甲も何もないロボットに、コールドスリープ機能だけを追加することになるだろうが。」

 

…大島が嘘を言っているとは思わない。何よりも、和泉と会うため。

このままだと死んでしまうというのならば、コールドスリープに身を委ねるのも、悪くはない。

 

美由紀は無言で、ロボットに乗り込んだ。

 

眼前のモニターに、大島の顔が映し出される。

 

「魔力を持った少年は、いわば新種の人類。私達は、旧人類は。もはや地球に不要だと判断されたのかもしれんな。」

 

「何を言ってるんですか。」

 

「ふ。老いぼれの戯言だよ。しかし、このまま滅びてやる程、私は利口じゃないものでな。」

 

大島は、ロボットの足元に設置されたコンピューターを操作している。

コールドスリープの準備だろうか。

 

徐々に、美由紀の意識は薄れていく。

意識を失う寸前に、大島の言葉が聞こえた。

 

「白川君、千年後にまた会おう。」

 

 




ダラダラした文章で済まない…
読んで頂けたのなら、感謝しすぎて月の権利書を差し上げたいレベルです。ありがとうございます。

読み飛ばした方も、ここまでスクロールしてもらえたなら嬉しいです。

また次回、お願いします!
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