コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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主人公の機体名、決めてたんですが、友人の「だっせ」という一言で、却下しました。
結構考えたんですがね。


五十六話 能無し同士

和泉がライガットを発見した時、ライガットはコックピットから出ていた。適当な岩に腰掛けて、視線を自身の足元へと固定している。

 

親友であるゼスとの戦いも、もう何度目だろうか。今の戦闘では、ライガットもゼスも、お互いを殺すつもりで攻撃を加えた。

 

ライガットは、未だ学生時代のゼスが思い浮かんでしまう。戦争が始まっても、敵国に属しても。心の奥底では、分かり合えるはずだと、思っていた。

 

「俺は、甘いのかな。きっと、軍人に向いていないっていうのは、こういう考え方をしているからなんだろうな。」

 

ライガットが自嘲気味に呟く。

 

「甘いね。俺も、人に何かを言える立場ではないけど。ライガットさんが何を感じ、何を思うのか。それは本人であるライガットさんだけにしかわからない。でも、軍人としてのあり方では無いと、俺は思う。」

 

「そっか…。和泉さんも、やっぱり甘いって思うんだな。そりゃ、そうだ。」

 

和泉も、近場にあった岩に腰をおろした。お世辞にも、座り心地が良いとは言えない感触だ。

 

「友達である前に、敵なんだよ。取り巻く環境が変われば、そうなってしまう。ゼスと戦うのが嫌なら、軍から抜けるなりしないと。」

 

和泉は、自分とライガットの姿を重ねる。アテネスに白川美由紀がいるとなると、衝突は避けられない。

彼女の場合は親友では無く部下と上司の間柄。…戦いたくないとも思う。

 

だが、彼女が戦い続けることをやめないのであれば…

 

「…すまない、ライガットさん。今のは、間違いだな。」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「他の誰かに、ゼスが殺されてしまったとしたら。アンタは、後悔せずにいられるだろうか。」

 

「!」

 

「もし俺がアンタの立場だったら、間違いなく後悔するよ。良い解決策なんか、存在しないかもしれない。でも…。戦場にいれば、また顔を合わせる機会もあるはずだ。どうするかなんてのは、その時になったら決まってるんじゃないかな。」

 

ライガットの拳に、力が入る。

スッと立ち上がり、デルフィングを見つめる。

能無しでも操れる、現代のゴゥレムを圧倒する程の性能を誇るデルフィング。

 

「こいつさえあれば。ゼスに会うことが出来る、か。」

 

(和泉さんには甘いと言われたが、『今なら』ゼスの説得が間に合う。逆に言えば、今しか無いんだ…。俺はしがない農民だし、いつでもここから逃げ出せる。でも。ホズル、それにシギュンは、逃げたくても、逃げられない。)

 

しばらく無言が続く。ライガットの中で、色々な考えが浮かんでは、消えていく。

 

(…俺しかゼスを説得出来ない。なら、やってやる。どれたけ辛くても)

 

答えは決まった。

ライガット・アローが進む道のりは、困難を極める。が、彼自身が選択したのだ。第三者に過ぎない和泉には、口を挟む権利などありはしなかった。

 

「俺は、デルフィングに乗り続けるよ。」

 

「…そうか。俺も、全力で応援するぜ。お互い、死なないようにしよう。」

 

「ああ。…にしても、俺は毎回和泉さんに励まされてるな。」

 

「なんも、気にしなくていいよ。今度俺が落ち込んでることがあったら、その時はライガットさんが励ましてくれよ。」

 

同じ、古代ゴゥレムに乗るもの同士。今日までの戦闘は前哨戦に過ぎない。

常軌を逸している古代ゴゥレムが、勝敗を分けることになるのは確実である。

 

ビノンテンがある方角から、ゴゥレムの足音が多数聞こえてくる。

ようやく、ドラウプニル部隊が到着するようだ。

 

…………………

………

 

「……で。我々を置き去りにする形で進軍し、敵ゴゥレムと戦闘。挙げ句の果てには一台も仕留められず逃したと??」

 

怒りにより、鬼の形相のナルヴィ。

大の男二人は地面に正座させられている。

ナルヴィの手にはプレスガンが握られており、時折カチャカチャと手で弄ぶ仕草が、非常に恐怖を感じさせる。

 

「おっしゃる通りです」

「す、すまない…」

 

和泉とライガットがそれぞれ謝罪するも、冷たく刺さる視線に変化はなかった。

今回の作戦はドラウプニル部隊が後で合流するものだったはずだが、ナルヴィの中では和泉達が独断先行したかのような言い草であった。

 

「まったく。こちらの損害も0だからまだ良いようなものだぞ。」

「悪かったって言ってるだろ?次からはちゃんと気をつけるよ。」

 

ライガットは懸命に謝罪したが、次からという単語がナルヴィを刺激してしまう。

 

「命をおとしていたら次なんか無いってことを、肝に銘じておくんだな。」

 

鼻息を荒げながらも、和泉達に背を向けて遠ざかっていくナルヴィ。

ひとまずは説教も終わったようだ。

 

嵐が去り一安心する和泉達に、新たな人物が近づく。

 

「ようお前ら。無事で良かったな。」

 

男の名はナイル。ナルヴィの実の兄で、卓越した槍使いだ。

和泉やライガットは、顔だけは見たことがあるが、ちゃんと話すのはこれが最初だ。

 

「おお、ナルヴィさんのお兄さんですか。」

 

「ああ。ナイルって呼んでくれ。タメ口で構わないからよ。」

 

気さくそうな人だ。ナイルは和泉とライガット、順番に握手を交わす。

 

「今後作戦を共にすることもあるだろう。そんときはよろしく頼むぜ。」

 

「こっちこそ。」

 

トゥル将軍旗下の部隊を中心にしているらしいので、会う機会は結構多そうだ。和泉はなんとなく、ナイルと作戦を共にすることを楽しみに感じた。

 

無事に合流も果たした一行は、ビノンテンへ引き返すことにした。

 

 




ゼスをいつ説得するか?
気が向いたらでしょ!
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