コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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 私の勝手なイメージですが。偉そうな長老とか神様とかは、思わせぶりな発言が多いように思います。


六話 イレギュラー

 ロボットはその自重ゆえ、直立するのも難しい。7メートルのロボットでさえ綱渡りのような設計でようやく立っている。それが10メートルともなると、とても実用に耐えうるはずがない。

 問題はそれだけではない。

 

「装甲が・・既存のロボットよりも厚い・・?」

 

 装甲は極力薄くして軽くし、バランスを維持するのが、大島自身が生み出したロボット作りの基本となる考えである。が、この新型に至っては装甲がだいぶ厚い。

 

「大島博士。こいつは実戦で使用できるのですか?」と、和泉が。

 

「当然だ。なにせ、私が発見した新理論を組み込んであるからね。」

 

 大島はロボットの足元に設置されたモニターを操作する。しばしカタカタとキーボードのタイピング音だけが続く。

 

「博士。その新理論というのは・・?」

 

「ふむ。気になるのかね?」

 

 気になるから聞いているのではないか。和泉は心の中でそう呟く。どうして偉い地位の人間はこうもったいぶるのだろう。

 

「私も、気になります!」

 

 控えめに、美由紀が。

 

「そうだな・・。さて、どこから説明すればわかりやすいやら。最近のニュースはチェックしているかな?」

 

「それは、していますが・・」

 

 言いながら、和泉はなんとなしに大島の操るモニターを覗く。

 

「無論、新聞やテレビでやっているようなニュースではないぞ。我が日本軍内部のみで公開されているものだよ。」

 

「ええ。わかっています。」

 

 何を当たり前のことを、といった表情の和泉。隣の美由紀は「あ、そっち?」と一人小さく声に出す。

 

「オホン。ともかくだ。最近面白い情報が入ってね。」

 

 キーボードを操作することで、ひとつの画像をモニターに表示する大島。そこには、とある研究施設での事件結果と、ロボット機動の方法が記されていた。

 

「こいつは・・・」

 

 まず、ロボットを操作するために。

 ロボットのコクピットにはスイッチがついており、それに触れることでロボットは起動する。誰であろうと、そのスイッチに触れさえすれば、ロボットを操縦することが可能となる。

 

「より優秀なロボット操縦士を育てるため、18歳の少年少女にロボの扱いを練習させているのだがね。知っていたかね?」

 

「それは知っていますよ。今は少子高齢化で、戦争に出られる兵士を育てる意味でも、そうした試みがなされていると。」

 

「ところが、なんだ。ある少年にスイッチを押させても、まるで反応しないといったイレギュラーが起こったのだよ。エネルギー切れや機械の不具合も発見されてはいなくてね。」

 

「・・・なんですって?」

 

 和泉の顔がくもる。そんなことが、敵地の真ん中で発生したら・・・。考えるだに恐ろしい。

 

「機械の故障ではない。ということはつまり、原因は少年にあると?」

 

「うむ。」

 

 さらにキーを操作し、別の資料を表示する大島。ロボットを起動出来なかった少年についての検査報告書である。

 

「身体的にも精神的にも、これといって特徴のない少年みたいですけど。」

 

 美由紀もモニターを確認し、少年の情報を確認する。

 

「そうだ。その通りなんだ。だからこそ我々も原因を未だ掴めずにいる。ロボットを起動するだけなら、誰にだって可能だ。ロボットを手がけた私が言うのだから間違いはあるまい。そのように開発したというのに・・・。」

 

「起動するだけなら、ですか。ちなみに、この少年は今は・・?」

 

「申し訳ないが、我々の研究に付き合ってもらっているよ。ご家族の方にも許可を頂いてね。」

 

 戦争のために協力しないものは非国民である、といった考え方は今は昔だ。どうやら非人道的な実験ではないようで、和泉としても一安心だ。

 

「それで博士。その少年とやらは、このロボットとどういった関係があるのです?」

 

「その説明に行く前に、あともう一つだけ聞かせてほしい。」

 

 大島は咳払いをし、ひと呼吸おく。和泉と美由紀を一瞥する。その瞳には、何かを期待するような光が点っていた気がした。和泉の目にはそう写っただけで、気のせいかもしれない。

 

「大柳くん、白川くん。君たちはこの馬鹿げた戦争が、いつまで続くと考える?」

 

 それがわかれば苦労はしない。予想がつかないから、和泉たちは殺し合いの中に身をおいているのだ。

 

「博士。その質問を戦闘職の我々に投げかけるのは、いささかナンセンスかと。戦争の集結のみならず、明日すらも無事に迎えられるかわからない。」

 

「私も、戦争なんて好きではないですけれど、一生懸命戦えば、きっといつか終わりが来るのではないかといった希望の元、毎日生きています。」

 

 嘘偽りは一切ない。終わりなどないかもしれないこの戦争、かすかな希望を胸に戦うしかない。それこそが和泉たち軍人のあり方だった。

 ただ、戦争が好きではないといった美由紀に、和泉が若干の違和感を覚えたのは内緒だ。

 

 

「・・・。そうか君たちの考え方は、そうなんだな。わかったよ。」

 

「博士?」

 

 二人の言葉を、ただうつむいて聞き遂げた大島は、達観した面持ちだった。和泉たちの回答は、彼が満足いくものだったのか。はたまた、その逆か。

 

「すまない、ただ君たちの考えに興味があっただけだよ。このロボットについて説明しよう。」

 

 ロボットの生みの親。大島が何を思い、何を考えていたのか。和泉と美由紀が理解する日はまだまだ先のこととなる。

 

 

 




ロボットは実現してほしいですね。フラッグ、乗ってみたいです。
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