閑話休題。大島が新ロボットの解説を開始する。
「理論。そう言えばなにやら小難しく聞こえてしまうかもしれないな。」
ロボットの構造などは、和泉たちが知るところではない。パイロットとして必要な知識は操縦が主であるが故、大島が並べるであろう御託を完璧に理解できるかというと、やや難しい。
構造も、必要最低限は頭に入れてはいるのだが・・・
「よろしい、ならば簡潔に、今までのロボットとの相違点のみをかいつまんで説明しよう。」
「お手柔らかにお願いします。」
和泉は軍から支給された携帯端末を取り出し、大島の説明を文章で記憶出来るよう打ち込む準備を整える。
ようは動かせられればそれで良い。
和泉も美由紀もロボットにはそうした認識をしているのだが、わずかでも戦闘が有利になる知識なのであれば、身につけておくこともやぶさかではない。
「素材が違うのだよ。」
「・・・素材、ですか。」
「最近、旧択捉島付近の海底で発見されたものでな。一応は石英の一種だが、それをロボットの外装として使用した。」
「石英!?それも、ロボット本体の外装として・・!」
和泉が声を荒げる。美由紀も、聞き間違えたのではと自身の耳を疑う。
大島はそんな二人の反応がさも面白いかのように笑った。
「確かに、君たち二人の反応は当然だ。ただの石英ならば、とても外装に使えはしない。」
「そもそも。旧択捉島で石英が発見されるなんて、初耳です。岐阜県あたりが有名だったかと。」
「いわゆる、新種の物質でな。硬度も粘度も何もかもが、我々の知っているそれとは違っているんだよ。非常に軽くて丈夫。その上加工しやすいときた。これをロボットに組み込まずしてどうするというのかね?」
新物質の発見。それほどの素材が地下深くに眠っていたとは、誰も想像していなかっただろう。しかし、それだけの逸材が発見されたとなれば、大島が再びロボット製作を始めた理由が窺える。
「それに加え、もう一つその石英には謎があってだね。」
大島の顔は、いつの間にかマッドサイエンティストとしての、彼本来のものになっていた。
「謎とはいったいなんなのですか?」
和泉からすれば、ロボットがより巨大かつ強固になった事実のみで満足だ。大島があまりにも良い顔をしているものだから、ついつい話に乗ってしまう。
「先ほど、ロボットを起動させられない少年がいるという話をしたね?」
「ええ、なんともおかしな話ですけれど。」
にやり。大島の口角が上がる。意識的なものではなさそうだ。大島はやおらモニターに向き直ると、ガチャガチャと音をたててタイピングを始めた。
「その少年が、新石英に触れると、新石英が発光したんだよ!我々が触れてもなんの反応も示さなかったのに!!これは一体全体どうしたことだ。彼がロボットを起動できなかったことと、なにかしらの因果関係があるのか・・!?」
途中から早口になり、和泉と美由紀は聞き取れない部分もあったが、それすらも大島はきにしていないようだった。興味をひかれる謎を目の前にすると、人間は盲目になるのか。あるいは科学者としての性なのか。たんに、大島が変人なのか。
「あの・・博士?」
おずおずと、美由紀が大島に声をかけた。ハッと我に帰る大島。
「いや、すまない。少々取り乱してしまったね。」
「(頭は)大丈夫ですか?確かに興味深い話ですね・・・」
顎に手をあて考える、フリをする美由紀。大島に一応の敬意をはらい、言葉をオブラートに包んだのはたたえるべきか。オブラートに包んだからといって、失礼なことに変わりはないけれど。
「・・・私もまだまだ研究が足りなくてね。君たちが作戦から帰還したとき、また改めて話の場を設けよう。」
言いながら、大島は二人に新型ロボットについての報告書を差し出した。
「白川くん。君には是非とも新型ロボットに搭乗してもらいたい。慣らす時間もなさそうだが・・、元々はロボットに乗り、大戦の前哨戦で戦っていた君だ。すぐに慣れるだろう。」
「承知いたしました。白川美由紀、及ばずながら精一杯努めさせて頂きます。」
考えるまでもなく、新型ロボットを目にした瞬間から、美由紀の答えは決まっていた。
こうして、ようやく美由紀の乗るロボットが決定する。
「・・・大柳くんも新型に乗ればいいのに。」
「俺は、実績のあるロボットしか乗りませんので。」
他人が乗り、安全性が実証されてからでないと搭乗しない。大柳和泉、どこか残念で姑息な男だ。
美由紀ちゃん、もっと清楚で知的な感じにしたかったです。いつの間にか脳筋っぽく・・・