コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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八話 飛空艇にて

 ロシア北西部に位置する小さな国、エラン国。エラン国は、気温の低さと広大な森林で有名だ。

 ロシアから分離する形で出来た国で、使用している言語はロシア語をベースとしたものである。

 

 現在日本と交戦し、ロボットを手中に収めたのがこのエラン国だ。

 そんなエラン国を目指すべく、和泉と美由紀が率いる小隊は飛空艇で海を渡っていた。

 

 その際ロボットはいわゆる待機状態で、スペースをとらないようにしている。

 脚部を両腕で抱えたポーズなので、輸送目的以外に待機状態が使用されることは、敵を待ち伏せる場合などを除くと、ほとんどない。

 戦闘態勢に入るまでの時間は度外視し、ただ運びやすさだけを追求した状態なのだ。

 

 ちなみに、飛空艇で運んでいるロボットは和泉と美由紀の乗る二台だけだ。あとの兵隊は歩兵や衛生兵が主で、敵の戦車や戦闘機を相手取るのは二人のみとなる。

 されど、部隊の中に、不安がる者など一人たりともいなかった。

 

 隊員全員が、全幅の信頼を大柳和泉という天才パイロットによせている。

 ロボットが戦争の道具になってから、未だそれほど時が流れていないとはいえ、和泉には既に数多の武勇伝がある。

 

「・・・ねえ。ホントに二人だけで大丈夫なのかしら。」

 

 隊員、それも、部下に弱音を吐く姿を見せるわけにはいかないので、巡回という名目で和泉と二人きりになったタイミングで、美由紀が聞いた。

 

「大丈夫だ。最悪お前と、他の連中の命だけは、俺が守ってやるさ。」

 

「うわー、キザなセリフ!」

 

 そういう美由紀は、セリフとは裏腹にとても嬉しそうだ。

 和泉も若干今のセリフは無かったなと反省したが、美由紀の緊張や不安を僅かでも取り除けたのなら、それで良しとした。

 

 巡回の折り返し地点に設定したブリッジに近づいたあたりで、美由紀が小型の端末を取り出す。

 

「つーか、あんた、なんで新型に乗らないの?あんたが新型に乗れば鬼に金棒じゃないの。スペック的にはあんたが選んだ旧型ロボットを遥かに上回っているのよ?」

 

 ビシッと和泉の眼前に、画面を見せつけるように端末を突き出す。

 和泉は顔をしかめ、首だけで端末から距離を置く。

 

「うっせー。新しいのに乗っただけで強くなれるのなら、誰も苦労はしないっつーの。というかむしろ、お前が新型に乗ることのほうが驚きだ。」

 

 いままで、美由紀は和泉同様に新型ロボットや新兵器にはあまり好意的ではなかった。安全面もそうだが、実戦で使用されていないものに自分の命を預けることはできないといった、人間味あふれる考え方だったのだ。

 

「なんか、心境の変化でもあったのか??」

 

「・・・別に、あんたには関係ないわよ。」

 

 関係ないと言う割には、即決すぎるほど、あっさり新型ロボットの搭乗をOKしていた。

 和泉は疑り深い正確ではないけれど、美由紀の淡白な態度の裏には何かあるのではと勘ぐってしまう。

 

「はあ。私、そんなにおかしなことをしてるつもりは無いんですけど?」

 

「まあ、な。」

 

 確かに。一般兵達は新型の兵器と聞くと、我さきにとその性能を試したがる。美由紀だって、いや。和泉も含めた人間全てが根幹の部分では新しいもの好きなのかもしれない。

 

 新しいものに興味がない人も当然いるだろうが、深層心理ではそれがどういったものなのかは知っておきたいと考えてしまうのが自然だ。

 

 違和感こそあれど、美由紀が新型になんの不安もないと言うならば、大丈夫なのだろう。

 

「別にいいか。お前が新型に乗り、戦果をあげてくれるのであれば、俺も部下も文句はないわけだ。

せいぜい死なないことだな、白川隊員?」

 

「はいはい、そりゃコチラのセリフでもありますよ。大柳中尉。」

 

 お互い、右腕を胸の前にもってくる。

 戦闘前の敬礼で、二人は心身ともに戦闘モードへと移行した。

 

『大柳隊長。そろそろポイントにつきます。ロボットのコクピットへと移動をお願いいたします。』

 

 スピーカーから聞こえるアナウンス。

 殺し合いは、すぐそこまで迫っている。

 これといった緊張もなく、和泉は帰路へつくかのように、ロボットのある部屋へ歩を進めていく。

 

 

 

 

 

 




次回は戦闘です。おそらく。多分・・・
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