貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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すまない。先々週から書き続け、うっかり消してしまい、新しく書き直すとなんか違うと何度も直していたんだ。
そう、だから―――――複数回やることになってしまうんだ。本当に済まない。


幕間の物語
幕間:友情破壊イベント バレンタイン


 

 

 

 WARNING! WARNING! WARNING!

 

 此よりは著しい原作キャラ崩壊が待ち受けています。気分を害しても作者は責任を取りません。

 それでも良い方は―――――ゆっくりしていくが良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――リア充、爆発しろ、とはとある男神が言った言葉である。

 今、オラリオはどこぞの神が伝えたイベントの真っ最中だ。

 その名もバレンタインデー。そう、某菓子メーカーが販促のために行った、あの勝者と敗者が生まれてしまう悪名高き怨習(イベント)である。別に恨みがあるわけじゃないよ。貰えぬ男の憎悪と悲しみを知ってほしいだけである。

 

 そしてそのイベントは上位から零細まで、オラリオに存在する組織にとっても大事である。

 

 施薬院を行う色男神を主神とするファミリアでは、眷属が気合を入れてチョコを作りつつ、敵を屠れるよう弓弦を(たわ)ませる。

 

 極東から出稼ぎに来たファミリアでは、眷属の少女らがそれぞれの想い人にチョコを贈ろうと本を読み漁る。

 

 道化師のファミリアでは、意中の少女からチョコが欲しいがゆえに露骨なアッピル(誤字にあらず)を行い、アマゾネスが過激な方法で渡そうと企む。

 

 どこぞの洒落おつな店では、エルフがチョコを盛大に駄目にしつつ、もはや食料というものに懺悔せよというべき、冒涜的な物体を量産している。

 

 それ故に言っておこう。オラリオはチョコレートの臭いが其処ら中でするほどに、チョコレートに染まっているのである。この数日でどれだけのカカオが昇天してしまったのか。冥界すら、カカオで汚染されてそうだと誰かは嘯く。

 

 

「明日はバレンタインデーですね」

「そうですね」

「そうだね」

 

 

 竈の館は暖炉のある憩いの場。暖炉に向かい合うように並べられている椅子やソファにヘスティアファミリアの女性陣がだらけていた。

 女性陣と言ったが、ヤマト・命だけは居ない。彼女はタケミカヅチファミリアのヒタチ・千草とともに調理場でチョコを作っている。

 

 この日、ヘスティアの命令により男性陣たちは強制迷宮行きとなっていた。大切な人、友人、仲間。言い方は様々だが誰かにチョコを渡そうとする女子の甘酸っぱい想いを男子に悟られるわけには行かないのだ。

 

 

「ヘスティア様はご用意なされましたか?」

「んー……………僕はアレだね。誰か一人を特別視なんてできないよ」

 

 

 どの口がほざくか、と質問した小人族のリリルカ・アーデは心の中で吐き捨てる。

 我らが主神がファミリアの団長ベル・クラネルに懸想しているのは、彼を狙う者たちにとっては公然の事実である。確かに、彼女は一人だけを特別扱いはしない。平等に接するが個人では、ベルを異性として見ている。

 他の二人はどうなのだと? ありえない話は嫌いです。

 

 

「リリルカ君はどうなんだい?」

「補充品もありますし、カカオはどこも品薄です。つい最近まで迷宮に潜っていましたし」

「すみません。カカオは命ちゃんと千草ちゃんの分しか用意できなかったんです」

 

 

 金毛の狐人族(ルナール)サンジョウノ・春姫がピンと立っていた耳を寝かせて謝罪する。

 だが、リリルカの目はごまかせない。聞けば、この狐娘(こむすめ)は良い所の出。そしてこのリリルカの鼻は誤魔化せないッ!

 お前は尻尾の中にカカオを隠しているッッ!! そしてヘスティア様も気づいているッ!

 どこか劇画チック―――いわば、ジョ○ョ風に叫ぶリリルカだが、当然の如く、声には出さない。

 

 

「しかしアレだね。こう、冒険者がバレンタインなんてものにうつつを抜かしていいのかね?」

「ッ………え、ええそうですとも。冒険者(・・・)はチョコより魔石を渇望すべきです。冒険者(・・・)は!」

「確かにその通りです。ヘスティア様の借金のこともありますし」

「だよね。でも、サポーターもついていって方がよかったんじゃないかな」

「何を仰いますか。ヘスティア様が男は全員迷宮へ行くべしと命じたのではないですか!」

「あっれーそうだっけ? でもさ、ほら? 主神の命令に背いてでもついていくのがサポーターじゃないかな!?」

「いえいえ。非力なリリたちだと、皆様についていくのもやっとなんですよぉ」

「はっはっは、じゃあなおの事強くなるために行ってきたほうがいいよ」

「うっふっふっふ。前衛を張れる方がいないとどうしようもないんですよぅ……!」

 

 

 女二人が互いを出し抜こうと醜い争いを続けている。

 春姫は思った。何とか手に入れたカカオを彼に渡すためにも、どうにかして秘密裏に処理しなければならない。自称、恋愛経験の多い旅の神は私に告げたのだ。

 

 ―――男はね。手作りの物に弱いんだ――――

 

 胡散臭い笑みで気障ったらしかったのだが、この春姫。イシュタルファミリアのときは炊事や洗濯を任されていた身。チョコの一つや二つ作ってみせますとも。

 

 

「でも、お二人ともチョコを用意なされていたと思いましたが…………命ちゃんたちに頼みますか?」

「いやいや。彼女たちの世話になるわけにはいかないよ。二人とも、最高の物を作りたいだろうからね」

「そうですよ。ほら! リリたちは…………ねぇ?」

「ねぇ?」

 

 

 抜け駆けは許さない、笑顔は威嚇している顔だとシグレさんから聞きましたがまさにその通りのようです。

 ですが、お二人にカカオがないことは確認済み。手作りに勝るチョコなど存在いたしません。

 されど、私は職人ではない。真心や愛情を籠めようと職人の作るチョコには味で負けてしまいます。ゆえに、買わせてはなりません。この場にとどめさせておかなければ……!

 

 

「そういえば…………シグレ君はどうするんだい?」

「何ですか、藪から棒に」

「シグレさんですか? 」

 

 

 ここで、私は天啓を得た。なるほど、そうすればよかったのだ!

 

 

「あの時のお礼も兼ねて、作らせていただきます。チョコではなく、餡子ですけど」

 

 

 あの方をだしにするのは気が引けますが、これも恋路のため。この春姫、今は恋路の修羅となりましょう!

 ―――しかし、私はこの時、己の浅はかさを考えていなかった。お二人がにこりと笑い―――

 

 

「そうだよね。彼には僕も世話になっているからね」

「リリもソーマファミリア脱退にお世話になりました。なら、お礼するのは当然ですよねぇ」

 

 

 ―――彼女らにチョコを買いに行く口実を与えてしまったのだ。ガッデムッ!!!

 ―――狐人族ともあろうお人が化かされましたねぇ。

 ―――騙るに落ちたね、春姫君。

 ―――私の心の中を読んだ!?

 ―――恋する乙女はなんだってできるのさ! 僕は女神だけどね!

 ―――伊達にコソ泥やっていたわけではないのですよ、お嬢様www

 ―――おのれおのれおのれおのれぇええええええええ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、男たちはというと――――

 

 

「うぉおおおおお!!!」

「どりゃぁあああ!!!」

「しゃぁああああ!!!」

 

 

 ベル・クラネルとヴェルフ・クロッゾ、ラウル・アーノルドが迷宮内を暴れまわっていた。明日に迫るイベントを三人が知らないはずもない。

 淡い期待を持ちつつ、今日の夜にでも自分の評価を少しでも上げようと悪あがきをしているのである。女とは現実的な存在であるがゆえに。

 

 その三人を永嗣とムメーは呆れた顔で眺めていた。何故かと言えば、こいつらは生前も勝ち組で、今現在も勝ち組だからである。

 ムメーは親愛ではあるが、ロキファミリアの女性陣から。

 永嗣はティオナ・ヒリュテとレフィーヤ・ウィリディス、リュー・リオンから本命チョコをもらえるのだ。哀しいことにこの三人の乙女の純情は報われない。永嗣は桜を愛するがゆえにだ。

 

 

「この気迫を日常から発揮できないのか、お前たちは」

「同感じゃな」

「せいぜい報われることを祈ってやろう」

「ベルは普通に貰えると思うんじゃがのぅ」

 

 

 ―――ちぇぇりゃあああああああ!! 男たちの悪あがきはまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上に戻ろう。ヘスティアらは互いを牽制していた。いや、正しくはヘスティアとリリルカは春姫の持つカカオを狙っている。そのために、ジリジリと距離を縮めている。

 

 

「ふ、ふふふ。お二人とも、私はカカオは持っておりませんよ?」

「僕は神だよ? 嘘はいけないなぁ」

「くっ…………!」

「春姫様」

 

 

 リリルカは優しい声で語りかける。聖母のような微笑みで、彼女は春姫を諭した。

 

 

「それは悪しきものです。争いの種に成ってしまうものなのです。ならば、それは売り払いましょう。そのお金でみんなでチョコを買えば良いのです。これが誰も傷つかない、平等な裁決です」

「アーデさん………………」

 

 

 すぅ………と手を差し伸べるリリルカ。

 春姫は考えた。考えに考え抜いた。この時間はわずか数秒。ヘスティアもこのときだけは動きを止めていた。彼女は根本的にお人好しだからだ。

 リリルカの提案は魅力的だった。誰も傷つかない、最善の方法ではないか。実に妙案だ。

 

 

「さぁ………」

「一つよろしいでしょうか」

「………………………なんですか?」

「売り払うとおっしゃられましたが………―――――誰が売りに行くのですか?」

「―――ふぅ…………勘のいい人は好きじゃないですよッ!」

 

 

 右腕に仕込んだリトルバリスタが春姫の尻尾を的確に射抜いた。射抜くと同時に、ボルトに刺さったカカオが飛び出る。

 いくら遠征にも同行していた春姫とはいえ、彼女自身はそこまで戦闘に熟達しているわけではない。わずかだが硬直すると、リリルカは一目散に駆け出した。

 慌てて妨害しようとすると、春姫の眼にキラリと光る何かが見えた。蜘蛛の糸のような細いキラキラと光る物体。極細のワイヤーがリトルバリスタとつながっていたのだ。

 

 

「逃しませんっ」

 

 

 ワイヤーを踏みつけ、つかみ取り、リリルカを止めようとするもボルトとともにリトルバリスタも外れてしまう。

 

 

「あっはっはっは! 冒険者相手にワイヤーなんて垂れ流しにするわけないでしょう!!?」

「しまっ……………!!」

「リリルカ君」

「「っ!?」」

 

 

 行動を起こさず、沈黙を保っていたヘスティアが動き出した。

 

 

「「神威を使うなんて大人げないですッ!!?」」

「なんとでも言うがいいさ!!」

 

 

 神威を発して、彼女は二人をひれ伏せさした。恋する乙女の愛する男への想いは皮肉や罵声を浴びせるぐらいには抵抗したが、ヘスティアファミリアの狂剣のように動けるまでには至らなかった。

 ぷるぷると震える二人を嘲笑うように、ヘスティアはリリルカの持つカカオを優しく取り上げた。

 

 

「ファミリアの主神として、この争いの火種は没収するよ。だって、神だからねっ!」

「き、汚いですよ! 横暴です! 神権横暴ですっ!!」

「ヘスティア様! あまりにも御無体でございます!! お返し下さいッ」

「ダメだよ―――――僕らは家族だ。だから、これは処分する」

 

 

 ゴォォッドフィンガァアアア!! ギアナ高地で修行してそうな男が、自分の兄弟をかたどった偶像を一撃必殺した瞬間が脳裏に浮かぶ。

 

 

「ヒィィィト・エンドッ!」

「カカオが爆発したっ!?」

「この神でなしっ!」

「この場を収めた神に対して、随分な言い方だね!?」

 

 

 香ばしいカカオ臭は焦げ臭いものとなり、ブスブスと煙を上げているカカオをヘスティアは暖炉へと捨てた。

 このゴッドフィンガーは激しい嫉妬と燃える恋心により体得した、ヘスティア専用の技である。

 

 

「兎も角! これで悪は去ったんだ。これでチョコは一緒だよ」

「――――これ、私だけ大損ではないでしょうか?」

「大丈夫。僕らも手作りはできなくなったんだ。イーブンさ。春姫君ももう持っていないだろう?」

「―――はい。もう私の手にはありません」

「ならいいよ。じゃあ、これから先は各々で用意するように。邪魔はダメだよ?」

「うぅ…………わかりましたぁ」

 

 

 実に綺麗な終わり方だ、と満足したように暖炉前から去っていくヘスティア。肩を落として後に続く春姫に女の子が出してはいけない顔を隠してうめき声を上げるリリルカは置いていかれる。

 ぱちぱちと薪が燃える音が響き、リリルカは顔を見せた。

 

 

「―――――――ふぅ……………詰めが甘いですねぇ」

 

 

 ローブの内側からカカオのような物体を取り出す。

 また、春姫は―――

 

 

「―――――狐は詐術も使えるのです。春姫はこのときだけは悪い子です♪」

 

 

 部屋に戻り、厳重に封をした箱を開ければカカオが顔を覗かせる。

 そしてヘスティアは―――

 

 

「宴会芸用に手品を覚えておいてよかったよ」

 

 

 燃え尽きたはずのカカオを胸元からにゅっと取り出す。

 三人は一様に嗤った。

 

 

「「「計画通り…………!」」」

 

 

 

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