貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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 お仕事が決算時期なので何時もより遅れております。


追記

 誤字脱字方向をしてくれた皆様ありがとうございます。
 未熟故、このようなことが多いでしょうが暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。

 ご意見・感想お待ちしております。





霧のダンジョン

 さて時間を少し戻してみよう。とはいえ、朝方の事だが……。

 三人、とりわけ悩める剣士、時雨永嗣と兎のような冒険者ベル・クラネルは早急にダンジョンに潜りたいと願い出た。最低限の収入だけは確保せねばならない。

 余った時間は行方知れずのリリルカを探すために使おうというのが二人の考えだ。

 逆にヘスティアはこうも告げた。

 

 

「直接見たことも、あまつさえ話したこともないからなんだけど………信用に値する人物なのかい?」

 

 

 そりゃあ、無条件で家族のことを信じたいとは思うがリリルカという犬人族(シアンスロープ)の少女は、彼らのサポーターになる前に問題を起こしている。

 なんでもどこかのファミリアの冒険者から、魔石をちょろまかしていたそうじゃないか、と。

 これには弁解はしない。したとしても、確証もない希望的観測なためだ。

 

 

「とりあえずギルドで聞いたのかい?」

「ソーマファミリアということだけは聞きました。担当者(アドバイザー)のエイナさんも神様と同じ意見でしたけど」

「担当者君もか…………放っておく、なんてことはできないよね」

「できません。リリがそんなことをしたというのなら理由があるはずです」

「被害は一人だけということもないだろうけどな」

 

 

 小人族(パルゥム)は見た目から年齢の判断がしにくいため、このオラリオでどれだけの間、冒険者をやって、いつからサポーターに転向したのか?

 仮に長期間やっていたのなら身を守る術ぐらいはあったはずだろう。となると――――うん?

 

 

「――――ねぇ、この噂は聞いているかい?」

「人との関わりが少ないので知らないな」

「………僕も最近はあまり…………」

「僕としてはリリルカ某よりも、そっちのほうが心配だよ!?」

 

 

 まぁ、いいさ。

 最近…………といっても、君たちがオラリオに来るちょっと前ぐらいかな? 冒険者が闇討ちされる事件が起きているんだ。

 そうだよ。起きている、つまり今でも続いている(・・・・・・・・)んだ。

 被害者は………大体が生きているけど、何人かはダンジョンでやられてね。その子たちは死んでしまっているよ。

 

 

「―――それがリリルカが関係している?」

「誰かと組んでいる可能性もあるって考えてよ。襲われたのは素行の悪い冒険者。君たちに突っかかってきた子と似たような噂を持っていたんだ」

「単なる勘違いじゃ……」

「だったらいいけどね」

 

 

 勘違いであってほしい。疚しい気持ちなどなく接近してきただけであってほしい。

 それは僕も同感だ。善意に付け込んで、家族を陥れようとするのなら―――

 

 

「本当にそうであってほしいね」

 

 

 ―――――――――神の怒りというものがどういうものか、思い知ることになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 そして、話は前回の最後に戻る。

 ただでさえ廃墟―――でも、多少の雨風は凌げるぐらいの体裁は保っていた教会は見るも無残、いや見るものすらないのだから間違いかもしれない。

 兎に角、上の部分は瓦礫の山と化していた。

 

 あまりのことに絶句していると、今更ながら気づいたが瓦礫の山の前でちょっとした人だかりがあった。

 アレが下手人か? と永嗣が詰め寄ろうとすると、そのうちの一人がこちらに気づいた。

 

 

「む? ヘスティアか」

「―――――――――」

 

 

 痩躯だが、衰えてはいないいわゆる細マッチョな髪も髭も真っ白の老人が向かってきた。

 かつて、美術の教科書で見たようなローマっぽい服装の老人は、オラリオで鍛冶系ファミリアの二大大手の一つ、ゴブニュファミリアの主神ゴブニュである。

 ゴブニュは放心状態のヘスティアに我慢できなかったのか、ぽかりっ!と頭を叩いた。

 

「聞いておるのか? おい!!」

「あイダッ!? 誰だ神を殴る不届き者はって、ゴブニュじゃないか」

「呆けとるから悪いんじゃ。それより………」

 

 

 顎でしゃくるように瓦礫の山を促す。

 鍛冶仕事のみならず増改築や一からの建築など幅広く取り扱っているゴブニュファミリアの団員や下請けの一般人なども、瓦礫とその周囲の破壊痕に釘付けになっている。

 

 

「話は屋根の修繕だけじゃなかったのか」

「いや、昨日までは存在していたんだけど………宿に泊っててね」

「んな、五月蠅くはしねーよ。だが、なぁ……?」

 

 

 いったい何が暴れたんだと、そう言いたそうにゴブニュはヘスティアをにらむ。

 冒険者だって、建物を破壊するのは簡単だが見た感じ、尋常ならざる力で破壊されているのだ。

 例えば、一部崩れずに残っている半円形の傷跡が残った壁。その直線状にあるドワーフの胴よりも太い石柱にある穿たれた痕。

 噂の小僧がどこかで恨みでも買っていたのかは知らないが、下手をしたら自分の子どもたちが巻き添えを食っていたかもしれないのだ。

 

 

「はっはっは………いくらする?」

 

 

 そのことにヘスティアは至ったか、話題を替えようと現実的な話をする。

 今重要なのは、自分たちの家がどれぐらいで直るか、だ。お金とか、期間とか、お金とかお金とか。

 

 

「頭金だけで先にもらった分の3倍ぐらいはかかるな」

「嘘だと言ってよ、ゴブニュぅううううう!!?」

「お前さんもファミリアを率いるんだし、本拠地(ホーム)ってのはいざという時の籠城場所として頑丈にするもんだ。必要経費として諦めな」

 

 

 とまぁ、こうは言ったもののゴブニュとしても気の毒に思う。

 噂好きな連中(暇な神々)から彼女らの取り巻く環境がどういったものか理解しているのだ。

 

 

「お前さんより早く降りてきているから助言してやる。本拠地について出し惜しみはするな」

「じゃあもっと安くして?」

「それとこれとは別だ」

「後輩への愛はないのかな?!」

「愛で腹は脹れねェし、素材だって買えねェんだよ」

 

 

 主に剣姫とか、大切断(アマゾン)とかせいで金が無い。掛けで売っているから金が無い。

 金はないのに仕事だけはあるのだ。

 別に建築のほうが楽だから、ファミリア内部抗争が起きたわけではない。憎悪の叫びなど聞こえてないったらない。

 

 

「ああ、いけねェ。同業者からの言伝を忘れてたぜ」

「同業者―――あっ…………」

「『借りたものは返す。壊した家はちゃんと建て直す。拒否は認めない』―――だそうだ」

「ヘファイストスぅううううううううううううううう!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 金髪の孺子(こぞう)のごとき絶叫を上げたヘスティアが落ち着いたところで、ゴブニュは噂の小僧に話しかけた。

 

 

「お前さんが格上殺しか」

「身に覚えはないのですがね」

 

 

 ―――噂と違って、至って普通の子どもにしか見えない。むしろ真っすぐに生き悩んでいる好青年である。

 ゴブニュはそうとしか感じられない。

 しかし、見た目だけで判断するのはいけないことだ。

 

 

「この後ダンジョンに潜るんだろ?」

「ええ」

「武器を見せな。他所の子の武器も見てみてぇんだ」

 

 

 鍛冶神の一人だ。人を見るなら武器を見て判断する。言葉だけじゃわからないものも、普段使う物で判断できるというものだ。

 神はヒトのウソを見抜けるというがゴブニュはあまりそういったことをしない。

 飽くまで、自分は地上にいる限り超凄腕の鍛冶師なのであって、神としてきているわけではない。子どもとは出来うる限り対等でありたいのだ。

 

 少しの沈黙の後、永嗣はゴブニュに刀を渡した。

 丁寧にそれを受け取り、視線で断りを入れて刀身を外気にさらす。

 

 

「ふぅむ」

 

 

 実に見事な出来の刀だ。

 拵えには無駄な飾り気のないように見えて、見えないところで意匠を施してある。

 刀身は―――――ふむ。よく、(しな)る、粘り強い良い刀だ。

 

 

「正村トーリだったな」

「自分には勿体ない業を持っています。まさしく運が良かったと言わざるを得ません」

「ふん。確かにな」

 

 

 水平に、垂直に、光に当てるように、指の腹で刀身をなぞったりもする。

 

 

「未熟だな。迷いがある」

「………ゆえに勿体ない、と」

「他人に言われたかないだろうが、何が問題だ?」

 

 

 力任せに振った思えば、見たこともないほどの技量で振るわれた形跡もある。

 これほどの技量、神として十全の自分が武器を授けた英雄にも勝るとも劣らぬだろう。戦乙女(ワルキウレス)たちがいれば……………。

 いや、主が主だけに碌なことにもならんな。

 

 

「冒険者は強さを求める。刀身にはお前さんの未熟に見合う傷みもあるが、見合わない傷みや気遣いもある。それがわからん」

「………」

「手前勝手に制限つけて、仲間を犠牲にするか? クロッゾの小僧もそうだが人間は全力を出さないことが美徳か?」

「ゴブニュ! デリケートな問題なんだ。あまり強くは……」

「それで眷属が死んじまったらどうすんだ? そいつも、お前さんも。あるいはそっちの小僧が生き残ったら………どう思うよ、ええ?」

 

 

 下に降りてずいぶん経つのだ。出し惜しみして帰ることのできなかった連中がどれほどいることか。

 

 

「………」

「よく考えとくこったな。自己満足は自己満足でしかねぇんだ」

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 耳の痛い言葉だったな、と永嗣はダンジョンで刀を振るっていた。

 それと同時にここ最近の、自分の心境を後押しするような事柄が多すぎて妙に勘ぐってしまう。

 どのように受け止めればいいのかと思うぐらい、昨夜と今朝と続いている。

 ―――――ただ、思うべきことはあった。

 

 

「………!」 

 

 

 襲い掛かってきたウルフの群れを流れるように捌いていく。

 音も発てない振り抜きはゆっくりしているようで、刃筋はちゃんと立てて振る。

 業物の刀があれば、きちんとした斬線と刃筋を千に対して垂直に立てることで自ら斬られていく。

 同時に来れば置いて斬るよりも振って斬り、それ以上で群がれば嵐のように斬り捨てていく。

 

 徐々に慣らしていく(・・・・・・)

 記録の自分と同じ動きを映していく。

 時雨永嗣の究極型である体運びと業を細かくかみ砕き、嚥下し、刷り込むようにしていく。

 

 

「―――ん」

 

 

 精神はまだまだだが、動きだけは近づきつつある永嗣に、ウルフ程度のモンスターの群れは役不足であった。

 反復を続けるうちにすべてを処理し終えていたのに気づくと、手持無沙汰なベルと目があった。

 ああ、しまった。彼の分まで取ってしまったらしい。

 でしゃばり過ぎてしまったと謝罪をすると、彼は苦笑しながらどこか安心したようにそれを受け入れた。

 

 

「何かいいことでもあったのか?」

 

 

 そんなベルに思いついたことをそのまま問いてみる。

 ベルは両手をわたわたと振りながら、怒らいでほしいと前置きして告げた。

 

 

「怪物祭より前のシグレさんに戻ってきたみたいで嬉しかったんですよ」

「今までは落胆していたって?」

「違いますよっ!」

「冗談だよ」

「心臓に悪いですよぉ………でも、動きはだんだんと戻ってきましたね。ゴブニュ様とのあれで?」

「まぁな」

 

 

 理性じゃ納得しているけど、もっとその根幹の部分では納得しきれていないのが真実だが…………。

 

 

「死なれると、うちの女神さまに祟られるかもしれない」

「そんなことしません―――ていうのは無いですね」

超越者(神さま)でなく、ヒトと同じ立ち位置でいようとしてくれる証だよ」

 

 

 力を使うことを厭わないがそれ以外では家族として対等でありたいという意思表示だろう。

 神様だぞ! なんて本気で偉ぶっていたら見限るし、そもそもファミリアに入ることすらないがな。

 

 

「他は違うんですかね」

「どうだろうな―――――――――――うん?」

「…………霧?」

「まだ5階層ぐらいだぞ? 食糧庫(パントリー)大部屋(ルーム)あたりでで発生するんじゃ……?」

「ですよね。…………けど、何の臭いですかこれ? すごい(くさ)いですよ」

「ヒリヒリもするな……………パープルモスが大量発生しているとか」

「臭いはしないとか言ってましたよ。あと、こんなに視界が利かなくなるほどじゃ……」

 

 

 鱗粉を振りまく毒蛾、パープルモスならありえそうだが臭いもないとのこと。

 何より、ここより下で発生するモンスターなのだから上まで上がれるわけもない。なぜなら、貧弱な防御力と攻撃手段が鱗粉を撒くという性質上、冒険者にとってはカモだからだ。

 

 

「…………ん?」

「…………あ」

「―――――――やられたな」

「―――――――やられました」

 

 

 気づけば四方に続く道が霧で塞がれている。

 ここはこの四方の通路へ至るための合流地点だ。そこに霧の姿などない。

 

 

「心当たりが多くて困るだけど?」

「僕は巻き添えじゃないですか」

「あきらめてくれ――――――――くるぞッ」

 

 

 霧の中で揺らめく影を迎撃すべく、二人は戦闘態勢に入ったのだった。




 主人公を強くする理由付けが難しいと、カルメンです。
 いきなり心機一転したらおかしいですから、マジ難しいYO!!
 と、ここまでにして後書き解説行くよー。例のごとく、一言はない!



『時雨永嗣』
 言われて思うことがあったのか、少しは記録を受け入れる覚悟はできた模様―――というのは嘘で、この状況をどうにかするためには能動的にならねばならないというやぶれかぶれ精神のもの。
 記録を受け入れても精神の方が未熟すぎるので前までの強さには程遠いのは秘密。ただ、弱いと言っても秘剣を真似るぐらいの技術はあるために弱いとはどういうことなのかを小一時間レクチャーする必要があるかもしれない。
 廃墟となった教会を見て「やった奴はボロ雑巾にしてやる」と誓ったのはナ・イ・ショww


『ベル・クラネル』
 冒険者にとっては簡単な建築物の破壊も、外に点在する破壊痕を見てぞっとしていたりする。
 徐々に以前の強さに近づきつつある主人公に安堵し、苦悩して進もうとするその姿に英雄譚の英雄の姿を重ねていたりする。
 日頃の主人公との鍛錬から、レベル1に見合わない強さを誇る。スエイタス的にはレベルアップするはずだが、主人公の問題が解決したらそうしたいと自重している。


『ヘスティア』
 ○月△日 おうちがこわれてしまいましたとてもかなしかったです。


『ゴブニュ』
 北欧神話に登場する痩躯だが力強い鍛冶神で、ヌァザと協力して銀の腕(アガートラム)を製造した逸話を持つ。詳しくは各自で調べること。
 その腕前はヘファイストスにも勝るとも劣らず、オラリオの鍛冶ファミリアの二大巨頭として君臨する。剣姫の武器を作っているのは彼であり、剣姫の依頼は必ず彼を通すように言い含まれている。
 未熟で武器を扱え切れないのは仕方ないと思うが、未熟でもないのに扱い切ろうとしないのは怠惰であり、鍛冶師への侮辱であるとも考えている。
 その根底には力を惜しんで、大切な仲間を失った子どもを多く知っているためである。力を持つ主人公に対し、後悔と何かを暗に伝えもした。


『壊れた教会』
 アタランテとナニカが交戦した結果、廃墟となってしまった。
 明らかに石材を数本貫通した痕があったり、砕かれずに細切れにされた石柱があるなどから相当の実力者と争ったといえよう。
 いったいどこの幼女と戦ったのか―――ん? 誰か来たよ―――


『ダンジョンの霧』
 わたしたちの宝具だよ。じゅわーってしちゃうのっ!
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