貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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お久しぶりです。カルメンです。

ブランク明けの為、酷い内容ですがご容赦ください。




三者三様のお話

 血縁も何もない彼女(ジャック)を彼らへ差し向けて、もう三日以上が経過した。

 驚くべきことに………本当に驚くべきことに彼らは未だに五体満足で生きている。

 ジャックの下級冒険者を殺すような霧を超えるべく、挑んでは逃げ帰り、また挑んでは逃げていく。

 

 

「あの弓使いのせいですね」

 

 

 彼らが生還しているのはあの碧色の猫人族(キャットピープル)のような女性の助太刀があってのことだ。

 仕留めにかかると必ず現れ、あんなか細い細腕でどうやって放つのか、ダンジョンの壁を容易く崩壊させる一矢をバカみたいな速度で連射してくるとか。

 ――これだから才能のある冒険者は嫌いだ。才能の無い自分が嫌いだ。

 

 

「ですが、どうしてあの子の姿や居場所がわかるんでしょう?」

 

 

 ジャックの隠密は完璧だ。そのはずだ。

 最初の襲撃の日、どこぞの金持ちから大金を盗んできたらしい。未だにバレていないことから、気付いていないのか泣き寝入りしているのだろう。

 というか、ヘルメスファミリアの換金係が金を失くしたとミノタウロスも裸足で逃げるような形相で走り回っていたからそれだと思う。

 

 

「――――それはそれ。これはこれです」

 

 

 あの男神、煮ても焼いても食えなさそうな優男のヘルメスは私に真実を教えてくれた神物(じんぶつ)でもある。

 ただ、自分も金が欲しいので返すつもりなどないがそれでも恩義に背いたと思うと―――

 

 

「………? そんなに罪悪感は湧かないですね。むしろせいせいする? みたいな?」

 

 

 胡散臭いから酷い目に遭っても別に構わない………んじゃないだろうか。

 絶対、碌でもないことするだろうし、してるだろうし。

 おおっと、あんなどうでもいい男神は無視して作戦を考えなければならない。

 

 今はまだ私が黒幕だと感づかれているわけではない。

 ジャックの見立てでは誰かを探しているというが―――私の事だろうか?

 だとすれば――――

 

 

「…………希望を持たされて絶望に叩き落とす。よくある手段です」

 

 

 信じてはいけない。

 どれだけ羽振りが良くても、紳士的であろうと彼らは冒険者(クズども)だ。

 絶望から引き上げられたことあるが、それは後に与える絶望をより強く思い知らせるための下準備でしかない。

 叩き落とされなかったことなど無いのだ。

 

 私を探しているとすればあの男に横取りされる前に仕留めようとしているに違いない。

 だけどもし………――

 

 

「―――弱気になってます。リリは弱っちいから頭を使わないといけないのに」

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 世の中には二種類の人間が存在する―――なんてフレーズを高校生の時代にはよく聞いたものだ。

 かつては老人のような青年であった永嗣はぼつりとこぼした。

 それは一体何のことですか、と兎のような少年、ベル・クラネルが聞く。

 

 

「壁を超えようとするやつと、避けて行こうとするやつさ」

「………! なるほど、霧ですか」

「そういうこと」

「最初に比べればいくらかマシですよ。アビリティになりましたし! 初めてのスキルですよっ」

 

 

 あの撤退戦から幾度となく霧に挑み続けた結果、二人とも共通のアビリティが追加された。

 耐性(アンチパッシブ)という、カテゴリー的に冒険者には必須のもので、ヘスティアによれば通常の物よりも希少(レア)とのことだ。

 

 

「範囲が広いというけど、どれくらいなんですかね」

「さあ? 少なくともあの霧の中で長時間行動できるようにはなっているな」

「最初は酷かったですよね。毎回、誰かが来てくれているからどうにか逃げきれてますけど」

「だな」

 

 

 効果がどんなものかはわからない―――というよりも、名前だけで大体は意味合いがわかる。

 パッシブの意味を察すれば常時発動していると考えられるがその前にアンチが付いている。アンチとは対抗とか抵抗とかの打ち消す意味合いが強い。

 霧の影響も低くなってきているから昔のゲームで言えばダメージ床を無効化するみたいなものだろうか。

 

 

「だからって、気配が感じ取れるわけでもないし、見えるわけでもないけどな」

「走り抜けるならまだしも、中で戦い続けるなんて無理ですよね」

「………なら、こういうのはどうだ?」

 

 

 圧して駄目なら退いてみよう、まさしくそんな作戦だった。

 成功するかは別として、と頭に付くのだが………。

 

 

「あ、じゃあこんなのも入れてみましょうよ」

「んん?――――なるほど。イイかもな」

「イイでしょう?」

「うんうん。少しは楽が出来そうだ」

「ですよね。はははは」

「あははははは」

「「あはははははははは!」」

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人がこの状況を打破しようとする作戦を練っているところ、地下室しか残っていない廃教会では鴉の濡羽色の様に艶やかな黒髪をツインテールに結っているロリ巨乳が頭を抱えていた。

 

 

「うぬぬぬぬぬ………」

 

 

 二人の主神である炉の女神ヘスティアである。

 彼女の前には二つの紙が置かれている。眷属の恩恵を更新した時に必ず写し取っているステイタスの写し………その無改竄(・・・)の代物だった。

 

 

「これ、完全にレアアビリティだ。それも捉えようによっては深層でも重要になる類の………」

 

 

――――――――――――――――

 

時雨永嗣(シグレ・エイジ)

 

種族:人種(ヒューマン)

 

Lv:1

 

力:E=529

 

耐久:D=602

 

器用:S=1091

 

敏捷:A=989

 

魔力:

 

《魔法》

【】

 

 

《スキル》

 

経験憑依(インストール)

 時間経過と遺志により戦闘経験を完全再現する。

 受け皿の意志の強弱により戦闘行動に対してマイナスかプラスの効果が付与される。 

 

 

【月下の誓い】

 剣士である限りステイタスに補正がかかる。

 誓いを破ったとき、このスキルは消滅する。

 

 

【天性の肉体】

 ステイタス上昇補正、耐久の大幅補正、回復力の向上。

 

 

《アビリティ》

 

【環境耐性】H

 あらゆる環境に対して適応する。

 ランクが上がるごとに耐性の幅が広がる。

 このアビリティは自然に対するものである。

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「今更だけど、なんでさ?」

 

 

 レアアビリティが生まれている。これは別に構わない。神秘なんてものもあるんだからね。

 スキルだって………まあ、変化したり減ったりすることはあるよ、多分?

 だが、種族の項目。君はダメだ。

 

 

「半英霊だったのに人種に変化しているのはなんで?」

 

 

 これは問題だ。大問題だ。エルフはがドワーフに、ドワーフがエルフになってしまうぐらいに大問題だ。

 彼は人種だったはずだ。生前ということで、何かしらの偉業を成して英霊として召し上げられかけていた…………と思うけど……。

 一回死んで、もう一度死にかけて―――まさか私は後一回、変身を残して(死ぬ可能性が)ありますとか言わないよね? 流石に泣くよ?

 

 

「おおぅ、そんなことを言っている場合じゃない」

 

 

――――――――――――――――

 

『ベル・クラネル』

 

種族:人種(ヒューマン)

 

Lv:1

 

力:D=609

 

耐久:B=862

 

器用:D=691

 

敏捷:A=901

 

魔力:

 

《魔法》

【】

 

 

《スキル》

 

憧憬一途(リアリスフレーゼ)

 早熟する。

 懸想(おもい)が続く限り効果持続。

 懸想(おもい)(たけ)により効果向上。

 

 

登頂者(チャレンジャー)

 目指す目標が高いほど自身のステイタス成長に補正がかかる。

 発動対象は同じファミリアであること。

 憧れを失ったとき、このスキルは消える。

 

危機感知(ラビットイヤー)

 範囲内に入った一度交戦したことがあるモンスターを探知できる。

 レベルと器用、魔力の数値で変化する。

 おおよその方角がわかる。

 

 

《アビリティ》

 

【環境耐性】H

 あらゆる環境に対して適応する。

 ランクが上がるごとに耐性の幅が広がる。

 このアビリティは自然に対するものである。

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「確かに兎だけど。兎みたいな感じだけどっ………」

 

 

 確実にロキから突き上げを喰らう。

 だって、ステイタスはレベルアップの基準を大幅に超えている。

 偉業だってシルバーバックの突然変異種、ゴールデンバックとの戦闘で逃げずに立ち向かっているのだ。

 推定レベルは4以上の化け物をレベル1が僅かでも食い止めたのは偉業というほかない。

 

 それでもこの成長速度は異常だ。

 強敵――――霧の向こうのナニカと戦っているらしいが倒したら………あるいはずるずると長引いたら―――

 

 

「…………厄介なことになるよぅ」

 

 

 神会(デナトゥス)でどんなことになるかわかったもんじゃない。

 かといって、ギルドへの偽装報告はマズい。目をつけられているからなおのことマズい。

 

 

「とりあえず、アタランテにでも頼んでみようか」

 

 

 彼女なら並大抵のモンスターや冒険者ですら容易く屠るだろう。

 ダンジョンという閉所だから手間はかかるだろうが、教会を壊したことを僕は忘れていない。

 オウチ コワス ノ ヨクナイ よね!

 

 

「ふぅー! これでどうにかなるね。あとは全部押し付けちゃおう!」

 

 

 強くなったのは英雄に教えを乞うていたからと言えば問題ない。そう、僕たちには問題はないのさ。どこかの狩人が面倒なことになるだけで、僕らは何の問題もない。

 そうだと言ったらそうなのだ。いいね?

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 今この場には二人の人族と石のように固まった一柱の女神が居た。

 廃教会だった建物の地下室で悩むヘスティアへ、大事な家族が言ったのは次の言葉だった。

 

 

「ダンジョンには深く潜らないようにする」

「ほぇ?」

「1、2階層のモンスターを狩る方針に変えたんですよ、神様」

「んん? …………待っておくれよ。君たちは執拗に霧に巻き込まれる側だよね?」

「そうだな」

「――――聞くけどどこで陣取るって………?」

「表層の部分。それも冒険者が大勢いるところだな」

「…………ベルくん?」

「はい! 僕が考えましたっ」

 

 

 朗らかな太陽の日差しの如く、知らなければ、聞かなければ癒されたであろうその可愛い顔をヘスティアはにこりと笑って、返した。

 そして安い茶葉ながらも愛情をこめて入れた冷えてしまった紅茶を一息に飲み干す。

 何かを籠めるように徐に彼女はすぅ、と息を吸った。

 

 

「アウトォオオオオオオオオオ!!!!??」

 

 

 どこぞのグルメマンガのように目と口から光を放って、彼女は叫んだ。

 トレードマークのツインテールも元気に荒ぶり、風切り音を上げている。

 まるで闘神も及び腰になりそうな気配を纏って、ヘスティアはヤヴァい………そうヤバイではなくヤヴァいことをのたまう家族を りつける。

 

 

「立場を考えておくれよ! そんなことをしたら巻き添え喰ったファミリアに何をされるかわからないんだよ?!」

「神様言ったじゃないですか。ヒトは助け合う生き物だって」

「これは助け合いじゃなくて、利用する行為だよ?? 戦争遊戯(ウォーゲーム)になったら――――」

「?」

 

 

 表層で活動する多少の冒険者なら容易く屠れてしまう我がファミリア最大戦力かつ厄介ごとの種がきょとんとしております。

 

 

「―――――――いやいやいや。ギルドに垂れ込まれたらマジでヤヴァいからね? 都市外追放だよこれ? ただでさえ目をつけられているのに」

「ダメですか?」

「絶対にダメ!」

「ふぅ………仕方ないな。ベル…………善処(聞かなかったことに)しよう」

「おい。今、どんなルビをふった? こっち見ろ!?」

 

 

 やかましく主神などどんなもの、と言わんばかりに二人は明日の手はずを詰めていく。

 もはや埒もあかないとすれば、神気でもって正そうとするが――――あきらめる…………。

 

 

「二人とも………やるならバレないようにね?」

「おう」

「ダンジョンだから不測の事態で済みますよ。吉報を待っててください」

「うぅ………あんなに可愛い白兎が黒兎になっちゃったよぉ」

「ヘスティア………」

「なんだよ?」

 

 

 染色源である男は無意味に輝く真白い歯を見せて、サムズアップした。

 曰く、子どもの成長は嬉しいことじゃないかと。

 もちろん、回避不可能の女神のツインテールが炸裂したのは言うまでもない。






 今回も解説なしです。
 今後については活動報告にてお知らせいたします。
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