貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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お久しぶりです、カルメンです。

ちょこちょこ書き続けていたのが区切りがついたので投稿いたし申す。

感想・ご指摘待ってます。





爺、ヤるときはヤる

 銀髪に頬に傷のある幼女との戦いは予想よりも静かであった。

 音は高くも鈍くも、ダンジョンの壁に反響していくが多くても3度連なって響くだけである。

 ヒットアンドアウェイに徹し、時折、背筋がひやりとする一撃を放たれる。

 

 

(なんともやりにくい)

 

 

 幼女という見た目もそうであるが想像以上に力があるし、持っている得物が相当な切れ味だ。

 妖しい色で、真っすぐなナイフではなく柄から刀身へと変わる根元にへこみが付いていた。

 

 格好つけか思ったが、こちらの刀をへこみで受け止めると一瞬のうちに一本、へし折られてしまった。ソードブレイカーとかいうものだろうか。

 その見た目は伊達ではないという素直な感想と無様を晒した自分への罵倒が内で渦巻くなか、ダンジョン内という地の利が向こうにあった。

 

 穴倉の中の道というにはそれなりに広く、足場が上下左右にあるここは幼女――ジャックの得意とする場所(フィールド)だった。

 だがしかし、ジャックのほうも青年――時雨永嗣を攻め切れずにいた。

 

 

(速さと力は私たちが上だけど………うまいなぁ)

 

 

 単純な移動速度や膂力はジャックのほうが上であった。

 しかし、それを補ってあまりある技量差と言いつけられている約束や迷いが戦いを長引かせていたさせていた。

 

 ――殺すことを前提にやればイケる。けど、その時は向こうも殺しにかかるだろう。

 

 永嗣はジャックをできれば捕まえたいと思っている。

 ジャックは永嗣をできれば殺したくはないと思っている。

 

 この二つが絶妙に組み合わさり、最後の一歩(殺すこと)を踏み出させないでいた。

 

 

「「「―――ねえ」」」

 

 

 その問いかけを永嗣の耳には性別も年齢も違う複数の子供の声みたく聞こえた。

 

 

「「「どうして探すの?」」」

「………は?」

「「「どうしてお兄さんはお姉ちゃんを追いかけるの? 私たちを殺そうとしないの?」」」

 

 

 そっちの方が早いのに、心底不思議そうに問いかけてくる疑問の声に思わず呆けてしまう。

 無言で顔面に投擲される大鉈へ切り払いをかけると隠れるようにしてジャックは足を狙いに来た。

 腱を切るつもりで音のない突進を前に拵えてもらった脇差で迎撃すれば、右側を通り抜けて回避。猫のようにしなやかな動きで反転するジャックに返す刀で掬い上げるように薙ぎ払う。

 

 音も発てずに遠くへと着地しようとするジャックを追撃すべく、永嗣は駆け出した。

 そんな彼に目を細めるとジャックはさらにさらに下がる。

 

 

(距離を取られたら不意打ちに気を付けなきゃならない。かといってやめたら、今度はすり抜けてベルのほうへ向かうかもしれない。しかし、人通りのある場所にまで下がられたら乱戦か、あるいはこっちが襲撃者として追い立てられるハメになるか……?)

 

 

 留まって合流を選択するか、前へ前へ進んで厄介ごとを露見させられるか?

 どちらにしろ危ない橋には変わりない。

 

 

「なるようになれ、で行くしかないよな」

 

 

 

 

 

 損得を考えずに追ってきた永嗣を見て、ジャックは困ったことになったと考えていた。

 彼自身は気づいていない―――というより、ジャックを含めたこの都市に複数人いる同類の接近を感知していた。

 度重なる戦闘という名の説得のせいか彼女の気配はよくわかる。追い詰められているのは私たちだった。

 

 あの女の人と目の前のお兄さんが同時に襲い掛かってきたら………どうだろうか。子供を守ると言っていたから泣きつけばこちら側につくだろうか?

 

 

「「「――――ッ、危ないなぁ……!」」」

 

 

 緩急をつけて振るわれる剣にサーヴァントとしての身体能力で辛うじて避けることを成功するが……手足ではなく、胴体を狙うそれに相手が軽傷による捕縛より、重傷による拘束へ切り替えたのだと結論付けた。

 二閃、三閃と続いて描かれる軌道は死なない程度だが、死ぬほど痛い激痛を与えるのだろう。

 

 逃げるだけなら問題はない。最大速度で離脱してしまえばいいのだから。

 しかし、ここで逃げれば姉と慕う彼女は――――――

 

 

「「「やるしかないよね………そうだよね!」」」

 

 

 私たちと同じになってしまう。それは可哀想だ。

 どこかの私たちのいずれかの私たちが経験した、その決意という希望(じゅばく)がジャックに逃げることをやめさせた。

 

 なんとも運命の悪戯の様に碧の狩人がこちらに弓を引き絞るのも………。

 鴉みたいな女性(ヒト)があの嫌なヤツの隣にいた女性(ヒト)と一緒にお兄さんに襲い掛かるのも……。

 

 私たちの決意はどうするの? と、声に出さない抗議をぶつけたくなってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 さて、今更だが彼らが戦っている階層というのは6階層だったりする。

 ここではウォーシャドウや一つ目蛙(シューターフロッグ)、コボルド、ゴブリンといった上層ではなかなか群れをなさないモンスターたちが群れをなして行動している。

 群れをつくるウルフが初心者殺しならば、この階層から初心者パーティー殺しの階層となるのだ。

 

 レベル1の低ステイタス冒険者がソロでここにとどまるのは自殺志願者だと言っても過言ではない。

 例え、格上といつも組み手をしているようなベルであっても…………。

 

 

「キッツイなぁ……!!」

 

 

 小太刀のようなヘスティアブレードを最小限とは程遠い動きで振り回す。

 ウォーシャドウ数体に囲まれるぐらいならなんてことはないが、一つ目蛙やゴブリンなんかと徒党を組まれるとその厄介さは桁違いとなる。

 

 硬く鋭い舌先を矢のように撃ち出す一つ目蛙は図体がゴブリンよりも小さいのに殺傷能力はそれ以上とくる。

 ウォーシャドウは音もなく近づき、鋭い爪と腕一本分は伸びる腕が八つ裂きにしようと迫る。

 

 

「リリ! いるんだろ?! 返事をしてッ」

 

 

 さらに煙幕の中(・・・・)、多対一で戦うなど普通なら逃げる算段をつけるべき状況だ。というか逃げるべきだ。

 しかし自分にはやらなければならないことがある。

 逃げるわけにはいかない。

 

 

「話をしよう! だから……!」

 

 

 臭い袋(モルボル)をやめてくれ! とベルは叫ぶ。

 一定上の実力と実績を認められた冒険者のみがギルドから購入できるアイテム。それが臭い袋だ。

 広範囲でモンスターを誘引できるこのアイテムは製作難易度の低さで容易く量産できる。発案されたときは真っ当に使われていたが、のちにモンスターを使った敵対派閥狩りや略奪の為に悪用され、以降はギルド直営の店か許可を得た製作系ファミリアでしか売ることが出来なくなっている。

 

 だが、製作の簡単さと素材確保の容易さから闇ルートでの販売が横行しており、ガネーシャファミリアらの取り締まりも鼬ごっこになってしまっている。

 ベルは担当のエイナから臭い袋の危険度やどう作られているのかは聞いていたが、その詳細はしらない。

 わかるとすれば、非合法な手段で臭い袋をリリルカが手に入れているのでは、という悲しみだ。

 

 あるいは、霧の正体に無理やり協力させられているのでは? という憤りもある。

 ベルは最後の最後まで彼女を信じたい。

 一緒にダンジョンに潜っていた時、仮面のような笑顔が普通の笑顔になったことを知っている。

 

 

「邪魔、だぁッ!!!!」

 

 

 自分の夢、目的はダンジョンで出会いを求めること。

 危機に陥った女性冒険者を颯爽と助け出し、あわよくばお近づきになりたい。

 困っていたら助けてあげたい。

 悩んでいたら助けになりたい。

 

 そんな自分にとっての最大の敵とは仲間や女の子を泣かすようなことだ。

 危害を加えようとすることだ。

 嫌なことをするしようとすることだ。

 自分の都合のいいように滅茶苦茶にしようとする奴らだ………!

 

 

「――――話をしよう。リリ………!」

 

 

 君を救うために僕は矜持(プライド)だって捨てよう。だから話をしよう。

 そこかしこに落ちる魔石に目も向けず、ベルは前へと進む。

 いつの間にか煙幕からは出ていた。

 そして憎悪と脅えの混じった顔をする彼女(リリ)と出会えた。

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 パーティーを引っ張るうえで必要なものは何か? と問えば、それは強さだと答えるものが圧倒的大多数だ。

 ではその圧倒的大多数ではない極少数はどう答えるのか? 口をそろえてこう答えるだろう。即応できることだと。

 

 時雨永嗣は冷静に対処した。

 二つのいびつな短刀を握り、梟の様に音もなく襲い掛かる。請負人(ナイトレイド)と呼ばれる善も悪も関係なく仕事を請けるそれに剣を振りぬいた。

 ナイトレイドが音もなく襲い掛かってきたのなら、永嗣の一振りは音もなく迫ってきた。ナイトレイドは即座に回避を選択した。かつての同僚が何の抵抗もできずに汚物の肉塊にされたのを覚えているからだ。

 もっともその選択は正しく、間違いでもあった。

 

 

「ッ!?―――――――」

「シィッ!」

『退け』

 

 

 回避するよりも速く、迫りくる刃はナイトレイドに深手を負わせていただろう。

 しかし、仲間と思われる覆面によって防がれた。

 黄金に輝く妖しい短剣が例えミスリル製の武具であろうと一断ちにするであろう(わざ)()すらなく防いだ。

 弾くにしては感触が無かった。アニメやゲームのバリアなら何かしらの音か抵抗があるはずだ。それが一切ない。受け流すにしてもそこまでの技量があるようには思えない。

 

 

「何の用だ? こっちは取り込んでいるんだが」

 

 

 鴉マントから返ってきたのは沈黙。覆面からは明確な害意。

 わかるのは二人とも敵だということ。覆面は対処可能な範囲の強さでしかないことだ。

 だが、鴉マントは一撃の重さもさることながら相当に速い。回避不可脳と判断して、受けてから避けるを判断するぐらいに経験があるらしい。それごと断とうとしたが、覆面によって防がれたことを気にしてはいけない。

 

 とまあ、こんなことを問いてみても意味はない。言葉でなく、行動で返答されたのは察しの通りだろう。

 唯一、幼女がこちらへの警戒はしても、背を向けていることが幸いだった。

 こちらとしても喜ばしいが、その視線の先から伝わる気配については敵でないことを祈るばかりだ。

 

 

「手練れかよ!」

「―――」

「なんとか言えッ!!」

 

 

 こちらの呼吸の隙をついて近づいてきた鴉マントの一撃に受け流しもせず、短刀の腹に刃を滑らせて狙う。

 (くび)を狙う必要はない。そのリーチの差で鍔のない短刀を握る親指や腕を削ぎ落すのが狙いだ。だがそれも失敗に終わる。空いていた片方の短刀の腹を腕にかち上げ、膂力に任せて弾かれた。

 それも想定し、滑らす横薙ぎの軌道を縦に変化させて振り下ろす。

 

 残念、鴉マントはそれを半身になって躱し、手を狙って蹴りを入れてきた。

 脚力は腕力の三倍あるとは真実らしく、大太刀の柄で反射的に受け止め、その勢いを利用して鈍い金属音を置き去りに距離を取る。

 

 

「足癖も悪いんだな」

 

 

 覆面からの投げナイフを躱しつつ、左の親指で柄の状況を確かめる。

 半ば砕かれ、残った上下が目釘で辛うじて付属している程度だった。下手をすれば破片で指先を切る羽目になるかもしれない。

 

 対し、相手をは懐から取り出したポーション―――色はヘスティアの友神(ゆうじん)だとかいう男神に見せてもらったハイポーションだろうか――それをへし折れた右腕に振りかけている。

 先の攻防でたまたま負わせられた骨折も耳障りのよくない音を立てて元に戻っていく。

 どれだけの数を所持しているのかは定かではないが、生半可な傷では意味がないのだろう。

 

 

「そうか。真っ二つにすればいいんじゃないか」

 

 

 

 

 ―――殺意の凶刃が疾走(はし)った―――




 FGOの新イベが発表されましたね。うちに沖田は来ませんでしたが………(嘆き

 それはそれとして、久しぶりのあとがき解説だよぉ!




『時雨永嗣』
 お待ちかね、鯖との初戦闘―――というよりも様子見程度の攻防をした。
 類稀なる技量によって身体能力差をカバーすることができるが、相手が大英雄やそれに劣らぬ領域のものなら力で押しつぶされる運命が待っている(なぜなら技量も伴っているため)。
 ヘスティアには殺傷も仕方ないと告げているが、実のところは殺さずにすめば一番と思っていたのと相手の見た目から躊躇していたのは言うまでもない。
 しかし、ナイトレイドと覆面は見た目からして殺れるという差別主義者だったりする。見た目って大事ダネ!!


『ベル・クラネル』
 低階層の集団戦でも単独で通用するほどに強くなった原作主人公。レアスキルによるステータス上昇ブーストと稽古による相乗効果は計り知れない。
 そんな彼の矜恃とは「女性には優しくする」というものだがこの期に及んでは殴り倒してでも……という覚悟を示している。


『アタランテ』
 保有するスキルを無駄に使用してピンチに駆けつけた子供が大好きな女狩人。このフレーズに不穏を抱く作者はおかしいだろうか?
 積極的にしかけるつもりはないが、子供愛とギリシャ魂を天秤にかけると―――誰だって神の怒りには触れたくないのだ。


『リリルカ・アーデ』
 幼女のような少女。年齢はベルより上らしいのでロリJCかJKか……。
 互いの気持ちがすれ違う悲しい状態だが、それを引き起こす最後の一手が神の言葉という皮肉もまた、オラリオという都市を表現しているのかもしれない。


『ジャック・ザ・リッパー』
 あの場にいるキャラではレアリティが一番高い露出過多の幼女。北米版は全身タイツを装備しているわけだが対魔忍っぽく見えてしまうのなぜでしょうか?
 リリルカの言いつけを守り、殺さないように手加減していた。
 なお、アタランテの自分を見る目が少し怖いので、速攻で離脱したのは自分だけの秘密。


『ナイトレイド』
 あるいは「請負人」とも呼ばれる。この名前は二つ名であり、本名はギルドの主神ウラノスと当人の主神以外知らない謎に包まれた人物である。性別も分かっておらず、特徴的な容姿から騙るものも多い。ペスト医師のような姿に三角羽帽子と烏羽の外套は裏家業の人間と喧伝しているようなもの。
 小太刀に近い長さの歪なナイフ二つを主軸、徒手空拳なども用いた近接戦を得意とする。その実力は永嗣の攻撃を負傷前提で払えるほどであり、呼吸の間隙を突くといった対人戦の基本を修めていることから相当の実力者だと思われる。
 請け負う仕事は可能なら善悪に関わらず、請け負うらしく、昨日の敵は今日の友といったことがおきているようである。


『覆面』
 覆面と首から下を隠すぐらいに大きな外套を着る冒険者。もちろん性別も何もわからない。
 外套の中には黄金色の短い魔剣が多数収納されているため簡易な鎧ともなっている。魔剣にどんな効力があるかは不明だが、永嗣の剣を傷もなく受け流して弾くという異常事態を引き起こしたのは注意すべきかもしれない。
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