貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです 作:カルメンmk2
「これはなんですか?」
案の定、外套に包まれたむき出しの剣について言われたことである。
白髪の少年、ベル・クラネルと軽い談笑をしながら順番を待っていた永嗣に向けられたものだ。荷を見て、後ろにいる少年も目をまんまるにしている。それもそうだろう。鞘にも収まっていない剣が薪を束ねるようにしてまとめられているのだ。
「中で売り払おうと思っていたのじゃよ」
「鞘もないものを? …………………盗品ではありませんか?」
「盗品といえば盗品だの」
「…………犯罪者を入れるわけにはいきません。即刻退去して頂きたいのですが」
「んんむ。山賊を殺して奪ったものも盗品と見なすか?」
「山賊ですか。………………いえ、山賊を退治した場合はその所持品は討伐した者の財産となります」
「じゃあ、構わんじゃろ」
あとは二つ、三つの問答のあと、通される。他にも言いたそうだったが激しくこちらを罵る青髪の小僧に――
『さっさと仕事を終わらせろ、この馬鹿め! 俺は自室で茶を飲みながら、勘違いのバカども罵りつつ惰眠を貪りたいのだ、馬鹿め!! もう一度言ってほしいのか? 余程のマゾヒストか、馬鹿め!! そこの男! 何時迄もそこにいるな鬱陶しい! それとも脳みそまで筋肉でできているか、貴様!!』
『―――その命、随分と安売りするのぉ……………!』
『命なんぞもとから安いわ、馬鹿め! そんなものに価値でも見出すつもりか? ちなみに俺の命は安いぞ。死んでも死ねないからな! 貴様こそ、往来で得物を振り回すつもりか気違いめ。大体、そんなに刃物を持ち歩いてる貴様はアレか? 刃物に性的な興奮を覚える変質者か?そうなんだな!!?』
『……………』
『ネタの提供ご苦労! さっさと行くがいい。俺は頭脳派だから弱いぞ!! さっさと行け』
『………………』
『すみません。クリスは………その、非常に口の悪い
あの青髪、変質者だの気違いだのと言いおってからに…………新月の日だけと思うなよ。
されど、こう…………………斬り殺せるかわからん感覚があったの。普通の太刀筋と気合では殺せぬやもしれん。
周囲に殺意を振りまき、遠巻きにされている永嗣のもとに、げっそりとしたベルがトボトボと来た。その姿を見て、ああ被害者か……と無頼の風体のような連中が可哀想なものを見るように見ている。彼らもかつてはその洗礼を受けたのだろうか。
「あ、シグレさん」
「随分と言われたようだの。まあ、機会を待つがいい。――――確実に仕留めるからの」
「殺害予告ですか!?」
「久々にトサカにきたんじゃ。何、はっちゃけても文句は言われんだろうて。なにせ―――」
この街は神界にて暇を持て余した神々が降臨し、あの巨塔以外は人に作らせたものだそうだ。そう、暇だから下に来て、人間が騒ぐのが面白いから逗まっている。多少の騒ぎは楽しみに色を添えるものであろう。
「お前さん、アテはあるのかの?」
「と、特には…………」
「では、手当たり次第にでもするか」
何かしら目印みたいなものがあれば容易いのだが、あるかの?
のんびりと歩く永嗣と不安と期待で挙動不審なベルはそのまま大通りへと向かっていく。
時折、アレは何か、それはアレですとベルが答えて、永嗣が質問していくこととなった。その最中でベルは道を歩いて行く冒険者はどれぐらいの強さなのかが気になる。ひょろひょろの自分と屈強な男たち。見た目からして、ベルは負けていた。
「なんじゃなんじゃ。見た目で負けたつもりか?」
「……………僕、こんなにひょろひょろだし……………あそこの人達はムキムキじゃないですか」
「んん~?……………………………………ん、話にならんな」
「ですよね」
「歩き方からしてブレブレじゃよ」
「へ?」
ハーフプレートメイルとレザー系の防具を着た冒険者に対して、永嗣の評価は強くない、の一言であった。
「実践主義といえば強そうに見えるが、基礎もないのに下手に強くなってぶれているんじゃよ」
「でも、
「それを喧嘩屋というんじゃよ」
「? 強いことには変わりないんじゃ…………?」
「そうさの…………お前さん、兵士と殴り合いをして勝てるか?」
「無理ですよ。相手は訓練してますから」
「じゃろう? じゃが、恩恵を得られれば立場は逆転する。そうじゃな?」
その通りだ。恩恵の有無は越えられない壁のはずだ。
「そう聞いています。あの人達が弱いとは思えないですよ」
「もし兵士が恩恵を得たら?」
「それは………………」
「恩恵を受けたばかりなら、勝てる見込みはない。人と戦うことに慣れているからの」
ある意味で暴論だが、すごく力の強いド素人がボクサーに一撃を当てられるか、ということだ。当たれば一撃、とは格好良く見えるがどんなに強い攻撃も当たらなければ赤子すら殺せない。しかし、達人やその道を修めんとする者たちは強い攻撃よりも如何に当てるかを突き詰める。
虚を狙う。体制を崩す。速さで持って当てる。相手を恐れさせるように急所を狙う。殺意をぶつける。
剣の道を生きているため、当てて斬り殺せれば問題はない。戦車の装甲であろうとそれを斬れる刃があり、そして斬り方さえ知っていれば力はそれほど必要ないのだ。虎を殴り殺した身で言うのはお門違いではあるが………。
ぶっちゃけると、生涯をかけ、死後すら剣に捧げる自分と恩恵を得ただけで強い、無いものは弱いというのは我慢できないのだ。
「はっきりと言うとな? 剣に捧げたこの人生。その信念や誓いを
あの
「覚えておけ、小僧。喧嘩が通じるのは格下まで。同格以上には通じんぞ」
「はい!」
「よろしい」
そう言って、二人は止まることなくその場を去っていった。
ちらりと背後を伺う永嗣をベルは気付かなかったが、確かにそこには意思のある視線を向ける者が居たのだ。羽根帽子被った胡散臭い旅人風の得体の知れないナニカと付き従う女がいた。
「―――ははは、こっちに気づいているよ」
「ハデスヘッドに気づくなんて、本当に恩恵持ちではないのですか?!」
「面白すぎるな! これは楽しみだ!!」
「刺激しようとしないで下さい! 向かってこられたら、手加減なんてできませんよ」
「えぇー…………折角、面白そうなものも居たのに――――ま、今はいいか」
「今はってなんですか!?」
「今は、だよ。じゃ、また旅に出てくるからよろしく!」
「仕事は!?」
「あとは任せたよー」
「に、逃げられた……………………もう、イヤ…………」
「どこもダメか」
「はぁ…………」
ツテも無いのに世界で最も栄えているであろう場所に来て、一事成そうと息巻く。結果はこれである。
門前払いであった。道化師の旗がたなびく城も、不遜にも太陽の意匠を施した館も。ならばと本当に手当たり次第に飛び込み、その全てが玉砕している。
共通しているのは――
「すみません。僕のせいで」
「構わぬよ。儂は、お前さんの人となりを好ましく思っておる。奴らの目玉が石でできているのだろうて」
「……………それ、僕がひ弱そうって言われたことを否定してませんよね?」
「――――おお! 美味そうな林檎じゃぞっ」
「話をそらさないでくださ―――って、ホントに美味しそう!!?」
「女将! 二つくれ」
「あいよー」
未だに外套で包んだ剣の束を持つ彼は林檎を買っていた。それを僕に投げ渡し、店主のおばさんと話し込んでいる。
やっぱり、気を使わせていたみたいで、彼は少なくはない額を渡してどこか団員を募集しているようなファミリアの情報を買っていた。なんというか、僕にはそれが凄く手慣れているように見えた。
「―――あい、わかった。すまんの」
「こんだけ貰ったから気にしなくていいよ。結構、目立つ女神様だからね」
「ふぅむ……………女神、ねぇ」
「オラリオには神様がいっぱいいるのさ。他所はどうだか知らないけどね」
それから一言、二言ほど言葉をかわして僕たちはあとにした。
「なんでも、童女のように小さくて、髪を二つに分け束ねた黒髪の女神が団員を募集しているらしい」
「女神様、ですか?」
「男でもええが……………儂らも男よ。女神のほうがやる気が違うじゃろ?」
それはそうだ。可愛くて、綺麗で、美人な女神のほうがこう………………湧き上がる
「若いの」
「ほあああああ!!?」
「カッカッカッカ! 若いうちはそういうものじゃよ」
「シグレさんだって十分若いじゃないですか……………」
村の長老みたいな喋り方をするこの人だが、それが妙に似合う。というか、長老よりも遥かに威厳がある。あの爺、立場を利用して若い女の子のお尻触ったりしていたからかな? うぅん……………処すべき?
「事情というものがあるのだよ。それより、件の女神を探せ。童女のくせに胸が大きくて、その下に紐があるらしいぞ」
「大っきい事はイイことです。夢がいっぱいだ…………………!」
「……………………女の前でそれは言うなよ。潰されるぞ」
「何を!?」
「男にとって大事なものよ」
「ヒェ…………!!」
触れてはならぬモノがあるということだ。うむ。
内股気味に歩くベルを伴い、二人はそれなりに人の多い―――先程の店のあった道よりは人通りが遥かに多く、元の世界に比べればまだまだというほどでしかない大通りについた。件の女神はここで声掛けをしていることが多いとのこと。
早速、二人はその特徴に合いそうな人物――いや、
人が多ければ、その人の数だけドラマがあるとは誰の言葉だろうか?
金髪のおさげの少女がこちらを見ていて、それを仲間らしき者が引きずっていったり、どこか見覚えのある浅黒い白髪の男が細目の女にこき使われている。
あるいは、物騒な匂いが路地裏から感じ取れたり、大きな杖を持った露出の激しい女が獣耳の碧色の少女と談話をしつつ冷やかしている。
「異世界、ここに極まれり、か」
「なにか言いました?」
「いや、独り言だ。そっちは見つかったかの」
「居ないですね。人混みに紛れているのでしょうか」
「童女、との話だからの。ガタイがいい者も多い。根気よく探すほかあるまい」
「ですよね」
ベルは気づいていないようだが、永嗣は気づいていた。あの特徴的な連中は門でみた青髪と同様―――いや、遥か上を行く存在だ。金髪、白髪、路地裏、杖持ち、碧色………………………どれもが勝ち目が薄いと感じていた。
異世界、まさしく常識が通じぬ世界。永嗣は今まさに痛感していた。
――ここでなら………………嵐の先を見れるか? 空の向こう………月すら届くか?
燃え、滾るそれは彼らを刺激してしまったらしい。何人かはこちらを注視し少しでも手向かえば、即座に
少し、意外だったのは浅黒白髪男がこちらを見て驚いていたことだ。
「シグレさーん!」
「――――おぉう!? なんじゃい!?」
「もう見つけちゃいましたよ!! こっちです!!」
「今向かうぞ」
目礼して、ベルの元へと向かう。連れは何があったと問い詰めているがそれを知ることはない。
ベルの後をついていけば、なるほど。まさしく―――
「デカいの」
「あ、はははは……………」
「いきなり失礼だね、君は!」
「いやいや、失敬失敬」
見た目にそぐわぬその巨乳。見てみると、まぁ……………妻より小さいが背丈のせいか圧倒されかねないような感じがしてならない。
女神と言うだけあり、確かに美人ある。されど、神というものをこの童女しか知らぬが勝手知ったる我が家に居るような安心感が感じられた。
「圧倒されしまった」
「ふふん。それはそうさ、僕は神だからね!!」
「威厳が足らん。出直してこい」
「叱られた!?」
いや、しかし。女神というものはツインテールが流行っているのだろうか。あの冥界の女神もツインテールであったし…………。胸は比べるのもおこがましいわけだが。
「僕、そんなに威厳がないかい?」
「あー……………だ、大丈夫ですよ! 神様なのに変わりないですよ!」
「…………そうだよね! 神なのに変わりは――あれ? 否定されてない……………?」
「シグレさんも謝って下さい! 入団できないですよ!!」
「ちょっと? 今、否定しなかったよね? だよね?!」
「シグレさーん!」
「否定しておくれよ!!? 無視もしないで!!?」
ともあれ、儂はこう言いたい。
「ところで、名前はなんというのかの」
「失礼な子供に教える理由なんて無いよ!」
「じゃ、儂らは別のとこに行くとするわい」
「ええ!?」
「ま、待ってぇ!? ヘスティア!
――――ロリ巨乳は本当に実在したのだと。
遅れましたが、投稿させていただきました。というか、お気に入り登録とか、前作よりも早い勢いで増えてますな…………………嬉しいねぇ(ガウ○ン風
これからも最低でも週一スタイルで投稿いたしますのでよろしくお願いします。
では、解説だコルァ!
ああ、そうそう。人物解説の最後に一言入れてみようと思います。どうかな?
『時雨永嗣』
爺故に案外短気だったりする。基本思考は物騒で、騒がれなければ殺してもいいというイカれた思考を持つ部分がある。
剣の道を極めんとしていたがゆえに、根本的に恩恵というものに対して不快感を拭えないでいる。ロリ巨乳のヘスティアを見て、冥界の女神に憐憫を感じ得ない。
「さ、寒気がするぞい?」
『ベル・クラネル』
原作の主人公。白髪と紅色の瞳、兎のような印象を受ける少年。なよなよっとしているが現代の同世代と比べると確実に力は上。でも、知能は下である。
恩恵の万能さを信じているが、嫌悪感を示す永嗣との関係を悪くはしたくないゆえに話を合わせている。それが彼なりの処世術―――身寄りのない子供が生きるための知恵である。
「英雄になるぞー!」
『青髪の小人族』
メガネを付けた少年のような見た目のギルド職員。永嗣をして、普通に斬るだけでは殺せないと称された。
口は悪いが、性根から腐っているわけではない。案外、面倒見はいい方なのだがその悪態や投げかけられる罵倒に耐えきれないとやってられないらしい。招待はもちろん、アレですな。
「書類を手伝え? スケジュール管理もできないやつがギルド職員? はっ! 随分と知能が低い奴らばかり居るようだなどれ貸してみろ―――誤字だらけだ。脱字だらけだ。大きさも揃っていないコレを俺に手伝えというのかふざけるなよ大体貴様は―――」
『恩恵と武術』
恩恵とは神の加護を与え、その身体能力を格段に引き上げるもの。持つものと持たざるものはその差を決して埋められないとされる―――が、例外はいつだって存在する。
武術は神が地上に降り立つ前まで盛んであったもの。神々によって、武術を修めるよりも恩恵のほうが手早く、確実に実感できるということになり完全に廃れている。
『神々』
神界があまりにも暇すぎて、地上で死に物狂いで戦い、そして成長していく人々を見て降りてきた。完全無欠であるがゆえに、不変。そのため彼らは進化ということができない存在である。生命としては最早衰退と滅亡以外の未来が存在しない、哀れな種族である。
『大通りに居た連中』
戦えば、ほぼ確実にこちらが負ける存在たち。そのうち一人はこちらを知っているようであった。
「彼は…………」
「まさか…………なぜ…………」
『ヘスティア』
竈と慈愛と慈愛を司る女神。竈とは家庭の比喩表現でもあるため、家を守る神様であるといえる。
特徴としては、子供のように低い身長と愛らしい顔、なによりその身長や顔に似合わない巨乳とソレを下から支えるように見に付けている紐である。それゆえに例の紐、ロリ巨乳と影で言われている。
「なんなのさ、君は。僕、神様なんだぞぅ!」