貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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 今回はあとがきにステイタスが記載されいます。ですので、解説はなしです。

H29/01/17 誤字を発見しました。修正済みです。


女神、憂鬱になる

 永嗣、ベル、ヘスティアの三人が家族になった日、彼らは永嗣の持っていた路銀で細やかな宴を開いた。

 決して贅沢とは言えない、友神のもとでのんべりだらりと生活していたころに出されていた物に比べれば雲泥の差ではある。でも、例え屋台で買ってきた端肉の串焼きも、じゃが丸も少し傷んでいる果物の全てが最高に思える。

 人はそれを達成感というのだ、と永嗣はヘスティアに言った。見た目はただのありふれたものだ。明日になれば、もっと美味しいものが食べたいと思う。だが、この瞬間に食べるものは生涯における至福の味わいだと。

 

 ともあれ、細やかな宴は歩き疲れに騒ぎ疲れて、そこそこのうちに終わった。ヘスティアを継ぎ接ぎのあるソファに寝かし、ベルは自分の分の毛布を敷布にして寝かしつけた。

 壁に寄りかかり、剣を包んでいた外套を被って眠りにつく。そのせいか、わずかな血の臭いが悪夢として永嗣を責め立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやる』

『のろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやるのろってやる』

『こわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやる』

 

 嗚呼、憎―――――

 

「喧しい。死んで当然の分際で、夢にまで出てくるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ん、………暗いの」

 

 永嗣は気怠そうに目を覚ました。若返ったとはいえ、ふかふかの布団の寝心地を忘れられるはずもない。そう、彼は布団が欲しかった。

 しかし、何時の間にやら灯りが切れている。昨晩の宴の際、ヘスティアから教わった魔石灯という元の世界では電球代わりの照明器具を点けようと試みる。

 しかし、点く気配はない。

 

 これは困ったと、刀を手繰り、何か燃える物でも持って来ようとすると、不意に明るくなった。誰か起きたのかと思うと、光に反射する白髪頭が見えた。

 

 

「おはようございます。早いですね」

「年じゃからの。お前さんも早いではないか」

「農民だったので、早く起きちゃうんです。世話って大変ですから」

「なるほど。まだ眠っていてもええぞ? 今日から冒険者になるのだからな」

「生活習慣を変えると調子が………でも、そうかぁ…………冒険者になれるのかぁ」

 

 

 うみゅみゅとなにやら可愛い寝言言うヘスティアに、ベルは思わず目を背けた。何故って、彼女が寝返りをうつとその神秘のチョモランマがばるんばるん揺れ、分身がフィーバーしてしまうからだ。ナニがフィーバーするって? 察するがよいぞ。

 

 改めて、ベルが魔石灯を使い方を教える。灯の底部のつまみをひねり、その横に付いているつまみで光量を調節するのだと。ガスバーナーに近しいものかと永嗣は思った。

 

 

「って、かんじです」

「すまんの。何分、こういうのは初めてでな。上まで行って松明でも拵えようと思ったほどだ」

「魔石灯は高価ですから。僕もオラリオに来る前の宿で初めて知ったぐらいです」

 

 

 この魔石、オラリオが迷宮都市と云われる所以(ゆえん)――――迷宮(ダンジョン)に潜む怪物(モンスター)から必ずとれるものを使用しているらしい。ダンジョン以外にもモンスターは生息するが、ダンジョン内のモンスターは段違いに強く、もし一番弱いであろうゴブリンが10匹ほどでも地上に漏れれば、恩恵持ちのいない村など瞬く間に壊滅してしまう。

 そして、過去―――というのは千年も前の話だが、神々が降臨する前に外にあふれ出ていたモンスターたちは、代を重ねるごとに弱くなっていった。一説では、ダンジョン内の栄養が強さの源であり、その強さにお応じて彼らの核―――魔石も大きく、高品質になっていくそうだ。ダンジョン外で生息するモンスターはその栄養が補給できず、親の魔石を食って繁殖している。

 

 

「であるから、こんなに栄えているのか」

「魔石は重要な資源だって、乗せてくれた商隊も言ってました。一緒にいた冒険者も、ダンジョンでモンスターを狩り、手に入れた魔石を換金して暮らしているそうですよ」

「情報収集はしていたのか。感心感心」

「いやぁ、向こうが教えてくれたんです。大きかったなー」

 

 

 …………………ああ。この純情な振る舞いと顔で女冒険者を誑かしたのか。

 実際は、単に体の大きな男で、ベルの尻を見ていただけである。

 

 

「じゃ、行くかの」

「どこへ?」

「素振りじゃよ」

 

 

 僕もついていきます。ベルは永嗣の後を追って、地下室を後にした。

 

 

 

 

 

「んんぅん……………あれ?……………あれ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 売り払う予定だった剣を一本持ち、二人は廃墟となった礼拝堂の中で素振りをしていた。

 ベルの筋はなかなかによく、重い剣を持っても多少のふらつきはあれど、腰も足もしっかりとしていた。鍬や薪割の斧を振っていたからだろう。魔石で火も起こせるほど外には出回らないようだ。このように不便であることを考えると、昨日の冒険者たちも足腰ぐらいはしっかりとしたものだったのかもしれない。

 

 

「腋が開いたぞ。ちゃんと締めよ」

「はい!」

 

 

 上段から薪をたたき割るように振り下ろせと指導する。西洋の剣は金属甲冑などの発展により、切れ味よりも頑強さを重視して作られたものだ。中世になると、上質なものは90度曲げようとも元に戻るような代物まであったというがさてさて、どうなのやら。

 

 ひたすら振り上げ、振り下ろすの反復を続けていると指導してくれていた年寄り口調の若者、シグレ・エイジが構えを取った。ちらりとこちらを見ると、怒られるかと思ってまた素振りに戻ろうとしたが、こちらを見る目が見ていろと言っているようで、見ることに決めた。

 

 彼の持つ武器はカタナという片刃の反り返る剣だ。神様の友神タケミカヅチ様の故郷では一般的だというが、こちらではあんな細い剣で大丈夫なのだろうかと思ってしまう。

 刹那、振り上げていたカタナが何時の間にか振り下ろされていた。振り下ろすための挙動なんて見えない、気づいたら切っ先は地面の方に向いていたということに僕は驚きしかない。軽いから、というには僕の持つ剣は60セルチほど。彼の持つものは少なくとも90セルチ以上はある。重さで言えばほぼ同じぐらいだろう。

 

 

「まだ真似はできんよ。今のままではな」

 

 

 カタナを鞘に収め、ほら続きをやれ、と促してくる。恩恵がなくてもああいうことができる。じゃあ、恩恵を得られれば………………もっと強くなる。強くなれる!

 

 

「はい!」

「振り上げい!」

「はい!」

「振り下ろせぃ!」

「はい!」

「踏み込みつつ、その勢も乗せよ。もう一度じゃ」

「はいっ!」

 

 

 少しでも強くなるんだ。僕の夢をかなえるために―――――――ハーレムの英雄に…………!

 

 

「僕は成るんだぁあああ!!」

「邪念が出とるわっ!!」

「あべしっ!?」

 

 

 あ、お空が綺麗です、お爺ちゃん…………………………なんでか、雲が一直線に途切れているけど……………洗濯物を干したら太陽の匂いがしそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どごいっでだんだよぉおおおお!!」

「素振りをしに」

「ぅぉおおおおおおお…………………!」

 

 

 ヘスティア大号泣。地下に戻ろうとするとちょうどヘスティアが飛び出てきた。何やら焦燥とした表情に、すわ一大事か? と神妙な顔になる二人を見ると、文頭のとおりである。

 昨晩のことは夢―――というには無かったものがあるのに、誰もいない。不安になって上がってきたら出会い頭にベルの顎にクリーンヒットしたのだ。彼女の頭が。

 

 

「ぐずっ…………ずびっ………」

「約定は破らぬよ。そちらが破らぬ限りな。ほれ、顔を拭け」

「ありがとー――――これ、汚れてるよ?」

「んん?…………ああ、――――血じゃ」

「血まみれの布を渡すなぁああ!!?」

「コレしか無かったんじゃ。洗えば綺麗じゃぞ?」

「血を拭ったことは覆らない事実だよ!? そんなので顔拭きたい!?」

「戦地じゃと虫すら食った儂に、恐れるものなど余りない」

「戦地!? ……………………ごめん。辛いことを思い出させちゃったね」

「気にせずともええよ。随分と前のことじゃから」

 

 

 砂漠ではぐれて、蠍を食っただけじゃし。いやぁ…………………小便も飲みすぎると水気が無くなること無くなること。―――――惨めじゃったわい。血を飲んだら病気になるし……………己、身の程知らずのテロリストどもめ。

 

 永嗣がそんなことを考えているとはつゆ知らず、黙りこくる彼に嫌なことを思い出させてしまったと後悔しているヘスティア。痛みが引き、ようやく周囲に注意を向けられるようになったベルは状況がつかめない。

 目を閉じて何かを考える男と気まずそうな女神。どういう状況か?

 

 

「あの…………」

「あ、ああ。ベル君、ごめんね。顎は大丈夫?」

「まだ、じんじんしますが大丈夫です。その…………何が?」

「気にしなくていいよ。少し、僕が無遠慮だったんだ。時雨くん!!」

「おん?」

「朝ごはんにしよう。昨日の残りだけど、パンもあるからサンドイッチだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「き、君は天才かい!?」

「美味しいですっ!!」

「ただのコロッケサンドじゃろう。どんだけ貧食なんじゃい」

 

 

 中濃もウスターもない、少し塩味を効かせた肉汁とじゃが丸をパンで挟んだだけの、コロッケサンドとは言えない代物。それが彼らには美味しかったらしい。

 

 

「はっ!?」

「追加か?」

「もう一個頂戴ッ、じゃなくて……………! コレを売ればボロ儲けできる………!!?」

「て、天才すぎますよ神様ッ」

「だろうベル君! 今度から肉入りじゃが丸に格上げさ!」

「肉ですね!」

「肉だよ!」

「……………………(白い眼差し」

 

 

 食生活から変えたほうがいいかもしれんなぁ…………………はぁ………………。

 爺、夢を見るには少し年をとりすぎた生き物である。だが、空気は読めるのだ。年季故に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、そこで上を脱いで」

「上だけか?」

「うん。お待ちかねの恩恵さ」

 

 

 ヘスティアはそう言うと、シックなデザインの木箱を棚の引き戸から取り出した。ぱかりと開けると、丸まった紙のようなものと突き立った針が見えた。

 

 

「――――墨なら遠慮したいんじゃが…………」

「墨? …………ああ、タトゥーじゃないよ。これはね」

 

 

 ヘスティアはおもむろに、その決して小さくはない針に、己の人差し指の腹を突き刺した。ぽたりと血の雫が垂れるほど深さである。思わず、眉間に皺がよってしまう永嗣に、彼女はこう告げた。

 

 

「恩恵は僕達、神々の血を眷属の背中に垂らすことで与えられるんだ。別にお腹でもいいんだけど、この恩恵は冒険者の能力をすべて記述しているんだよ」

「能力を知られないためにか」

「そうだね。あとは………………まぁ、あってほしくはないことだけど、背中はモンスターにやられてしまっても残っている可能性が比較的高いから…………」

「―――――あい、気をつけよう」

「そうしてね。君たちがそうなってしまったら、僕は悲しみのあまり神界に還っちゃうよ」

 

 

 しんみりとしてしまうが、ヘスティアは気を取り直して、寝そべる永嗣の背中に神の血(イコル)を落とした。

 傷だらけで、刺されたり、斬られたりしたような傷が多い。傷のない場所など殆ど無い背中だ。それだけ、この子どもが苦難の道を歩いてきたと思うと胸が張り裂けそうである。でも、自分にそんなことを思う資格があるのかと思ってしまう。

 自分はこれから、彼をダンジョンという平和とは縁遠い場所に送るのだ。恩恵を与える代わりに我々を養えという建前に隠れた――――神々の遊戯(暇つぶし)に…………………。

 

 

「常在戦場ぞ、気にするな」

「………………そうかい? 本人が決めたことを心配するのは……………いけないことかな…………?」

「男はいつだって、荒野を目指すものじゃ。女はそんな男共の還ってくる場所、灯台のようにここに居るとすればええ」

「自分勝手なんだね」

「応ともさ。還る場所があるなら、どこまでだって駆け抜ける。お前さんは受け止めてやればいい。(かてい)と慈愛の女神なんじゃろ?」

「―――そっか…………そうだね!」

「左様。じゃあ、ぱぱっと終わらせてくれ」

「任された!――――――ほあ!?」

 

 

 話している間にステイタスが浮き出たのであろう。神の血は波打つように浸透し、そしてまた波打つように眷属のステータスを記していく。神はその間に、羊皮紙を用意して、背中に押し付けるのだ。これが一番効率的なのだが、動かすと擦れてしまい、読めなくなることを嫌う眷属のため、書き写すことを行う神もいる。

 

 ヘスティアは永嗣のステイタスを羊皮紙に転写しようとした。冒険者になったばかりの眷属は、皆、0から始まるのである。スキルもアビリティも発現する事は滅多になく、例外としてエルフや狐人族(ルナール)のような魔法の素養を持つ種族ぐらいなものだ。

 

 だが、その一般的な前提が崩されている。目の前にいる年寄りめいた口調の青年は――――

 

 

「ちょっと待ってね…………………んしょっと、はい。出来たよ!」

「どれどれ………………見事に0じゃの。このIみたいなものは?」

「ランクさ。100を超えるごとに一つ上がるんだ。0~99まではIランクだけど、100~199はHランクみたいにね。Sランクも存在するけど、それは迷宮英雄譚に出るような英雄しか確認されてないね―――現状(いま)は」

「むぅ……………儂の百余年の鍛錬は無駄だったのかの」

「百なんだって?」

「独り言じゃよ。儂はベルを呼んでくるわい」

 

 

 どこか哀しそうに服を着て上がっていく彼に、ヘスティアは内心でごめんを謝る。

 

 

(……………君のためだよ、時雨君。これは………………あまりに規格外すぎる)

 

 

 恩恵を与えた最初の眷属。神威(アルカナム)を使った覚えはない。でも、浮き出た彼のステータスはあまりにも異常過ぎた。

 

 

「―――――君の主神として、僕は絶対に守ってみせるよ。絶対に………」

 

 

 これから巻き起こされるであろう前代未聞の冒険者の登場に、他の神々(ひまじん)どもがどう出るか。それを考えると憂鬱になりそうなヘスティアであった。

 後日、もう一人の眷属にも同じことが起きるのだが、彼女はそれをまだ知らない。




時雨永嗣(シグレ・エイジ)

種族:半英霊

Lv:1

力:F=469

耐久:B=802

器用:S+=1171

敏捷:S++=1309

魔力:=

《魔法》
【】


《スキル》

【狂気】
 精神系状態異常の完全無効化。
 若かりし頃に見た憧憬とその後の地獄で付加された呪い染みたもの。己が壊れてもなお、それを止めることは出来ぬ修行僧の一面と、許しを乞う相手に一切の情け容赦をかけない悪鬼羅刹のごとき振る舞いの源。
 数々の殺害は、殺したほうが禍根を絶てるという経験則からくるもの。ゆえに容赦という言葉は敵に対して存在しない。
 また、その側面はも妄執とも言えるほどの感情であり、実質的には軽度の混乱状態ともいえる。


【明鏡止水】
 敏捷と器用に大幅なステイタス補正。
 明鏡を得、止水に至った者を指す言葉。真に明鏡止水に至ったものは人類史においてただ一人、ブッダのみである。ここでの明鏡止水は、剣に関してのもの。その純粋さと研鑽により、剣士として究極の一つに至った。本来であれば精神耐性も向上するが、上記の狂気によって打ち消されている。


【天性の肉体】
 ステイタス上昇補正、耐久の大幅補正、回復力の向上。
 古い英雄などが保有していたスキル。例え何をしていなくても、生物として最高の身体能力を誇る状態を保つ。
 このスキルの最高峰はヘラクレスである。神秘の濃い時代、あるいは英雄の家系に発現しやすいが現代でも発現する可能性はある。日本史でいえば、本多忠勝。近代史では舩坂弘など。ただし、近代においてこのスキルは常人を大きく超えた身体能力程度のものであり、神代のものとは同一とは思えないぐらいに劣化している。


【華鳥風月】
 経験値に対して上昇補正。その信念を曲げるか、次代を見つけた場合にのみこのスキルは消える。
 かつての憧憬、誓い、遺志のもとに刻まれたもの。
 『華を見て剣の在り方を知り、鳥を墜として業を知り、風を裂いて空を知り、月へと至る』
 剣士の極位にあり、これに至るものは未だかつて存在しない。連綿と受け継がれる遺志そのものであり、先代の雅な剣士は鳥まで至り、当代の剣士は嵐を切り裂いた。


【冥界の加護】
 死後、加護を与えた神のもとに還る。その期間は死ぬその時まで。


【     】
 識別不能。詳細不明。
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