【SAO×AB】相似形の世界   作:鬱蝉

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二部・始

※作者が時系列を大幅に勘違いしていたため前後の文章ごと修正しました。すみません。


十九話「あの声(ファミリア)」

西暦2022年5月20日

 

茅場晶彦によるデスゲーム開始宣言から一か月以上が経過しようとしていた。

SAO最大級のギルド《天魔衆》を創設し、そのトップの座に就いたディアベルの采配により安全的かつハイスピードでの攻略が進み、前線は第十層まで押し進められていた。俺や日向も彼の傘下の攻略メンバーとして微力ながらアインクラッド解放に尽力している。

 

何故、これほどまでハイペースな攻略が可能となったのか。ディアベル曰わく、パターン戦術が有効なのだと言う。即ち、現SAO内でも最高レベルを誇るキリト、アスナ両名を突撃させるというものだ。彼らの戦闘技術は目を見張るものがあり、例えボス級モンスターであろうと、僅かこの二人のみで十二分にHPを削ることができるのだ。

 

しかし、それでは他のプレイヤー達のレベルアップが滞ってしまう。そのため支援と称して俺・日向や、キリトのパーティーに参加したビーチェ、クライン率いる《風林火山》、ディアベル麾下の、シンカー率いる《アインクラッド解放隊(ALS)》とリンド率いる《ドラゴンナイツ・ブリゲード(DKB)》を起用するのだ。

 

言うなれば、キリアスコンビに良いように俺らが乗っかる《お膳立て戦法》である。しかし、乗っかられる当人たちからすれば堪ったものではないはずだ。何せ自分達の経験値やコルを他のプレイヤー・パーティー・ギルドに持って行かれるのである。

 

ところが彼らの認識は「それで攻略がスムーズに行くのなら構わない」というものだった。実際、ディアベルも二人の理知的な判断に随分と助けられているようだ。

 

だが、今までスムーズに進んでいた攻略も以降は難航することが予測されている。その理由というのがーー

 

 

β版における到達限界点。

 

 

キリトの話によれば、第十層迷宮区ボスを倒す前にβ版の公開期間が終了したのだという。そのうえ、ボスのHPは三段あるうちの一段目しか削れておらず、ボス級モンスター特有の、HPレッドゾーン突入の際の攻撃アルゴリズムの変化すら確認できなかったようなのである。

 

これには、さしものディアベルも頭を抱えている。ボス攻略においては、戦闘能力や指揮能力も必要とされるが、やはり最も要点が置かれるのはボスの情報である。敵に関する知識を一切持たず、無策に突っ込むなど愚の骨頂である。攻略本もページの厚みが減ったことから、出版者のアルゴがβテスターということが窺い知れた。内容を読んでみてもボスの序盤の武装や使用ソードスキルは記されているが、レッドゾーンにおける攻撃パターンの変化には対応してない。ボス攻略の柱が脆弱化してるのは明白であった。

 

話は変わるが、俺と日向は凡百なステータスでありながら何かとディアベルに信用を置かれている。理由は分からない。だが、貴重なボス関連情報の獲得のため、キリアスコンビや各ギルドの高位パーティーと共に色々なクエストに駆り出されることが多いのだ。

 

この日も、俺達は迷宮区ボスに関するフラグイベントが発生するというクエストの攻略レイドに参加していた。レイドのメンバーは俺と日向を除き、キリト、アスナ、《風林火山》、《天魔衆》・《ALS》・《DKB》の高位パーティーの29人編成である。

 

目的のフィールドボスは森フィールド内に居るとされる《マーダー・サーペント》。この第十層には蛇系のMobが多数存在し、迷宮区ボスも蛇の亜人モンスターと説明された。

 

「そういえばキリト。お前の所の……誰だっけあの娘……」

 

「ビーチェか?てか、いい加減名前覚えろよ」

 

「そうビーチェ。いやなかなか話す機会ないもんだから」

 

長らく無言の空気が続いたもので、耐えかねたのだろう日向がキリトに話し掛けた。

 

「今日は居ねぇみたいだが、どうしたんだ?」

 

「アイツなまだレベルが心許ないからな。万が一の時を思って、他の狩り場でレベリングしてるよう言い付けてきた」

 

「そうなのか。俺としちゃあ戦闘に参加させた方がレベルアップになる思うんだがな」

 

「命の方が大事だぜ、日向」

 

俺が日向に注言してやる。死後の世界に居た期間が短かった俺は良いとして、古参だった日向は死生観が常人とズレてる節がある。あそこの住人は元から死んでるのでデスルーラ、所謂死に戻りを平然とやっていたのだ。勿論この世界では死ねば死ぬ。相当変な表現になるが、俺からすればそういう感覚なのだ。

 

「皆!」

 

ふと、レイドの隊列先頭から声が飛んだ。声の主は《シガリテ》。《天魔衆》構成分隊の分隊長を務めるディアベルの懐刀だ。得意ギャグは「千葉!滋賀!佐賀!シガリテ!」のようだ。つい先程、レイドの決起会でメンバーの前で披露して思い切りスベっていた。

 

「ここら辺りにボスエリアがあるようだ」

 

彼は地図と実際の地形を照らし合わせている。

 

「さっきも説明したが、ここのフィールドボス《マーダー・サーペント》は毒系統のモンスターで、割と強力な毒を出す。攻略本によれば直ぐに死ぬことはまず無いが、数分放っておけば十分に死に至る可能性がある。各自、手持ちの解毒アイテムが減ってきたら余裕のあるプレイヤーから貰うなどして常に切らさないようにしてくれ。それからーー」

 

その時だった。

 

『誰かぁッ!私をッ!助けろぉぉぉぉぉッ!』

 

女性の声だった。同時に周囲を震わせるような野太い声だったと認識した。

 

「何だッ、今の声は!」

 

シガリテが焦ったように声を張る。

 

「あっちのようだ!」

 

レイドメンバーの一人が声の聞こえた方角を指差しながら言う。

 

「『助けて』と聞こえたからには唯ならぬ状況のようだ……皆、急ぐぞッ!」

 

シガリテが指示を飛ばし、彼よりも早く飛び出したキリト・アスナ両名に続くようにメンバー全員が声のした方向に疾走する。俺は足を最速のピッチで回しながら、先程の声が聞き覚えのあるものだと感じていた。

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