【スカルな野郎はナルシスト!】   作:めいでん

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〜前回のあらすじ〜
▼ オボロは しょくいんを なぐった !
▼ グラジオたちが なかまに なった !


第十九話【トリプルバトル】

 

 

フラッシュ!

 

あちこちから照らされる明かりは目に毒だ。白くて単色で光量も強くて、ムードもへったくれもありゃしない。

当てられるなら青い光がいいと思うし、なんならスポットライトはビカビカ光る下品なものじゃないほうがいい。淡くてふんわりと、情感のこもった趣深いものがいい。

はっきり言って不躾だ。ボクは刑務所から逃げる囚人なんかじゃあない。

 

そうオボロはげんなりしながら目の前の男をじっと見た。

他の職員と違ってさすがは支部長。多少なりともオシャレの心得はあるらしい。

下卑た面をした中年だが、白を基調とした服に色づく緑は彼をようく引き立てていた。

 

オボロは彼があと20歳若ければスカル団にスカウトしたのになぁと常々考えていた。彼とは趣味が合いそうだし、偏屈で変わり者な彼には、きっとエーテル財団よりスカル団の方が性に合っているに違いない。

 

類は友を呼ぶ。オボロは奇人変人の類が好きだった。

 

 

そんな不本意極まりない評価をされているとはつゆ知らず。カツン、カツンとヒールの音を響かせて、男は少年少女と大人一人に歩み寄った。

もちろん有象無象は彼の眼中にない。男が見つめているのはただ一人!

 

 

「フッフッフッ。私のことを忘れられては困るのですよ。坊っちゃま!」

 

 

と言ってするのはわるいかお。エレベーターから現れた一行を上手くはめることができてご満悦らしい。

 

彼が考えているのはカネのこと。

グラジオが睨みつけようが今回の特別ボーナスとしか思わない。むしろボーナスだと思えばこそ、散々尻拭いをしてきたクソ生意気な上司の息子でさえも、手持ちのごとく頬ずりしたくなるくらいには愛おしい。

 

そう結論づけると、ザオボーはグラジオを見てにんまり。それから彼がしたのは研究資金の計算だ。

 

カネの亡者極まれり。それがザオボー。世界が誇るエーテル財団の支部長だ。

 

 

「あのさぁ! ボク達のことも忘れないでほしいなぁ!」

 

 

とオボロ。エンターテイナーたる彼的にはすっかり忘れさられていたのが不満らしい。

 

彼がヤジを飛ばすと、さも今気がついたかのように「あぁ。スカル団のみなさんもお揃いだったんですか」とザオボー。いかにも興味なさげである。

そりゃそうだ。誰も見るからに面倒臭いナルシストなんて、わざわざ相手にしたがる奴はいない。

 

 

「やはり薄汚いドブネズミと手を組むべきではありませんでしたね。会長もなんでまた……」

 

 

ザオボーはオボロのことが苦手だった。

 

ロジカルとはかけ離れた思考回路。知性のかけらもなく、言うことも聞かない自由人。

徒党を組んでいるから付き合いはするものの、はっきり言って理解できない人種である。

人種というか種族から違う気がした。ポケモンの気持ちの方がよっぽど分かりやすいというものだ。

 

 

「だいたい、なんで貴方そちら側についているのですか」

「そんな些細なことは置いておこうよ。今くらいはね!」

「それ、いつも言ってません?」

 

 

暖簾に腕押し。ぬかに釘。

ザオボーはグラジオの方へ向き直った。精神衛生上よろしくないものは蓋をするに限る。

今だって、ナルシストは手を振りながらあふれんばかりの笑みを浮かべている。腹が立つほどに!

 

アローラに来てからのザオボーは上司とスカル団の相手に手を焼いていた。

話が通じない無茶振り上司に、これまた話が通じないDQN集団。

その悩みのタネがたまーにダブルブッキングする時がある。もちろん両者の組み合わせは最悪だ。

-に-をかけたら+になるはずだが、それはあくまで机上の空論。悲しいかな、現実は非情である。

 

彼の不運はとどまることを知らない。

ザオボーは自分の生え際がジワリと後退したような気がした。ストレスで。

彼にとってさらに不幸なことに、単なる気のせいというわけでもなかった。

 

 

 

 

第十九話【トリプルバトル】

 

 

 

 

時を同じくして子供達。オボロとザオボーの掛け合いについていけない少年少女は作戦会議を開いていた。彼ら四人はヒマだったのだ。

巨大組織の幹部達(汚いオトナ達)の押し問答をしり目に「にしてもさぁ」とひそひそ声でミヅキ。

 

 

「どうしようかなぁ。私たち、前後左右どころか四方八方囲まれちゃってるし」

 

 

ぐるりとあたりを見回すと、少し嫌そうな声で呟く少女。

とはいえ、もちろん少女が浮かべるのはあくまで笑顔。あいも変わらず全く状況にそぐわない、不気味なほどまでに満面の笑みである。

 

 

「フッ。決まっているさ」

「お! さすがグラジオ。なにか秘策でも!?」

「ひとり残らず叩きのめせばいいだけだ!」

「よしきたー。おれもさー、やっちゃうよー!」

 

 

——負けられない勝負は楽しくないとかなんとか言っちゃってさ!明らかライバル(グラジオ)との共闘を楽しんでるじゃんかぁ!

 

 

「ううう。私の友達はみんな脳筋だった」と肩を落とすミヅキ。涙目な彼女は彼らを睨みつけているように見えなくもなかった。依然として口角は上がっていたが。

 

盛り上がる少年二人に落ち込む少女。そんな彼らを尻目にやれやれと首を振るのはナルシストの弟子、リジーだった。

 

 

「『ヒコーリツ』の極みだわ。あたしだったらしないわね」

「非効率、だな。そんな発音ではない」

「……お師匠さまもきっとそう言うわよ! ね、そうよね。お師匠さまぁ!」

 

 

リジーは師匠に向かって叫んだが、当のオボロは素知らぬ顔だ。

興味のあること以外は全てシャットアウト。自らの時間を有効活用し、ストレスを一切抱えないのがオボロ流の美容法だった。まさに自己中の極みと言えるかもしれない。

 

 

「え。なんだい? キミの師匠はね、支部長くんと楽しく優雅にお喋りしてるんだ。邪魔しないでくれないかな」

「私は一向に構いませんがねぇ」

 

 

ザオボーは大きくため息をついた。

この宇宙人(オボロ)と話さなくて済むならば、まだ良識がありそうなその弟子が茶々を入れるのも大歓迎。時間稼ぎにもなり、一石二ポッポというものだ。

 

しかし、そうは上手くいかないのもこの世の常。

オボロが嫌味を気に留めるわけもなく、ザオボーの嫌そうな顔にも負けず「気を遣わなくても結構さ!」といっそう饒舌に捲し立てている。

 

 

「フッ。アイツにはまったく相手にされていないようだがな」

「……とにかく、非効率なの!」

「ああ。覚えたのか、非効率」

「うるさい!」

「小さい女の子の揚げ足取るのやめなよグラジオ……」

「大人気ないよー」

 

 

グラジオはフンと鼻を鳴らした。どうやら以前この少女にしてやられた(フラフラダンスを当てられた)ことに思うところがあったらしい。

 

 

「“ちょうおんぱ” とか “ねむりごな” をトレーナーに当ててみたらどう? 非常事態だし、多少のルール違反も大丈夫だよ。リーリエのためだしね」

 

 

と物騒な提案をするミヅキ。それに「おれもいい案だと思うー」とハウは乗っかった。

スポーツマンシップのかけらも無い発想である。彼らは少しスカル団の二人に毒されていた。

 

 

「……オレが言うのもなんだが、ここはあのエーテルパラダイス。この島で保護しているのは野生のポケモンだ。暴れたり、脱走するかもしれないだろ? だからそういう手をやつらはよく使う」

「うーん。えっとさー、よくわかんないけどー」

「蛇の道は蛇。熟知しているが故にその手の対策も知り尽くしている、ということだ」

「てことは、やっぱ正面突破しかないのかぁ」

 

 

ミヅキは深く息を吐くとボールに手を伸ばし、繰り出したのはガエガオン!

唸り声をあげていかくする大きな獣。それを見て、ナルシストの関心は若者たちの方へようやく向いたようだった。

 

 

「まさかこの人数相手バカ正直に戦る気かい? わざわざ無意味な勝負をしてやる義務はこっちにないよ」

 

 

オボロは呆れた目で弟子たちを見た。

ちなみにオボロの発言はすでに弟子が指摘している内容なのだが、それを彼が知ることはない。自分以外にとことん興味が湧かないのが彼がナルシスト足る所以なのである。

 

 

「ミヅキ、愛すべきボクのポケモンがこれから出す技に炎をぶつけてくれないかい? それもデッカい、特別製のを!」

 

 

そう言って彼はボールに手をかけた。

 

 

「カモン! マイ・スウィーティー、ミロカロス!」

 

 

空中に投げられた紅白の球は華麗に弧を描く。眩いエフェクトと共に現れたのは世界で一番美しいポケモンだ。

 

 

「さあ、 “うずしお” を撃つラグジュアリィなキミの肢体を見せつけるんだ!」

 

 

ミロカロスが一声鳴くと大きな渦が巻き起こる。轟々と音を響かせる巨大な奔流を、彼女はミヅキの方に向かって(・・・・・・・・・・)投げつけた!

 

 

「ううう。これ、ぶつければいいのかな。意味あるのかなぁ。とりあえず、やってみるしかないか! ガエガオン、あの渦に向かって “だいもんじ” !」

 

 

室内を埋め尽くすほど大きな渦。それを飲み込むほどに、大きな大きな炎の塊をガエガオンは放ってみせた。

瞬間、大量の蒸気が立ち込めた。もくもくと立ち昇る煙。さながら火事の如く。

 

 

ジリリリリリリリリリリ!

 

 

警報音が鳴り響き、降ってきたのは大量の水。あまごい顔負けの土砂降りに地面は全て濡れ伏した。スプリンクラーだ!

 

 

「今だミロカロス、“れいとうビーム” !」

 

 

白い光はザオボーたち——ではなく彼らが立つ地に放たれた。瞬時に凍りつき、身動きが取れなくなる職員たちを見て思わずオボロは喜色満面。どうやら目論見どおり上手くいったらしい。

 

 

「分かる? キミ達とボクらの格の違いってやつがさ!」

「オボロさん結構えげつないことしますね……」

「後でちゃんとこおりなおしでもかけとけば治るよ」

 

 

とオボロは興味なさげに言った。

彼にとっては自らの美しい作戦こそが大切で、知らない他人の怪我などはどうでも良かった。

 

 

「そんなに心配なら、彼らに “だいもんじ” でもお見舞いしてあげるといい。せっかくの氷が溶けて動き出しちゃうけどね」

 

 

そう言ってオボロは髪を掻き上げながらミロカロスをボールに戻すと、扉の方を指差した。

 

 

「さ、行こうか」

「思いっきり閉まってるけどさー、だいじょうぶー?」

「物は試しさ!」

 

 

彼はアズマオウをボールから出して指を鳴らした。

少しの時間力を貯めて彼女が放った技は “メガホーン“ ! 鋭く巨大なツノをこれまた大きな扉にぶつけるとけたたましい金属音が鳴り響く。

 

 

「ううん頑丈だ。少し凹んだくらいじゃないか」

「お師匠さまアズマオウを出して大丈夫なの?」

「えっなんで?」

「だってアズマオウはその、サカナだもの」

「ああ。ずっと出してたらよくないけどね。この子はちょっとくらいなら大丈夫だよ! そんなにヤワな育て方はしてないからね。芯の強さを兼ね備えてこその美しさなのさ!」

 

 

と自慢げにオボロは言った。調子を良くしたのか、それからアズマオウの育成について延々とウンチクを垂れている。

やれ陸地での魅せるバトルの秘訣だの、やれポロックの与え方だの、コーディネーター……それも彼の故郷にいる者たち以外にとっては呪文に等しい暗号だ。

その間、律儀にアズマオウは彼の指示に従い “メガホーン" を何度も扉に放っていた。その数はぴったり十回。しかし、多少は凹んだものの扉が貫通するにはまだまだ程遠い。

 

 

——困ったな。これじゃトドゼルガの “はかいこうせん" でも歯が立たないよ。

 

 

オボロがウンウン唸っていると、ふと白い物が彼の視界を掠めた。ザオボーだ!

とっしんしてきたザオボーをすんでのところで避けると、今日は厄日だよ、とオボロは零した。

グズマ。グラジオ。そしてザオボー。同じ日に何度も人から殴りかかられるなんて、なんという運の悪さだろう。

 

 

「このエーテル財団幹部たるザオボーが! あんなので終わるわけないでしょうが!」

 

オボロのききかいひにより派手にすっ転んだザオボーは腰を押さえながら叫んでいる。

よろよろと立ち上がる彼の足にはもうブーツはなかった。どうやら一矢報いるために地面ごと凍結した衣服を脱ぎ捨てたらしい。

 

 

「ザオボーおじさんもよくやるわね。こし、いたくなったりしないのかしら」

「お子さまと比べたらアレですがね! 私はまだそんなに年老いてはいないのですよ!」

 

 

ザオボーは酷く憤慨すると、やはり蛙の子は蛙だと結論付けた。まだ良識がありそうだなんてとんでもない。宇宙人(オボロ)の弟子は宇宙人と同じく碌でもないと。

 

ザオボーは自らのことをイケてるメンズだと思っていた。

インナーやサングラスでライトグリーンの差し色を作りメリハリを! 大きな襟がはためく特注の制服は小顔効果もバッチリだ。

若くしてキャリアを積み、支部長にまで成り上がった彼は仕事も容姿もまだまだ現役バリバリだ。少なくとも自分ではそう考えていた。そう、若い頃と比べて少しばかり額が広くなっただけで。

 

 

「ザオボー。オレを母上の元へ連れていけ」

「残念ながらそれは無理な話でございます。なんびとたりとも入れるなとのお達しですのでね。あの方がおっしゃっることは、ここでは絶対正義なのです。分かるでしょう? 坊っちゃまともあろうお人なら」

 

 

ザオボーは一息つくと、もったいぶってポケットから何かを取り出した。

 

 

「ですからこの鍵は、エーテル財団最高幹部たるザオボーが預からせていただきますよ! ビッケの奴に泣きついてもムダです。合鍵を持っているのは私だけですのでね!」

 

 

鍵を見せつけながら高らかに笑うザオボーに、思わずグラジオは歯噛みした。

多勢に無勢。コートを羽織っていたザオボー(お偉いさん)とは違い、平職員がズボンごと凍りついて身動きが取れない今、ザオボーから鍵を奪うことは容易だろう。

それでも彼はエーテル財団の支部長だ。野生のポケモンを日々相手にするほとんどの(・・・・・)財団職員のバトルの実力は折り紙つき。いわんや最高幹部をや!

時間は刻々と過ぎていく。少年に無駄な時間を過ごす暇は一秒たりともありやしないのだ。

 

人の不幸は蜜の味。ザオボーは大層嬉しそうに笑うと鍵を再度ポケットに仕舞おうとして——失敗した。

 

どすん!

 

大きな音が響いてザオボーは地面に倒れ込んだ。

彼の上に乗っているのは同じく財団職員のビッケだった。体格でザオボーを勝る彼女は大きな胸で押さえ込むと、鍵を奪ってグラジオへ!

 

 

「私はトレーナーではないのでポケモンバトルはできませんが、このくらいならお手伝いさせていただきます! 坊っちゃま!」

「ビ、ビッケ。アナタという人は、自分がなにをやっているのか分かっているのですかぁああ!?」

 

 

ザオボーは怒り心頭だ。

それもそのはず。スカル団の連中(DQN野郎とその弟子)だけならともかく、可愛がっていた部下までもが命令違反をする始末。お気に入りの制服は氷付けにされ、極寒の中着ている服はインナーのみ。おまけに自分より体重がある部下から押し潰されているときた。

考えうる限り最悪の状況だ。自分はただ平和に研究をしたいだけなのに!

 

 

「ビッケ、助かったぞ!」

 

 

扉を開けたグラジオは一目散に外へ駆け出した。ハウもミヅキもそれに続いて、こうそくいどう!

 

その様子をザオボーが黙って見ているわけもない。部下に足蹴にされながらも手元のボールを起動させると、即座にポケモンたちへ指示をする。

 

 

「お前たち、早く追いかけるのです!」

「ボク達を忘れちゃ困るよね、リジー!」

「ガッテン承知なんだから!」

 

 

ポケモンたちとの鬼ごっこなら、ナマコブシ投げのプロにお任せあれ!

リジーは空高くボールを投げると、現れたのはげに恐ろしき悪霊だ。空から舞い降りたゲンガーはケタケタと笑いながら "くろいまなざし” でザオボーたちを見つめている。

 

 

「これでキミ達は逃げられない。だよねぇ」

 

 

オボロはこれ見よがしにわるいかおをした。それからグラジオの方を向いて「先に行ってなよ。あと貸しひとつだからね。これ」と恩を売るのも忘れない。

 

 

「すまないなオボロ」

「見返りはタイプ : ヌルでいいよ。ここにいるもう一匹のさ」

 

 

と少し茶化して言うナルシスト。それから小さな声で男は少年に心からのエールを送る。

 

 

「頑張ってグズマくん達を止めてくれよ。キミのボスでもあるんだから」

 

 

グラジオは笑いながら頷くと、屋敷の方へ駆けて行った。

これにて若者たちとの心あふれる交流は一旦終わり。後に残されたのは汚い大人たちによる総決算だ。

 

 

「行っちゃったね、ボンボンくん」

「ぐぐぐぐぐっ……! こうなったらアナタだけでもふん縛って、目に物見せてやりますよ!」

「参ったなあ。こう見えて、ボクも結構急いでるんだけどね」

 

 

ザオボーは力づくでビッケを押し退けると、ギロリとオボロを睨みつけた。彼の手持ちのハギギシリも今にも飛びかかりそうな顔をしている。どうやら彼もオボロと同じく手持ちにヤワな育て方はしていないらしい。

彼のスリーパーは振り子を振りながらじっと師弟を見定めており、状況を知ってか知らでかヤドランも間抜けな顔をしながらこちらを見ていた。

 

 

「この私、エーテルパラダイス最後の砦! ザオボーが! アナタ方を完膚なきまでに! ぶっ潰して差し上げましょう!」

 

 

ザオボーが叫ぶと、それに呼応して三匹のポケモンは思い思いにうなり声をあげた。

室内に反響する鳴き声は彼らのレベルの高さを知らしめている。臨戦態勢はバッチリというわけだ。

 

 

「トリプルバトルか。面白い」

「お師匠さまはやったことあるの?」

「まさか! コンテストはダブルバトルが基本だし」

 

 

もちろん、これは彼の故郷での場合である。

 

 

「けどね。コンビネーションでボクに挑むなんてのは超絶怒濤のバカしかいない」

 

 

オボロはやれやれと首を振ると 「リジー、楽しい遊びをしよう」と弟子に向かって手を伸ばした。

 

 

「この美しくない男を完膚なきまでにブッ壊す! スカル団の名にかけて!」

 

 

リジーがおずおずと手を差し出すとオボロは少女の手を握った。それから何かを無理やり握り込ませると、「危ないからさ。キミたちは後ろに下がってるんだよ」と満足そうに微笑む男。

 

 

リジーがこっそり手のひらを開けると、クシャクシャの紙が中にはあった。そこには走り書きで『▁↓⚡︎』と書かれている。

 

正攻法を好むグズマやプルメリが例外なのだ。

スカした奴らが集まるスカル団が、スカした戦法を使うのは当たり前。緊急時ならなおさらだ。きっとこの指示もそういう意味で。

 

つまりはこの男、この場で真剣勝負をする気などさらさらないのだ。

 

顔をにやけさせる少女を見て、意図が伝わったようだと分かりオボロはにっこり。アズマオウに加勢すべくボールを二つ取り出してから、何も知らないザオボー相手に声を張り上げてこう言った。

 

 

「さあ、この男に見せつけてやろうか。ボクらの美しさってやつを、存分に!」

 

 

 

 




ご無沙汰しております。
今年の目標はこの小説を完結させることです。
長らくお待たせいたしましたが、お付き合いいただけると嬉しいです。
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