【スカルな野郎はナルシスト!】   作:めいでん

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〜前回のあらすじ〜
▼ オボロは グズマに おこられた !
▼ エーテルパラダイスに いくことに なった !



第三話 【エーテルパラダイス】

ジリリリリリ!

 

 

部屋中に鳴り響く目覚ましを止めると、リジーはひとつ伸びをした。カーテンを開けると外はもうすっかり日が昇っている。少女は慌てて着替えると、ぐうすか寝こけるオボロを必死で揺すった。

 

 

「お師匠さま! グズマさんから昨日言われたじゃない! どこかお出かけするのよね?」

 

 

いくら叩いても揺らしても、リジーの声は届かない。

 

オボロはよだれを垂らしながら抱き枕を抱きしめていた。そんな彼の姿は、ぜったいねむりで眠り続けるネッコアラのようだ。

 

しかも、ぐっすり寝るのが美しさの秘訣なのさ! と普段から言ってはばからないオボロ。耳栓とアイマスクを付けて、外の世界を完全にシャットアウトするのが彼流だ。

 

エーテルパラダイスに行く予定もすっかり忘れ、オボロはのんきに眠っていた。

 

 

どうしようかとリジーが困っていると、コンコンと二回ノックされる。

扉の奥から現れたのはプルメリだ。その後ろからマグカップを持ったグズマも。

 

 

「ねぇアンタさ。まだオボロの奴は起きないのかい?」

「さっきから起こしてるんですけどさっぱり」

 

 

三人は一斉にオボロを見た。

プルメリちゃんコッチだよ、と笑いながら寝言を言う彼は正直かなり気持ち悪い。

 

グズマは思い切り顔をしかめると、エネココアを煽った。甘くて濃厚なはずのエネココアは今日に限ってほろ苦い。

プルメリは少し嫌そうな顔をすると、「アタイはオボロの朝飯を持ってこなくちゃいけないからね」とそそくさと立ち去った。

 

残されたのはグズマとリジー。それと、なんにも知らず眠り続けるこの男。

 

 

「オイ嬢ちゃん。リジーだったか? 脇に退いとけ、一旦よお」

 

 

リジーが少し移動するとグズマはカップを置いて指を鳴らす。ばきばき、と音を立てるグズマの拳はすっかり温まり、臨戦態勢ばっちりだ。

 

抱き枕をオボロから引きはがした次の瞬間。グズマの拳は空を切ったかと思うと、オボロのお腹に吸い込まれた!

 

鮮やかに宙を舞う姿はまるでロケットのようだ。

飾られているリボンをなぎ倒していくと、壁に当たり墜落。

 

部屋の隅まで飛んで行ったオボロは、うずくまってプルプル震えていた。どうやらみぞおちにクリーンヒットしたようで、苦しそうにうめき声をあげている。

 

グズマはオボロを鼻で笑うと、「どうだオボロ。さぞかしいい目覚めができただろうぜ」と彼を煽った。

 

 

「ひ、ヒドイじゃないかグズマくん。横暴だ、不公平だ、暴力反対。キミなんかキライだ」

「あいにくだがな。ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めずに嫌われるのが、このオレ様。グズマ様だからよお」

 

 

衝撃で外れた耳栓を拾いながら、オボロはねちねち文句を言っている。「エネココアを飲む前にさ。モーモーミルクでも飲んだらいいのに」と言う彼に、グズマはさらに拳骨を落とした。

 

 

ちなみに現在出発予定時間の十五分前になろうとしている。

 

 

グズマの名誉のために言うと、彼の対応は至極真っ当であった。

 

 

 

 

第三話 【エーテルパラダイス】

 

 

 

目指すはエーテルパラダイス。

青い空。白い雲。潮風に吹かれながら船は進んでいく。

 

オートパイロットの船に乗っているのはグズマとプルメリ、オボロにリジーだけ。

彼ら四人はそれぞれ思い思いの時間を過ごしていた。

 

グズマは手持ちとポケリフレをしているし、プルメリはキャモメが飛び交う外を眺めている。

オボロとリジーはといえば二人で朝食をとっていた。

 

 

「ああ美味しい! 素晴らしく美味しいね! プルメリちゃんが作ってくれた料理を、朝から食べれるなんて。ボクはなんて贅沢をしているのだろう!」

 

 

屋敷でプルメリが作っていたホットサンドをオボロは褒めちぎる。

よっぽど美味しいのだろう。横のリジーも無言でがつがつ食べ進めていた。

 

賛辞の言葉を延々と続けるオボロに、「恥ずかしいからやめておくれよ。オボロ、アンタは黙って食べられないのかい」とプルメリは素っ気ない。

 

だが、彼女の耳は誰が見ても赤く染まっていた。シャイな彼女の精一杯の照れ隠しだ。

 

それを知ってか違うのか。彼女の言葉を聞くとオボロは微笑んだ。それからグランブルマウンテンをすすった後、「もちろん、このボクにかかれば、なんだってできるさ」とオボロは得意げに言った。

 

 

「プルメリちゃんのご要望とあらば、ボクは声どころか物音ひとつ立てずに食べてみせるよ!」

「別にいいよ、しなくて。普通に食いな」

 

 

二人がわちゃわちゃ言い合っている間だ。グズマも甲板にやって来て、ずんずんこちらへ近づいてくる。

彼の目の前でぴたっと止まったかと思うと、いきなりオボロに拳骨を落とした。

 

 

「なんという不条理! なんという理不尽! いきなりなんだいグズマくん!」

「ウルセェよ。オレ様のポケモンが昼寝してんだよ。声落とせ」

 

 

そう言うとグズマは部屋の方を指差した。確かに彼の腰にあるモンスターボールはひとつ減っている。彼がここまで甘やかすということは、大方グソクムシャあたりが寝ているのだろう。

 

いきなり殴られて、納得がいかないとばかりに噛み付くオボロ。

せめてグーじゃなくパーでやってくれ! とぐちぐち言った後、「長年の付き合いのボクとキミのポケモン。どっちが大切だって言うんだい?」とオボロは尋ねた。

 

彼が浮かべるのは大粒の涙。もちろんのこと嘘泣きだ。

こういう時、彼は芝居に出てくる子役のようにすぐ泣いた。涙が似合う儚げな男は美しいと、彼は信じていたからだ。

 

 

「遠くの親戚より近くの他人。チンケなことしか言わないことわざにしては、スカしてると思うグズマ様だがよ。

近くの他人より、もっと付き合いが長くて近い手持ちに決まってんだろ。だいたいお前とは四、五年しか付き合いねぇしな」

「ヒドイ! ヒドイよ! 年数で決めるなんて!

あの時の友情を忘れたのかい? ボクがあの時、どれだけグズマくんに感謝して、スカル団を支えようかと思ったことか! それなのにキミは、すぐにそういうことを言う!」

 

 

オボロはハンカチを取り出すと、「ああ、報われないかわいそうなボク」と目頭を押さえている。

全てがわざとらしい彼の姿を見て、「一度も忘れたことはねぇよ」とグズマはため息をついた。

 

目の前で涙を流すこの非常に面倒くさい男は、最初からスカル団に入っていたわけではない。スカル団に入りたがっていたというわけでもない。

 

彼はグズマがスカウトして、半ば強引に入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

グズマとオボロの出会いは強烈だった。

 

彼がスカル団を結成して間もない頃だ。

ポータウンを乗っ取ったばかりのグズマは、実地調査とばかりに辺りをうろついていた。

 

 

──草むらに何かが倒れている。

 

 

ポケモンかと思って近寄ると、黒い何かはぴくぴくと指を動かし、声にならない声を上げていた。

 

それは泥と垢にまみれて異臭を放ち、骨と皮だけの衰弱しきった人間。

 

慌ててグズマはしたっぱ達を呼ぶと彼を世話することに決めた。

スカル団のボスとはいえ、グズマはごくごく普通の青年だ。死にかけの男を放置するほど彼は非道を極めていなかった。

 

プルメリやしたっぱ達と代わる代わる世話をしていくと、男は次第に元気を取り戻していく。垢は綺麗さっぱりなくなり、ガリガリだった身体に少し肉が付いて、意識を保てる時間も増えていった。

 

彼は感謝の言葉を口にすると、自分のことをぽつり、ぽつりと語り始めた。

 

名前はオボロ。なぜ倒れていたかは言いたくない。自分はホウエン地方から来たコーディネーターなのだと。

 

外の世界に興味があったグズマは、見返りに彼の話を聞きたがった。男の話はどれも面白く、まるで夢や幻のようだ。

 

きらびやかなコンテストの世界は島巡りとは全く違う。

 

グズマは彼にねだった。もっともっと教えてくれと。

その度にオボロは語った。彼のこれまでの半生を。

 

月日は流れ、やがて二人は気が置けない仲になった。

アローラの生活にも慣れたオボロは、グズマがやっていることを手伝うようになる。コンテストで鍛えた彼のポケモン達は、スカル団と敵対する相手を鮮やかに翻弄してみせた。

 

それがすべての始まりだ。この男と、自分の。

 

 

 

 

グズマが昔のことを思い出している間も、未だにオボロは嘘泣きをやめない。

いい加減静かにしろだとか、これから重要な話をされるって時に弟子を連れてくるなとか、グズマには言いたいことが山ほどあったが、口を開くのをやめた。

 

軽いノリで生きるオボロのことだ。口先八丁で乗り切られるのは、火を見るよりも明らかだ。

 

 

「プルメリ。オレ様も一眠りしてくるからよお。船が着いたら教えてくれや」

「別にいいけど、オボロを黙らせなくてもいいのかい?」

「どうせ無駄だ。たとえアローラが滅んだとしても、コイツは黙りやしねぇよ」

「二人ともボクをなんだと思ってるのさ!」

 

 

あんまりだ! 訴えてやる! とオボロはハンカチを握りしめた。あまりにも強く握るものなので、すっかりシワが寄っている。

彼のハンカチはキャタピーの糸をふんだんに使った高級品。だが、涙にまみれシワの寄ったハンカチは、百均のものより貧相に見えた。

 

 

「お前の声は本当によお。頭に響くよな。少しは黙って食ってる弟子を見習えや」

 

 

オボロが騒いでいる間、リジーはホットサンドにもう夢中。大量にあったはずの食べ物がどんどん口の中に消えていく。横の騒ぎもなかったかのように、延々と少女は頬張っていた。

 

その姿はお世辞にも美しいとは言えないが、泣きながらぎゃんぎゃん吠えるオボロよりは百倍マシ。

覆ることのないグズマとプルメリの共通認識だった。

 

 

 

 

グズマが寝に行った後、甲板にいるのはオボロとリジーだけになった。どうやらプルメリも船内でくつろぐことにしたようだ。

 

朝食をたらふく食べたリジーは、モンスターボールからオドリドリを出した。

今度はポケモンが食べる番だ。

少女はリュックからポケモンフーズを出すと、ザラザラと皿に出す。ひと粒ひと粒ご飯をついばむオドリドリを、少女は優しく見守っていた。

 

 

「せっかくだからさリジー。キミのオドリドリにさ。これをあげてみなよ」

「これなあに?」

「ポロックさ。ポケマメのホウエン地方版ってとこかな」

「ふぅん。変わってるわね」

「この小さく固められたフォルムが可愛いだろ?」

 

 

オボロが何個か差し出したのは色とりどりのポロックだ。

初めて見るからだろう。まじまじと見つめるリジーに、オボロは分かりやすいように説明をした。

 

 

「ポロックはね。ポケモンの外見の美しさを高めてくれるのさ。カラダの中から調子を整えることでね」

 

 

だからトレーナーとしてのバトルでも役に立つはずさ。とリジーに言うと、彼が渡したのはポロックキットとポロックケース。

 

 

「今回はボクのをあげるけど。今度からはリジー、キミがきのみから作るんだ」

「お師匠さまの分が減っちゃうから?」

「それもあるけど、味の好みは十匹十色だからね。オドリドリが一番気にいるように作るといいよ」とオボロは言った。

「ボクはポロック作りも天才的だから、オドリドリもある程度は気にいるはずさ」

 

ポロックをついばむオドリドリは気持ちよさげに体を揺らしている。その度にぱちぱちと音を立ててこすれる羽根は、いつもより少し、つややかに見えた気がした。

 

その様子を見てオボロは満足げ。

ある程度なんて謙遜する必要は全くなかったね! やっぱりボクのポロックは最高だろ!? と高らかに叫んでいる。

 

どれくらい高らかかと言うと、甲板どころか船室中に響き渡るほどである。もちろん、部屋にいるグズマとプルメリにもばっちり聞こえていた。

 

オボロの声に起こされたグズマは、やっぱり黙らなかったかと呆れている。彼が大声で何かを言う様は、もはやスカル団名物と化していた。

 

 

 

 

ポロックをやり終えた二人が次にするのはブラッシングだ。オドリドリの羽根の向きに沿って、泥やほこりを落としていた。

 

羽根のもつれを解くように。それでいて、羽根が抜けないような。そんな力加減の塩梅は非常に難しい。リジーは一回だって上手くできた試しはなかった。

 

だが、師匠のオボロはなんてことはないようにブラシを操っている。それはまるで、魔法をかけているかのようだ。

 

オボロが手本を見せ終わると、リジーは手つきを真似てとかしていく。そっとゆっくり慎重に、震える手で少女はブラシを動かしていった。

 

その道のプロだったオボロと比べるとリジーの動作はぎこちない。だが、一生懸命手を動かす少女をオボロは微笑ましく見守っていた。

 

しかし、それは彼が弟子思いだからというわけでは決してない。

 

 

──そうそう、コレだよコレ! 弟子を持つ醍醐味っていうのはさ!

 

 

彼にあるのは優越感。そして承認欲求が満たされていく快感だった。

 

いつの世もナルシストは途方もない承認欲求を抱えているものだ。だが、ここまでブレないのは彼くらいのものだった。

 

 

 

 

 

ブラシですっかりとかし終わってオドリドリを撫でていると、ボーッと聞こえてくるのは汽笛の音。

 

不自然なほどに清潔感のある、白い白い人工島が間近に迫っていた。エーテルパラダイスはすぐそこだ。

 

島の裏口に船を停めると、四人は島の最深部へ向かった。

エーテル財団の職員でもなかなか入れないシークレットラボ。そこは秘密の会談にはうってつけだ。

 

 

「けれど、あたしびっくりだわ。ポケモンを守るエーテル財団と、ポケモンをいじめることもあるスカル団が話し合いだなんて」

「何事にも光と陰はある。そして、それは大体くっ付いて離れやしないのさ。彼らは正義の味方で、ボクたちは悪役。プロレスみたいなものだよ」

 

 

「つまりはグルってこと」と嫌そうに言うオボロに、「子供になんでも教えるんじゃないよ」とプルメリは咎めた。

慌ててオボロは、これ他言無用で頼むよ、とリジーに口止めをする。

 

スカル団のしたっぱも、エーテル財団の職員も。

彼らの上が繋がっているのは、限られた者しか知らない超トップシークレットだった。

 

 

「けど、これだけは言わせてもらうよ。そもそもボクはエーテル財団が好きじゃないんだ」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情を見せる師匠に、リジーは「どうして?」と首をかしげた。彼女にとって、エーテル財団は当たり前に存在するもの。特別嫌いというわけではなかったからだ。

 

 

「決まってるだろう! ポケモンはありのまま生き生きと過ごす姿が美しいのに。それを、こんな機械まみれの人工島で!」

 

 

きょとんとする弟子とは対象的に、オボロはどんどん声を荒げていく。どうやら相当嫌いらしい。

その様子を見たグズマは眉間にしわを一層寄せ、プルメリは「へぇ。意外だね」と呟いた。

 

 

「アンタはここを美しいって褒めるのかと思ってたよ」

「まさか! 保護されなきゃ生きられないポケモンなんて、美しさとは対極にあるよ。それにこんな歪な美しさ。ヘドが出る」

 

 

吐き捨てるように言うオボロをグズマは睨みつけた。オボロは、そういえばキミはここ大好きだったね、と呟くと、先ほどよりトーンを抑えてこう言った。

 

 

「それにルザミーネ女史が何を考えてるのか、ボクにはさっぱり。グズマくんは仲良しだから、知ってるのかもしれないけど」

「ルザミーネじょし?」

「エーテル財団の代表さ。これからボク達が会う人だよ」

「ふぅん。お師匠さま達も大変なのね」

「まあね。大事なパトロンだから従うけどさ」

 

 

奥にあるエレベーターに乗ると地下二階のスイッチを押す。音を立てずに潜っていくエレベーターは、この島の姿を象徴するかのようでオボロは嫌いだった。

 

 

四人がラボに入るともう代表がお待ちかねだった。

部屋の中に、金髪の美しい女性が佇んでいる。スカル団の用心棒グラジオとよく似た彼女は、どこか神秘的で絵に描かれた人物のようだ。

大きなファイルを手に持ちながら彼女は立っていた。

 

 

「よお代表。遅刻しない奴はスカしてない。その信条も代表のためなら曲げてみせる、グズマ様がここに来たぜ」

「あらみなさん。遠いところからわざわざ来て頂いて、わたくしとっても嬉しいわ」

 

 

ルザミーネは薄い笑みを浮かべている。それからリジーをじっと見ると、その子どもは誰かの隠し子かしら、と彼女は言った。

コイツはオボロの弟子なんだとよ、とグズマが教える。

彼女は少し驚いたようで少し目を見開いた。けれどもまたすぐ笑みを浮かべて、ふぅんそうなの、と呟くとオボロの方をちらりと見る。

 

 

「そう言えばオボロ。あなた、いつまでもハダカなのね。みっともないです」

「みっともないだって!? このボクの美しいカラダのどこがみっともないって言うんだい! 対極にあるだろう、みっともなさと!」

 

 

ぎゃーぎゃー騒ぐオボロに「まあ、みっともなさが増しましたわ」と火に油を注ぐルザミーネはもはや確信犯だ。彼女は思ったままのことを言っているだけだが、着々とオボロの地雷を踏んでいく。

 

荒れ狂うオボロに「お師匠さまみっともないからやめて」とリジーがなだめると、「お弟子さんの方がわたくしと仲良くなれそうね」とルザミーネ。それを聞いて余計に荒れるオボロ。

 

プルメリは頭が痛くなるのを感じながら、ルザミーネに本題を切り出した。

 

 

「で、代表はさ。どうしてアタイ達まで呼びつけたんだい? いつもはグズマだけじゃないか」

 

 

ルザミーネはにっこり微笑むと、持っていたファイルをパラパラとめくる。それから机の上に置いてファイルに挟まれた写真を指差した。

 

写真の中にいるのはおそらくポケモンだ。ただ、プルメリはこんなポケモンがいるなんて、見たことも聞いたこともなかった。グズマもそうだ。そしてリジーも。

 

エスパータイプかゴーストタイプのどちらかだろう。

青くて小さなポケモンはぷかぷかと宙に浮いている。その体はキラキラと輝いていて、どこか宇宙を連想させた。

 

 

「さすがはエーテル財団だね。こんなのも保護してるのかい」

「このポケモン見たことないわ! とってもキュートね代表さん。なんて名前なんですか?」

「名前はコスモッグ。アローラに二匹といない、貴重なポケモンです」

 

 

ルザミーネはそう言うと四人に動画を見せ始める。

エーテルパラダイスの監視カメラの映像だ。

映っているのは小さな少女。金髪の彼女はルザミーネやグラジオとよく似ている。

 

必死に走る少女と追いかけるエーテル財団。場所はこの島の二階、ポケモン保護区のようだ。

少女を追い詰めたかと思うと、彼女の鞄から沸き起こったのはまばゆい光。たちまち少女は消えてしまい、影も形もなくなってしまったところで映像は終わっている。

 

 

「ご覧の通りよ。三ヶ月前に、恥ずかしながらドロボウに盗まれてしまいましたの」

「エスパータイプのポケモンなんだね。ルザミーネ女史、今のはテレポートだろ?」

「ええそうよ。あなた方にはコスモッグを取り戻して頂きたいの」

 

 

そう言うと、彼女は黒いケージを渡した。どうやら捕獲したらここに閉じ込めておけということらしい。

特別なポケモンだから逃げないようにするにはこれが必要なの、とルザミーネは言った。

 

 

「手段は問いません。コスモッグが生きて帰って来ればなんでも良いわ。なんとしても、コスモッグをドロボウから取り戻すのです!」

 

 

顔を歪めるルザミーネに、計画に必要なのか? とグズマは尋ねた。ルザミーネは頷くと面白そうにグズマは笑う。

 

 

「イイぜ代表。スカル団はこいつを捕まえてみせる。オレ達にできないことはない。オボロ、プルメリ。なあそうだろ?」

 

 

にやりと笑みを浮かべながらグズマは二人に問いかけた。

 

とは言っても、純粋に反応が気になったから尋ねたというわけではない。

彼が心の底から信頼する仲間達の答え。それがどんなものになるかをグズマは知っていた。

 

 

「そりゃあ大体のことはねぇ」

「グズマくんがそう言うのであれば、ボクは精いっぱい頑張らせてもらうよ!」

 

 

かくして物語は動き始める。

 

それは、東から昇る太陽のように劇的に。静かに光る月のように厳かに。

 

 

エーテルパラダイスの地下二階。全てはそこで始まったのだ。

 

 

 

 

 

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