──さぁ、聖戦の時だ。世の中の間違いを正すために「しっと団」は存在する。
クリスマスぅ? 知らんなァ、そんなモノは~
しっとの心わ~!!
父心!!!
しっとマスクが声高らかに叫び、団員たちがこれに応える。
押せば命の!!
次に背中の筋肉を見せつけるようなポーズを見せ…
泉わく!!
団員たちが両手を腰に当てて膝を曲げた片足を上げる。
見よ!!
遥か頭上を指差し、
しっと魂は暑苦しいまでに燃えている!!!
円陣を組んで拳を当て合い、同時に接触した拳から雷が迸る。
次いで、思い思いのポーズを取ると背後で炎が燃え上がり、男たちを赤く照らす。
***
──しんしんと冷える冬の夜……
クリスマス一色に染まった街の一角に、身に付けている物がフンドシにアイマスクのみという半裸の男たちを引き連れた覆面レスラー2人が現れた。
一人は細身ながら引き締まった体躯をした長髪の男、もう一方は筋骨隆々の大男。
白いベストに赤いズボン、赤いレスラーパンツという服装の違いはあるものの、両者とも炎の縁取りをした白いマスクを被っている。
覆面の大男──しっとマスクを総統とする集団、人呼んで「しっと団」
彼らはモテない男たちの最後の希望である。
彼らは駅前の広場を陣取ると、先ほどのようなやり取りを始めたのだ。
「あ~、無理♥ 苦しませます♥」
そう宣告するとしっとマスクは近くにいた茶髪でサングラスをかけた男の頭を掴み…
壁ドン!!!
ビルの壁に叩きつけた。
「イヤァァァ──っ!? ジョー!?」
男の惨状に恋人らしき女性が悲鳴を上げる。
しっとマスクのその行動を皮切りに街のアベックたちは我先に逃げ出し始め、しっと団の男たちは逃げ惑うアベックたちを追いかける。
「ヒャッハ──っ! アベック狩りだぜぇ──っ!!」
モヒカンをした団員が一人の男性の腕を掴み、今まさに毒牙にかからんとした時に──
「ぶべらっ!?」
数発の銃弾をその身に受けて道路に倒れ伏せた。
倒れて動けないモヒカンを見て慌てて逃げる男性。それと同じ光景が周辺でも見られた。警察と軍が協力してしっと団の排除にあたっているのだ。
「くぅっ… 奴ら警告もなしに撃ってきやがった!」
しっとマスクの元に生き残った団員たちが集まる。
連中の本気度と次々と討ち取られていく仲間を見てマスクごしでも分かるほどに焦りを見せる総統だったが……戦場に見える憎き怨敵──水島の姿を確認すると、その目にその魂にしっとの炎を静かに燃やす。
──死ぬ前に……彼女を……作りたかった……
しっとマスクの腕の中でまた一人冷たくなっていく同胞たち…
その時、男たちの欲望が、嫉妬の心が戦場に奇跡を生んだ。
虚空から拳ほどの緑色に発光する玉が無数に現れたかと思うと……しっと団に敵対する組織の戦闘兵の持つ武器に向かって飛来、次々と破壊したのだ。
敵味方問わず玉の発生場所を探す一同、やがて出所を発見し指差す。
宙に浮かぶ人影──それはペルシャの古代衣装のような物で身を包んだ女性だった。
金髪のショートボブに緑色の瞳。しかし、先の尖った妖精のような耳が彼女が人ではないことを物語っている。
彼女の持つ雰囲気に圧されて、その場にいた者たちは沈黙していたが、その中でしっと団だけは彼女を知っているのか全員が片膝を地面につけて頭を垂れていた。
パル
たっぷりの時間を置いたあとに宙に浮かぶ女性が発した一言。
当然、何を言っているのか理解できずに混乱していたが、しっと団は分かっていたのか狂喜乱舞し、あまつさえ感涙する者まで出る始末。
「何だ貴様ら、もしかして今の有難い祝詞を理解出来なかったというのか!?」
信じられないものを見るような目付きで言うしっとマスクに「分かるか、あれで!」と声を合わせて反論する警察と軍。
「ならば貴様らのような不信者にも分かるように説明してやろう!
心して聴くがいい! 神は仰っている!!」
もともとクリスマスとはキリストの誕生を祝うキリスト教圏の厳かな宗教儀式である!
その神聖な筈の日に何か勘違いしたアベック共が恋愛ゴッコをやらかす風習が蔓延しておる!!
与えねばなるまい!! アベック共に天罰を!!
そう!! これは弱者に代わって悪を断罪する神の御業!
決して私怨からではない! 断じて!!
聖戦だ!! アベック共にすみやかなる死を!!
あと、電気を大切にね!
「長いわ!!!」
勝ち誇った顔で説明するしっと団に思わずツッコムを入れる一同。
「問答無用! 神に仇なす不届き者共よ!! 神の裁きをその身に受けるがいい!!」
しっとマスクから神と呼ばれた女性、その胸元から無数の緑色の玉が発射され、放射状に広がる。
アスファルトの道路を陥没させ、戦車を破壊、さらには高層ビルを倒壊させ、被害を拡大させていく。
「大変だ! 山本がやられた! メディーック!!」
そして緑色の玉を直接、体に受けた兵士たちは…
衣服が弾け飛び、フンドシにアイマスクというしっと団と同じ姿になり、仲間に襲いかかり始める。
「ぎゃぁぁぁ~~~~~っ!? 山本に噛まれたぁ──!!」
さらに変貌を遂げた者から噛まれると…
「ハイル、しっと──!!」
「アベックに死を!!」
「クロス・アウツ!!!」
同じように変化を遂げて、しっと団たちの活動の参列に加わる。
しかし噛まれた者の中には変化しない者がいるが、その場合は普通にボコられていた。
「何なんだ!? あの女の子は!?」
「あの女の子は旧地獄に通じる橋を守っている地底の妖怪ですよ。今はしっと団から信仰を得て神化したようですね」
しっと団の怨敵である水島は「かげ」と書かれた仮面で目元を隠している頭身の低い青い忍者──とびかげに問いただす。
「このままじゃ埒があかない! なんとかできないのか!?」
「ちょっと待ってください。今、知り合いに電話してみますので…」
その場で正座をして懐から取り出した黒電話をジーコジーコ動かして何処かに繋げる。
「──あ、さとり様? 実はですね… あ、はい。ではお願いします」
とびかげが電話を切って暫く経つと、唐突に破壊弾の砲撃が止む。
「用事ができたから帰る」
それだけ言い残すと、地面に空いた底の見えない穴へ降りていき……戦場から姿を消した。
「普通に喋れるんかい!?」
そして取り残されるしっと団。その頭上の空が眩く輝き……極太の光──レーザー光線が絶える間も無く幾重にも降り注ぐ。
悲鳴一つ残さず灰になったしっと団。そこに女性軍人であるランコが乗ったミキサー車がやって来て、コンクリートで上から流し込まれて固められる。
「また黒い雪が降ると困るからコンクリートで固めておくわね」
能天気にそう宣うが…
「どうせ暫くしたら復活するんだろうなぁ…」
──奇しくも、今回の騒動に参戦した者たちは同じことを考えていた。
今宵は誰かが誰かのために “ A Merry Christmas♪ ”
(´・ω・)にゃもし。
間に合わなかったよ、スマン。