外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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卒論が終わってようやく書けるようになりました。
社会人になるまでには完結させたいですね。

ちなみに今回の内容に関してですが、ネタに走るつもりがどうしてこうなったって感じです。


48 天下一武術会予選 後編

 ピッコロとラディッツが出会う同時刻、悟飯もまた門番である天津飯と対峙していた。

 

「久しぶりだな、悟飯」

「お久しぶりです、天津飯さん」

 

 互いに挨拶を交わし、和やかな雰囲気が漂うがこの場は戦いの場である。天津飯はすぐに雰囲気を切り替えるべく、真剣な表情へと変える。

 

「早速だが、俺との勝負方法を伝える。俺との勝負は————排球だ」

「排球……ですか?」

「あぁ。要するにバレーボールだな」

 

 それは知っていたが、生粋の武道家である天津飯とは思えない選択である。敗色濃厚な闘いであろうと武道家として自身の限界に挑み続けるために、闘うことを選択しそうなものだ。

 

「何というか、天津飯さんらしくないですね」

「あぁ、本当は武道家として全力でお前と闘いたい。だが、悔しいことにお前と俺では話にならないほど実力差がある。そして、イーヴィさんからは勝つように言われている。ならば、勝てる勝負をしなくてはならない」

 

 天津飯は依頼という形でこの場に来ていた。セルとの戦いの後も餃子と共に修行を続けていたが、働かなくては当然お金がなくなっていく。ほとんどをサバイバル生活に費やしている彼らにとって無一文でもあまり問題はなかったが、常に各地を放浪しながら修行しているために保存食などを買う必要があり、またいつまでも野宿というわけにもいかず、宿に泊まることがある。そしてお金に少し困ったタイミングでイーヴィと接触し、依頼されたのだ。勝利しなくては報酬が貰えないというわけではなかったが、できる限り勝つように言われてはその期待に応えなくてはと考えていた。

 

「それでバレーボールですか……」

「かつては排球を基に考えた技も使っていたこともある。これならお前にも負けん」

「わかりました。でも、僕も負けませんよ」

「そうこなくてはな」

 

 二人の間にネットが地面から出てきた。線も同時に浮き上がり、バレーボールコートのできあがりである。

 

「バレーボールは本来チーム競技だからな、ルールも少し変則的になるぞ」

 

 バレーボールは本来6対6で行われるスポーツだ。自コート内で3回まで触れてよいが、同じプレイヤーが続けて触れることは許されていない。だが、この場では1対1のため2回触れてもよいことになった。そして、時間がないわけでもないが何度も挑戦できるようにするため1セット15点の1セットマッチになっていた。

 審判にはロボット(イーヴィ製造)が立つことになった。

 

「こちらのサーブからいかせてもらうぞ」

 

 天津飯が、ボールを何度か地面に軽く打ち付ける。そして、ふーっと息を吐く。

 

「いくわよー!」

 

 悟飯はその掛け声にビクッとする。いきなり大の男が裏声の女言葉しかも叫びもすれば、誰だって何事かと思う。

 天高く投げられたボールにジャンプして、悟飯のいるコート目掛けて掌を叩き付ける。入射角45度越えである。

 悟飯はボールを捉えてレシーブの構えを取る。そして、完璧にボールを拾えたかに思えたが、弾いたボールは悟飯の顔面に直撃した。

 

0-1

 

「おい、大丈夫か? 悟飯」

「大丈夫です。意外と難しいですね、これ」

 

 悟飯の身体能力はオリンピック選手も真っ青なレベルであるが、スポーツをする技術は欠片もなかった。それでも大抵のスポーツでは身体能力が高すぎて一般人では相手にならないわけだが、悟飯ほどでなくとも常識外れの力を持った、スポーツの技術を持った者であればいい勝負になる。

 

 気を取り直して再び天津飯のサーブが悟飯目掛けて放たれる。悟飯はそれをアンダーではなくオーバーで処理した。常人だったら指が持っていかれて良くて突き指あるいは骨折(最悪天津飯の放つ威力なら指がもげる可能性もある)してしまうが、悟飯にそんな常識が通用するわけもなく軽く威力を殺して上にあげられてしまう。

 

「てやあああ!」

 

 今度は悟飯のスパイクが天津飯に飛んでいく。

 

「とうっ!」

 

 ボールが破裂してしまうのではないかと思うほど強烈なスパイクも落下点に間に合いさえすれば拾えないことはなかった。しかし、浮き上がったボールを天津飯が追うことはなかった。

 そのことに疑問に思った悟飯が天津飯の方に目を見やる。

 

「悟飯よ。球技においてボールから目を離すのは愚策だぞ」

「え?」

「アターック!」

 

 甲高い声が上空から響き、悟飯のコートにボールが落ちた。

 

「し、四身の拳……」

 

 二人居る天津飯を見て、悟飯が呟く。天津飯は悟飯がボールを目で追っているうちに四身の拳で一人増やし、天津飯に視線が移ると同時にボールに飛び上がってスパイクを打っていた。

 

「悔しいが身体能力で劣る状態で勝つためには、技しかない。こんな小賢しい手を使わなくてはならなければ勝てないというのは情けないが、全力で勝ちを取りにいかせてもらうぞ」

「……はい! 僕も負けません」

 

 どこか気乗りしなかった悟飯も天津飯の本気を目の前にして気持ちを切り替えて挑むことにした。

 その後の悟飯は慢心なく、天津飯との勝負に挑んだ。悟飯は元々天津飯を馬鹿にする気持ちなどあったわけではなかったが、どこかで力が劣っていると感じていた。しかし、そういう気持ちがあることを自覚し、自分を恥じこの勝負に全力で挑むことでそれを晴らすことにした。

 結果、3セット目にして悟飯は天津飯から勝利をもぎ取っていた。

 

「時間いっぱい負けるつもりはなかったんだがな……お前の勝ちだ、悟飯」

「いえ、もっと公平なルールだったら僕の負けでした」

「だが、勝ちは勝ちだ。それに、武道家としての実力ではまだまだ俺が劣る。だが、これからも精進し続けるつもりだ。また機会があれば手合せ願おう」

「はい!」

 

 こうして、悟飯は予選を突破した。

 

 

 そして、悟空は残り15分にしてようやくテストを突破した。

 

「やべぇ! 急がねぇと!」

 

 参加者はほとんどが脱落し、あとは合格者のみとなった予選会場はがらんとしていた。悟空の全力のダッシュによってすぐに開けた場所――門番の居る場所までたどり着いた。

 

「久しぶりだな、悟空」

「あ、おめぇはヤムチャ。……なんで、そんな変な恰好してんだ?」

 

 ヤムチャの恰好は、言うなれば顔がヤムチャのロボットだった。というか、人型サイズのガ○ダムだった。顔はヤムチャだが。極めてシュールな光景だった。

 

「ま、秘密兵器といったところだな。時間もないし、早速勝負方法を伝えるぞ。と言ってもただの試合だ。悟空の勝利条件は俺と戦って、俺を倒すかこれから被るマスクをはぎ取ればいい」

「マスク?」

「あぁ、こんなのだ」

 

 そして、ガ○ダムの頭部を被るヤムチャ。

 

「ルールはわかったけどよ、ヤムチャじゃ、オラの相手は……」

「心配するな。これを着た俺は前までとは違う」

「そっか楽しみだなぁ」

 

 ヤムチャは当然の様に背中からビームサーベルを引き抜く。

「悟空あらかじめ言っておくぞ。この剣には触れないことだ。行くぞ、悟空!」

 

 ロボット特有の音を鳴らし、一瞬で速度を上げる。

 

「は、速ぇ!」

「もらった!」

 

 ヤムチャが斬りかかるが、悟空は間一髪よけた。だが、服がわずかに焼き切れ、髪の毛が若干焦げていた。

 

「あ、あぶねぇ……触れるなってのはこういうことか……」

「油断していると命を持っていかれかねねぇぜ、悟空」

「そうみてぇだな。それじゃ、第二ラウンドいってみっか」

 

 悟空は超サイヤ人となった。

 

「今度はオラの番だ!」

 

 悟空が攻撃を仕掛けるが、ヤムチャが防御にビームサーベルを使うため攻めあぐねていた。

 

「どうした、そんなものか、悟空!」

 

 ヤムチャは、超サイヤ人のスピードにも十分についていけていた。それはヤムチャの装備しているものの性能が良いというのもあるがそれ以上に操作が上手かったことにある。このガ〇ダムの最高速度は確かに超サイヤ人さえも上回ることができるが、普通は直線にしか動かせず小回りは効かないのである。それを、ヤムチャはマイクロメートル単位の操作で行うことで補っていた。いくら武道家として常人をはるかに超える力を持つとはいえ、もはや人間技ではない技能だった。

 

 悟空がビームサーベルに正拳突きしそうになるのを寸止めした。

 

「もらった!」

 

 ヤムチャは渾身の蹴りを悟空にくらわせた。

 

「ぐわあああっ!」

 

 壁に激突し、豪快な音を立てて壁が崩れる。

 ヤムチャはこの装備によって、途方もない強さを手に入れたのである。正直なところ、武道家として思うところがなかったわけではない。それでも、失われてしまった誇りを取り戻すために必要なことなのだと割り切った。一見矛盾しているように思えるが、ヤムチャは既に武道家としての限界を感じてしまっていた。仮に強くなれたとしても悟空達には到底及ばない。それを補うためには道具を使う以外に方法はなかった。その道具を使うのにも努力を要したが、間違いなくこれまでの自分以上の実力を引き出すことに成功したのである。

 

「どうした、その程度じゃないだろ?」

 

 悟空は瓦礫の中から飛び出た。

 

「悪りいな。まだ、ヤムチャのことを見くびっていたみてぇだ」

「それじゃ、これからは遠慮なしだな」

「あぁ」

 

 二人は同時に飛び出した、先に攻撃を仕掛けたのはヤムチャだった。このままいけば、悟空はビームサーベルによって真っ二つになってしまう。

 

「でやぁ!」

 

 悟空はビームサーベルを白刃取りした。

 

「な、なに!?」

 

 悟空はビームサーベルをそのまま投げ捨てた。

 

「でりゃりゃりゃりゃりゃ! おりゃあ!」

 

 隙だらけとなった胴体に連続パンチをくらわせた後、蹴り飛ばす。

 ヤムチャは吹き飛ばされるが、壁に激突することはなかった。

 

「……あんまし効いてねぇな」

「いや、そんなことはない。痛みがないってだけで、損傷率は結構なもんだ」

 

 ヤムチャの装備は正しく鎧だ。衝撃吸収が十分にされるため本体までダメージが及ばない。しかし、形あるものは必ず壊れるものだ。強い衝撃を加えればいつかは壊れる。損傷率はヤムチャのHPそのものだと考えていい。ヤムチャに直接当たれば、下手をすれば一撃でKOだ。

 

「痛みがねぇってだけで結構ずりぃよな。オラなんて火傷覚悟でびーむさーべる?っちゅうもんを掴んだんだぜ」

 

 悟空は、手に気を纏うことでダメージを削減して掴んでいた。それでも熱を完璧に遮断できるわけではないので当然悟空の両の掌は火傷を負っていた。

 

「確かにそうかもしれないな。しかし、驚いたぜ。ビームサーベルを躊躇なく掴むなんてよ。さすが、悟空だ」

「ヤムチャもな」

 

 悟空は素直に感心していた。道具を使っているとはいえ、セルとの戦いでは事実上の戦力外であったにもかかわらず自分にここまで肉薄することができている。彼らしく強敵(ヤムチャ)との戦いにわくわくしていた。

 

「時間もない。時間切れなんてオチは嫌だからよ。次の一撃で決めようぜ」

「あぁ、いいぜ」

 

 両者の気が大きく膨れ上がる。建物が崩れないか心配になるレベルの大きさだ。設計上は地球が壊れても問題ない強度なので大丈夫なはずなのだが、この戦いを覗くイーヴィは壊れるのではないかと不安さえ感じるほどの高まり方だった。

 

「かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……」

 

 悟空はかめはめ波の準備を始めた。

 ヤムチャもかめはめ波を使えるが、あえて使わないことにした。仮に同じ強さで同じ技がぶつかり合うなら技量が上である方が勝つ。悟空の方がヤムチャよりも明らかにかめはめ波を使い込んでいる。パワー云々の前にかめはめ波の技量が悟空の方が上だと判断したからだった。そのため自壊覚悟でリミッターを解除し自壊覚悟で突っ込むことが最善だと判断した。そのための構えは自身の技たる狼牙風風拳であった。最高の速度で最高の一撃を叩き込むことだけを考えることにした。

 

「波ぁーーーっ!!」

 

 悟空が放ったかめはめ波に真正面からぶつかりに行く。

 

「はぃいいー!」

 

 かめはめ波に突っ込んだのはいいものの全く押し返せる気がしない。耐えるのが精一杯だ。だが、まだヤムチャには奥の手が残っていた。

 ヤムチャは、悟空と戦う前にイーヴィにこんなことを言われていた。

 

『多分、それでいい勝負ができると思うけど、どうしても勝てないと思ったときはこういうといいよ』

 

 機体性能を限界を超えて引き出すための合言葉。それは

 

「トラ〇ザム!」

 

 本来のそれとは違うが、機体をオーバーヒートさせて最高のパフォーマンスを引き出す。その代償として、異常な熱を持ち自らの体を焼き、使い終わったときには機体が駄目になってしまう正に諸刃の剣だった。

 

 ヤムチャはかめはめ波を一気に押し返していく。

 

「くっ、なんてパワーだっ!」

「はああああああああ!」

 

 後、もう一歩というところまで来た。ここで一撃、一撃を当てれば勝てる。

 

「はぁっ!!」

 

 悟空はここにきて、かめはめ波の威力を上げた。

 

「う、うおおぉおおおお!!」

 

 そして、勝負は決する。

 かめはめ波の衝撃によって、瓦礫は土埃となり煙幕の様になっていた。それが晴れた先には

 

 

 

 

 

 

――ヤムチャが立っていた。

 

「なっ!?」

 

 さすがの悟空も大きく力を振り絞った後にすぐ動くことはできない。

 

「悟空……俺の…か……ち……」

 

 ヤムチャは勝ちを確信し拳を振り上げた。しかし、振りかぶった拳は悟空に当たることはなく、鎧は粉々に砕け散りインナーだけの姿になって倒れた。

 

 ヤムチャは悟空をあと一歩のところまで追い込んだが、敗れてしまった。道具を使ってまで挑んだ戦いであったのに彼の悔しさは大きなものであろう。

 そして、悟空もまた本来であれば負けであったかもしれない戦いをしたことで前にも増して一層鍛えることを考えるのであった。

 

 

 

 

 




おまけ

イーヴィにとって予選はすべて思った通りに進んでいた。だが、彼女にも誤算はあった。

「バレーボールにガ〇ダム……ネタにしかならないと思ってたのに思いのほかシリアスに……な、なにを言ってるのか(ry」

などと供述している模様。


作者的には、予選でちょっと熱い展開にしすぎて本戦の影が薄くなるのではと戦々恐々としております。

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