森で見つけた蛇達に、与えられ、救われ、壊してしまった話。
この私が短編を、書くことに久しぶりに成功しました。
久しぶりにしては少し重いですかね。
よくある後悔の話。
茨の様な蛇が私にしゅるしゅるとじゃれついてきた。
不思議と怖さはありませんでした。
ただ異常な程に可愛く、愛おしく思いました。
しゅるしゅると動きながらしゃらしゃらと舌を出しながら鳴くのです。
どうしてかそれが嬉しそうに聞こえたので、その小さな頭を撫でてしまったのです。
チクリと、手が痛みました。
慌てて手を離しました。
慌てていたもので蛇の方も驚いたようでしたが、ごめんと謝りながら手を見ました。
どうやら傷はついてないようです。
何度見たって傷は見当たりませんでした。
つまりは気のせいでした。
神経がどこか過敏になっていたのかも知れません。 そんな気がします。
しゅるしゅるとじゃれてきた蛇はどうやら少し後退してこちらを窺っているようでした。
頭を撫でたと思ったらスグに手を離してしまったのですから、無理もないでしょう。
よしよし。 なんて言いながらごめんよ。なんて言葉を吐いたのです。
いきなり現れた蛇にそんな言葉を吐いているのです。
もしかしたら傍から見たらやばいヤツじゃないでしょうか。
ですがそんな事は気づけません。
それにしてもこの蛇とてつもなくかわいいのです。
完全に意識を持っていかれていました。
どれ位たったのでしょうか、気付けばもう一匹の色違いの蛇が私の周りをクルクルクルしゅるしゅると徘徊しているのです。
これもまた不思議と怖くはありませんでした。
それどころか懐かしささえ覚えました。
私はどうしたのでしょうか。
こちらもまた愛でていたら、奥から緑の蛇がやってきました。
こちらはほかの2匹とは違いじゃれ方が違いました。
違いに戸惑いながらも気付けばまた違う蛇達に囲まれていました。
青とピンク。 挙句の果てには水色。
自然界では有り得ません。
似たような蛇が色素だけを変えて存在するだなんて。
中にはアルビノなんてものもあるようですが、それにしたって数が多すぎます。
そんな事普通に考えればわかるはずなのですが。
それらが全てとても愛おしくなってしまったのです。
彼は、そんな蛇に囲まれながら楽しく過ごしていました。
そんな日々でした。
最初の2匹が仲違いをしてしまったのです。
目立った喧嘩と言うものではありませんが、奇妙なものでした。
お互いがお互いに違う事を思っているような。
何かを取り合う子供のような。
そんな、感じでした。
次第にそれらは大きくなり、白羽の矢が彼にたちました。
どちらかを決めろと。
なんのことかわかりませんが。
話を聞くと。
何かを取り合っているらしいのです。
それで何故私が判断しなければならないのかがわかりませんでしたが。
私は悩んだ末に最初の蛇を選びました。
蛇はそれは、それは大層に喜びました。
身体をくねらせ、絡まらせその気持ちを表現しました。
それと対照的にもう1匹は今まで通りに、かつ、今までより熱を落とす、と言う言い方が正しいのかがどうかはわかりませんが。
あまりじゃれなくなりました。
それからどれだけだったでしょう。
数週間か1ヶ月か、それくらいです。
蛇が気になるのです。
甘えてこなくなった方です。
話しかけても、別にと言わんばかりの態度を貫いては、選んだ蛇はそれを嫉妬しているのでしょうか。
わかりませんが、それだとまるで。
いえ、自惚れはよくありません。
私はこの問題を抱えました。
右手がチクリと傷んだきがしました。
それからどれだけたったでしょう。
書庫に引っ込んでいたので時間の感覚がわかりません。
何日経ったのか、何時間経ったのか。
全くわかりませんが、青い蛇がおしえてくれました。
「大体2週間だよ」っと。
そんなばかな。
少し時間を無駄にしすぎました。
急いであの蛇たち、特に選んだ方の蛇の元に向かいました。
経緯を説明しては、書庫で何していたのかを逐一説明しました。
幸いと言うべきか怒ってはないようです。
それからまた、私は、私達は日常に戻りました。
二つの違和感を抱えて。
二つの問題を引きずって。
またそれから数週間後です。
私の考えていた違和感が実をなして、爆発したのです。
例えが物騒でした。
別に違和感と言う木が育って爆発する実をつけたわけではありません。
ただの比喩です。 比喩的表現というやつです。
私がなぜあれほどまでに必死になったのか、書庫にこもり、時間が経ったことを悔やんだのかです。 その正体に気付いたのです。 気付いてしまったのです。
そして、それをトリガーにもう一つの違和感も身をなしたのです。
それは、例えようのない罪悪感でした。
深い闇のような。
そんなものでした。
うまく例えられないので、これで勘弁してください。
それからは大変でした。
蛇にろくに謝る事もできなかったのですが。
天邪鬼です。
もっと端的にいえば子供でした。
気付いた想いがそれを邪魔するのです。
その程度なのかと。
わけがわかりませんでした。
もう泣きそうでした。
また書庫にこもりました。
泣きませんでした。
数日後に、外に出てみれば世界が変わっていました。
例えようのない違和感が身体を蝕むのです。
全てが変わらないのです。
ですが、全てが変わっているのです。
書庫の近くに青蛇はいませんでした。
――――それからの日々は気が狂いそうでした。
そんな日でした。
そんな日々でした。
そんな拷問でした。
そんな贖罪でした。
しゅるしゅると聞こえていた音も聞こえなくなりました。
何をしても上手く行きません。
蛇達に協力してもらった生態レポートも上手く纏まりません。
それとは別の任務も上手くいかなくて誰かに当たりたい気分でした。
ですが、当たる相手といえば書庫の本たちしかありませんでしたので、ひたすらに散らかしました。
それはそれは足の踏み場もないほどに。
気付けばまた時間が経っていました。
とてつもなく、巨大な後悔と、恐怖が襲いました。
何故だったのか。
今はまだ知ることは出来ません。
出来ませんでした。
どれほどたったのでしょうか。
赤と緑の蛇がおしえてくれました。
聞けばそれほど時間は経っていませんでした。
なのにどうしてでしょう。
取り返しがつかない気がしました。
そして気づくのです。
どこにもあの蛇がいないことに。
気付いてしまったその瞬間走り出しました。
それはそれはがむしゃらに、みっともなく走りました。
色んな人達に頭を下げました。
色んな人達に協力を請いました。
色んな蛇達に聞き回りました。
そして、やっと、見つけたのです。
彼女と――――青蛇の姿を。
とてつもなく重いハンマーで頭を殴られた気がしました。
私より先に、彼女を見つけたのです。
彼が。
2匹は不器用にしゅるしゅると絡み合うように道をすすみ始めました。
その姿が見えなくなるまで私は声をかけることも出来ずに、ただ、その場に立ち尽くしていました。
その姿が茂みに消えると同時に右腕が痛みを、激しい痛みを訴えたのです。
思わず悲鳴をあげながら、右腕を抑えるのです。
生暖かい温度が左手をぬめらせました。 多量の血、血液でした。
みると右腕は異形へと姿を変えていたようでした。
バキバキに割れた腕から、皮膚下から鋭い棘が幾つも突き出しているのです。
異形と言うにこれほど相応しい腕があるでしょうか。
頬を濡らす涙に気が付きました。
もう腕に痛みはありません。
ですが溢れるのです。
腕とは別の、別のところが異形とかしたのかも知れません。見えないところを見ると、背中や、内部にあるのかもしれません。
しゅるしゅると音が聞こえました。
私の身体で遊ぶあの子の音でした。
あの温もりはもうありません。
残り香を残してと言う言い方は相応しくはないのでしょう、なんせ蛇です。
冷たい捕食者です。
そんな冷たい蛇に私は温もりを感じていました。
心の底から、その温もりを感じていました。
不器用すぎたのかも知れません。
今ならまだ走れば間に合うのでしょうが、足から生えた棘が地を刺しているのではないかと思うほどに動けませんでした。
「ああ……」
「遅かった…………」
零した言葉を涙が地に打ち付けました。
ただただ流れました。
ただただ溢れました。
ただただ愛していました。
Thank You For Reading……。
続編の構想をねりねりなう。