-宇宙世紀0079-

サイド7に侵入し破壊の限りを尽くすジオン軍のMSであるザク。
それらを撃退すべくガンダムに乗り込むアムロ。
しかし、そのガンダムは意思を持ち会話することができるMSだった。
 
 

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喋るガンダムさん。

 

 

  -宇宙世紀0079-

 宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んだ。

 やがて戦争は膠着状態に入り、八ヶ月あまりが過ぎた頃…

 

 

 この物語は数あるコロニーの一つであるサイド7から始まる。

 

 

  ***

 

 

サイド7に侵入したジオン公国のMS(モビルスーツ)ザク。それが2機。うち一人、手柄を焦った新米兵士によりサイド7内部を攻撃、地獄と化し、それによりアムロは親しい知人を亡くす。

 

 

「こいつ、動くぞ?」

 

『なんやワレぇ? 人が気持ちよく寝とるときに…

 オマケに緑色の一つ目の変なのがさっきからカツンカツン豆鉄砲ぶつけてくるし…』

 

 

状況を打開すべくガンダムに乗り込んだアムロ。マニュアル片手にコンソールを操作しているとスピーカーから見知らぬ男の声が流れてきた。

 

 

「だ、誰だ!?

 

『なんや坊主、人様の名前を聞く前に自分から名乗る。…って誰かから教わらなかったんか?』

 

「今このサイド7はジオンから攻撃されているんだぞ!?

 

『まぁ、ええわ。自分が住んどる所でドンパチ始まったらテンパるのは、しゃあないわ。

 先ずはあれをどうにかしないとな? ほれ奴さん、やる気満々だぞ?』

 

 

触れてもいないのに起き上がるガンダム。突如立ち上がった白いMSに2機のザクは動きを止める。

 

 

『覚えときぃ坊主、ワイは「ガンダム」っちゅうモンや』

 

「え、ええぇぇっ!!!?

 

 

アムロはガンダムを名乗る声の主に困惑する。今乗っている機体の名称が「ガンダム」だからだ。

両者が会話をしてる間にもサブマシンガンを撃ち続ける片方のザク。

しかし撃った銃弾がガンダムの装甲を貫くことはなく、一つ残らず跳ね返る。

 

 

『このダボハゼがァ~!? 人様が会話しとる時ぐらい黙れんのか!?

 

 

弾切れを起こしたのか銃弾の雨が止んだところを接近し、ザクの頭部──その口にあるチューブを素手で掴み引き千切る。

 

 

『ちぃっ、やはしパイロットが操縦せんと滑らかに動かんのォ…』

 

 

忌々しそうに吐き捨て、もぎ取ったチューブを後ろへ投げ捨てるガンダム。

 

 

『おい、坊主』

 

「はいっ

 

 

操縦をしていないのに独りでに動くガンダムを見て呆気に取られていたアムロ。急に声をかけられて声が裏返る。

 

 

『チラッと見えたアレが何なのかは言わんでも分かる』

 

 

コックピットの画面に映し出されたのはザクの襲撃で巻き添えになった人間たちの遺体。そのどれもが軍服を着ていないことから民間人だということが分かる。

 

 

『軍人が軍人を殺るのはしゃあないが…

 覚えときぃ坊主、軍人が民間人を殺ったら、ただの虐殺やで…』

 

「…はい」

 

『そんで坊主はそれが赦せないんだろ?』

 

「…はい」

 

『なら俺たちがやることは一つや、あいつらに目にもんを見せたれ

 

「はいっ

 

 

不利を悟った1機が後ろ姿を見せながら跳躍、離脱を始める。

 

 

『坊主、ポン刀──〝 びーむさーべる 〟っちゅう武器が仕込んでるハズだ。そいつを使え

 

 

背中にある二対の細長い白い突起物。そこへ腕を回して、それを抜き取るとピンク色の実体のない光の束──刃が生まれる。

逃げたザクを追いかけるように地面を蹴って跳び、すれ違いざまに背後から斬りつけ宙で上下に分断、綺麗に着地すると同時に背後で爆発四散する。

 

 

「よくもジーンを

 

 

仲間を討たれて逆上したのか残る一体が名を叫びながら飛び掛かってくる──がビームサーベルの切っ先でコックピットを突かれ停止。突き刺したビームサーベルを引き抜くと仰向けになって倒れた。

 

 

『ふん。カタギに手を出すアホにはお似合いの末路やな…』

 

 

抜いたビームサーベルを元に戻しながら動かないザクに向かって言い捨てるガンダム。

コックピットを貫かれてできた穴を見てザクのパイロットは絶命していることだろう。

 

 

『そういや坊主の名前は何なんだ?』

 

「…アムロ・レイです。そういうあなたはいったい? 連邦軍のMSは人工知能でも組み込まれているのですか?」

 

 

戦闘を終えて冷静さを取り戻したアムロ。当然、疑問に思ったことを口にするものの…

 

 

『知らん』

 

 

キッパリと言い切られて絶句、二の句が告げられないでいる。

 

 

『さっきのドンパチでここも長くは持たんぞ坊主。コイツらは見たところ偵察部隊なモンだし、本隊は別だろ。

 ここを出るにしろ、本隊を叩くにしろ、早めに行動をした方がいいぞ?』

 

「…フラウが心配だ。先ずは避難場所へ向かおう」

 

『ん? 女の名前だな、もしかして坊主のアレか?』

 

「そんなんじゃないですよ。ただの幼馴染みってやつです」

 

『かァ~~~っ、出たわ。定番のセリフ。それを聞かされると殺意が沸くから今後禁止な?』

 

「ええぇぇっ!?

 

 

これが後のジオン軍に「化け物」と恐れられ、そう呼ばれるようになるアムロ・レイとガンダムとの出会いである。

 

 

  ***

 

 

『気をつけろ坊主 あの赤いのは戦闘慣れしとるで

 

「分かってますよガンダムさん でもあれを倒さなくちゃ

 

『こっちのチャカはこれ一丁しかないんだぞ 無駄玉を撃ったら勿体無いだろがボケぇ!?

 

 

戦闘の余波で壊滅したサイド7。そこから脱出を試みるホワイトベース。しかし赤い彗星と呼ばれるMSが立ちはだかる。

 

 

『安心せい奴さんの武装じゃ、こっちの肌を傷つけられん。可能性があるとしたら接近戦による殴り合いやで坊主』

 

 

ガンダムさんの目論見通りにサブマシンガンによる連射を止めて、高速で近づいてくる赤いザク、その蹴りがガンダムさんの腹部──アムロがいるコックピット目掛けて放たれる。

 

 

「……何だと!!!?

 

 

渾身を込めて放ったであろうザクの蹴りを、ガンダムさんは片手で絡めとるようにして受け止めていた。

 

 

『貴様がキックなら、こっちはパンチやワレぇ!!

 

 

右腕を大きく振りかぶって、ザクの顔面に拳を叩き込む。

 

 

「くぅっ!? 連邦軍のMSは化け物か!?

 

 

頭部の損傷を受けてアッサリと撤退を始める。

 

 

『気をつけろ坊主。おそらくあの男とこれから何度も命のやり取りする仲になると思うで…』

 

「できれば二度と会いたくないんですけどね」

 

 

画面には赤い彗星のように尾を引いていく赤いMSの姿が映し出されていた。

 

 

  ***

 

 

幾度との出会いと別れによりアムロは成長していき、やがてジオン軍から恐れられる存在にまでなった。

 

 

『お前がシャア・アズナブルか?』

 

 

足のない……にも関わらず通常のMSよりも巨大なMSがシャアに話しかけてきた。

 

 

「驚いたな、人工知能はここまで発展したのか?」

 

「いえ、そんな物を取り付けたハズはないんですが…」

 

「でも普通に喋ってるぞ?」

 

 

アムロがガンダムさんと出会ったようにシャアもまた運命の出会いを果たした。

 

 

  ***

 

 

『あのタボハゼがァ、ワシをここまで痛め付けるとは恐れ入るぜェ…』

 

 

シャアが乗るジオングとの戦闘により左腕と頭部を失ったガンダムさん。

 

 

「ガンダムさん、もう戻りましょう。このままでは死んでしまいますよ!?

 

『アホ抜かせ、やられたまんまで帰ったら男が廃るわい!!

 アムロや、お前に戦うべき相手がおるようにワシにも戦うべき相手がおる。

 それがあのジオングとかいうアホんだらだ』

 

「ガンダムさん…」

 

『あのジオングはワシがどうにかしたるから、お前はコックピットから出ておきな…』

 

「ガンダムさん」

 

『何だ?』

 

「アムロ、行きます」

 

『おう』

 

 

コックピットからアムロが抜き出し、残ったガンダムさんが歩を進ませていく。

やがてMSが自由に動けるほどの広間に辿り着くと同時にビームライフルの銃口を真上に向けて発射した。

 

 

『やはし、そこにおったかジオングのアホんだら

 ワシからの地獄への餞別だ しっかりと受け取れぇ!!

 

 

ガンダムさんの放った光線は見事に命中した。

しかしジオングもまたガンダムさんに向けて口からビームを発射していた…

 

 

『アムロや、これが男の生き様じゃあぁぁぁ─────っ!!

 

 

MSを飲み込むほどの極太の破壊光線の光の中、装甲が熱でアメ細工ように変形して溶けていき、やがて……跡形もなく爆発した。

 

 

「ガンダムさぁぁぁぁぁ─────っ!!!?

 

 

その光景を見ていたアムロは涙を流し、名を口にして叫んでいた。

 

 

そして…

 

 

  -宇宙世紀0080-

 この戦いの後、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

喋るMSがいてもよくね? …と思って執筆しました。


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