古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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depth.156永夜異変 中

「はい、私はここまでだよ。あとは自力でどうにかしてね」

因幡の白兎に連れられてきた先は、昔ながらの塀で囲まれた屋敷だった。それもあまり年季が入っている様には見えない。

時間が進まない永遠亭であるからこそなのだけれどそれでも改めて見るとなんとも言えない。

「私がどうにかするわけではありませんよ。解決するのは巫女達です」

まあともかく彼女の役目はここまででしょう。あとは後任の方がいらっしゃると思うのですけれど……

「そっか…じゃあ頑張って巫女を誘導しないとねえ」

 

貴女は結局どちら側なのでしょうね。言葉を聞く限りじゃ異変に対抗している様にも見えますけれど実際やっているのは異変解決をしようとする方達の妨害とも呼べる行動。

何が目的なのか……少しだけ気になってしまうけれど今はその真意を探っている時間はない。

「それにしても…お出迎えがないのは寂しくないですか?」

 

「そうだねえ…寂しいとウサギは死んじゃうからなあ…鈴仙がいると思うんだけど見当たらないなあ」

 

目の前の門は固く閉じられていて、少しも開こうとはしない。まあ向こうだって月をすり替えれば早かれ遅かれ妖怪から攻撃を受けると予想しているはずですからね。

それに向こうは解決されて欲しくはないはずですから。

「どこかで誰かと戦っているんじゃないでしょうか?」

そう問いかけてみたけれど返事は来ない。どうしたのだろうと思って隣を見ればてゐの姿はそこにはなく、普通の白ウサギが一匹だけ佇んでいた。

どうやらこの子が代わりの案内人らしい。

そっとしゃがんで様子を見れば、私のすぐそばに近づいてくる。

「……それじゃあ案内してくれますか?」

隠れているサードアイは心を読み取ったりはしないけれど、確かにその子は肯定の意味で頷いた。

兎が門の方に向かって走り出す。

それを追いかけながらのんびり歩く。

ある程度行ったら止まって私を待ち、ある程度近づいたらまた先に行く。

賢いウサギですね。

そして可愛らしい。撫でたいです。撫でさせてはくれませんけれど……

 

 

兎が門を開けろと言っているのだろうか、扉を爪で引っ掻き始めた。それだけで傷ができるとは思えないけれど意思くらいは伝わる。

 

開けてみようとその扉に手を当ててみれば、急に背後に気配を感じる。

さっきまではなかったもの。てゐのものかと一瞬思ったけれど降り注ぐ殺気と刺々しい視線をプラスすれば彼女ではないと理解する。

本能が理解より先に体を動かす。

瞬間、閃光と爆破が繰り返し発生した。

降り注いだ弾幕を咄嗟に展開した障壁で防ぐ。

不意打ちはダメですよ。しかもあれ全部命中コースじゃないですか。

「またお客さんですか?」

気づけば目の前には紺色のブレザーと同色のスカートにシャツを着たウサギがいた。

「なんともな言い方ですね」

 

やはり先発で誰かが到着していたのでしょう。ですが彼女が健在ということはもしかしたら…いやもしかしなくても確定である。

「相手をするのは貴方が初めてですよ」

しかしわたしが初めてだと言う。どう言うことだろうか?

「じゃあまたとは……」

 

「忘れてください」

触れられたくないのだろう。余計なことを言わなければまだバレない?そんなことは通用しない。

「……ちょっと謎解きに付き合いませんか?」

 

「戦いながらと言うのであれば」

 

「そうですか…しかし私は敵対したくないですしヒトを待っていても良いでしょうか」

そう、あくまでも私は霊夢の様子を見たいのだ。敵対しようと言うわけではない。

「でしたら是非家に帰ることをお勧めします」

やっぱりダメですか。ナニがそこまで彼女を奮い立たせるのやら。

 

「では少しだけ……簡単な推理を披露してからにしましょう」

勝手にやれと言わんばかりに臨戦態勢のまま私を睨みつける。その瞳に映るのは狂気か正気か…

「分岐した歴史内で誰かと戦ったのは一回ですね。現時点で貴女が体感している時間進行上は初めてでしょうけれど」

 

瞬間、世界が歪みそうになった。

咄嗟に目を瞑り、その光を遮る。

「貴女…まさか月の関係者?」

何も見えなくなったその視界で、彼女の声だけが響く。

この問いは彼女にとって最も重要で意味を持つものだ。

答え方を間違えればそれは牙を剥く。

 

「いいえ、私はしがない妖怪ですよ。ですが…姫様とは知り合いです」

 

体にかかる空気が一瞬だけブレた。

体をひねる。

少し遅れて靡いた外套に穴が空いた感触がした。

その穴がサードアイを外に向けて解放する。

 

視界情報は入れない。入れたら彼女にとってはただの鴨。

素早く彼女の思考と行動を読み取る。

 

ついでに癖と仕草、性格と五感の感じ方。予想外の行動を取られた時、思考をほとんどせずに出す動きの癖とパターンを理解しなければ、負ける。

「……なるほど…」

同時に読み取れたのは分岐したもう一つの世界の記憶。どうやら彼女は輝夜さんの協力で分岐した歴史を体感しているようですね。

理由は……純粋に強くさせたいから。ですか……彼女らしいと言うかなんと言うか……

開けることのできない視界の中にサードアイが読み取った彼女の行動パターンが擬似的な視界情報として入ってくる。

それを元に弾幕と彼女の位置を割り出し、避け続ける。

流石にここまで避けられるのは想定していなかったのだろう。向こうは焦り始めた。私は今サングラスをかけているからウサギからはわからないでしょうけれど目を瞑っているんです。そちらの意図には乗らないんです。

「どうして⁈なんで上手くいかないの!」

どうやら向こうもそれを分かっているらしい。

「知っていれば対処法は生まれるんですよ」

 

「まさか…!」

ああ…口を滑らせました。あまりこう言うことは言わないでおきましょう。

さて、いつまでも避けているだけでは終わりませんし、あいにく木々の位置を確認するので少し目を開けたい。

腰のホルスターから二丁の大型拳銃を取り出す。

久しぶりにこれを使う気がする。本来なら弾幕ごっこでは使えませんからねえ……

ただ今回だけは特別です。いや…持ってきている武器がこれくらいしかないですしスペルカードもそんなに持ってきていない。3枚だけなので使い切ったらもうどうしようもない。

 

重たいそれを持ち上げ素早く引き金を引く。反動を腕で受け止めつつ素早く次弾を放つ。

左右合計で20発。

「……⁈」

その重たい音を聞いたウサギは危機回避のため回避に専念をした。

地面にめり込んだ弾が土を吹き上げる。

 

1発が彼女の腕のあたりをかすめた。普通の大きさの弾丸ならそれくらいではたいした傷にはならない。だがこれは13.6ミリ弾。下手をすれば対戦車ライフルより威力は上だ。

そんなものが掠めれば、それだけでもかなりのダメージになる。命中すれば?人間はばらけますね。

 

鋭い悲鳴が響き渡る。

どうやら掠めたところがかなりえぐれたらしい。骨を砕かれなかっただけ良かったじゃないですか。

ああ動脈?どうにかしてください。

 

「う…ぐ……」

流石にあの痛さでは動けなくなる。その場でうずくまってしまっている。

「こんなことを言うのもあれですけれど大丈夫ですか?」

 

ちょっとやりすぎたかと思いゆっくりとウサギの元に行く。

傷口を確認しようとして目を開いた。

その瞬間、視界が歪む。狂気の扉が開かれた。

赤みがかったサングラスの内側で私自身の瞳が赤く光っているのを理解シタ。

 

「やったっ!」

ずっと術をかけるタイミングを見計らっていた?いや…ずっと能力を入れたままにしていたのだ。

目の前のウサギが立ち上がる。それは現実か虚構か…ゆったりとした足取りで私に向かってくる。

その手には小さな刀。次の瞬間にはその刀が私の首元に突き立てられる。あとは彼女が力を入れればそれはあっさりと私の喉を引き裂き、頭を撥ね飛ばせるでしょう。

動かない?動けない?いや…動く必要がない…これは私の体から出てくる確信。五感が幻覚により惑わされているこの状況で唯一頼れるものだ。

 

うさぎの頬が大きく裂けたかの様に三日月を作り出す。

そこからつながるか細い腕がその細さからは想像できない力で私の喉に刀を突き立てた。

本来は引いて斬るその刀が、力技で強引に突き立てられる。結合部が緩くなった頭が首から外れた。

 

「勝った!」

兎が大喜び。

実際そうでしょうね。現実の私は戦闘不能なほどのダメージをどこかにおっておるはずです。ですけれど…

「いいえ…貴女は間違えてしまいました」

 

「え……?」

 

幻覚によって視界は既に歪み理解の乏しいものが出ている。

だけれど問題ない。なぜなら……

「貴女も味わってみない?理解不能の恐怖がどれほどのものかを」

 

私だって同じことができるんですよ。ついでですのであなたのそれ想起させて頂きました。

これで前のよりもっと…感触からナニからを完璧に出来る。

 

「想起……」

ウサギの波長を強引に乱し、介入し、塗り替える。

急にウサギが悲鳴を上げ始めた。うるさいですねえ…もうちょっと黙りましょうよ。人ならざるものなのですから。

 

なんで逃げるんですかあ?

まあ……それからは逃げられないのですけれど…うふふ。最後まで生き残れるかしら。

 

 

 

 

 

ようやく視界が現実のものとなるとすぐ隣でウサギが一匹震えていた。

というよりうわごとの様なものを呟きながら逃げていった。

あれ大丈夫でしょうか……

私自身途中から記憶が曖昧なのだけれど…きっと彼女の能力の影響でしょう…

 

気づけば先ほど閉まっていた門は開いており、兎はその奥にいた。

やはり付いて来いとこっちを見つめて待っている。

 

それに続いて門を入れば、背後で扉の閉まる音が聞こえる。

後戻りはもうできない様だ。

 

しばらく建物めがけて歩いていると、地面に誰かが倒れているのが見えた。

近づいてみればそれはレミリアさんと、咲夜さんだった。

私の足音が大きかったのか元々そう言うのに敏感だったからなのか、咲夜さんが急に起き出した。そのまま反射的にナイフを突きつけられる。

 

「落ち着いてください。敵じゃないですよ」

 

「ああ…さとり様でしたか」

失礼いたしましたとナイフをしまう咲夜さん。

それを横目にレミリアさんの隣にしゃがみこむ。

「……レミリアさん。起きてください」

少し肩を揺すれば、寝方が悪かったのか或いは寝起きはあまりよくないのかかなり嫌な顔をしながらゆっくりと体をあげた。

「ん…咲夜?じゃないわね…」

まだ寝ぼけているのか呂律が少し回っていない。

「咲夜さんでしたら少し前に目を覚まされましたよ」

ちなみに今隣でお嬢様お嬢様と結構うるさい。別に気絶していただけなんだから大丈夫でしょうに……

 

ようやく意識がしっかりとしてきたのか私の顔を見つめて何かを理解した様だ。まあこの姿じゃ声くらいしかさとりだとわかるものないのですけれどね。

「あなたまでここにきているなんてね」

 

「まあ…色々と理由がありますからね」

見守っていたいですし。

「それはそうとして……倒したのね」

倒したが何を示しているのかはわからないけれどおそらくあのウサギのことでしょう。どうやら彼女の能力に半分支配されかけていたようだ。

「気絶してしまったので正確に倒したかどうかは不明ですけれど…」

もっと正確にいえば途中から能力の影響によって記憶の一部に障害が発生してしまっている。だから正確なことは言えない。実際逃げちゃましたし…まあ大丈夫なんでしょうね。

 

「それで、ここから先に行くんですか?」

いくら吸血鬼と従者でもさっきまで気を失っていたのだし、気を失っている合間に精神的なダメージを与えられた可能性だって否定できない。

 

「そうね……」

あ、これは完全に行く気ですね。

「夜の王がこの程度で倒れていたらダメに決まっているでしょう」

そりゃそうですけれど……まあいいか。

「でしたら頑張ってくださいね。私はここでしばらく待っていますから」

 

「あら霊夢達を待つの?」

ええ、もともとこっちにきた理由はそれですからね。ここで待っていれば確実に来るでしょう。ほら遠くから爆発の音がしていますよ。

 

「そう、なら私たちは先に行かせてもらうわ」

そうしてください。でもさっきみたいにやられないでくださいよ。

「分かっているわ。さっきのは不意をつかれただけよ」

 

不意をつかれないようにしてくださいよ。

 

 

 

「よっと、永遠亭にようこそって言いたいところだけれど招かねざる客のようだね」

 

「当たり前でしょ。異変解決で招かれるなんて面倒じゃないの」

 

「うんうん、招くってことは罠がある証拠。そしてそう言う場所は異変から巫女を遠ざけるためのトラップでもあることが多いからねえ」

 

「あんたよくわかっているじゃん」

 

「えへへ」

 

 

 

 

 

 

 

結果から言わせてもらうとあの後霊夢達は来た。

縄でぐるぐる巻きにされた目の赤いウサギを引き連れている。道案内をさせていたのだろうか。でもてゐの姿は…ああ、いました。門の外で他のうさぎと一緒にいますね。

 

もちろんすぐ近くで顔を晒すわけにはいかないので物陰に身を寄せて隠れていたのでこちらには気づいていないでしょうね。

紫は何か気づいたようですけれど言わないことにしておいたのでしょう。

それと…なぜこいしがいるのよ。まさか私を探しに?でも今飛び出したら確実に正体が露見する。それはそれで困る。ただこいしには後でわかるように伝えておくことにしよう。少し面倒だけれど……

だから黙って4人が通り過ぎるのを待っていた。

 

「ねえ、さっきから誰かに見られているような気がするんだけれど」

 

「奇遇だな。私もだぜ」

 

普通に通り過ぎてくれると思ったらそうはなってくれなかった。

全く鋭いですねえ…

霊夢と魔理沙が足を止め周囲を見渡し始めた。視界からは見えないはずの位置にいるけれどあの2人ではすぐにここを特定するだろう。

勘の良い子は嫌いです。

「……もしかしてお姉ちゃん?」

 

「可能性はありますわね…でもそれはそれで面倒ね」

紫もこいしも事情はある程度理解している。だから私がここで見つかるのは困るということも分かっているだろう。

止めに入ってくれることを祈ったものの、下手に動くと逆効果になりかねないから動こうにも動けないようだ。

 

仕方ありません。このままではこちらに気づく可能性があります。ここは誘導も兼ねて…

「あっちね!」

「建物の中に入っていったぞ」

 

足音を少し大きく立てながら建物の中に飛び込む。土足厳禁なのでもちろん靴は脱ぐ。

 

建物の中はなんの変哲も無い日本家屋だった。ただ、それにしては少し違和感があるというか…視界が少し変に感じる。

少し歪んでいるような……襖を開けると少しだけ歪むのだ。その感覚に思い当たる節があり、記憶を掘り返してみればようやくその正体にたどり着いた。

「なるほど……迷宮ですね」

紫に境界をいじられ迷宮化した家に閉じ込められた時と同じ感覚だった。

 

あの時も部屋を超えるたびに似たような感覚が発生していたのだ。

 

「……侵入者対策ですね」

 

安易に入ってはいけないですね。迷いました…

本来なら戻る選択肢があったのですがすでに部屋を越えてしまった。今から戻っても入った場所に戻ることは出来ない。

 

仕方ない進もう。

地図があるわけでも攻略方法があるわけでもない。この迷宮は進むしか方法はないのだ。

 

先に行ったレミリアさん達もここに迷い込んでいるはずだし私を追いかけてきている霊夢達だって同じだ。ここからは誰が最初に突破できるか……

霊夢達が先に行って欲しいのですけれど…だって見守りたいですし……

 

「……ああ、兎さん」

 

目の前にあったいくつかの襖を開けていくとそこにはさっきまで一緒にいたあの兎さんがいた。

私を待っていてくれたのだろう。私を見つけた瞬間ゆっくりと動き出した。ついてこいということですね。

 

行き先不透明なのでこれはありがたいです。

今度ご飯を作ってあげましょうか。

 

 

 

 

 

ウサギに続いて部屋や廊下を行ったり来たり。時々窓のある部屋を通過すれば、月の位置を確認してどの辺りにいるのかを気休め程度に測ったり。

そんなことをしつつ三十分ほど経った。進んでいるような気はするけれどまだ着くには足りない…そんな雰囲気が支配している部屋でひときわ大きな扉の前でウサギが止まった。

ここを開けろと言うのだろうか?さっきまで自分で開けて入っていたのに…まあ何かあるのでしょうね。

 

開けたら、そこは広大な庭だった。

振り返ればさっき入ってきた扉はそこにはなくて、ただ廊下が続いているだけ。

立派な日本家屋によくある池付きの庭…ただその大きさは通常にあらず。かなり広いと言える。

そんな広大な庭は塀に囲われたその向こう側には長く伸びた竹林が広がっている。どことなくこの場だけ異空間に閉じ込められたと言った感じの物語に出てきそうな雰囲気だ。あの先に行こうにも行くことはできない。そんな雰囲気を漂わせている。

 

そんな庭と竹林を眼下に望む位置では、いくつもの弾幕とレーザーが飛び交う戦場になっていた。

戦っているのは霊夢と魔理沙。紫とこいしの姿はない。周囲にも気配はないから逸れたのだろうか?

まあいいや。しばらくはあれを見ておこう。

戦っているのは…八意永琳のようですね。ありゃ手を抜けない。霊夢がどこまでいけるのか……心配はしていませんけれどね。

 

 

 

 

「っち!厄介ね!」

左右に現れては後ろに流れていく弾幕を横目に再度攻撃。

命中コースで飛んで行ったその弾幕はやっぱりさっきと同じようにどこからか出てきた弾幕によって跳ね返され相殺されてしまう。

魔理沙のマスタースパークもよくわからない原理で無効化されてしまう。あれは反則だと思う。と言うか反則よ!

「まだ弾幕ごっこに付き合っているだけマシだと思いなさい」

 

そうね…正直あんたらにとっちゃこんなものただの遊びでしょうね。

手を抜いているのか何なのか知らないけれど倒されても文句言わないでよね!

 

弾幕の密度もかなりのもの。派手さと言うより確実に敵を落とすためだけの弾幕ね。これ回避不能弾幕じゃないの?

 

なんとなく弾幕のタイプは見ればわかる。それに回避ルートも直感を信じて動けば問題ない。

あとは私の体が直感についていけるかどうか。

一歩でも間違えれば確実に意識を刈り取る弾幕の中では少しのミスも許されない。

 

「魔理沙!足止め出来ているの⁉︎」

足止めしてくれるとか言ってた割に全然私の負担軽くなっていないんですけれど!

「すまん‼︎これは無理だぜ!」

 

ああもう!無理なら最初から無理って言いなさい!

あと後退するな!その位置なら前の方が安全よ!気休め程度だけれどね!

 

あの医者がなにかを構えているのが見えた。

あれは…弓?

 

「……回避!」

勘が警告を告げる。あれはやばい。

弾幕の中を半分強引に突っ切り射界から逃れる。幸いにも展開されていた弾幕のおかげで狙いを定めることはできていないみたい。

それでも勘が放つ警告は治まらない。あれはそれだけやばいやつだ。

 

今度弾幕ごっこするときは反則にするわよ!

 

彼女の手から矢が解き放たれたのが見えた。

 

その矢は周囲の弾幕をまとめてかき消し、激しい風を周囲に引き起こす。

バランスが崩れかけたけれど大丈夫、これくらいの風問題ないわ。

それよりも矢の行方よ!

 

魔理沙と私の合間を抜けるように飛んでいったそれは、私たちの上に飛び出して……月の光によって怪しく輝いていた。

 

次の瞬間、矢が爆ぜた。

何本もの光の筋が襲いかかる。

とっさに上昇する。複数の攻撃が来る場合は常に攻撃が来る方向に向かって飛ぶことって教わったから。

こうやって常に視界に捉えて、回避に専念することができる。

ふと魔理沙の事が気になって下を見れば、やっぱり真下に向かって逃げていた。地面までそんなに距離がないのに何やってんのよ!

でも魔理沙なら逃げ切れるわ。見たところこの攻撃は直線攻撃のようだからそこまで難しくはない。

でも…

「1発だけで終わりだと思ったかしら?」

 

「まだあるのかよ‼︎」

 

最悪だわ。このまま周囲から攻められたらいくら直線攻撃でも被弾する。

大元を叩くしかなさそうね。難しいけれど……

弾幕ごっこに付き合ってくれているなら…その終了条件だって理解しているでしょ‼︎

相手は下……この位置なら…

 

一撃で仕留めたい。

魔理沙もこっちの意図に気づいたようね。ならよろしく‼︎

こちらの意図を読み取った彼女が突っ込んだ。それと同時にこちらも動く。

普通にスペルを切っても訳の分からない防御で跳ね返されるのがオチ。ならば…

魔理沙に攻撃を集中させているうちに直上からの急降下。

流石にこれは対処しなきゃまずいでしょ。

 

「くっ…」

再び矢を構えられる。今度はさっきのようにずらすことは出来ない。直射ね。魔理沙はあの距離じゃ間に合わない。

 

来るわね…でもその矢がちゃんと当てられるかしら!

視線が交差する。

 

周囲の光景がゆっくりと進んでいく。

 

動くタイミングは…ここ‼︎

私の体が動いたのと矢が弓から放たれたのはほぼ同時だった。

 

でも僅かに間違えた。修正は…間に合わない!ええい!どうにでもなれっ‼︎

少しだけ遅い回避。その差が致命傷になってしまうことなんてよくあるのに…

 

だけれど私に当たるはずだったその矢に何かが接触。軌道がズレて私の横を僅かに擦りながらあさっての方向に飛んで行った。

「…へ?」

 

突然のことで思考が停止しかける。でも戦闘中にそんなことはできない。

すぐに手に持っていたスペルカードを宣言させてもらう。

「霊符『夢想封印 改』‼︎」

あんたのその弓、一度射った後の反動が強いんでしょう!ならこれを避けるのは無理ね!

スペル宣言をすると同時に急制動。急降下で得ていた加速を強引に止める。

それでも近づきすぎた。地面に体が叩きつけられそうになる。幸い手足で踏ん張れたから墜落は免れたわ。

 

でもさっきの矢がズレたのは……魔理沙じゃないし魔理沙の位置じゃ間に合うはずがない。

まさか誰か近くにいた?

 

 

 

 

 

「ふう…危なかった…」

 

霊夢が急降下を始めたところで何か嫌な予感がしていたのですがまさか本当にああなるなんて。

永琳さんの口元が一瞬だけ笑っていたからなんとか対応できましたけれどそうじゃなかったら危なかった。

やったことといえばなんということはない。ただ矢を拳銃で狙撃しただけ。それにしても硬いですねえ…13.6ミリ弾でさえ軌道をずらすだけしか出来ないなんて…

小石を弾いただけでは命中しても軌道をずらすことはできなかったでしょう。

早撃ちは得意じゃないんですよ。そもそも銃を撃つのはホルスターから抜いてセーフティを外して目標に向け引き金を引くなんて面倒な動作を挟みますから。

即応性だったらそこら辺の小石を握って弾いた方が早いですよ。実際今手に持っていますし。

ええ、ノーモーションで撃てますから。

妖怪の体なら銃弾並みの威力で放つこともできますし。

 

まあ…何はともあれ霊夢は無事に永琳さんを倒せたと。

ならば早めに移動しないといけませんね。

 

入ってきた扉は無いにしろ、廊下の扉は一枚だけある。ここに入れと言わんばかりの存在感ですね。まあいいでしょう乗ってあげます。

 

その扉を勢いよく開ける。

「あ、お姉ちゃん」

その扉の向こうにはこいしがいた。

その隣にはあの兎が佇んでいた。誘導してきてくれたのだろう。

ありがと。

「こいし…ようやく合流できたわね」

 

「ほんとだよ‼︎あそこで勝手に先に行っちゃうからこうなったんだよ!」

プンスカという効果音が聞こえそうな表情でこいしが抱きついてくる。それにつられるように隣にいたウサギがこいしの頭に乗っかる。

「あれは仕方がないでしょう。見つかるわけにはいかないのよ」

 

「そうだけど…心配したんだからね!」

ごめんなさいね。心配かけちゃって…

「妹に心配されるほど私はやわじゃないわよ」

 

「そう言って前回ボロボロになっていたのは誰!」

私ですねごめんなさい。でもあれは仕方がないじゃないの…それに生きていれば回復できるから大丈夫よ。貴女だって似たような体質でしょう。

「鬼の四天王相手は例外ね」

 

「例外が多いよ」

そうね…だからなるべく戦いは避けているわよ。

実際さっきだってほとんど戦闘は避けたつもりですからね?え…全然避けていない?そんなことはないですよええ。

 

「まあいいやお姉ちゃん見つけたし後は黒幕を見に行って帰ろうかなあ」

 

「そうね……」

 

「一応知り合いなんでしょお姉ちゃん」

 

「よく分かったわね」

 

「なんとなくね……」

でも黒幕のところに行くのであれば確実に霊夢達と鉢合わせになる可能性がある。困った困った…それに霊夢の成長を見れたので私は満足なのですけれど…

でもこの迷宮を突破するにはここを通過するしかないですよね…仕方がありません。行きましょうか。

 

 

妹を引き連れてのんびりと歩く。先導は兎。私はもう外に出たいのだけれど…連れて行ってくれるのかしらね?ウサギに聞いてもわからない。

「ここの天井を破壊して帰っちゃダメかな?」

やめなさいこいし。その機関砲をしまいなさい。

「結界を張っているくらいなのだから破壊できるかどうか分からないわよ」

 

「そうだよねえ……」

 

ここは素直にウサギについていくしかないわ。

「そこの部屋のようね」

 

襖を開けて移動していたウサギが襖の前で再び止まった。

どうやらここが目的のようだ。

「さて…出口につながっていることを祈りましょう」

 




結論さとり様やばい
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