古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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depth.161射撃能力は無いようで高いさとり

基本的に私は何かに干渉するということはあまりしない。

そう言うと例外が多いとよく言われるけれどこいしやお燐達と比べたら私が周囲に干渉するということは限りなく少ない。多分10倍くらい違う。

なのに私が干渉すると思われるのは私が干渉する事態はかなりの大事であり嫌でも有名になってしまうようなものばかりなのだ。それ故に目立つ。とにかく目立つ。

人間側ではあまり噂にはならないけれど妖怪側では私が動くたびに何かあるんじゃないかとよく言われたりする。

たまに妖怪の山の支配者の一人とか言われているけれどそんなことはない。個人的に天魔さんと仲が良いだけで別に天狗の山を牛耳ったりはしない。でも否定しても誰も信用しないだろうから黙っている。そっちの方が楽だったりするし

 

「少しは否定をしたらどうなの」

 

「ゴムと同じで押したら多分跳ね返るから意味ないですよ」

実際噂を消すのは時間ですし。それでも私の場合百年近く前からそう言われ続けてもう常識のようなものになり掛けていますけれどね。

「どうしてそうなってしまったんだか…」

それは私がひねくれているという事?それともこの世界の常識?

「それにしても貴女の仙界は不思議ですね」

話題を変えたくて仙界の事について聞くことにした。

彼女の作る仙界はかなり独特…というよりどうしてこれなのかと疑うようなものばかりだった。

「見たことない景色でしょ」

自慢げにそう言う彼女の後ろと私の視界いっぱいにはレンガ作りで3、4階建ての建物が並び、石畳やレンガで舗装された道が続いていた。看板に書かれた文字もその街並みも…この世界でずっと生きている身にとってはまさに異世界のような…価値観がひっくり返されるようなそんな感じにさせてくれるだろう。

「いえ……見たことはないですけれど違和感は感じませんね」

だけれど私はこの景色を知っている。正確には前世記憶によって似たような景色をいくつもみているからだ。

「そう?不思議ね……大陸の西端まで行った時の街並みを再現しているのだけれど…」

 

「不思議かどうかは分かりませんけれど…」

 

私だって何百年も前の欧州は行きましたよ。まだこんな感じじゃなかったですけれど。

まあそれでもこの景色を知らなければ異世界と思うかもしれませんね。

これなんて書いてあるかわかっているんだろうか…

英語の筆記体で書かれたそれは素人目には何が何だかわからない。

「これなんて読むかわかります?」

メモに簡単な単語を書いてみた。さあなんて読むんです?

 

「マデジャパ」

 

made in Japanなんですけれど…

なんですかその新たなる言語…まさかここにある全部の文字わかってないんじゃ……

「いや、見たものをなんとなく再現しただけだから…」

言語の壁って恐ろしい。

 

 

「そう言えば貴女切られた腕はどうしたんですか?」

そこらへんにあった椅子とテーブルを持ってきて腰を落ち着かせれば、彼女が私をここに連れてきた理由を問いただす。この時期になって腕についてのことで話しておきたいことがある…絶対厄介ごとに決まっていますね。

「あーあれね…一応保管してあるんだけれど……ただ…」

ただ?何でしょうか…

「最近腕自体が意思を持って自立しようとしている…ですか」

 

「ええ、前から兆候はあったから封印して仙界に閉じ込めていたんだけれどね。これ以上は抑え切れそうにないの」

 

「どうするんですか。どう考えたって封印を破ろうとするものに良いヒトなんていませんよ」

ただでさえ封印は相手の人格に強い影響を及ぼす。それにしたいことができない状態に長い合間置かれていればそれこそ解放された時の反動は大きい。

溜め込んだ感情はエネルギーとなって現実を暴れ狂う。

 

「だから手伝って欲しいのよ」

私にですか?私なんかより巫女の方がこういうのは得意でしょうに…

「妖怪退治の巫女は?」

私は妖怪退治は専門じゃないので。

「パス。あの子には荷が重すぎるわ。最悪私は博麗の巫女を殺めかねない。今の幻想郷にとってそれは最もまずいものよ」

なんでそんな当たり前のことをみたいな目で見つめるんですか。私が手伝うことは全然当たり前じゃないですよね!しかも巫女が妖怪に関わるトラブルを解決しないでどうするんですか。

「霊夢が死ぬレベルは私も死に兼ねませんよ?」

 

「大丈夫よ。あんたはあんたが思っている以上に強い。それにあくまで手伝って欲しいだけよ。決着は私がつけるわ」

あ、あくまでも補助なのですね。だったら安心…というわけにも行きませんよ。だって巫女が死ぬかもしれないレベルの補助ってそれ補助と言わない。ただの殺戮戦争か何かだ。

 

 

「言いたくなかったんだけれど…博麗の巫女がダメなのは彼女が人間だから。私の仙界は人間だけ時間流が十数倍になる影響を受けちゃうから仕方がないの…逆に妖怪なら何にも問題はないのよ」

そうですか…まあそういうことでしたら手伝いますよ。恩義だってありますから。

でも……

「危なくなったら貴女を助けて逃げますよ」

 

「それは私が敗北することを意味しているわよ」

茨木さんの瞳が鋭くなる。他の方とは少し違うけれど彼女だって鬼だし四天王だ。それ相応のプライドを持っている。だけれどそのプライドは時に邪魔になることだってある。

「ええ……万が一です」

 

それで怒れる鬼の四天王がこの世に解き放たれる結果を生もうとも…

 

「指導者としては失格ね」

苦笑いする茨木さん。貴女だって結構そういうところあるでしょう。

「大を救うために小を切り捨てる決断をすることは私には出来ません」

実際大を救う為に小をボコボコにしたことはありますけれど……

「まあそれがあんたの良さでもあるんだけれど……」

そうでしょうか?ただの優柔不断。あるいはもっと良い方法があったのにそれを取らないピエロですよ。

「全員救うか全員諦めるかが?」

 

「ええ、そういうところね。そこで全員救う選択肢しかとらないところもね」

まあ、聖人でもなんでもないので全員を救うことはできないのですけれど…だってそうですよ。全員救えるのは聖人か…あるいはやばい人くらいです。

「全員を諦めたその選択をした証拠が残らないだけかもしれませんよ」

何せ目撃証言は無くなってしまうのだから。

 

「そんなことするほどあんたは冷徹じゃないでしょ」

 

「それはどうでしょうか…」

実際人の内面なんてわからないものですよ。表でニコニコしていても裏はものすごくえぐいとかよくありますから。

「そんなんだから勘違いされるのよ……」

 

 

話が途切れたタイミングで茨木さんが立ち上がる。

「……行くわよ」

そう一言声をかけられれば周囲にあった建物や床が液体のように歪み、ねじれて消えていく。移動の類いだろうか。あるいは空間自体が生きていて身震いをしているようだった。

「もうですか?」

 

まだお茶を飲んでいないのですけれど…というか作ってすらいないのですけれど。

「お茶なら終わってからいくらでも飲ませてあげるわ」

あ、茨木さんお茶の入れ方下手なんで指導します。今度ですけれど…

「わかりましたじゃあ行きましょうか」

 

その瞬間歪んでいた空間がきっちりと元に戻る。いや、映されている光景は全く別物であって元の風景の歪みがきっちり…まるでシワを伸ばされたシャツのように戻ったかと言われたらそういうわけではない。

 

 

それは小さな祠だった。

朽ち果てたとは言いすぎだけれども随分と古びた外見のそれは、恐ろしいほどの瘴気を放っていた。

 

「随分とまあ…溜まっていますね」

最初は薄かったのだろうし今も出る量は薄いのだろう。だけれど封印をされていれば瘴気は逃げ場をなくし一箇所に固まる。ガスとかと違いこれらは自然分解とはいかない。結果として凝縮されていったのだろう。

「ええ…どうにかしようとしたんだけれど結局こうなってしまったの……」

どうにか出来なくてこうなったのならかなり失敗の連続だったのですね。ここまでとは…

「……開けてもいいですか?」

どうせ決着をつけるのだ。私がここで言わなくても絶対に開けなければならない。それを知っているからか彼女も私が開けることには否定しなかった。

「慎重にね…」

わかっていますよ……

 

封印自体はかなりの毒です。瘴気だって濃いものは毒ですのでこの状況は猛毒を猛毒で縛っているという状態。

 

まずは上に付いているお札だろう。比較的綺麗な方だけれどそれでもかなり昔のものだ。退色が進んでいるそれを怪我をしないように引き剥がせば力のバランスが崩れたのか一気に全体が崩れ始めた。

 

私がゆっくりと扉の封印を解除した瞬間……

轟音を立てて扉が粉砕された。破片が周囲に飛び散り消滅する。咄嗟に横に跳びのいて直撃だけは避けた。

「へえ…やっと出られたぜ」

舞い上がった埃が消えあふれていた瘴気が拡散すると

茨木さんにそっくりな存在が確かにそこにいた。やや茨木さんより背が低くて……あっちも小さい。それに少し口調が荒っぽい。やっぱり荒れていたからだろうか?

「…チビ茨木さん」

つい口が滑ってしまう。

「ああ⁈誰がウルトラハイパードチビじゃ‼︎」

めちゃくちゃ怒られた。っていうかそこまで言ってませんよ。チビだとは言いましたけれど。

「そこまでは言ってないだろ!」

やっぱり身長とか色々気にするんですね。何だか可愛い……

うん、子供の時の茨木ちゃんってこんな感じだったのだろうか。子供時代が存在するのかどうかわかりませんけれど。

「本当にこいつ私の腕から再生したやつなの?」

本人にすら懐疑的な目を向けられてしまっていますよ。確かに性格も口調も全然似ていないけれど多分これは貴女の本質が純粋に体を持ったようなものだと思います。いやはや…普通の妖怪では体の部位が引きちぎれただけでは分裂なんてしないのですけれどねえ。

「ああ、そうだよ。正真正銘私はあんたから生まれた存在だ」

 

「じゃあ茨木2号で」

 

「まあ……悪くはねえが一号は私だ」

何だろうこの……少しパッとしないというか緊張感に欠ける雰囲気。言いたいことは私が本物だって言っているものですけれど…

「…18号でいいんじゃないですか?」

 

「おいしばくぞてめえ」

その言葉を聞きつつ私の体は地面に叩きつけられた。

既にしばいているじゃないですか。

過去形にしなさい過去形に……

 

結局私をしばいたのが決め手になったのか、一気に茨木さんが相手のチビ茨木さんに飛び込む。

私の動体視力が捉えられるかどうかの速度で蹴りと拳が交差しては衝撃波となる。

始まってしまいましたね。

さて、援護しますか。

とは言っても私が頭を上げた時にはかなり離れたところに行ってしまったらしく二人の姿は見えない。

 

 

「さてさて…どうしたものか…」

少しだけ目が細まる。目標は高速で動くあのチビ。

大丈夫?大丈夫……弾は持ってきてある。それも対鬼用の特殊な徹甲弾。

さあ、パーティーを始めよう!

 

腰から出した拳銃を構えようとすると、目の前で爆発。地面が大きく揺れる。

どうやら建物のようなものがまとめて吹き飛んだらしい。破片がこっちまで降ってきたでではありませんか。危ないですねえ……

でもこれでどこらへんにいるのかの見当がつきます。

手に握った黒いそれの安全装置を解除する。

ボタン一つで初弾が装填され、トリガーが引っ張られる。後は引き金をただ引くだけ。

目標は……見えました。

ズダン‼︎ズダン‼︎

引き金を引くたびに体を突き抜ける強い衝撃。

押し殺せない反動が腕を上に刎ねあげる。咄嗟にそれを元に戻せば、こちらに向かってくるのは背の低い茨木さん。その片腕が力なく垂れ下がっている。どうやら最初の2発のうち1発を食らったみたいだ。

私を脅威と見たのか突っ込んでくる速度は速い。でもそれは悪手です。

 

私に注意が言っている合間に背後を取った大きな茨木さんはチビを蹴り飛ばす。

そのまま何回か地面をバウンドし私の前まで転がってきた。

すかさず腕をとって関節を捻り押さえつけを開始。

 

「いででで‼︎離せえええ!」

 

「呆気ないですね」

 

「そ、そうね…でも純粋な力比べでは互角だったわよ」

 

じゃあ戦闘経験が圧倒的に少ないのとセンスがないんでしょうねえ。私の攻撃を食らって真っ先にこっちに突っ込んできていますし…

 

「離せよ!おい!くそおお‼︎」

 

すごくうるさい。

茨木さんもうるさいらしく顔をしかめている。

まあ後は話し合ってくださいね。これは私じゃないですから私は…ちょっと離れたとこで待っていましょうか。

 

両方の肩の関節を外し戦闘継続能力を奪ってから解放を行う。こうしないと不意打ちだと言って攻撃されかねませんし。

 

 

 

そういえばここから出る方法ってあるんでしょうか?




13.6ミリ徹甲弾を高圧高初速で放てる拳銃って基地外だと思います

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