古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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depth.172さとりのお使い

地上へ行くということを決めてから1時間してやっと地上に出れた。本当なら扉を使って数秒で到着するはずなのに…それもこれもお燐が原因なのだけれどべつにお燐が悪いわけじゃないから何も言わない。

 

 

でも地上に出れてからもまたしばらく飛ぶわけだから昼ごろに知らせが入ったのに気づけばもう3時過ぎだった。

「思ったより壊れてはいないのね」

傾きかけた日に照らされその建物は姿を現した。確かに全壊というわけではない。ただ…半壊かと言われたらすごく絶妙なところだった。うまくゴネたら全壊判定もらえそうな感じで……

「そうみたいですね」

まあそんなことは置いておく。実際想像していたよりちゃんと原型とどめていたのが幸いだった。これなら中のものも運出せる。

倒壊と聞いていたけれど目の前にある博麗神社は完全に崩れてはおらず、かなり歪んではいるけれどちゃんと主要部分は残っていた。

鳥居も傾いているけれど一応立っている。

 

それ以外の非耐震補強部や屋根などはかなりの被害をこうむっている。

瓦なんて全部屋根から落ちてしまっている。

 

「でも一度建て替えないといけないわね……」

それでも見た感じで歪んでしまっている場合、本来の建物としての機能は失われたと言っていい。崩れてないのが幸いで家財道具は一応持ち出しできそうだった。

「これの状態で住むのは危ないです」

お燐も流石に同意した。猫なら普通に住む気がしますけれど。

 

でも建物より問題は石畳や階段の方だろう。

耐震なんて考えているはずないのだからこれらが建物より持ち堪えられるなんてことはない。

石畳の多くは波打ちめくれ上がり、階段は真ん中から下が基盤部分から崩れ落ち茶色い山肌を見せていた。

これは地面の基礎が地震に耐えるよう作られていないからだ。

まあ山肌切り崩して石畳を設置しただけだから仕方がないだろう。

 

まあこの辺は今更言っても仕方がないことだし私があれこれ言えるようなものでもない。

 

さっきから姿の見えない霊夢はどこにいるのかしら?

 

「霊夢はどこかしら?」

この神社の主人はどこにいるのだろう…流石にもう異変解決に乗り出しているだろうか…結構時間たっているし。

「会いにいくつもりですか?」

お燐どうして怪訝な顔をするの?べつにそんな危ないことでもないでしょう。

「ええ…そうするつもりよ」

 

「やめたほうがいいですよ。どうせ気が立ってます」

そりゃそうでしょうね。でも気が立っているならむしろコソコソしているほうが不味いわよ。

 

 

建物の裏側から誰かが動く気配がした。2人揃ってそっちに意識を向ける。

しばらくすると柱の陰から霊夢が姿を現した。

「あんた……」

なんとも言えない顔をした霊夢。現状を見てどう思うか考えているのだろう。

「あ、どうも霊夢さん」

当たり障りのない挨拶をする。あまり深く食い込むのは得策ではないから。

「無事だったんだね」

 

お燐…今死体だったらよかったのになあって思ったでしょ。ダメよ。種族柄そうなってしまってもだめよ。

巫女が死んだらおおごとですよ。

「失礼ね、私があれくらいでくたばるはずないでしょ」

それもそうですよね。心配していませんでしたし。

「ところで何をしていたんだい?」

裏手と言うと確か蔵しかなかったはずでは……

「蔵の方の対処をしてきていたのよ」

ああ…そういえば蔵ありましたね。色々とまずいやつとかやばいやつとか保管して封印しておく蔵が……

「大丈夫だったんですか?」

そう聞けば急に怒り出した。でも本気というよりかは半分愚痴のような怒りだった。

「全然大丈夫じゃないわよ!危うく悪霊と怨霊が逃げ出すところだったわよ」

あ…危ない……

あそこに封印されているってことは逃げ出したら結構まずいシリーズ。簡単に言うと動き回り確保が困難な妖怪桜ですから。

逃げ出すのなら是非幻想郷の外へ行ってほしいです。

 

 

 

 

さっきからずっと空を見上げていた霊夢が一言つぶやいた。

「あんた達は関係なさそうね…」

関係ない…脈絡がないからよくわからない言葉だけれど状況を知っている私はすぐに意味を理解する。

「異常気象ですか?」

ある個人の頭の上にだけそれは現れている。あるものは雪、在るものは雷雨。原因は不明だが何者かが仕組んだとしか思えない。

「異常気象?そういえば局地的に雪とか雨とかあったけど…」

一応霊夢も其れなりの気象はあったはずだよなぁただわかりづらいだけで……

「そうよ。全く困ったものよ……」

落ち込んでいるのか声にいつものようなハリがない。そりゃそうでしょう。家が破壊されたのだ。人間にとっても妖怪にとっても家という存在はかなり大きい。心理的なショックは大きいはずだ。

 

あまり話題にすることもないだろうし異変の事で気を紛らわさせましょう。

「一応紫も動いているようですから異変早く片付くと思いますよ」

聞いたわけでもなんでもないけれど彼女は普通に動いているはずである。

「あら、紫も動いているのね」

それも珍しくキレてる事でしょうね。ああかわいそう。

「博麗神社を破壊されたのだから動かないわけないですよ」

彼女にとって神社は思い入れが強いはず。それこそ、博麗の巫女が代々守り続けてきたものですし。何回か立て替えたとはいえ壊されたことはなかったのだから。

「それもそうね……」

風が吹いて私の髪の毛をなびかせる。顔をあまり見られないようにしていたのになんてひどい風ですか。

「なら私はのんびり待っていてもいいって事かしら」

 

それはやめたほうがいいかもしれません。一応行ってあげて…紫を止める役割してください。

「行ったほうがいいと思いますよ。博麗の巫女が異変を解決するんですから」

 

「そうよね……しゃーない。久しぶりにやる気出てきたから仕事するか」

久しぶりなんですね……

 

「そういやあんたらこの異変について何か知っているの?」

何かというわけでもありませんけれど…一応知っていますよ。ただしそれは確証がないから全部を全部話すわけにもいかないけれど…

ある程度ヒントをあげましょうか。

「天候を操るような存在は誰でしょう?」

質問を質問で返すなって目で睨まれたけれど気にしない。

それに霊夢も私の問いに何か引っかかったみたいだ。

「……まさか」

多分想像している存在ですよ。

「正解。さて、お転婆な娘が退屈しているようですよ」

誰とは言いません。だけれど誰かは行けばわかるはずだ。退屈しのぎにこれを引き起こしたのだ。だから必ず行けば向こうから来る。来なくても向こうから…来るのかな?

「なんであんたがそれを知っているのかは聞かないでおくわ」

ありがとう。

「秘密の情報筋です」

 

 

「でもまずはこっちの後始末よ」

さっきまで発生していた怒りのようなものが拡散されていく。確かに霊夢のいう通りで目の前の神社から物を運びださないといけない。このままだといずれ倒壊しますし。

「何名か私の伝手にも声をかけます。取り敢えず安全確保と家財道具の保管が優先ですね」

お燐に頼んで勇儀さん達に事情を説明するように言う。萃香さんならたまに博麗神社に居候していたりするようですので様子を見るくらいはしそうですし。

 

まずは屋根の解体から。といっても各構造材は釘を使わない構造なので引っ張れば外すことができる。想起で鬼の力を使いながらさっさと屋根を落としていく。

「なんか手慣れているわね……」

 

「大破した家の処理はよくやっていましたから」

っていうか現役でその手の問題はやってきますし。

正直半壊した家は中に戻って作業するのが危険なのでまずは屋根を解体する。

屋根裏収納に収めたものもこうすれば簡単に持ち出せますし。

 

屋根の構造材は問題なさそうですので一度バラした後建て替えの時に使いましょう。

小1時間ほど作業をすれば、神社の屋根は完全に解体され屋根裏収納が丸見えになった。

 

「じゃあ家具の引き出しを始めましょうか」

 

「なんであんたが仕切ってるのよ」

霊夢はもう建物の中に入ってしまっていた。私も行こうとしたけれど止められた。見られたくないものも沢山あるのだろう。

 

 

「おーこりゃ建て替えもんじゃねえか」

背後で声がした。首だけ回し後ろを見ると、そこには勇儀さんと萃香さんがいた。

いつのまに来ていたのだろう…気づかなかった。

 

「だれ?ってあんたら…」

霊夢も外が騒がしくなったので頭を出した。そのまま呆れた顔になる。なんだか可愛い。

「そこのやつに手伝ってくれって伝言もらったからな。それに萃香が世話になっているようだし」

萃香さんは知っているけれどその隣の勇儀さんは知らないはず。でも2人の話し方からして同じ四天王であるところまでは理解したようですね霊夢さん。

で、なんで私を見つめるんですか?

「あんた結構な大物じゃないの?」

 

「私ですか?それはどうかわかりませんよ。ただ権力が集まる地位に追いやられたってだけの小物かもしれませんし」

なぜか三人にそれはないって首を横に振られた。

「絶対嘘だ」

ほんとですよ。

 

「ほいじゃあ…箪笥とか引き出せばいいんだろ」

一方的に2人は神社の中に入っていった。霊夢が制止するけれど聞く耳すらもたない。

あ、これ2人とも飲んでますね。

まあ…暴れて物を壊すとかは多分しないでしょうから大丈夫か。

「あたいが監視しておくよ」

鬼2人からは少し遅れて戻ってきたお燐がそう言いながら走っていった。

あ…まあそうしてくれるのならありがたいですけれど。

 

「霊夢、あんたはさっさと異変解決してきな。私らはこっちやっておくから」

 

「……わかった。そのかわり壊さないでよ」

日は既に傾き、もうすぐ夕日になろうとしている。今から異変解決となると夜になってしまいますね。

「わかってるよ」

鬼2人の返事を聴きながら霊夢が私のそばに寄ってきた。何か嫌な予感がするのですけれど…

「それじゃあ行くわよ」

霊夢が私の手を掴み強引に引っ張りだした。え?私もなんですか?

「当たり前でしょ。あんたも手伝いなさい」

私もですか?

「拒否権は……」

 

「そんなものあるはずないでしょ。それに色々知っているみたいだからね。案内よろしく」

 

やっぱりそうなりますか……

でも無下に断るとボコされそうですし……霊夢と戦うのは得策じゃない。

ここは素直に従いましょう。

 

 

「知っているなら案内できるでしょ」

でも天人達の住んでいるところは本来私達が行ってはいけないところですからね。そこのところ留意してくださいね。

「できますけれど……」

 

霊夢が異変を解決するより紫にボコボコにされるほうが早いような気がするのですが…

実際もう5時間以上経っていますし。

それでも天空に行くしかない。

 

「前に冬が終わらない異変がありましたよね」

 

「ああ…そういえばあったわね」

 

「天界へ行くには一度冥界に行く必要があるんです。一応あっちの結界は破損しているので行き来は自由ですけれど…」

「へえ…ずいぶん詳しいじゃないの」

あれ?霊夢には教えていなかったっけ。確か座学の時に説明をしたはずなのですけれど…

 

「まあいいわ!それじゃあ行くわよ!」

 

高度を上げ、雲を突き抜ける。

冥界への入り口自体かなりの高度にあるからそこに行くだけでも一苦労。それに夕日が眩しい。

「眩しいわね…」

 

「サングラスならありますよ」

使う事はほとんどないですけれど朝日や夕日が眩しいと感じたりするときにあったら便利だなと思って持ち歩いているものですけれど。

 

「なにそれ…貸して」

はいはい……

ところでいつまで手を握っているつもりなのでしょうか?

「あ…悪かったわね」

素で忘れてたんですか。霊夢もどこか抜けてるところあるんですね。

「次余計な事言うのなら口を縫い合わせてやるわ」

 

「そしたらどうやって案内させるつもりですか」

 

「…その時は勘に頼るわ」

 

 

 

 

 

「おい!霊夢はどこだ!」

 

「にゃい⁈」

霊夢が飛びだって少しして、背後で怒鳴られた。

慌てて振り返ればそこには息を荒げた藍がいた。

「おや狐じゃないかいいったいどうしたんだいそんな慌てて」

 

「霊夢はここにいないのか?」

 

「霊夢?それならさっき変装したさとりと一緒に異変解決に行ったけど…」

一歩遅かったねえ…用事があるんだったら伝えておくけど…

「そうか…分かった!邪魔したな!」

それだけ言うと狐の式神は隙間を展開しどこかへ消えていった。一体なんだったんだいあれは?

「お燐誰か来てたのかい?」

狐が嵐のように現れて去っていったよ。

「狐の式神が霊夢を探してただけさ」

 

「ふーん…そういや畳どうするんだ?」

 

畳?壊れてないんだったら箪笥とかと一緒に置いておこう。後でまとめて雨よけの屋根を上に乗せるからさ。

さてあたいも屋根作りしよっと……

 

 

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