古明地さとりは覚り妖怪である   作:鹿尾菜

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depth.206紅霧異変 解

ピンク色の狐メイドに案内されて向かったのは少し豪華そうな部屋だった。

豪華なにならないのは結局建物の中と同じ赤色で統一されていたせいで豪華さがイマイチ伝わらないのだ。多分豪華だろうなあ程度って感じだけど。

「よく来たわね。歓迎するわ」

そんな部屋の真ん中でレミリアが巫女達に対峙していた。

あの王座のような椅子…色的に絶対部屋にあっていない。前来た時はなかったから今回のために特設したのかな。

「あんたがこの異変の元凶?だったら早く霧を止めなさい。洗濯物が乾かないじゃない」

なんか姉ちゃんと同じこと言ってる?なんだろうやっぱりお姉ちゃんが教育しただけあるかも。

 

部屋の中で柱に隠れながら見守る。もう直ぐ始まるかな?どうなのかな?

 

「そうだそうだ!この霧じゃ弾幕ごっこだって目立たないんだぜ!どうしてくれるんだ!」

弾幕ごっこやっぱり見えづらいか。なんとなく察してはいたけれどさ。

っていうかここに来るまでの合間に誰と戦ってたんだろう?

「あら、文句があるのなら実力を示してからにしなさい」

 

「じゃあ遠慮なく!」

えー巫女さん早速針投げお札投げはひどいと思うよ。それを蝙蝠に変化して回避するレミリアもレミリアだけれど。あれって能力使ったからかな?

って魔理沙も弾幕放つんだ…

「お姉様1人だけだと思った?」

だけれど魔理沙の弾幕は直前で別の方向から来た魔弾に弾かれた。

「「もう1人⁈」」

 

「フラン、タイミングを計ってないで先に出てきておきなさいと言ったわよ」

 

「かっこよく登場したいじゃん!どうもお姉様の妹のフランドール・スカーレットだよ!」

なんだろう語尾に星がつきそうなテンション。フランちゃんなにに影響されたのかわからないけれどそれじゃあかっこいいじゃなくてプ◯ヤだよ。確かにフランちゃん自分で魔法少女とか言ってたけれど…じゃあやっぱりプリ◯か。

「そっちが二人掛かりならこっちも二人よ」

 

フランちゃんレミリアと連携とかできるの?なんか普段を見ていると連携というより依存になっているんだけれど。

「では私は隅で見守っております」

妖狐のメイドさんは流石に参加しないか。まあ参加するなら最初から参加しているよね。

それにしても、タッグバトルってどんな感じにやるんだろうね。

すごく気になる。

 

「……」

 

「どうしたんだぜ霊夢?」

あれ?あの巫女どうしてこっちの柱見ているんだろう?

「そこ!」

なにを思ったのか霊夢が私の隠れている柱にお札を投げた。爆発が起こり派手に柱が瓦礫になる。

「あ…まず…」

落ちてくる瓦礫をつい破壊してしまった。

 

やばいばれた。

 

「さっきから誰かの視線が鬱陶しったらありゃしないわ!」

うわなんか怒っている。

「招かねざる客のようね」

どうしよう。いくらメイドの格好をしていても流石にこのままじゃバレる。

えっと…こういう時は焦らず安を手の平に書いて飲み込んで…

 

「出てこないならこちらから行かせてもらうわよ!」

 

やばい早くしないと!

ええい!こうなったら…

幻影…もとい空気の屈折を作り出す魔術を行使。

理論上この魔術は光学迷彩の代わりに出来る。カバーできるのが手の腕程度の大きさのものという制約がありあまり使われないけれど。

 

でもこれらはなにかを消す意外にも色々使える。例えば…

こんな感じに妖精の羽のようなものを生み出したり髪の毛の色を少しだけ変えたり。

「……」

 

この姿で霊夢達の前に飛び出す。少しだけ臆病そうな演技も忘れない。お姉ちゃんに教え込まれたけれど弱そうな相手を手にかける相手じゃない限り見逃してくれるんだとか。戦いたくない時に便利だって聞いた。

 

「なんだ妖精メイドじゃねえか。本当にあいつなのか?」

魔理沙の目はごまかせたらしいけれど霊夢の目は誤魔化せてないみたい…

「間違いないわ」

 

一旦逃げようかなあこのままだと弾幕ごっこに巻き込まれかねない。

少し後ろに下がりつつ扉の方に確実に向かう。

「あんな妖精メイドいたかしら?」

 

「新人さんじゃないの?」

 

なんか私に刺さる視線が痛い。今の私は妖精メイドですよー悪い妖精メイドじゃないよ。プルプル。

「まあ妖精ですし害はないですわ」

妖狐のメイドさんナイスフォロー!ありがと!愛している!

 

「まあいいわ。あれも敵ということでまとめて吹っ飛ばしてあげるわ」

 

巫女さんが全然巫女っぽくない。むしろ悪役って言われれば納得しちゃいそう。

しかもしれっと私まで倒す宣言しているんですけれど。やっぱりある程度見れたら逃げよっと。

 

逃げようとする私の側に妖狐のメイドが来た。

「しっかりと最後まで見届けましょう」

 

はーい…

こりゃ逃げられそうにないや…巫女も攻撃してくるだろうし困ったなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なかった…」

あの白黒魔法使いの攻撃を間一髪のところで回避できたのは賭けだった。

本当なら体の一部巻き込まれてもおかしくなかった。うん、私はついている。

 

静かになった湖の畔を何をすることもなくふわふわ飛んでいる。

少し好戦的になりすぎていた気がする。どうしてでしょうか…不思議です。

もしかして紅霧のせいで気持ちが好戦的になっていたとか?

ありえない話ではない。

妖精は心の感受性が極端に高いから周りの状態に行動や感情が左右されやすい。

私もその例にもれない。ただ…少しだけ静かなだけですけれど…

 

「……寒い?」

 

急に吐く息が白くなった。それに合わせて温度が凍りつく。

 

霧の向こう側に誰かの影が薄っすら見え始めた。

「やあ大ちゃん」

 

「チルノちゃん?」

冬でもないのに大人の姿になったチルノちゃんがそこにいた。

冷気がそこから漏れているのか、体の周りを白くなった空気が渦を巻くように流れる。

 

「チルノ…まあそう呼ばれている存在ね」

いや…言葉遣いも声のトーンもまるっきり違う。何者なのだろう?

確かに冬に大人の姿になった時と声自体は同じだけれどそこに無邪気さもチルノちゃんをチルノちゃんたらしめる雰囲気もない。

「貴女は何者?」

完全に氷の女王だった。

 

「私は氷を司る妖精。それ以外の何者でもないよ」

そうだけれど…でもチルノちゃんじゃない。

「この異常気象だもの。人体とか妖怪には影響がなくとも妖精に全く影響がないなんて言えないでしょう?」

 

「じゃあ貴女はこの霧のせいで生まれたというのかな?」

 

「正解。でも少し違うわ。私はただの戦いたいという願望…闘争本能の塊のようなものね」

 

「ふーん…」

なんとなく言いたいことはわかった。ここ数十年はチルノちゃんも満足して戦える相手がいないとか冬になるたび言っていたからなあ…自然を司る妖精は自然が持つ生存本能、もとい他の種との闘争本能も受け継ぐ。

普段はそんなに気にしなくて良いけれどこの異常気象とずっと溜め続けたってのが仇になったんだね。

「私じゃなきゃ駄目なの?」

 

「別に、会ったのがあなただったってだけよ」

そっか…じゃあ仕方がないね。

 

「それで、私にどうしろって?」

 

「言わなくてもわかっているだろう」

 

「わかってはいますけれど教えてくださいよ」

 

「戦いたいのだよ。そうでなければならない。私は戦いたいのだ」

頬が吊り上がり、狂気に満ちた笑顔が広がる。

それにつられ私もいつのまにか笑っていた。何故だか目の前のチルノちゃんと戦うことがとてつもなく楽しく感じる。

折角なのだから弾幕ごっこも交ぜつつ戦ってみたい。うふふ…さっきの不完全燃焼もここで吹き飛ばせるかな?

 

どうやら闘争本能が刺激されたみたいだ。

「弾幕ごっこってチルノちゃんわかる?」

 

「ええ、もちろんよ。カードもあるけど使った方が良い?」

 

「是非ともそうしてください」

面白い戦い方ができそう…そんな本音が思わず漏れてしまう。

「それじゃあ決まりね」

それが合図になった。

大人の姿をしたチルノちゃんがスペルカードを解き放つ。

「雪符『ダイヤモンドブリザード』」

 

チルノちゃんの掌に現れた冷気の塊が小さな氷の粒を周囲に拡散し始めた。同時に青白い弾幕が間を縫って飛び交う。

飛びながらの回避は少し難しい。ならばここで弾幕を迎え撃つのみ。

刀を抜く。青白い光を受けて煌めく刃先が空気を切り宙に模様を生み出す。

一振りするごとに氷の粒が、妖弾が切り裂かれ爆発する。

 

 

「やるじゃないの」

 

「褒めてないですよね」

スペルカードの効果が終わったのか氷の粒も弾幕もいきなり途絶える。それに合わせてチルノちゃんが動いた。

私もそれに合わせて空に舞い上がる。

弾幕を展開。

それを予測していたのかチルノちゃんは弾幕を弾幕で相殺した。

 

「アイシクルソード」

 

その単語とともにチルノちゃんの手に氷の塊が生成される。それらが1メートルほどの大きさに成長したところで、ガラスが割れるような音ともに表面が砕けた。

 

「へえ…そんな使い方もあるんだ」

現れたのは私の刀よりふた回りほど大きい氷の剣だった。切れ味はどうなのだろう?

「剣は大ちゃんの特権じゃないんだよ」

そのようですね!

 

チルノちゃんが剣を振り回す。それに合わせて氷の礫が周囲に拡散して飛び出す。

そういう使い方するんだ…

宙返りと強引な方向転換で氷の礫を回避する。

お返しにレーザーを放つ。

 

刀で防がれた。防御力はそこそこあるようですね。

でも熱は得意じゃないでしょう?

 

力を背中あたりに集め一気に解き放つ。急加速。ある程度開いていたチルノちゃんとの距離を詰める。

そのまま素早く斬りかかる。

青色の火花が散り、刀が氷の剣に防がれた。一度離れて今度は横斬り。予測されていたのかこれも防がれる。

衝撃波が下の水面を叩く。

跳ねあげられた水しぶきが氷の礫となってこちらに飛んできた。咄嗟に体を捻って空中でキックバック。

「やっぱりチルノちゃんは強いね」

 

「そういう貴方も鍛え上げられているだけあるわ」

 

そうですか?そう言ってもらえると嬉しいです。

 

「でも、ツメが甘い。雹符『ヘイルストーム』」

 

っ⁈

急に吹き荒れる冷気の竜巻。巻き上げられた水が氷の柱をいくつも生成し、湖に足場が出来上がる。

そして空から降り注ぐ無数の氷。一つ一つが鋭い棘となって襲いかかった。

思わず真下に逃げ、それが罠だと知った。

背中に衝撃が走る。体に冷たい感触が広がり動きが鈍る。

浮力が無くなり錐揉み状態で落っこちる。

 

「これで貴女は飛べなくなった」

 

チルノちゃんの声が後ろに聞こえて、とっさに弾幕を放つ。

急な反撃に驚いたのか少しだけ隙ができた。

 

持っていた刀を竜巻でできた氷の柱に突き立てて落下を止める。あのままじゃ確実に怪我をしていた。危ない危ない。

 

勢いをつけて近くの段差に飛び乗る。

少し妖力で背中を温めるが一向に氷が溶ける様子はない。羽がなくても飛べるけれど背中を氷で閉じられるとバランスが取れない。

浮くだけなら簡単なんだけれどね。

 

溶かそうとするのを阻止しようとチルノちゃんが飛んできた。この位置からだと少し狙いづらい…折角氷の柱があるんだから…

 

刀を立てつつ氷の柱を駆け上がる。私の周囲に水色の妖弾が着弾し、氷の柱にいくつもの氷の棘が生成される。

あの弾幕に当たったらやばいね…

 

新たに出来上がった足場を蹴り、空中に体を投げる。丁度そこにチルノちゃんが飛び込んできた。

「っ…‼︎」

 

慌てて回避しようとしたけれど遅いです。

咄嗟に目の前に氷の剣を出す。一閃。空に白色の軌跡が生まれ、氷の剣の根元が切断された。

「スペルブレイクでいいんですかね?」

 

「そうかもしれないね」

重力に従って落下する剣先と私…

 

だけれど直ぐに浮遊状態にする。バランスが…おっと……

あまり飛べるわけではなく再び氷の上に降りてしまう。

 

「まさかこれで終わり?」

追撃してこないのでしょうか?もっと戦いたいのに…

「そんなことないわよ」

 

あ、少し溜めが必要なやつですか?じゃこちらから行かせてもらいましょう。

「Fairies mischief!」

 

今度はちゃんと発音できた。

歯車が噛み合うかのように体から溢れ出た妖力がスペルカードを通して弾幕の花を形成する。

 

「それがあなたのスペルカード…」

 

「ええ、どうかしら」

 

「面白い…だが、いつまでそうしているつもり?」

 

チルノちゃんの視線が下に向いた。それにつられて私も足元を見てしまう。

「あ…」

 

いつのまにか這いよっていた冷気が私の両足を氷で閉ざしていた。

引き抜こうと引っ張ったものの、膝下まで氷が覆っておいて既に抜け出せなくなっていた。

このままだと……

 

私の放つ弾幕を悠々と避けながら、チルノちゃんが一枚のカードを出した。まずい…あれは避けられない。

「凍符『パーフェクトフリーズ』」

 

放たれた氷の礫と弾幕が一斉に私に襲いかかった。


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