古明地さとりは覚り妖怪である   作:鹿尾菜

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depth.18 人間とさとり妖怪 上

なんとなく外が賑やかだ。

そう思ったのはいつのことだっただろう。

 

さして大きいわけではないがそこそこ繁栄している里はいつも騒がしいもの。特にこの時間は人々が活発になっている時間だ。

 

だが人の賑やかさには違いがある。100年近く住んでいると自ずとわかってくる。

この騒がしさはどちらかと言えば来客…それも大勢の旅集団がきたときのものと似ている。

 

この時代の旅人は、面白い話を持ってきてくれる人のようなもので娯楽の少ない人々の数少ない楽しみの一つでもある。

だがそれにしては不穏な空気というか少しピリピリしている。

 

招かれざる客といったところだろうか。

 

 

隣で魔導書を読んでいたこいしも外の様子が変だと言うことに気づいたようで、青みがかった瞳がこちらを無言で見つめてきている。

 

お燐は…まあ察しているのだろうが大して気にしてはいなようだ。私達が大袈裟なだけだろうか。

 

まあ言ってしまえば人間が何をしようと気にすることはないのだが…こちらに影響するものであれば手を打たないと行けない。特にこいし達が危険に晒されるようなものであれば直ぐに対処しなければならない。気が進まないのですが、ちょっと様子を見てきましょう。

 

「ちょっと外の様子を見てくるわ」

 

(行ってらっしゃい)

 

 

「お姉ちゃん行ってらっしゃい。あ、そうだ。なんか面白いものがあったら買ってきてよ」

 

面白いもの…まあ本とかそう言うのを買ってこいと言ってるのだろう。

余裕があれば買ってきましょうか。

 

「分かったわ」

 

 

 

昼下がりとは言えまだまだ暑い。

直射日光に当たるのは体に悪いし嫌いなのでこの季節のこの時間は好きになれない。

まあ草木が青々茂っているのは好きなのですけど…そうだ。いつか薔薇を育ててみようかしら。

 

 

お目当てと思われる人達はすぐに見つかった。そりゃ旅人がいれば里の人達も集まっているわけだし場所くらいは簡単にわかる。

目立たないように近づき集まりの中心の方に意識を向ける。

見た感じでは複数名…なにやらここの人達と話し込んでいるようだがどうにも表情が浮かれない。

普段であればもうちょっと楽しそうにするはずですけど…

一瞬、集団の隅にいた巫女装束の女性と目があった。

同時に、寒気がして身体中に鳥肌が立つ。人混みのの中でかき回されてしまっているがかなり濃い霊力が流れている。それが私の肌に照射されたのだ。

いくら妖力を隠しているからバレづらいとは言え気持ちの良いものではない。

軽く会釈して彼女の視界から逃れるように移動する。

 

どんな人たちなのかは知りませんがあまり歓迎されてはいないようです。服装からして妖怪退治や戦闘を専門に扱う人の集団なのは間違いないですが…だとすればこの里に来ても無意味に近い。ここの地域は東の方にある神社ひとつで事足りる程度でしかない。

そして十分離れているにも関わらず鼻をつくような匂いが彼らから漂ってくる。よく嗅いだことのある人か、私のように妖怪である者なら忘れようがない匂い。

「血の匂い…」

 

私の中で警戒度が上がる。ここまで離れて漂ってくると言うことは相当浴びた証なのだ。そしてそのような人は躊躇がない。いわば、理性のリミッターが外れているのだ。

 

すぐ近くにいた酒屋のおじさんの袖を引っ張る。

 

「すいません。あの旅の人達は一体誰でしょう?」

 

私に気づき同時に状況というか何かを察したのか彼は私の姿が彼らから隠すような立ち位置に移る。

「ああ、さとり嬢ちゃんか。ここでは不味い場所を変えよう」

 

「そうですね」

 

そう言って彼は自分の店の方に歩き出す。

黙ってそれについていく。

一瞬探るような目線を感じたが、妖力は出てないに等しい為問題はないはずである。

 

だが怪しまれないうちに早めに隠れよう。

 

 

 

おじさんに酒屋の扉をくぐる。店内は様々なお酒の匂いが混ざり合い絶妙な匂いを醸し出していた。

私にとってはあまり落ち着きませんがこいしやルーミアさんはいい匂いとか言ってましたね。まあ悪くはないですけど少し気分が悪くなります。

 

それはさておき、おじさんもとい店主が外の状況を確認してから静かに扉を閉める。なにかやばいことをやってそうな感じですけど実際人間からみればやばいことなんでしょうね。

 

「それで、彼らは一体どこの人たちで?」

 

「あいつらが言うには、都の陰陽師と武士って言う集団らしい。なんでも、全国の妖怪を倒す為に旅をしているのだとか」

 

なるほど、都の妖怪退治御一行でしたか。それにしても変ですね。ここ数百年の合間、襲ってきた妖怪を倒すと言うことはありましたけど人間自身が進んで妖怪を倒していくなんて…

 

「それって妖怪ならなんでもですかね」

 

「聴いた感じでは妖怪なら問答無用らしい。それだけじゃなく妖怪と共存している人間すら場合によっては……」

 

出来ればきて欲しくなかった答えが店主の口からでる。同時に、人間に対して悲しみを覚えてしまう。私自身は人であるにも関わらずだ。

 

 

 

妖怪にだって良い悪いはいるのにそれさえ無視した挙句同じ人間ですら攻撃するとは…ここまでくると相当ヤバい集団じゃないですか。

 

かなり深刻な事態ですね。確かに妖怪に対する態度として間違ったものでは無いのですが…それも行き過ぎてしまえば大変なものである。

 

特にこの里は妖怪の山と共存しているようなものだ。

万が一彼らのせいでどちらかが滅ぶか…たとえ滅ばなくとも今回のことが引き金になり共存関係が崩れれば私だって生活の場を奪われるし色々とこまることが多い。

 

折角友好関係を築けて平穏に過ごせているのにどうしてそれを邪魔しようとするのでしょう…おそらく妖怪退治はただの実績作りで実際は彼らが政治を握る為の手段に過ぎないのでしょう。

ちょうどこの時期は武士が政治を握ろうとしているような時代でしたし可能性としてはあり得る。…だとすればかなり身勝手なものだ。

 

「まあ…あまり気にするな。俺たちが話を通して追い払うことにする」

 

私が顔を伏せて考えているのを悲しんでいると思ったのか店主が安心させる言葉をかけてくる。

人間が悪い人ばかりでないのはわかる。少なくともこの里の人達は妖怪だからと言って差別はしない。

 

「ありがとうございます。ですが、山の方がどう動くか……万が一には備えていてください」

 

そう、彼らがここにきている時点で既に天狗は情報を掴んでいる。天狗の情報網は人間の情報網を凌駕した精度と速さを持っているわけです。このことを知らないなんて言わせない。だとしたら既に対策を立てているはずである。

 

とにかく今回のことはあまり深く関わらない方が良いでしょう。

できる範囲で彼らを支援するのが今の私に出来る唯一の事ですし…

 

力があればなあと思うことは多々ある。その度にそのような力が欲しくなってしまう自らを嫌悪してしまう。誰かを守ったりすることができる力…聞こえはいいかもしれないがそれは結局力であり誰かを傷つけるものに変わりはない。

誰かを守る為に誰かを傷つける。その行いは間違ってはいないのかもしれませんが私は好きではない。

いえ、力自体を否定するつもりはありません。その力に見合っただけの器の持ち主であればその力を正しく使えるわけですしなんら問題もありません。まあたまにやりすぎることはありますけど……

問題は、正しく使いこなせないと過ぎた力は守るべきものすら壊してしまいかねない。

そう簡単に力など手に入れてしまってはそれこそ彼らと同じになってしまう。

だから私は出来ないことを無理にはしない。

 

よく、お燐やこいしからは変わってるねとか言われますけど…

 

 

 

 

 

情報料としてお酒を購入し店を後にする。

あまりのんびりしてられないのですぐに家に向かう。多分大丈夫だとは思うがやはりあの話を聞いた後では心配だ。

最優先はこいし達の身の安全。

 

家に向かうまでの間に何回か目立つ人達とすれ違う。ここら辺では見られないような立派な服。左側に備え付けられた刀…

なるべく目を合わせないように小走りで通過する。態度が不自然かもしれないが違和感が出るほどでもないだろう。

せいぜい怖がられているとでも思っているはずだ。

 

 

目立たぬように、でも素早く家の中に入る。

 

「あ、おかえりーお姉ちゃん!」

 

コートを脱いで部屋に行くと出かける前と変わらないところでこいしが横になっていた

ずっと魔導書を読んでいたのかこいしの横には積み重ねられた魔導書が置かれている。

 

「ただいま、ちょっと大事な話があるからお燐を連れてきて」

 

「お燐ならさっき急用で出かけちゃったよ?」

 

な…なんですと…!

最悪なタイミングで出かけちゃいましたかあの子は!いえ別にそれ自体が悪いと言うわけじゃなくて悪いのは今の外の状況であって決してお燐じゃないですし外に出るなと言明したわけでもない私にもありますけどこのタイミング⁉︎運悪すぎるんじゃないんですかね…

 

「こいし、今から言うことをちゃんと聞いて」

 

「……何かあったの?」

いつになく真剣な空気を察したのかこいしの表情が厳しくなる。

 

 

「詳しくは省くけど、妖怪を無差別に退治する集団が来てるの。これからお燐を探しに行くから家から出ないで」

 

今は時間が惜しい。一応お燐も妖力を抑えることは出来るのだがまだ不安定で実力者が相手ではすぐに妖怪だと看破されてしまう。

事態は一刻を争う状態だ。

 

「私も探しに行くよ?」

 

「ダメよ、貴方は家にいて。お燐を見つけてくるだけだから」

 

本当はこいしも連れて行ってあげたいのだがこの子はまだ妖力を隠すことができない。もし気づかれれば一巻の終わりであるのはいうまでもない。こいしに何かあってからでは遅いのだ。

 

 

今までは隠さなくても良い状況が続いていたから問題は無かったのだが今回は状況が違う。私の性質を受け継いでいるので外に流れている妖力が少ないのがせめてもの救いでしょう。

 

「………わかった」

 

不満そうにしていたものの渋々納得してくれたみたいだ。

 

 

「万が一、日没までに私が戻らなかったらその時は…妖怪の山に行きなさい。もし何か言われたら私の名前を出して柳さんを呼びなさい」

 

「わかった。気をつけてねお姉ちゃん」

 

脱いだコートを再び着直しすぐそばに置いてあった荷物を腰に巻きつけ私は再び家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お燐は結構簡単に見つかった。里の様子がおかしいのは知っていたのかお燐も表立って行動はせず路地をこっそりと歩いていた。

近づいてくる私を見つけたのかお燐の足が止まる。

「あれ?さとり…」

 

複数の猫を肩に乗せてなにやら話し込んでいるお燐の手を優しく掴む。

「お燐、すぐに家に帰るわよ」

 

「ちょ、どうしたんですか。確かに陰陽師が来てるのは知ってますけど…」

急な事態に対応できていないようだ。その気持ちがわからなくもないがどうしても時間が惜しい。

 

「そのことについてよ。彼らの思想は危険だわ。もし見つかったらその場で退治されるわよ」

 

端的に状況を説明する。お燐自身も妖力の隠蔽が不安定なのは自覚しているのか私の言葉に心底驚いているようだ。

 

「え⁉︎そんな奴らだったんですか?」

 

「知らなかったの?」

 

外に出ているのだから知ってるとばかり思っていた。

 

「知りませんよ。あたいが来た時にはみんな自由に里をウロウロしてましたから…観光でもしてるのかなあって」

 

「もしかしてそれって最低二人で動いていなかったかしら?」

 

言われてみれば確かにと首をかしげる。猫耳がぴこぴこと可愛らしく動く。

一瞬触って見たい気持ちに見舞われるがいまはそんなことしてる場合ではないので放置。

「あのね…多分それは里の中にいる妖怪を探しているのよ」

 

「なるほど、効率よく探し出してその場で退治しやすいように二人一組で…」

 

ですのでこうしている瞬間すら危険なんです。わかってくれたなら移動しましょ。

どうやら用事も済んでいるようですしね…

お燐がジャンプしその場で猫の姿になる。

同時にお燐の肩に乗っていた猫が私の頭にとびうつる。あの…髪の毛わしゃわしゃされると困るのですけど…

 

困惑していると服の中にお燐が飛び込んできた。反動で私の体は後ろに仰け反る。

慌てて足踏みをし倒れこむのを防ぐ。

 

「もう、危ないじゃない」

 

にゃーと気の抜けた返事が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

気づかれないかどうかビクビクでしたがなんとか家の前までは無事にこれた。

こいしが窓からこっちを見ている。

安心させるように少しだけ微笑む。

 

「おい、ちょっといいかな」

 

後ろからかけられた声によってその微笑みは一瞬にして凍ってしまった。

(まさか…このタイミングで?)

 

ああもう…最悪です。

 

振り返ると見た所武士と言った身なりの青年が後ろに立っていた。

一見世あたりは良さそうな風格だが、その目に宿る感情は狂気に満ちていた。まるで…生き物を生き物と見ないような…常識が欠如したようなそんな目です。きっと心の中はすごいことになってるのでしょうね。読みたくないので読まないですが…

その目が私の服から顔を出すお燐に向けられる。

品定めでもしているかのようだ。まあ獲物といえば獲物なのでしょうけどね。

そうしているうちに別の男もやってきた。こっちは陰陽道をやっているものなのか別の意味で浮いている格好をしている。

手に握られているのはおそらく非殺傷型のお札。なるほど、生け捕りにして仲間の居場所を吐かせると言った狙いをお持ちのようで…

 

「……何か御用でしたか?」

 

あらかたの観察が終わりそろそろ状況を打破しないといけなくなる。

片足を半歩だけ後ろに下げ問いかける。陰陽師の方が彼に耳打ちをし、ようやく男は反応した。

そして一層笑みを深くしてきた。

 

「その抱えている猫だが、妖力を放っているようでな。見させてもらうぞ」

 

そう言いながら私に向かって手を伸ばしてくる。

どうやら私が普通の女の子だと思って油断しているようだ。

まあ側から見れば妖怪猫をかくまっている女の子としか見えないだろうし…その認識が間違っているわけではない。

 

 

伸ばされた手から逃れるようにバックステップを踏み距離を取る。

誤算だったのは私も同じ妖怪だということでしょうね。

 

「な⁉︎貴様っ!」

 

もうこうなってしまってはどうしようもない。隠していた妖力を解放し屋根に飛び上がる。

 

くそ!こんな時にバレるなんて…

 

「妖怪だ、追え!」

 

天狗の里がある方とは反対の方向に向かって屋根伝いを全力で駆け抜けていく。

騒ぎを聞きつけた陰陽師や武士といった集団がどんどん集まってきたようです。って弾幕撃ってこないでください!危ないじゃないですか!後屋根が壊れてますから!

色も大きさも様々な弾幕が私の後ろで空を切って行く。

やはり偏差射撃はまだこの時代では概念がないのでしょうね。

 

一部の人は空からも追跡を行ってくる。後ろの方で強めの霊力が出現し、人間のものではない殺気を向けられた私はとっさに飛び退く。

(鳥型の式神まで出してきたよ!)

 

なるほど、徹底的に追いかけるつもりですね。

 

振り返れば鷹ほどの大きさの鳥獣がこちらに向かって攻撃を仕掛けていた。

「アナムネーシス!」

右手を後ろに回し追尾弾幕を大量に放つ。照準は飛行している奴ら。

 

放たれた弾幕が飛んでいる陰陽師や鳥獣を捉え、追いかけ回す。数発がある程度接近したのを感知し自動で爆発、空中に花火が上がる。

 

ダメージは与えられないがそれなりに注意は引けた。

 

右に左に不規則な運動をしながら森林地帯に飛び込む。

鳥方の式神は木々の合間をすり抜けることが困難なのか追跡を諦めたようです。

追いかけてくるのは人のみ、だいぶ楽にはなりましたかね…

 

「こいし…ごめんなさい」

 

聞こえないのは承知で謝る。

 

(うう、すいませんあたいがへましたばかりに)

 

「お燐は悪くないわ」

 

そう、今回の件は全く悪くない。運がなかったとしか言いようがない。

取り敢えず今は彼らの追跡を振り切って生き延びることが先決です。

今の騒ぎは天狗側にも伝わっているはずですからそのうち山全体が動くでしょう。なんとかしてそれまで生きていられるかですけど……

 

「私はまだ…退治されるわけにはいかないのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓から外を見ていた私はお姉ちゃんが変な風格の男に話しかけられそのまま追いかけられるのを黙って見てるしかなかった。いや、動けなかったのかな。

もうちょっとで家に入れるって時だったのに……

思わず魔導書を持ってお姉ちゃんを助けようと思ったけど一瞬だけ目があったお姉ちゃんは来るなとこっちに訴えていた。

 

この場で飛び出していっても状況が不利なのには変わりない。わかってはいるんだけど…それとこれとは別じゃない?

 

 

とりあえずあれじゃあお姉ちゃんは帰ってこれそうにない。それにもしかしたらここも危ないかもしれない。

すぐに持てるだけの魔導書を抱えて裏口から家の外に出る。

 

外では人々の怒号や、爆発音が聞こえ、その度に人間たちが私とは反対の方向に向かって走って行く。

人避けの魔術を遂行しながらだからほとんど私には気づかない。

 

お姉ちゃんも派手に逃げ回ってるなあ…多分里にいる妖怪や私を逃がすためにわざと派手に逃げ回ってるんだろう。

 

確か天狗の里の方に行けばいいんだよね。四方八方山だからわからなくなっちゃいそうだよまったく…

 

方角を思い出してみればお姉ちゃんが逃げて言ったのは天狗の里の反対側…

 

このまま私だけ逃げてもいいのかな…

心の中ではさっきの男や妖怪退治の人達に恐怖している。だって命を狙ってくる相手だもん。

でもそんなことで逃げててもしお姉ちゃんに何かあったら…

 

ピタリと足が止まる。

 

とっくに里は出て今は森の中。このまま斜面を登っていけば私は安全なところなのかもしれない。けど、そこにお姉ちゃんやお燐は?

 

 

「……戻らなきゃ」

 

 

柳って妖怪に助けを求めるのもありなのかもしれないけど…聞いた限りじゃ彼もまた天狗。天狗は組織の中でしか動くことはできないから私情で動いてくれるわけがない。

 

頼れないから何もできないんじゃない……やらなきゃ…

 

「ごめんねお姉ちゃん。約束守れないや」

 

きっとお姉ちゃんは私が危険に晒されるのを嫌がるだろうね。

でもそれと同じように私もお姉ちゃんを失うのは嫌なんだよ。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

ひぐらしの声が森中を染めていく。

日は既にあたりを照らすこともなく、宵闇が足音を響かせる時間帯になった。

 

そんな森の中に闇の球体がふよふよと漂っていた。

宵闇は何をするわけでもなくただふわふわと浮いては地面にあたり、時に木に引っかかったり止まったりと規則性も何にもない不思議な動きをしていた。

 

「……そーなのかー」

 

独り言なのか誰かに向けて言ったのか…おとなしい女性の声が闇の中に響く。

 

直後、後方から迫る光で闇は掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう直ぐ日が落ちますね」

 

これで追跡がやんでくれるといいんですけど…

 

(周辺に気配は無いから今のところは大丈夫だね。それより早くこいしと合流しないと…)

 

そう言われてもこいしには妖怪の里の方に行ってと言ってあるから合流しようと思えば合流できるんですけど…今の私では少し無理そうですし。

右の肘を一瞥し、ため息をつく。

そこには服の上から腕を貫くように一本の針が刺さっていた。

おそらく人里を逃げ回ったときに食らったのでしょう。

深々と刺さっている割に痛みは感じないし血も出ていない。体が傷と感知していないのか再生すら始まらない。

不自然だとは思うがこれはもともとそう言った武器なのだ。

 

追尾用の特殊な術式が組み込まれていて術者に常に位置を教え続けさらけ出させる。

他の妖怪ごと一網打尽にする為のものでしょう。

 

お燐いわく無理に抜こうとすると呪詛が作動してとんでもないことになるのだとか。

まったく…とんでもないものを持ってきましたね。

まあいざとなれば腕を切り落とせば良いのですけどそれをするにはまだ早いですし疲れますし…

 

「さとり、なんかあいつら討伐しにきてるよ」

 

人型に戻ったお燐が斜面の下を見てそう呟く。ここら辺は起伏が激しく崖と変わらないような斜面が続いている。

そのため下に向かっての視界はかなり良い。お燐が見つけた人達はすぐに見つかった。

やけに近い。見落としてしまっていましたか。

ただしここら辺は真っ直ぐ歩いて登るのは少し難しい。必然的に遠回りをしないといけないのだ。

まあ、それでも来てることに変わりはないんですけどね。

たとえ逃げてもすぐに追いつかれそうですしいたちごっこなだけ…

 

「お燐、先に天狗の里まで行きなさい。貴方だけなら早いわ」

 

「ちょっと待って、さとりはどうするの?」

 

「私は…彼らの注意を出来るだけ引いて被害を抑えます」

 

もし私がここで逃げ回って奴らをいろんなところに誘導してしまえば確実に被害が増える。

生き残る確率が高くなるとは言えそんなことはしたくない。

 

「さとりだけで大丈夫なのかい?あたいも戦うよ」

 

「ダメよ。貴方はこいしと合流して私のところに連れてきなさい。それが困難なら出来るだけ安全なところへ行って」

 

「でも……」

 

それでも食い下がってくるのか頑なに一緒にいようとする。お燐、気持ちは嬉しいのよ。でもそれ以前に私のそばに居たらいたずらに危険が増すだけなの。わかってちょうだい……

 

「私なら大丈夫よ。だからこいしを頼むわ」

 

「……わかりました」

これ以上やっても私が折れないと分かったのか渋々従ってくれた。

直ぐにお燐は森の中に向かって行く。

 

「あ、そうだ。お燐、これを持ってなさい」

すでに遠くに行きかけたお燐に腰にぶら下げていた物を放り投げる。

 

「これは?……あの時の」

 

使い方は覚えているようですね。なら大丈夫。

 

「いざという時にだけ使いなさい」

使える回数は限られている。それはお燐も知っているし私もこれは切り札として取っておいてほしい。

 

「ありがとう……」

 

「お礼は全てが終わってからにしなさい」

 

走っていくお燐を見届け、人里から出てくる御一行に視線を向ける。

この位置ならよくわかる。さて、どのようにして時間稼ぎをしましょうか。下手に出ても怨みを買うだけですしだからと言って手を抜いたらやられちゃいますし…それにしても数が少ないですね。

 

向こうだってここが鬼や天狗やらがたくさんいるところってわかってるはずだからあんな少人数で来るとは思えません。別働隊がいるのでしょうか?

どちらにせよ倒さないといけませんし…いきますか。

 

手加減できるほど私は強くはない。一気に行かせてもらいます。

 

彼らの頭上に私の影がよぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん…見つからないなあ…」

私の独り言は一段と大きくなったひぐらしのざわめきによってかき消される。

 

「確かにこっちの方に行った気がしたんだけど方向間違えたかなあ…」

 

お姉ちゃんが逃げた方向と時々見かける陰陽師っぽい人たちの位置からなんとなく目星はつけたんだけど…空振りが続いてしまうとなんだか…ねえ。落ち込んじゃうなあ…

そう思っていたら前方から誰かが歩いてきてる。音からして複数人。

すぐに近くの茂みに飛び込み遠くへ逃げる。

もし見つかったらやばいや。

ある程度魔術でどうにか誤魔化してるけど近づかれると流石にどうしようもないし…

 

お、うまくやり過ごせたみたい。良かったあバレなくて…

 

茂みから頭を出し周りを確認。

 

こんな感じに隠れたり逃げたりを繰り返しながら探すこともう三時間。日はとっくに消えて見上げれば綺麗な星空が展開されてる。この夜空の下にお姉ちゃんもいるのかな。

 

 

なんとなく現実逃避をしていたら遠くで爆発音と吹き飛ばされる音が聞こえ、同時に殺気や妖気が辺りに振りまかれる。誰かが戦っている……もしかしてお姉ちゃん⁉︎

だとしたら大変大変!

戦いが起こってる方向に向かって駆け出す。途中で肉片に変わった人と妖怪を踏みつけちゃった気がする。

まあ死人に口無し。残念だけど…

 

 

近づいていくにつれて妖力の波長が明らかになってくる。

これは…あれーお姉ちゃんじゃないけど知り合いの波長……

 

急に視界が開けた。

と言うか周りの木々がなぎ倒されていてそこの場所だけ空間ができていたとしか言えない状態だった。

 

そんな荒地の真ん中に動く人影が4つ…陰陽師三人に追い詰められているみたいだ。どうしよう…

 

って…あ、ん?なんか見覚えある…ってあああ⁉︎ルーミアさん!

 

あれルーミアさんじゃん!どうして気づかなかったのよ私!

あれ完全に追い詰められてるし…助けなきゃ!

 

持っていた魔導書から複数人を同時に攻撃する術式のページをめくる。

 

無詠唱で魔力を流せばいいと言う何気にすごい術式を組んじゃうお姉ちゃんに感謝して術を発動。

 

ページに書かれた魔法陣から淡い緑の光が飛び出て、狙っていた三人に向かって飛んでいった。

 

攻撃に気づいたのか三人がその場から飛び退く。

おっと、躱そうだなんてそう簡単にはいかせないよ。

 

魔法陣にあまり量がない魔力を流し誘導性能を上げる。

 

方向を変えて飛んで来る弾幕に驚いたのか一人動作が遅れる。

まあ仕方ないね。複数人を同時に追尾できる技なんて魔術でしか存在しないんだから。

 

三人のうち一人が弾幕の直撃を受けた。最初に反応が遅れた人だ。

弾き飛ばされた体は地面に叩きつけられ動かなくなる。気絶してくれたみたいだね。

続いてもう一人は…あ、迎撃された。

もう一人も命中直前にお札を撃ち込み迎撃される。

 

初めて実戦で使ったけどうまく使えたのかな…

迎撃されちゃってるからダメか。

 

「くそっ!新手か!」

 

一人が私のいる方向に向かって叫ぶ。勘が鋭いのかな…あれだけで位置を特定するなんて…

まあここに隠れていても戦闘には不向きだし…

 

「こんばんわ。複数人で一人を集中攻撃するなんてね」

 

そう言いながらも不意打ちを食らわせている私はなんなんだろうね。

そんなことを考えているとお札と弾幕が一斉にこっちに飛んできた。

容赦なさすぎでしょ!

 

 

慌てて魔術結界を生み出し攻撃から身を守る。

 

視界が結界で弾かれた弾幕の所為で奪われる。

やば、次の攻撃どっちから来る?完全に見失っちゃた。

それにいつまでも弾幕を防いでいるわけにはいかない。その場から移動しルーミアさんの側に駆け寄る。

 

お札が身体中に貼られ妖力が断絶されてしまっている。その状態で攻撃を受けていたのか…いたるところに傷ができてる。ここまでするなんて…

 

 

「こいし!どうして来たのだー早く逃げるのだ!」

 

「やだ!ルーミアさんを見殺しになんて出来ないもん」

 

本当は怖い。いざ相手と向かい合ったいまだからこそわかる。

相手が本気で殺しにくる恐怖……魔導書を持つ手が震える。

 

でもここで逃げたら私は…一生後悔する気がする。

 

 

 

「っち…獲物がこうも湧いてきてはたまったものじゃないな」

 

「獲物って…見逃してくれないの?」

まるでこっちをただの狩の対象のように見ている言い方に少しイラっとくる。

退治じゃなくて狩りなの?

 

「なぜだ?獲物は狩られる為にいるのだろう。さっさと退治されて消えてくれ」

 

うわ最低すぎる!ごめんこの人生理的に無理。これ心読んだら絶対気持ち悪くなるやつでしょ。しかも目線いやらしいんですけど⁉︎

 

イラついた私は広範囲攻撃の術を起動する。

発射までに時間がかかるけどこの距離なら…

 

「名前はないけど…発射!」

 

 

増幅された魔力の奔流が魔法陣から溢れ出し陰陽師に迫っていく。もう一人は空中にいるのでそっちには妖力で作った弾幕を展開し牽制。

距離があったためか全く当たらないけど…

ただし撃ち続けてもいたずらに力を消費するだけなのでほどほどで止める。

 

魔力砲(仮称)を打ち込んだ方は片膝をついて息を整えている。まさかあれを結界だけで守りきったなんて…

 

「見たことない力だな。貴様何者だ?」

 

「うーん…名乗ったほうがいいのかなあ」

 

「名乗る気がないなら別にいい」

 

-…そう、冷めてるんだね。

 

 

このまま遠距離戦をしててもこっちが不利なのには変わりない。

特に私はルーミアさんのそばから離れることは出来ない。

 

どうしよう…この距離で撃てる魔法なんて限られてるし妖力じゃあまり牽制になりそうにない距離だし…

 

 

まあまずは突っ込んでくる一人目を…

 

「えいっ!」

 

「……がはっ⁉︎」

 

妖力で強化した右手で思いっきりカウンター攻撃。お腹の少し下に深く拳がめり込み一瞬で意識を刈り取る。

むやみに突っ込んでくるからそうなるんだよ…ルーミアさんと模擬戦やってて良かった…

 

「さすがこいしね…」

 

ルーミアさんがお札を自力で剥がしながら呟く。

うーん…初めての実戦でよくわからないや。

 

「はっ、少しはやるようだな」

 

「ねえねえ、やっぱり見逃してくれないかな?お願い」

なるべく戦うのは好きじゃないし、なんだかこの人だけ凄い雰囲気が違う。なんて言うんだろう…なんか浮いたような…術者ってみんなあんな感じなのかなあ。

 

「黙れ雑種が!人間にすらなれない半妖が!」

 

半妖だってバレた。やっぱり只者じゃないじゃん。って言うか今なんて言った?ねえ半妖のどこがいけないの?いってることがなに一つ理解できないんだけど…

 

私が少しだけムカっとしてると唐突に視界から彼が消えた。

右にステップを踏み体を横に逃す。

 

予想通り蹴りが私の真横を通過していった。

 

通過を確認してから体を回し一気に横殴り…当たったけど固いものに弾かれたような痛みが来る。

結界でガードされたみたい。

 

だが私が一旦距離を置く前に向こうがさらに蹴りとお札で襲って来た。

回避に専念しようとして懐まで攻め込まれる。

 

 

つ、強い!

なにこの人、術者じゃないの⁉︎格闘家だった⁉︎

そんな私の疑問を無視するかのように刀のような効果があるお札を四枚展開し斬りかかってきた。

 

必死に防御陣発動させて攻撃を防ぐ。

1発1発が重く、防御陣に蜘蛛の巣状のヒビが走る。

 

このままじゃいずれ突破される…えっと…接近戦は…あった!

 

残っていた魔力のほとんどを流し魔方陣を起動。

その瞬間私の手のひらにずっしりとした重みが加わる。一目見やると一切の装飾がない短刀が二本、しっかりと鞘に収まっていた。

 

そのまま魔導書を少し離れたとこに放り投げる。

ちょっと乱雑すぎるけど今は気にしてる余裕はない。

片方の手に握られたそれの内一つを魔導書を持っていた手に移す。

それとほぼ同時に防御陣がガラスの割れたような音を立てて弾ける。

 

「さっさと失せろ妖怪風情が!」

 

私に向かってくる攻撃を鞘に収めたままの刀で防ぐ。

 

鞘が霊力の直撃を受け消失するが中に収まっていた刃は鈍い光を反射しながらしっかりとお札を受け止めていた。

 

「いやー危ない危ない」

 

でも長期戦は無理だね。そろそろ疲れて来た。さっさと終わらせて避難しないと…そろそろ応援が来ちゃいそうだし…

 

 

「それそれそれ!」

 

相手が動揺した瞬間を利用して一気に攻撃に転じる。やっぱ弾幕を撃つより私はこっちの方がいいなあ。

くるくると舞を踊るように連続で相手に斬り込む。

 

 

「こいし、一体いつそんな刀裁きを…」

 

ルーミアさんが驚いてこっちを見てる。

うん、これはお姉ちゃんから受け継いだ知識にあったのをパクってるだけ、実際にやってみるのは初めてなんだけどね…

 

「小癪なああああ!」

 

「わわっ!怒らないでってば」

 

すぐ近くで怒られるのは嫌なんだけど…あと怒鳴られると耳が痛いからさ。

そんなことを考えながらもしっかりと狙うところは狙っていく。でも確実に避けたり結界を張ったりして防がれる。

 

瞬時に逆手に持ち替えた刀で一気に相手に斬り込む。さっきまでの連続攻撃とは違い今度は結界ごと術者を後ろに弾き飛ばした。

 

大したダメージではないけど大きくバランスを崩したはずだ。直ぐにとどめを刺そうと足に力を入れて詰め寄る。

 

「ちぇいすと!」

 

 

私の攻撃が当たる瞬間、術者が視界から消えた。

なにが起こったのかわからない私の体に激しい衝撃と痛みが来る。

蹴られたと理解するより先に今度は別の痛みが身体を裂く。

必死に体制を整えようとしてみるが思うようにうまくいかず地面に放り出される。

 

「いった…」

 

 

痛さで体が動かない。内臓が破裂したかと思うほどの痛みだから仕方ない。

ただ相手の方が戦い慣れてるというか容赦がないというか…視界が正常に戻った時には目の前に術者がいて術式を展開していた。

 

慌てて逃げようとするけど下半身に力が入らない。

「なんで…あ、れ?」

 

お腹の方を見ると服が横一直線に深く切り裂かれていた。でも外傷はない。

もう一度術者を見ると懐から僅かに刀の柄の部分が覗いていて…僅かに妖気を孕んでいる。

妖刀…これもしかして妖力そのものを断ち切られた?

 

まって、まって!まだこんなところで死にたくないから…誰か…お姉ちゃん!

 

「こいし、逃げなさい!」

ルーミアさんが叫ぶけどこの状態じゃどうあがいてもどうしようもない。ルーミアさんはまだ動けるまで回復はしていない。

 

悔しくて涙が出る。

 

 

 

「こいし!」

 

突然私を呼ぶ声が聞こえる。声のする方に視線を向けると猛スピードで飛んで来るお姉ちゃんが目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…はあ…流石に無理をしすぎました」

 

息を整えながら周りの惨状を見渡す。

斜面を駆け下り真上から絨毯爆撃のように弾幕を降り注がせた結果…あたりは半分焦土になっていた。

 

陰陽師の人たちはそこまで強くなく私の攻撃を受けて完全に伸びている。とは言えど、私自身も無傷でとはいかなかった。

霊力のこもった矢を大量に撃たれいくつかが直撃している。左腕の骨を砕かれたのが一番大きい傷でしょうか。まあ一時間もすれば治るのであまり気にはならないのですが……すごく痛いです。

ただその時の攻撃で追尾用の針が抜けてくれたと言うことが嬉しい誤算ではありますけど……

意識が戻った後に襲って来られるのも嫌なので全員を縛って軽く封印しておく。

 

これで良しっと…

 

さて、お燐達と合流しなければいけません。

向こうはうまく合流できてるでしょうか。

 

天狗の里の方に向かって私は地面を蹴飛ばした。

何か嫌な予感が私にまとわりついているようで自然と気が焦る。

どうしてこんな気になるのでしょう。

 

 

 

そんなことを思いながら飛んでいると魔力の放出を感知した。これは…こいしの魔力。

 

まさか戦闘に⁉︎

 

 

魔力が放たれているところに向かって全速力で移動する。腕の回復に回す力も移動に費やす。それほどまでに時間が惜しい。

 

 

 

 

 

「……こいし!」

 

「っ!お姉ちゃん⁉︎」

 

ルーミアさんとこいしが倒れてるのが見えた時、一瞬視界が揺らぎそうになった。

それでも冷静を保ちこいしを今まさに襲おうとしている輩に飛び蹴りを食らわせる。

ガツンと硬いものを蹴飛ばしたような音がする。どうやら結界で防がれたようだ。まあ攻撃妨害が出来たからよしとしましょう。

 

 

「っち…次から次へと!」

 

相当イラついてるのか怒りながらもなにやら印を組み始めた。

あんな怒っててよく高度な印が組めますね。

 

「こいし!すぐにルーミアさんを連れて逃げなさい!」

 

二人の姿を視界に入れながらも男が動けばすぐに対処できるように構える。

 

「ごめん…下半身がやられて…」

 

「ごめんなさい。私の方も動けないわ」

 

状況は最悪ですね。二人とも動けないとなるとここで彼を倒さないといけないわけか…しかも二人を巻き込まないように…

 

考えれば考えるほど難易度が跳ね上がる。仕方ありません。本気で行きますか。


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