古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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depth3.さとりの知らない小話

あたいはねこ。名前?そんなの無いよ

 

親も野良。ある程度育てられたところでふとどっかいちゃったんだよね。まぁそれが普通だから別にどうでもいいんだけど。

 

唯一違うといえば……人間からよく変な感じに見られるって事くらいかな。

多分毛並みが黒いからなんだろうけどよく分からないね。

 

別にあたいら猫同士じゃどうでもいい話だし気にしてもいないからいいんだけどね。

 

 

一応今はさとりって言う妖怪に飼われている。と言うよりいつの間にか一緒に住んでる。

さとりとの出会いは完全にばったり会った程度だしあたいだって覚りって知っていて出会ったわけでは無いよ。

当時は覚りってまずなんだってとこからだもん。

ただの変わった服を着た少女としかぱっと見みてなかった。

 

どうやら妖力が尽きて途方に暮れかけていたらしい。そんな状態なのに普通に動けるのは不思議だと思うけど…

教えてもらった限りだと覚り妖怪ってのは生き物が考えている事を読む事が出来る妖怪なんだとか。

 

初めて聞く種族の妖怪だった。ま、こっちの考えてることが分かるってのは純粋に嬉しいんだよね。

 

 

いつも無表情か半目で声もあまり抑揚がない。本当そこだけだと不健康に見えるか不気味に見えるかの二択だぞって思うけど本人はやめる気無いみたいだね。一回だけ無表情に薄ら笑いが入った事はあるけど逆に怖いよなんで薄ら笑いなのさ。

 

あたいが怯えてたら直ぐやめたけど。その後「やっぱり難しいですね」って言ってた。

 

何が難しいのやら……

 

普通に笑えば可愛いと思うけどな…

あまり顔に表情が出ないせいか何考えてるのか時々わからなくなることがある。あるいは、何かを考えてるようで何も考えてなかったとか。ま、いいか。あたいの知るところじゃないしね。

 

 

 

飼われてるとは言っても安定した寝床があるってだけであたい自身の生活はそこらへんにいる野良猫と対して変わらない。

別にさとりもそこら辺は気にして無いみたいで、基本用があるときはあたいが眠りに来るときに言ってくれる。

 

……本当は適当なあたりでふらっとどっかにまた行こうかなとか考えてたけどいつの間にかさとりの元に落ち着くようになったってのが正しいんだけどね。まぁそんなんだから数年前から一緒の状態なのだ。

 

別に、生活は悪くない。むしろ良いと言っていいくらいかな。寝床の確保しなくていいしご飯は美味しいのが出てくるし妖怪に襲われるリスクもある程度下がったし。

 

 

 

まぁ、たまに無茶な事をお願いされることがあるのだけれどね。

 

でも今回のような事を頼まれたのは初めてだね。普段は能力の実験体になってくださいだからさ。

またこき使われるのかって感じだけど今回は実験じゃないだけマシかな…

 

だって実験で酷い目に何回あったことか。

 

 

たださ、能力の試験をするたびに何だか落ち込んでるように見えるんだよね普通なら喜ぶと思うんだけど……しかも妖怪なのに人になりすまして人里で半分生活しているんだよね。

 

どんだけ自信がないんだか…あるいは、臆病なのか。

 

 

あたいが出会った中では最も人間に近い妖怪だね。正直人間だよって言われれば普通に受け入れそう

 

 

ま、妖怪も色々あるんだろうね。あたいはそういうのはあまり気にしないけど、むしろさとりのようなのと一緒の方が落ち着くね。

 

他の妖怪みたいに暴れたり力を誇示しようとしないから。

 

 

おっと、そろそろ目的の場所に着いたみたいだ。

 

お寺の門は開いたままと…これなら壁を超えなくても入れるや。壁超えるの大変なんだよね〜

 

壁を越える手間が省けた事に喜びつつ境内に入る。

結構人がいるようだ。ざっと見数十人ほど…入り口あたりでこれだと奥の方にもかなりいるよな。今日なんかあったっけ?

 

人間の取り決めごとってよく分からないからなぁ。こう言うのに詳しい奴街にいたっけ。後で聞いてみよ。

 

 

まぁ、今は関係無い事、確か今はお寺での死角になるようなところとかいろいろ見てきてだったっけな。

 

まさか猫がこんなことするだなんて思いもしないだろう。

そう言う点ではあたいに頼んだのは正解だけど…あ、そうだった。暇な奴ら何人か連れて来れば良かった。……今更いいや。

 

なるべく目立たないように本堂まで進む。

歩いていて感じるがやはり力の流れが出来ている。

 

あたいら猫とかの小動物は妖力とか神力の力に敏感なんだ。

だから寺とか神社のように力のあるところにいたり妖怪と一緒にいたりするとその力の一部をあたいらも持つようになるんだ。だいたいそういうのは式神になったり妖怪化け猫になったりして余生を過ごす事が多いね。

 

現にあたいもさとりと生活しているからか最近まだ周りには分からない…あたいにしか分からない程度で妖力が付いてきてる。

 

別にあたいは化け猫だろうがなんだろうが構わないけど。そしたらそしたらでまたさとりに面倒見て貰えばいいし。どうせやることなんて対して変わらないだろうしな

 

 

考え事をしながらも本堂の床下に潜り込む。周りに人が結構いたが忙しそうにしていたしおそらく見ていないだろう。

 

あまり無茶な事はしなくていいって言ってたし…だいたいこういうところがいいかもしれないな

 

 

 

 

 

余談だけど大体の構造はどこの寺も似たようなものだ。

しかもここ周辺は国のトップがいるようなところ…内装もある程度決められた法則に従って出来ている。そっちの方がわかりやすいからね。

 

ただ、隠れるところを探すってなると話が変わるんだよね。

ここの人間たちがどういう人柄や性格なのかで行動パターンとか気にするところとか変わってくる。

 

 

本堂に出入りする人の動きが見えやすい位置に移動する。出来れば中を見たいが猫が中に入っても追い出されるだけだし…仕方ないからここにしておこう。それに足音で移動する人くらいはわかるからね床下は結構そういうのに適したとこだねほんと。

 

しばらくここにいて様子見することになるかな…ああ面倒。

 

 

 

 

 

お坊さんや住職の人などの動きを耳で追っていたり入ってくる人を見ていたら数時間後経っていた。そろそろ引き上げようかな。

 

 

 

うん…大体の行動パターンは見たのかな。丁度今食事の時間みたいだし。後は隠れられそうな場所を探すってところかな。

あ、そうだ。これがおわったら豊郷耳のところにでも行こうかな〜

なんかくれるかもしれないし。

 

よし、そうと決まればさっさと済ませちゃお〜っと

 

こう言うのって全体の動きを大まかに見れてある程度融通の利くようなところがいいんだよね。食べ物を取るときもそんな感じだし…

 

ってあれとこれじゃ全然違うや。

 

いろいろ見ながら本堂と倉庫の間の道に移動する。

 

だいたい人間が大きく行動を起こす時は倉庫から何かを引き出したりする事が多いよな。

だったらこういったところの道なんかも見て置いた方が良いよね。

 

 

ついでだから倉庫の中も見ていこっかな。

 

倉庫の前までゆっくり移動する。その合間も周りの観察は怠らない。

と言うか妖怪なのに本当にこう言うところに行く気なんだね。まぁ頼まれたからってのが大きいのだろうけどさ。それでも法力と妖力じゃ力の方向性が真逆だしあまり気持ちの良いものじゃ無いはずだろうね。

 

 

 

「ん?猫じゃないか〜」

 

すぐ真後ろで声が響いた。

瞬間的に前に跳びのき後ろを振り返ろうとする。だがそれより早く、伸びてきた二本のか細い腕があたいの胴体をがっちりと掴む。

 

うっそ…あたいにばれずに近づくなんて…そんな…

 

気配の消し方が上手い。その上かなり素早い動きだ。

 

「迷い猫かな?……そうだ!それじゃあ…」

 

掴まれて持ち上げられた状態で身動きが取れない。何されるか分かったものじゃない。怖い…

 

そうこうしているうちに身体に何かが巻かれる…紐?後包みみたいなの…

 

その直後、身体の向きが真反対になる。身体を反対側に向けたようだ。

 

「これを物部のところに持って行って頼んだわよ。いい?」

 

まず目に入ったのは非常に薄い緑色をしたウェーブのかかったボブの髪…そして髪と同色の瞳がこちらの目を覗き込んでいた。

 

 

(物部?なんであたいが持っていかなきゃいけないんだい!)

 

あたい自身は喋ったつもりであったが相手がさとりみたいに心を呼んでくれるはずもない。

しばらく叫んだがどうせ伝わっていないだろう。こくこくと首を縦に降る事にした。

 

それでようやく意思が伝わったのか少女はあたいの身体を優しく地面に降ろしてくれた。

 

地面に降ろされ解放された瞬間、一目散に駆け出す。

ああいう存在は物凄く嫌だ。静かに忍び寄ってきてはいきなりあんなことされちゃたまったもんじゃないよ。

 

怖いからやめてよね!後ろからいきなり掴んでくるのはさ!

 

 

 

…ある程度距離はとった。

後ろを振り返る。さっきの少女はもうどこにもいなかった。

やっぱりああいうタイプは好きになれない。

 

 

……で、物部への手紙だっけ?

 

えーっと…物部ってこの前豊郷耳と一緒にいたあの小さいのかな。

背中にくくりつけられた包みを見る。背中がムズムズして仕方ない。早く外したいけどあたいじゃどうにもできないし…

なんでこんなもん猫に渡すんだかな…

 

 

小走りで豊郷耳にところに向かう。物部って奴が普段何してるかなんて知らないもん。

 

数分ほど走り続けると直ぐに別の寺の門が見えてくる。…が、その門は堅く閉ざされておりそこから中に入るのは無理だった。

 

無理なら仕方がないと諦めたいが、生憎もう一つのルートを知っているあたいとしては諦めるって選択肢はない。

 

裏手まで走る。

 

裏門の端っこの方に小さな隙間がある。もちろん背中にくくりつけられた荷物が引っかかるような事は無い。

 

さて行きますか。荷物を渡すためにあたいはその隙間をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神子様の見舞いに来ると裏口の方に黒猫が佇んでいた。

世間では災いを知らせにくる存在とかなんとか言われているが私は結構猫好きなんだが…それにあの黒猫は前にも見たことがある。

 

そう言えばその時はさとりとかいう変な妖怪も一緒だったっけ。

 

変…いいや違うな。あれは危険な存在だ。こちらがしようとする事をどこからの筋か仕入れてきた挙句こっちに乗り込んできたのだ。

しかもあいつの本質は心を読む事ときた。

正直初めて聞くものだが…心を読むほど厄介なものはない。

 

こちらの思考や秘密が暴露されているのだ。あいつが仏教徒側に私たちと接触した時に得た情報を流されたらたまらない。神子様はそんなことする奴じゃないって言ってたけど信用できるものか。

 

一応仏教徒が薄々気づいているということを警告しにきてくれたようだが行動がよくわからん。何を考えての行動なのか…やはりよくわからない奴は危険視した方がいい。

 

 

ま、霍青娥が思いっきり昨日手中に収めたとか言ってたし計画に支障をきたすことではなさそうだから良いが……

 

 

 

 

「にゃ!にゃ!」

 

 

すぐ足元で下猫の鳴き声に、ふと我に帰る。

どうやら変な事を考えてしまっていたようだ。

 

足元に座る猫の背中に何か巻かれているのが目につく。

 

「猫…なんだこれ?」

 

思わず聞いてしまう。だが猫が答えてくれるはずもない。

ただ、にゃーっと気の抜けたような鳴き声が聞こえるだけだ。

「妾への手紙なのか…」

 

目的の人を見つけたのか自分の足元で座り込んだ猫。どうやら背中の包みは自分宛のものらしい。

 

すぐに紐を外して包みを回収する。

中には蘇我氏の小さく印が押された紙が丸めて入れてあった。

 

「ようやく返事が来たか…ならすぐに準備せねばな」

 

案の定待っていたとある人物からの手紙だった。

返事が来たと言う事は向こうもこの件に混ぜてくれと言う意思の表れだ。

 

そんな手紙を猫に持たせるって時点で変わっているかもしれないがあれはあれで話のわかるやつだ。……やったことは気にくわないがな。

 

 

それとこれとは別…

「にゃ…」

 

「おお、すまぬすまぬ。ご苦労だったぞ猫よ。ちょっと褒美をやるからくるのじゃ」

 

足元でずっと座っていた猫をそっと抱いて建物へ向かう。

暴れないところを見るとこっちの言うことがわかっているのだろうか……不思議なものだ。

猫も猫で悪くはないよな…神子様も好きだって言ってたし…今度生まれ変わったら一匹世話してみるのもいいかもしれぬな。

 

 

 

一旦部屋の前で猫を降ろし中にいる神子様に挨拶をする。

 

さとりが来て以降身体の調子が悪化したのか最近は寝たきりになっている。だからあの時あまり無茶するなともうしたのに……まあ、これから尸解仙だから良いのだが……

「すまない。今日はちょっと…辛くてな」

 

「無茶しないでください。神子様、今は体力をなるべく保たせる時です」

 

一応尸解仙の事は霍青娥に一任してある。

多分そろそろ自分に接触してくるはずだ。こっちも準備しないとな。

 

「にゃ〜」

 

おっと、待ちきれんかったか。スマンスマン。

 

「それでは神子様、一旦失礼いたします」

 

待つのに飽きたのか猫は庭の方に降りて何やら遊んでいた。見ているだけで心が癒される。

 

いつまでも見ている訳にはいかないので女中や料理人が行き交う台所にお邪魔する。

 

そう言えばあの猫は何が欲しいのだろうか…まあ、褒美といっても自分の自己満足だから何あげても良いか。

 

やはり魚だろうか…お、鮎があるではないか。

 

料理長に許可をもらい鮎を持っていく。

猫はやっぱり庭で遊んでいた。

 

猫の元へ行き鮎を見せる。

 

そのとたん猫は飛びついてきた。おおう、すごいがっつきようだ。

素直に鮎を渡すとご機嫌な様子で猫は鮎を咥えて何処かへ歩いていく。

どこに行くのか気になりもしたがわざわざ追いかける気にはならなかった。

 

 

「おっと、そう言えばまだ手紙の中身を見てなかったの」

 

振袖に入れた手紙を引っ張り出す。すでにぐしゃぐしゃになってしまったが気にしない気にしない。

 

ぐしゃぐしゃに丸まった紙を広げて書かれていることを読む。

 

 

 

……さて、予定を早めないといけないな…今夜中に霍青娥と相談じゃな

 

 

 




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