「……お燐⁉︎」
滝の穴から落ちてきた影の元に飛んでいくとそれは、見慣れた黒猫だった。
一緒に落下してきたキスメの桶を浮き代わりにしてプカプカと力なく浮いている彼女をすくい上げる。
ぐったりとしてはいるけど脈はしっかりしてる。水を飲み込んじゃっててあれなところ以外には大丈夫そうだね。肺に水が入って無いか心配だけど
「お燐、大丈夫?」
(な…なんとかね)
「お燐……は大丈夫そうね。よかったわ」
私の後ろで声が聞こえ、振り返ってみると全身ビショビショに濡れたキスメとお姉ちゃんが立っていた。
嬉しさのあまり飛びつこうとしてお姉ちゃんの惨状に目が止まる。比較的傷のないキスメに比べ肌は擦れたような傷がいたるところに出来ているし濡れているにも関わらず右腕からは白煙が小さく上がっている。
「お姉ちゃん……」
「気にしないで私は大丈夫だから」
「でも……」
確かにお姉ちゃんにとってかすり傷なんて大したことないのかもしれない。現に今もお姉ちゃんの傷はフィルムを巻き返すかのように消えていってる。それでも傷が痛々しくて……それに
「服がうまい具合にずれてて色気出ちゃってるから早く着直して」
「ごめんごめん」
すごく他人に見せたくない格好で他人の前に出られてもね…
お燐も呆れちゃってるしキスメはなんか落ち着かなさそうだし…
「って、私の桶は?」
「足元に浮いてるのがそうじゃないの?」
そういえばキスメ桶から出てたね。やっぱり白い着物は濡れると若干…いや考えるのやめよ。本人が落ち着かない理由って絶対そこだろうし
そうしている合間にキスメは湖から引き上げた桶に潜り込む。
引き上げたばかりで至る所から水が滴ってる。
キスメが乗った途端に浮きだす桶ってなんだか怖いね。あれ?また縄が降りてきてるね。
その縄の先はどこに続いてるのやら。
「あの……どちら様?」
この中で状況を理解できない二人のうちの一人…大ちゃんが訪ねてきた。
みれば桶に戻ったばかりのキスメも私達の関係を教えなさいという目線で見つめてきていた。まさかお姉ちゃんキスメに言ってないの?
一緒に降りてきたっぽいのに⁇
「ああ…お二人とは初めましてですね。では改めまして、こいしの姉の古明地さとりです。どうぞよろしくお願いします」
「私はキスメだよ。見ての通り釣瓶落とし。妖精ちゃん?よろしくね」
「あ…えっと、妖精です。一応大妖精って呼ばれてます」
「ヤマメだよ!よろしく!」
「なーんだこいしの姉さんだったのね。どうりで……」
なにか私とお姉ちゃんを交互に見てがっくりと項垂れるキスメ。
似てる似てないの事っていうかこれは何かやらかしたことが似てるって思ってる感じかな?
まさかお姉ちゃんキスメの桶ひっくり返しちゃったの⁉︎
「違うわよ。ただ、逆さまにして真下にぶん投げただけよ」
そこまでするか‼︎
大ちゃんを除く全員の心が一つになった。
私だって逆さまにしただけだよ。
「それで、貴方たちはどうやってここまで来たのよ」
はたてがびしょびしょの二人に拭くものを持ってきながら尋ねる。
出来ればお燐の分も持って来て欲しかったけど…お燐はほとんど乾いちゃってるし今は疲れて私の腕の中で寝息を立ててるから無理になんかするのはやめておこっと。
「……そうですね。ちょっと長くなるのですが良いですか?」
「構わないわよ。でもここじゃあれだからあそこまで行きましょう」
そう言ってはたてはキスメ達を岸にある拠点まで案内する。
「そうですね。話せば長くなります。そう、あれは雪の…」
「いやいや、なんでそこからなのよ」
「ダメだった?こいしだってたまにやるでしょ?」
いやそうだけど、そうじゃないんだよ。今の場合は雪が降るより先に岩が降ってくるよ。
「前置きはいいから早めに始めなさいよ」
蜘蛛の巣が張り巡らされた一角の近くで偶然キスメに合流したところからで良いですかね。
丁度、お燐が休みたいって言い出し始めた頃なのでついでにこいし達の目撃情報も欲しいと思って話しかけたんですけどね。
「貴方だれ、また妖怪?」
「ええ一応妖怪です」
なんだか風当たりが良くないので友好的では無さそうでしたね。
「またと言う事は前にも誰か来てたんですか?」
「なんでそんなこと言わないといけないのかなあ……それじゃあそこの猫くれるなら情報をあげてもいいけど?」
恥ずかしがってるのかめんどくさがってるのかわからない表情と声で交渉を持ちかけられる。
多分恥ずかしがってるんでしょうけど…桶から出て来ようとしませんしなぜかこっちを見ては桶に戻るを繰り返してますし…
お燐が、妖怪とみられてないのかと不機嫌になってますけど…多分私の妖気に紛れちゃってるんですね。
「じゃあ別に言わなくていいです」
なんだか桶に隠れて出てこないところを見てるとやっぱりやりたくなってしまう。
少女が入ってる桶の縁を掴みひっくり返す。
そして少女が何かを言う前に思いっきり下に向けて放り投げた。
少女の断末魔を聴きながら軽く休憩する。
心なしかお燐が震えているようでしたけど…多分大丈夫ですね。
再び自由落下で降っているとまたあの少女に会った。今度は登ってくる方でだ。
「いきなり何するのよ!」
「だって…名前も知らない人に取引持ちかけられたらそうなりますよ?」
「ならないわよ!」
だって…お燐と交換ってどう考えても喧嘩売ってましたし…買ってませんけど
「まあ…いきなり猫をくれなんて言ったのは謝るわ」
そう言って頭を下げてくる少女。なんだか気不味くなる。
「いえ、こちらも気にしてませんから…」
どうやらお腹が空いていたらしい。そんなところに私が降りてきて…しかも食料代理になりそうなものを持ってるからくれと言ったそうな。
流石にお燐は食べちゃダメですってば。
ペットだとは思わなかったようで…この子も猫又だよと教えてあげればすごい謝ってた。
もう食べようとなんてしないからって。
でもお腹が空いているのは変えがたい事実らしく、さすがに見過ごせないので持ってきた食料を分け与えたら妙に懐かれた。
なぜ懐かれたのかさっぱりわからない。
しばらくキスメと一緒に降りて行くこと数時間。
ようやく地底湖に到着した。
地底湖も地底湖でなかなかの大きさと深さです。正直、ここまでの規模となると世界有数なんじゃないんでしょうか。
(ここで終わりみたいだけど…こいしたちいないね)
「ええ…どこにいるんでしょうか」
「それにしても地底湖があったなんてね」
キスメが水に手を入れながら何かを探している。悪いですけど魚は期待しないほうがいいですね。
透明度は十分ですけど…底の方に穴っぽいのは見つからないし…見つけたとしてもお燐は泳げない。私も泳ぐのは苦手。
水中の探索はキスメに任せて私は壁でも探しますか。
「ここ…つい最近崩落があったみたいですね」
そう言う私の前には周りの壁と明らかに違う…大きな岩や砂が積み重なって出来た部分がある。
(ふーん…もしかしてここって…)
「そのようですね。多分、横穴があったところですね」
壁の一部を叩いて見たものの完全に崩落してしまっているのか反響音は鈍い。
これは開通に少し苦労しますね。
そんなことを思っていたら服が真下に引きずられる。同時に浮いている私の体も前のめりになって大きくバランスが崩れた。
どうやらお燐が体を大きく乗り出したせいでバランスが崩れたみたいです。
慌てて体を戻そうとするがもう遅い。お燐の黒い毛並みが視界の下に移ったと思った時には下に引っ張る力が消失。サードアイの圏内から外れたお燐の心が読めなくなる。
「お燐!」
真下で水柱が小さく上がり…消える。
服から滑り落ちたお燐が気泡と波面を残して見えなくなる。
追いかけるように水面の内側に潜り込む。
やや遅れて水を叩くような音が聞こえる。振り返ると異変を察したキスメが私の後ろから追いかけてきていた。
お燐を探そうと滲みかかってる視界をフルに使って探す。
黒い毛並みが少し深いところで大きく動いていた。
すぐにそっちに向かって体を回すが、それよりも早く別の力が引っ張り始める。
泳ぎが得意じゃない私はすぐにお燐の方向に流される。
皮肉にもそのおかげですぐにお燐を捕まえることは出来た。ただ、相当早い流れに飲まれたらしく体が引っ張られて行く。
(い…息が…)
キスメに救助を頼もうかと振り返ったがキスメの方も完全に流れに飲まれていた。と言うか泳げてない。完全に溺れかけてる。
流されること数秒、体が壁に吸い寄せられ止まる。と言うよりかは引っかかって止められると言った方が正しい。岩と岩の合間…お燐の体がはまり込む程度しかない隙間にお燐と私の腕が挟まってしまう。
水面まで10メートルちょっと…動ければすぐにでも行きたいもののこれでは動けない。当然私も息が辛くなってきた。
これは一か八か…水がここに流れていると言うことはこの先はもしかしたら……
迷っている暇はない。すでにお燐は瀕死もいいところだ。すぐ助けるので妖怪が溺死とか笑えないことしないでくださいね。
お燐と一緒に岩の合間に挟まった腕にありったけの妖力を込める。
どれほど破壊すればいいか…どんなことを考えている暇はない。
火力重視の弾幕を形成させ無理やり発射。ほぼ同時に私の背中にキスメの桶が衝突。バランスが崩れ、息を思いっきり吐き出してしまった。
数秒間、意識が私の体から離れる。
最後に見えたのは土煙と閃光。そのあとの事は揉みくちゃにされわけがわからなかった。少なくとも体はそう記憶している。意識が記憶し始めたのは滝から空中に放り出されたところ。
「とまあこんな感じです」
「だいたいそんな感じだね」
キスメもあんまり覚えてない…と言うか最初から最後まで溺れてましたしね。
「そうなんだ……」
あの滝の奥は地底湖に繋がってたんだね。ならやっぱりあそこから抜け出せるかな?
でも水が流れちゃってるし無理か。
お姉ちゃんがきてくれたのはいいけどこれじゃあ遭難者が増えただけみたい。
「それで?さとりはどうするのかしら?」
はたてがお姉ちゃんに詰め寄って……流石に近すぎない?ちょっとだけ妬ましい。
後さ…ヤマメも大ちゃんもなんで目そらししてるのさ。
とまあなんかギクシャクしてるのは……いっしょに連行するか。
まだ動けないお燐をキスメと椛に任せてお姉ちゃんを横穴のあったところまで連れて行く。
目そらしなんてしてる二人?調子取り戻したよ。
「ふうん…完全に崩落しているのね」
かつて天井だった岩を眺めながらお姉ちゃんは呟く。
「向こうまでは大体400メートルほど…確かにこれだけの距離だと岩をどかすだけじゃダメね」
お姉ちゃんの言葉にみんなが落胆する。
わかっている事実だけど改めて言われちゃうとなんかダメだね。
でも私は見逃さない。お姉ちゃんが軽くだけど笑みを浮かべているのに。あの笑みは完全に確信というか方法が思いついている時に浮かべるやつだね。
「こいし、魔力は大丈夫?」
「大丈夫だよ?」
いきなり魔力について聞いてくるなんて…何考えてるのかわからないけど面白そうな事かな?
お姉ちゃんが横穴から離れ近くに落ちてた木の枝を拾い上げる。
「でもお姉ちゃんここにある魔導書だけじゃ穴なんて開けられないよ」
それに崩落を押さえつけるってなったらそれこそ大変だし。
「普通ならね……ちょっと待っててね」
何か方法でもあるのだろうか。
お姉ちゃんは地面に魔法陣を描き始めた。でも私の知ってる円形の魔法陣ではなく三角や五角のものが複数重なった不思議なものだ。
「なるほど!さすがお姉ちゃん!」
その場で術式を作って……ああそんな感じの術式…あれ?じゃあこの方向は⁇
「何描いてるの?」
黙ってわたし達の会話を聞いていたはたてが興味深そうに地面に描かれていく陣を見下ろす。
集中してるお姉ちゃんじゃまともに受け答えなんて出来ないだろうから私が代わりに答えてあげる。
「魔法陣だよ!」
「なにそれ?」
「まあ、ちょっとした力だよ」
ざっくり言っちゃったけど大体そんなもんだからね。力なんて……結局はみんな同じもんだからね。
「じゃあみなさん。描いてる合間に…揃えて欲しいものがあるんですけど」
地面に魔法陣を描く手を止めないでお姉ちゃんが小さな紙を私に放り投げてきた。
揃えて欲しいもの?一体なんだろう。
「なになに?ここから出るためなら協力するわよ」
「わ…私も!」
大ちゃんとはたては乗り気だね。よかった。
ヤマメは…なんか消極的だけどやりたく無いわけじゃなさそう。別に無理にってわけじゃ無いし強制はしないよ。
最悪わたしだけでも事足りそうだけど…
そう思うながらお姉ちゃんが渡してきた紙を広げる。
「まさか木を切ってこいとはね…」
それも90本近くも切ってこいだ。まあ妖怪の体ならそんなに苦ではない。むしろ無茶振りじゃ無いだけましかな。たまにへんな無茶を振ってくるからねお姉ちゃんは…
でも木の確保くらいなら…さして問題でも無い。
はたての真空波と椛の剣斬りが周囲の木をまとめて切り倒して行く。
轟音が一定の間隔で辺りに轟音を響かせる。
どんどん禿げた地面が現れて行く。実際には禿げてないけど上から見ると十分禿げてる。
切り落としは木は枝とかをさらに切り落として丸太の状態に、全員丸太はってやりたいけどおっきすぎて丸太ネタは出来ないや。
それに本数がやたらめったら多いから遊んでる暇もないね。
私は木を運ぶのに徹底してる。だって、斬る専門が二人もいるんだから良いでしょ?
「お姉ちゃん、運んできたよ!」
「ありがとう…そうね。穴の前においておいてくれるかしら」
あっちと指差す方にポンポン木を置いて行く。あんまり大きいものじゃ無いけど多分大丈夫だよね。お姉ちゃんも何も言わないし…気づいてないだけかもしれないけど。
ちょっとだけお姉ちゃんの魔方陣を見る。
かなり複雑だなあ。いくつもの陣とラテン語、それらをつなぐ線で描かれていくそれは私すら理解できない壮大で繊細な式になってた。これどうやって動くの?
「……こいし?」
「お姉ちゃんやっぱり凄いや」
こんな難しいのスラスラ書いていくなんてさ。
「…ありがとう。でも私よりこいしの方が凄いわよ」
そう呟いてお姉ちゃんは私の頭を優しく撫でてきた。
ちょっとだけ擽ったいけど気持ち良い。
「そろそろだから荷物まとめておきなさい」
「そうするね!」
わーい!免除だー!免除じゃ無いけど免除だ‼︎
ってまとめる荷物なんてあったっけ?あ、みんなの荷物とか植物とかのサンプルか。
拠点で荷物をまとめていたわたしをお姉ちゃんが迎えに来てくれた。
いって見ると私達以外のヒトは全員揃ってた。持ってきた荷物は…椛とキスメに任せてと…
それでどうすればいいのかな?もう術式を起動していいのかな?
「では、はたてとヤマメさん。あの穴に向けて最大火力で攻撃してください。最悪向こう側に貫通すればいいので…」
「いいけどそれじゃあ…」
また崩れて終わっちゃうじゃん。
その言葉を遮るようにお姉ちゃんが言葉を繋げる。
「大丈夫ですよ」
そのための魔法陣ですから。その言葉が出る前にお姉ちゃんは口を閉ざす。
長い紫の毛先が風に吹かれてお姉ちゃんの顔を隠す。
ちょっとだけ怖い。と言うか何だろうこの悪役感。おかしい…味方のはずなのにね。
「こいし、穴が開いたら魔法陣を起動させて。タイミングはわたしが言うわ」
踵を返して歩いてくるお姉ちゃんがすれ違いざまにそう言う。
と思ったらわたしのすぐ右後ろで足を止める。
「わかったよお姉ちゃん」
よくわからないけどお姉ちゃんには全部わかってるんだろうね。
「それじゃあお二人さんお願いしますね」
二人に向けてゴーサインがかかる。
なんだかんだ渋ったりしていたけど…意を決したのか目つきが変わった。
「おりゃ‼︎」
「そーれ!」
ややはたてが早かったが今回はタイミングは関係ないから大丈夫。
弾幕にしては大きいと言うか…コントロールできるギリギリの巨大なエネルギーの奔流が二人から放たれる。
一部の妖力が周りに余波を生み出し突風が吹き荒れる。
二人の攻撃が一直線で閉ざされた横穴に吸い込まれ…
爆風が吹き荒れる。
「こいし、今よ!」
「わかった!」
お姉ちゃんの声を合図に待機していた私も
魔法陣を起動させる。
青色の光が描かれた線上を走り脈打つ。
それらは周辺に描かれた三角形に伝播し、そこから光の糸が生み出される。
その糸が積み重ねられた丸太に絡みつき…丸太ごと消えて行った。
消えたって言うか私の動体視力が追いつかなかっただけだけど…
「……?」
それ以降何も起こらなくなった魔法陣。周りのみんなはこれで終わったのかみたいな感じになってるけど…最後の一つだけがまだ未作動だった。
少し遅れて発動するやつなのかな?
魔力の供給を続ける。すると最後の陣が水色の光を放ち……寒⁉︎
めっちゃ気温が下がったんだけど!お姉ちゃん何したの⁉︎
「そろそろ良いですよ」
魔力供給をカット。なんだかがっつり魔力もってかれちゃったなあ。
体がすごい怠い。
「あれが……魔術?」
「何あれ…見たことないわ」
「……東欧系の術式ですか?」
すっごい三者三様の反応だね。
って言うか大ちゃんよくわかったね!あれが東欧で教わった魔術なんだってこと。
そういえば大ちゃんっていろんなところを回ってたらしいから知ってるのかな?
煙が晴れると、ようやくあの魔法の全容がわかった。
多少横に曲がったりしていた横穴は妖力によって真っ直ぐ矯正され、数メートル置きに木材が天井と側面を支えている。最初の起動式は木材を柱として固定するためのもの。その上…
「冷却魔法で地中から出る水を凍らせて補強するなんて…」
二つ目は冷却。周辺の気温も下がってたから冷気を出すやつじゃなくて吸熱型だね。
確かにそっちの方が魔力の消費は少ないからなあ。でもこれはもっと改良されててさらに少ない魔力でも使えるようになってる…私の為に作ってくれたんだね…
「少量ですが水が滲み出てましたからそれを利用させていただきました。これで2日は保つはずですよ」
2日もあれば十分だよ。それに地上に戻れば河童達とか山の技術職人達がちゃんと作り直してくれるはずだからね!
それじゃあ早く外に出よっか!やっぱり日の光が欲しいからね!
あっけにとられているみんなを引っ張ってさっさと縦穴のあるところまで連れて行く。
途中で元気だねえっておばさんみたいな事をヤマメに言われたけど…わたしはこっちの方が性に合うからね!
全員がいなくなった後、少ししてその横穴を通過し外に出た者がいたなんてこの時は誰も知る余地はなかった。
知っていたらわたしはどうしたのかな……
お姉ちゃんは?
あ、いや……お姉ちゃんの答えはわかりきってるからいいや。