古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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さとり「これはどういうことかしら?」

A.ストックに無理を言わせて完成させた……

さとり「ふうん……」


depth.58さとりの消失

お姉ちゃんが消えてから数ヶ月経つ。

 

ようやく落ち着いて状況を整理できる状況になってきたからまとめるついでに記録しておくことにする。

 

そう言う見出しを書いたは良いものの。状況を整理するなんてことは異常に難しかった。

これからどうするとかそう言うものじゃなく、失ったものの大きさが大きすぎて心に空白ができているみたいだった。

 

結局いくら待ってもお姉ちゃんとお燐は帰ってこなかった。

後から到着した人たちと大捜索が始まったけどそれでも見つけることはできなかった。

 

もしかして遠くに飛ばされすぎたのかと思って紫さんに隙間を使った探索もしてもらったけどそれでもお姉ちゃん達はおろかあいつでさえも見つけうことはできなかった。

 

捜査は打ち切られてお姉ちゃんは行方不明扱い。

その後は私もしばらく塞ぎこんじゃってたからみんながどうしていたのかはわからない。

後から聞いた話によると天狗の方はなんか色々と騒がしかったらしい。

まあお姉ちゃんって言う存在が消えたなんてなったらそりゃ大変だろうねって思うよ。

だけどさ私のところにまできてどうしようかなんて相談しないでほしい。こっちがどうにかしたいくらいなんだから……

 

でもお姉ちゃんの手掛かりが全く消えたってわけではない。

紫さんがお姉ちゃんたちが消失した場所を調べていたら時間軸に歪みが生じているのを見つけてくれた。

紫さん曰く私たちの攻撃が当たった影響でマジックアイテムになんだかの障害が発生して時空間転移に影響を与えていたのだとか。

あのアイテムは本来空間の歪みだけですむはず。なのに時間軸……どうやら空間移動と同時に時間移動までしてしまったらしい。

 

それを聞いた時の私とお空は真っ青だっただろうね。だって私たちの攻撃がお姉ちゃんを未来か過去に吹っ飛ばしちゃったんだから…パルスィさんなんて「あいつの顔を見なくなって清々した」とか憎まれ口を叩いてたけどそれは私達の悲しみを自分に向けさせるための嘘。

そもそも私がいるんだからそんな嘘通用しないって言ってるのに……それでもパルスィさんなりの気遣いなのかもしれない。

 

紫さんは…お姉ちゃんの消失はあまり気にしていないらしい。

正確に言うと気にしないように心に蓋をしていたと言うべきかな。それ以外にもいくつか理由はあったけど……

 

「古明地さとりとあろう者があの程度でくたばるわけないわ」

 

だって。まあそうだけどさ…お姉ちゃん達があれくらいで永遠の別れになってなるわけないよね…うん。そうだよね。そう思いたい。

 

それに、どうやらお姉ちゃんは時間軸を未来に向かって飛ばされたらしい。というよりタイムスリップそのものは未来にしかいけないらしい。通過した過去を変えようものならそれは世界軸が崩壊してしまうだの新たな宇宙がどうだの言ってたけど要は過去に戻ったわけではないらしい。じゃあ必ずこの先どこかで再会できる…私達が生きていれば…

 

「こいし様?なに書いてるんですか?」

 

気づいたらお空が背中に寄っかかっていた。いつからいたのかな?

 

「ちょっとした日記かな…状況整理用にね」

 

そうだった、お姉ちゃんが帰ってくるまでにやることはたくさんある。

人間と妖怪の関係…お姉ちゃんは互いに手を取り合える関係にしたかった。それは残された私たちが引き継ぐこと…

後、地底の管理…だけどこれはお姉ちゃんがほとんどを勇儀さん達に引き継いでいたからお姉ちゃんが消えた後でも滞りはなかった。

それと天狗さん達とかとの交友とか…

こうしてみるとお姉ちゃんっていろんな方面に影響与えてたんだなってのがよくわかる。

人間と妖怪に天狗との関係…あとは地底と地上との繋ぎ…

孤独に生きるのが嫌だったんだよね。

だから待っててねお姉ちゃん。いつ帰ってきてもいいように…私達頑張るから!

 

 

ふと隣を見るとお空が沈んだ顔をしていた。

お姉ちゃん達が消えた後からずっとだ。サードアイで心を読まなくてもお空がなにを考えているかは痛いほどわかる。

 

「お空…なに考えているのかな」

 

「こいし様…」

 

責める目。でもそれは私に向けられたものではない。お空自身に向けているものだ。

自分で自分を責めるのは私もしている。でもそれは結局たらればの話になっちゃうしもう過去は変えられない。

 

「私が弱かったから……」

 

「気にしちゃダメだよ。お空は何も悪くないし弱くもない」

 

弱い強いといった問題でもないしあれはそう簡単なことではない。でも複雑なものを心に留めておくより何か簡単なものに置き換えて結論を出した方が心が落ち着く。ヒトはなにかをありのままに受け入れるなんてことはできない。

それでも簡単にすると言うことはその分真実は捻じ曲がってしまう。

 

「でも…あの時ちゃんと取り押さえられなかったから……」

 

「そんなこと言ったら私だってそうだよ。それにお姉ちゃんは生きている。それにお燐だって側についているんだから絶対帰ってくるよ

 

その答えがいかにお空にたいして残酷な答えなのか…私が知らないはずはない。それでも私にはそう言うしか出来ない。

 

未来のどの辺りに飛ばされたのか…本当に生きているのか…又はその時まで生きていられるのか…

 

「……こいし様どうしたら強くなれますか?」

ただそう一言…お空の心を表した言葉に私はどう答えていいかわからなかった。

お姉ちゃんなら多分答えられたのかな。

 

「強くなる方法は人それぞれだよ」

 

「……そうですか」

 

「お空?」

 

 

思えばこの時、私がちゃんとお空に向き合っていれば……もっとマシな結果になったのかもしれないしお空も苦しまなくてよかったのかもしれない。

私はさとり妖怪…でも人の心が苦手。こんな出来損ないじゃなかったら。なんて思ってしまうと言うことは私の心理もたかが知れてるってことなのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識というものは唐突に消えては唐突に復活する。

その間にどれほどの時間が経っていようが体がどれほど動いていようが、意識が無い合間は何をしていたのかなんてわからない。

 

意識が失われていたのは一体どれほどのことだったのか。本人は自覚がない。

そもそも意識がない合間のことなんて自覚しようがないのだから無理もない。

結局、瞬きでもしていたのかと意識は見当違いなことを言っている。だけどそれを否定しようにも私だって意識が失っていたのはどれほどの合間なのかなんて分かりっこないのだから答えなどでない。

答えがないなら答える事は出来ない。

 

 

「……あれ?」

 

「遅れるうう!」

 

 

一瞬何が何だか分からなかった。

目覚めた瞬間目の前をひとりの少女が駆けて行った。後ろ姿しか見ることはできなかったもののそれは私のよく知る…いや、あれは私自身だった。服装が微妙に知識にいる彼女とは違うものの見間違えるはずはない。

 

 

ふと気づけば彼女はもうどこかに行ってしまっていた。そこで初めて周囲の状況に気づく。

いびつに歪んだ木々、緑色というより青黒い色をした葉っぱ。体を横たえていた地面も感触が違う。

 

「……ここは?」

 

意識がしっかりしているもののなんだか視界と体の感覚との情報が妙に噛み合わない。

ここにいてここじゃないような…目の前の光景は全てハリボテなんじゃないかと思ってしまう。

 

「……追いかけた方が良いですよね…」

 

 

まあ私の体の不調はともかくまずはあの子を追いかけないと…

 

立ち上がって飛び上がろうとして……

「ヘブっ⁉︎」

 

地面に叩きつけられた。

全く浮力が出ない。まさかと思うが飛べなくなっているのだろうか。

いつも通りに力を入れてみようとしたものの体に全く力が入らない。まるでそんなものなかったかのようだった。

 

……これは走ったほうがいいですね。

体についた埃を払い追いかける。

道は一本道…いや、森自体が道を作っているようにくねくねと曲がっているようにも思える。

 

だがそんなことはどうでも良くて、ただ駆け抜けるのみ。

どうしてそう思ったのかはわからない。でもそうしないとと言う脅迫概念じみたものが働いたのは確かかもしれない。

 

彼女を追いかけてなにになると言うのだろうか…そもそもどうして私はこんなところにいるのだろうか?その疑問を頭から振り落とし追いかける。姿は見えなくても道は一本道。獣道に逸れない限りはこっちで合っている。

 

本当に合っている?わからない。もうこの際合ってようがいまいがどうでも良いのかもしれなかった。

 

追いつければ良い。それだけしか考えていなかった。

 

 

だが非情にも目の前には分かれ道が現れる。

どちらの道もどこに続いているのかは見えないしどっちに行ったのかすら検討もつきそうにない。

よく見てみると片方は赤色に淡く光っていてもう片方は明るい光が見える。

「……どっちに行けばいいのでしょうか?」

 

声に出しては見るものの、誰もいないその場所に答える者など誰一人としているはずはなく……

 

「おやおや?迷子ですか?」

 

不意にした声におもわず顔を上げる。

誰もいないと思ったその場所にはいつのまにか少女が浮かんでいる…いや、あれは少女ではない。見た目は少女だけどあれは違う。

セミロングの青い髪と青い瞳。頭には赤いサンタ帽を被っている。服はボンボンが付いた白黒のワンピース。左手に抱えた日記を開きなにかを見ている彼女はバク。私と同じかそれ以上の妖怪。

 

「おはようございます。夢の中の世界へようこそ」

 

「その場合おやすみなさいじゃないんですね」

 

どちらでもいいような気がしますけど…

 

「まあいいです…あなたが居るというのなら夢の中だという事は確実ですね」

 

「おや?私をご存知で?」

 

「私と同じ妖怪の気配を流しなおかつここを夢と言い張る…そう考えてみれば選択肢は絞れますよ」

 

バクなのだろう。記憶もそう言っている。

 

「なるほど、説明の手間が省けます」

 

「それで、人の夢に何か用ですか?」

 

夢だと理解しても醒めない夢…明晰夢でしょうか?それにしても妙なものですけど…

ここまではっきりとしていると言うことはただの夢ではない。何回か似たような経験はあったもののあれは私のないの無意識だったし夢とはちょっと違う。

 

「人の夢とはまた面白いことを。夢の世界の住人がいても夢の中なのですから何か問題でもありますか?」

 

人を小馬鹿にしたような顔……でも内心小馬鹿にしている訳ではないですよね?

 

「ないですね……」

 

「そうでしょう?だから私がここにいても問題はない」

 

 

「それで…私とそっくりな少女を見ませんでしたか?」

 

「んー?どうでしょうね?ここがあなたの夢ならあなた自身が知ってると思うのですが…知りたいですか?」

 

……心が読めない?どういうことでしょうか…

 

「あれ?」

視線を落とした先にあったサードアイは真っ黒にくすんで、黒い影のようなものに包まれてしまっている。

それを直視した途端、恐ろしい吐き気と目眩がして、思わず膝をついてしまう。

「こ…これは…なに?」

 

「おやおや?自覚がないと…まあ本人のことは本人が一番気づきづらいですからね」

 

訳のわからないことをいう…わけがわからないのは私自身ですけど。

 

「私には自分のことが説明がつかないんです。だって私は自分自身じゃないから。分かりますよね?」

 

「面白い考えですね…じゃあ特別に知ってるところだけ教えてあげましょう」

 

そう言って私の前に降りてきたバクは芝居がかった身振りで喋り出す。

 

「ここは夢の中。貴女自身の全てがここを作り出しています。当然そこにいるあなたもあなた自身の望んだ通りの姿です」

 

「これが…私の望んだもの?」

 

そんなもの望んだ覚えはない。それに私はさとり妖怪だ…自らの能力を嫌悪するなんて事……

 

「ええこの夢の世界は貴女の思い描くように作られています。貴女の魂はどこかであなた自身の能力を嫌っているのでしょうね。詳しいことはさっき走って行った彼女に聞いて見たらどうですか?」

 

……このバクはどこまで知ってるのだろうか…夢に影響されるのは私の全て…つまり彼女には私の全てが見えている?

 

「それで…少女はどこに行ったのですか?」

ようやく精神的ダメージから回復した体を叩き起こし彼女の目線に疑問を投げかける。

 

「さあどっちでしょうね?ここはあなたの夢の中。選択肢は貴方が正解を知っている。故にその質問は意味をなさない」

 

 

「まあ特別にヒントと行きましょうか。If you don’t know where you are going any road will get you there.」

 

……つまり自由に選べと…

 

そのまま彼女の体はだんだんと闇に消えていき…消え去っていく。いや、なぜか目だけが暗闇に浮いている。まるでおとぎ話に出てくるとある猫のように…

 

「ご安心を、私はあなたのそばにいますしもしかしたらいないかもしれません」

 

「なるほど…そういえば自己紹介が済んでませんね。私は古明地さとり。貴女は?」

 

「とある夢の住人。あるいは…いえ、ナナシさんとでも名乗っておきましょう」

その声が消えるころには闇の中に浮いていた目もどこかへ消えていた。

 

結局何だったんだろう?そんな疑問も出てくるものの夢に疑問なんて持ち込むだけ無駄と判断。

さて、それじゃあ右の道に行きましょうか。

 

どうしてそう思ったのかはわからない。なんとなく明るい光がある方向へ行った方がいいかなと思っただけ。強いて言えばこの薄暗い不気味な森から一刻も出たいと言う感情に突き動かされていただけなのかもしれないけど。

 

私の夢の世界というものは…かなり狂気に満ちている。

 

それを自覚した時には私はすでに狂気に取り込まれていたのかもしれないけれど。

 

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