古明地さとりは覚り妖怪である   作:ヒジキの木

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レミリア達が話しているのを遠目に観察しながら本を手に取る。

どの本も手入れが行き届いていて状態は良好。

素人の私ですら触っただけですぐにわかるということは相当なのだろう…表紙に書かれた数字からはそれが200年前のものだとわかる。

 

「お気に召しますか?」

 

「まあ……興味が沸けば」

魔導書なら面白そうなのですけどね…ただ、そういうものはパチュリーの許可が下りないと迂闊に見せることはできないのだろう。実際、案内兼監視の小悪魔さんが案内したのはたわいもない歴史書や魔術系列とは違う本がある場所だ。

 

「……別の本棚、見に行きます?」

 

「そうしましょう…できれば童話とか物語系がみたいですね。それか悪魔に関するものを」

 

特に意味はないですけど。

おや、どうやら向こうは話が済んだみたいですね。まあもう少し図書館を探索してから戻ることにしましょう。

それにしてもこの本…一体どこからこんなに集めたのでしょうね。

 

「……私の正体でも調べるつもりですか?」

 

別のことを考えている私の肩に手を置いた小悪魔がそう囁いてくる。

別に調べる気は全くないのだが…そもそも貴方の正体に興味はありませんし。

 

「小悪魔は小悪魔ですよね?」

 

「とぼけなくていいですよ。私に隠し事は出来ませんので」

 

「んー…まあもう既に正体は分かってしまっているので別に今更調べようなんてしませんし」

 

本当に今更詳しく調べようなんてしようとは思わない。それよりも伝記がどれほど残っているのか気になりますのでね。

 

「……私の正体が分かっているならなぜ?」

 

「だって言ったりしたって私にメリットはないですしどうでも良いことなので」

だから不思議がることもないですよ。そもそも貴方は悪魔なんですからもっと堂々としていないとですよ。

……ここで始末できれば…なんて変な考えを起こさないで欲しいのですけど。

そもそも私を始末したらあなたの立場が危うくなりますしパチュリーよりレミリアが黙ってないでしょうね。

 

「……変な気を起こしたら直ぐに処分しますからね」

 

「そもそも隠さなくてもいいと思うのですが…」

まあ考え方はヒトそれぞれだしそこに口出しすることは基本したくないですけど…主人にくらい正体を教えておいた方が良いのではないでしょうかね。まあその主人も薄々気づいてはいるようですけど。

 

「余計なお世話ですよ」

 

「はいはい、終焉を運ぶ悪魔さん」

 

むすっとしたままではせっかくの美顔も台無しですよ。だからと言って怒りを露わにするのもやめてほしいですけど。

 

「……もう少ししたらレミリア達のところに戻りますか」

 

「承知いたしました」

 

そうそう、あとここら辺の本…後で借りれるかどうか話さないと…

ついでだから幾つか資料になる物も引っ張り出せるように交渉しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さとり遅いなあ…」

 

さとりがレミリアにドナドナされて行ってから既に二時間が経っている。作業は中断されたまま…作業に駆り出されていた従者さん達がそろそろ戻りたいって言っていたのであたいの判断で返した。まあ、なんか言ってきても戻ってくるのが遅いと言っておけば良い。

そんな事を言うほどさとりは心が狭いわけではないけど…

 

「多分大図書館に行ったのでしょうね。ならしばらくは戻りそうにないわ」

 

あたいの呟きに口を挟んだのはさっきまでレミリアの槍で伸びていた狐メイド……本人曰く玉藻と言うらしい。

鋭い目線で見つめられるせいで少し不安を覚える。なにを考えているのか見透かされていそうでそれでいて相手の一手先を読んでいるような表情……

 

「分かるんかい?」

 

それでも野生の勘で信頼するに値するとおもったあたいは玉藻の側に行く。

 

「まあ、これでもメイドですから」

 

狐だけど…

狐がメイドやってるって結構インパクトあるけど…

と言うかメイドならどうしてそんな際どい和服を着ているんだい。肩から胸にかけてが丸出しな上に色気満載。正直こっちが見てて恥ずかしくなる。

まあ朝見たときは普通のメイド服だったしオフの時とで着替えているのだろうけど…

 

「ふうん……」

 

「今絶対狐と思いましたよね?顔に出ていますわ」

そう言いながらあたいの顔を覗き込んでくる。必然的に彼女との距離が近くなり、反射的に手で頭を払いのける。

 

「なにを嫌がっているのかしら?」

 

少し喋り方に気品が見受けられる。一応玉藻って言ってるくらいだし気品があるのは普通だけどそれが色気と混ざるせいでなんだか気が乱される。早くさとり戻ってこないかな…なんてあたいの心中を知ってか知らずか玉藻はあたいの肩に手を置き尻尾同士を絡めようとしてくる。少ししつこいので腹に蹴りを入れる。

だけどその蹴りもひらりとかわされてしまう。

 

「まあそんなことより…さとりの仕事を少しでも多く片付けておくことにしようじゃないかー」

 

「棒読みですわね」

 

棒読みで悪かったねえ…でも話題をそらさないとなんだか危険な気がしたから…一体どうしてみんなしてあたいを襲いたがるんだろう?そう言いえばお空もときどきあたいを見てはすぐに目線を逸らすっていった謎な行為をしていることがあったねえ…年に一時だけだったけど…あ、確かあたいも玉藻もお空も元々生体行動に似たようなものがあったような……たしかさとりとこいしが昔話していたのを聞いた記憶が…なんだったっけ?

 

「それにしても貴女に建設指示が出せますの?」

 

なんだい、そのバカにしたような目は。あたいだって出来ないことはないんだよ。一体何年さとりの側にいたと思ってるんだい?多分誰よりも長いって自負してるんだからね。

 

「設計図があれば出来るけど」

言っては見たものの、そんな設計図もちろんない。あったとしてもさとりの頭の中だ。

でも無くてもできる。

 

「…あ、でもここまで完成しているなら後はできるよ」

 

だってあとは内装を作るだけ…水回りの配管や浴槽自体は完成しているから別に難しいことではない。

でも大理石とかタイルじゃなくて板張りなのはどうかと思う。湿気に強い木材じゃなさそうだしすぐに腐っちゃうと思うんだけど…

 

「それにしても貴女もさとりもその技術はどこで教わったんだかねえ」

 

「あたいはさとりの見よう見まねだよ」

 

実際少しは教わったけどほとんど見ているだけ。さとりは誰かに教えるのが下手だからね。

 

「そうかい…じゃあさとりはどこでそんな技術を手に入れたんだか」

自らの尻尾をいじりながら玉藻が聞いてくる。

「さあ?思いついたらすぐ実行する人だからねえ……多分自前で考えついたんじゃないかな」

 

あたいにもよく分かってはいない。だけど多分さとりだしって思えればもう気にもならなくなったね。

 

「そっか。じゃあさとりに聞いてみることにしますわ」

そう言いながら彼女も作業に参加する。

ここでさとりを待つつもりなのだろう。そうしておくれや。あたいに聞くより本人に聞いた方が良いからねえ…あ、そこの板は床じゃなくて壁だよ。後向きが逆。

 

手伝ってくれるのは良いけどちゃんと指示に従ってほしいねえ。

あ、そこは多分脱衣所だから棚になるところ……

 

「少し厄介ですわね」

 

「あたい…少し疲れたかも」

 

「ごめんなさいね。私の理解が及ばないから」

 

「気にしてないよ」

 

疲れはするけどね。やっぱりさとりが指示をしてくれた方がいいや。

やっぱり遅いなあ。

 

「そういえば図書館ってどこにあるんだい?」

 

図書館ってそんなに行き辛いところなのだろうか。

 

「この建物の地下ですけど…図書館の持ち主である七曜の魔法使いパチュリー様が防犯用に空間をいじっておりますのでよくわかりませんわ」

なんだかよくわからない事を言い出した。

「この場所の地下じゃないってことかい?」

 

「いいえ。確かにここの地下ですわ。ただし、特殊な閉鎖空間で隔離されている上に唯一の正規ルートはダンジョン…もはや魔術師の工房ですわ」

 

魔術師の工房がなんなのかはわからないけど相当面倒だってことはわかった。

「よくそんなこと知ってるねえ」

 

メイドが知るには少し情報が多い気がするんだけど。

 

「私はメイドです。それにご主人様にもしものことがあったらいつ如何なる時でもすぐに駆けつけられるようにしておかなければなりませんから」

 

それもそうか…でもなんか少しだけ変だけど。

まあパチュリーって人のところに行く用事を任されていると思えばそう変にはならない。

 

結局さとりが戻ってきたのは木の板を張り終えたところだった。

それも、作ったばかりの建物の窓から入ってきたものだから驚きだ。

全くブレない人だねえ。

 

「おまたせ…あらお燐。終わらせておいてくれたの?」

丁寧に靴を脱いで入ってくるのは良いけれど、そこはまだ固定し終わってないから……あまり乗らない方が良いのだが…

「さとりが遅いからねえ」

 

別に悪気があってあんな言い方をしたわけではない。

なんだか嫌味っぽくなってるけど嫌味な気はない。

「ごめんなさいね。ちょっと魔法使いと仲良くなってしまったから」

 

そういうさとりの腕には数冊の本が挟まっていた。英語…いやラテン語で書かれた背表紙…

 

「まさかパチュリー様から本を借りたというの?」

その本に玉藻が反応する。

そんなにすごいことなのだろうか…あたいにはよく分からない。

「ええ、そうだけど?」

さぞ当たり前のように返すさとりと驚いてへんな動きをしている玉藻のコントが面白い。

「さとり…貴方何者よ」

 

「さあ?ただの妖ですよ」

 

嘘つけ。って思うけどいつものことだしもういいや。

でもさとりがただの妖っていうのはちょっと無理があると思う。だってそうだろう…さとりほど規格外な妖は見たことない。

 

「それより、貴女もただの獣人ってわけではなさそうですけど…」

そうなのかい?玉藻もなんか違うやつだったのかい。

 

「詮索は不要ですよ」

 

「それもそうですね」

 

 

2人だけの会話…内容を汲み取ることがすごく難しい…そもそもさとりは彼女になにをみたのだろう?

「ここまで出来てるのならあとは仕上げね」

 

あたいや彼女の話題をそらすかのように建物の最後の仕上げにかかる。少し心の中にモヤモヤしたものが残ってしまったが、いずれそれも無くなるだろう。

 

「それじゃあ私は戻りますわね」

 

「承知です。お燐、手伝って」

 

はいはい

 

 

 

 

 

夜ももうすぐ終わりを告げる。だんだんと登りだした日が空を少しずつ赤く染め上げていく。

そんな時間に、狐が私を呼びにきた。どうやらさとりが作っていた建物が出来たらしい。

私としては明日にでもと思いたかったものの、さとりがどうしてもというものだから諦める。

狐に案内を任せて建物の方に行く。明るくなり始めた空に目を細めつつ視界を前方に移す。

「それで…建物の壁に穴を開けてなにをしているの?」

 

「通路を増設しているだけです」

 

人の建物の壁についに穴をあけやがった。

 

「人の屋敷になにしているのよ」

 

「気にしたら負けですよ」

 

なにが⁉︎なにが負けなの⁉︎

 

「それよりも、建物の方見にいきますよ」

 

そう言って歩き出すさとり。

マイペースなのかワザとやっているのか…まあ退屈しないから良いのだけれどね。

 

増築された建物自体はあまり大きくはないが、これを昨日今日で作ったとなると相当すごい。

それに建物の構造も見たことない。美鈴の故郷の構造ともまた違う…

 

「大きいわね」

 

「そうでもないですよ」

 

謙遜なんだか実際そう思っているのか全くわからないが…これを作り上げたということは事実。全くすごいな。

 

「それで、これはなに?室内プールかしら?」

 

「風呂です」

 

聞きなれない単語ね…風呂ってなにかしら?

 

「お風呂?なにそれ」

 

「暖かいお湯に入って体を休ませるところです。私のいたところでは一家に一つか…街に共同使用のものがいくつかありました」

 

へえ…なんだか水の無駄使いに聞こえるのだけれどそれって環境に良いのかしら…それともさとりの地域では水が沢山あったところなのか…どちらでも良いか。

 

ともかく中に入りましょう。もうすぐ日が出てしまうわ。

 

「ふうん…木製の床なんて珍しいわね」

 

内装は簡素だけど…どこか温かみがあるわね。まあ、私の屋敷の内装よりかは劣るけれど。

それにしてもなんで入り口にこんな段差があるのかしら?

入り辛いわね。

 

そのまま入ろうとして肩を掴まれる。一体なによ。

「木が痛むので土足厳禁です。入り口で脱いでください」

 

ああ、そういうことね。なるほど、じゃあこの棚は靴を入れるところね。

「面倒ね」

 

「慣れれば楽ですよ」

 

「そういうものかしらね」

 

慣れというのは恐ろしいものである。いや…習慣と言うべきか。

室内も……ちょっと湿気が高い気がするわ。

 

奥にある部屋もまた棚がある簡素な部屋だ。だけど靴入れの棚より大きい。脱衣所と構造が似ているかだけど洗濯場までつながる道もない。

似ていたり似てなかったり不思議ね。

あら?鏡があるじゃない。吸血鬼の体じゃ映らないけれど…

さとりが奥の扉の方に向かう。急かしているのかしら……

横に引く型の扉ね…珍しいわね。

あら?すごい湿気ね……

 

「へえ、これがお風呂なのね」

 

開かれた扉から中を覗くと、お湯が張られた場所があるよくわからない場所に着いた。

向かって右側の壁には鏡と桶、あとは先端に穴がたくさん空いているホースがある。

 

「……水はすぐ近くの井戸から汲み上げてきてます」

 

専用の組み上げ装置まで作ったのかしら…それにしてもこのお湯に浸かるの?まあ吸血鬼でも流れのない水なら全然大丈夫なのだけれどね。

 

…ここも木製なのね。でもこんな湿気じゃすぐダメになりそうだけれど…

「木が保たなそうだけど?」

 

「防腐剤を塗ってますし、気になるようだったらパチュリーに頼んでください」

 

「へえ……」

じゃあ今度パチェに頼んでおきましょう。

それにしても暖かいお湯に浸かるのってどんな感じなのかしら…楽しみね。

「今から入ります?」

 

まるで心を読んだのかのように私の質問を投げかけてくる。

なにを考えているかわからない…まるで狸ね。

 

「……そうね。そうしましょう」

 

でも今は彼女の力に頼るしかない。

あ、そうだわ。じゃあこの機会だし彼女に話しましょう。

 

「美鈴、そこにいるんでしょう」

 

さっから後ろでずっと見守っている美鈴を呼ぶ。狐はどこへ行ったのかいつの間にかいなくなっている。どこに行ったのやらね。まあ、狐は気まぐれだから仕方がないか。

彼女にも話さないといけないのだけれどね。

「ええいますよ」

 

「それじゃあ、着替え一式の用意をお願いね」

 

後は傘。この時間に入るようならもう日は登ってしまうわ。

 

「かしこまりました」

 

「それじゃあ私の分もお願いできますか?」

 

え?まさかあなたも入るの?普通こういうのって1人ずつじゃないの?

 

「え?一緒に入るんじゃないんですか?」

 

え?

「え?」

 

ジパングって分からないわね。




おまけ

藍「貴様ら戻れ!」

尻尾「ヤダヤダ!もっと遊ぶのだ!」



その2
もしさとり様がカルデアに召喚されたら

さとり「召喚に応じました。今回はキャスターのようです…えっと…初めましてですね」

「あなたは?」

「妖怪さとりです」
クラス キャスター
真名 古明地さとり
通称 さとり
筋力C
耐久EX
敏捷B
魔力EX
幸運C
宝具B

宝具『想起する世界』

「想起……」

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