食戟のソーマ~もう一人の編入者~ 作:食戟者
「いや~!幸太郎の料理はうまいね!」
店の常連客であるサラリーマンはビール片手につまみのモツ煮を食べる。
「おっちゃん………それ俺が作ったのだよ」
「ありゃ?コイツはすまねぇ」
厨房でキャベツを千切りにしている少年、碓氷紘汰は酔っ払いながら謝るサラリーマンを苦笑しながら見る。
「いや~、親父さんと同じ味がしたからさ。間違えちまったぜ」
「おいおい、そりゃねぇーぜ、岸田さん。それじゃ、俺の腕が落ちたみてぇじゃねぇか」
そう言って紘汰の父、碓氷幸太郎が頭にタオルを巻いた状態で、出来上がった料理を出す。
「おい、親父!俺の腕が上がったとは思わねぇのかよ!」
「何言ってるんだよ。お前の腕が俺に追い付くなんざ百年経っても無理だって」
「上等だ!今ここで、決着つけてやろうか!」
「望むところだぜ!」
キャベツの千切りを終わらせ、紘汰は幸太郎に指を突きつけながら言い、幸太郎も頭のタオルを締め直して不敵に笑う。
「おっ!紘汰君と幸太郎が料理対決だ!」
「始まった始まった!」
「定食屋“うすい”名物、“親子料理対決”だ!」
夜の時間、定食屋“うすい”では、っこうして突発的に料理対決が行われる。
判定するのはその場にいた客。
常連客にとっては、タダで料理が食べられるので嬉しい催し物である。
「テーマはお前が決めな」
「じゃ、夜も遅いし、お客さんもそろそろ帰るから、〆にピッタリな一品でどうよ?」
「いいぜ。かかってきな」
「ま、負けた・・・・・・・・・」
「まだまだだったな」
紘汰は膝を付いて落ち込んでいた。
そんな紘汰に勝ち誇るかのように幸太郎は仁王立ちする。
「お前のラーメンの考えはよかったぞ。そもそも、酒を飲むと無性にラーメンが食べたくなる理由は
体内に入ったアルコールは肝臓に運ばれて酵素によって分解されるが、肝臓の必要とするエネルギーは主にブドウ糖、つまり炭水化物だ。
さらに、肝臓でアルコールを分解してくれる物質が作用するためには、うま味物質の一種で「イノシン酸」が必要だ。
イノシン酸は鰹節や肉に豊富に含まれる旨味成分で、トンコツでダシを取るラーメンにはイノシン酸が豊富に含まれている。
また、飲酒により体内が酸性に傾いているため、アルカリ性のものを食べたくなる。ラーメンの麺に使用されている「かんすい」はアルカリ性の溶液で、それが練りこまれた麺が食べたくなるというわけだ。
そして、お前の作ったラーメンは、スープが重たくならない様に魚スープで割ってあるからあっさりしてる。
スープも飲みやすく、酒飲みのツボを抑えた一品だ。
だが、俺の料理には敵わなかったな」
そう言って幸太郎は紘汰に器を差し出す。
「俺の作ったタコ納豆丼だ。
タコは脂質が少なくて、カロリーが低い食べ物で、主成分のたんぱく質に加えて、ビタミンEやカリウムも豊富。
おまけにタコに含まれるタウリンという成分にはコレステロールを抑える働きがあるから、コレステロールが高いタコを食べてもコレステロール値は上がらない。
さらに、このタウリンにはアルコールの分解を高める効果がある。
酒のつまみや〆にタコは打って付けだ。
そして、納豆には二日酔いを軽減するたんぱく質とビタミンB1、食物繊維が含まれてる。
ラーメンもいいが、客の明日も考えるんだな」
幸太郎はそう言って笑い、紘汰は器を受け取る。
「それ食ったらもう寝ろ。後は俺一人で良い。歯磨けよ」
「わかったよ。じゃ、おやすみ」
紘汰は器を手に店兼自宅の二階に上がる。
「それにしても、紘汰君の料理も中々によかったな」
「ああ、料理の腕も幸太郎さんに近付いてるんじゃないのか?」
「いやいや、あいつはまだまだだよ。それより、常連の皆には悪いんだが、ちょっと話がある」
翌日、いつもの授業を終え、紘汰は友達と帰っていた。
「なぁ、紘汰はやっぱり、店継ぐのか?」
「当たり前だろ。卒業後は店で修行して、跡を継ぐ。いや、継ぐ前に親父に料理対決で勝たないとな」
「ま、お前ならいずれ親父さんも越えれるだろうさ」
そんな会話をし、途中で別れ、紘汰は家の中に入る。
「ただいまー」
だが、返事は返って来なかった。
普通ならこの時間は、幸太郎が夜の分の仕込みをしているはずなのに、幸太郎の姿は見えず、そして、普段はいつも「おかえり」と言ってくる妹の声もない。
「なんだ?買い物か?」
そう思い、居間に行くとそこには置手紙と封筒が二種類置いてあった。
「なんだこれ?」
置手紙を手に取り、内容を読む。
『ちょっと自分探しの旅に出る。花音は連れて行く』
幸太郎の字でそう書かれていた。
「え?」
紘汰は唖然となり、続きを読む。
『常連の皆には昨夜伝えた。だから、店は二、三年閉める。で、ついでだから、お前は料理学校に通え。必要な書類は用意しておいたし、必要事項も書いておいた。試験会場の地図も一緒に入ってるから、確認しろ。それと、もう一つの封筒には三年分の小遣いが入ってる。大事に使えよ。じゃ、次に会う時まで、もと料理の腕を上げときな。PS:花音がお兄ちゃん頑張ってだとよ』
「な、なんじゃそりゃあああああああああああああ!!!?」
もも先輩が可愛かったから書こうと思った。
なんかの料理漫画で見たことのある料理が出てきますが、お許しください