「やり残したこと……ですか?」
海風との大晦日SS。キスシーンもあるよ!
※pixivにも同時掲載。
「提督、今年も、もうすぐ年が明けますね」
「ああ……こうしてみると、一年って早いよなあ」
「そうですね。今年も色々ありました」
十二月三十一日。俗にいう大晦日。
年の暮れだからといってこの鎮守府の活動を休止させるわけにもいかず、こうして今も書類を片付けている。
他の艦娘達は忘年会やらテレビの特番が見たいやらでどんちゃん騒ぎしている。
なのでこうして手伝ってくれる艦娘は貴重で、大変有難く思っている。
「海風は、何かやり残したこととかあるのか?」
「やり残したこと……ですか?」
会話が無いのも寂しいので、なんとなくで話題を振る。
「すぐには見つからないか?」
「そうですね……すぐには出てこないです」
やはり、作業をしながらではすぐに見つからないらしい。
ならば、丁度いい。
「俺はあるぞ」
「何をやり残したのですか?」
「……そうだな」
──ムードもタイミングも良いし、今ここでやるか。
「海風、机の前に来てくれ」
「あ、はーい」
海風を眼前に呼び、心を落ち着ける。ここで焦ってはならない。
「一体何を──」
「海風」
「は、はい?」
「俺は、海風にこれを渡すと決めたんだ。……受け取ってくれるか?」
そう言って、俺は一つの箱を海風の前に置く。丁度自分の掌に収まるくらいの青い箱。
海風はその箱を手にすると、ゆっくりと箱を開いた。
「これは……指輪!?」
「ケッコンカッコカリのだけどな」
中身は指輪。大本営から支給されたものの、結局踏ん切りが付かずに引き出しの中へと仕舞いこんでいたもの。
「提督……」
「…………」
指輪が支給された時から、渡す相手は海風と決めていた。
だが、いざ彼女に渡そうとすると、どうしても手が出せなかった。
もしこの戦いが終われば、彼女らは普通の女の子に戻ることになる。
その時には、もっと彼女に相応しい人物がいるのではないのか、などと。彼女を想うあまり、そういうことを考えてばかりいた。
だから、それもこの場で終わらせる。彼女が嫌がれば、俺は引くつもりだ。
「はい! 不束者ですが、これからもよろしくお願いしますね」
「海風……!」
願いは叶った。これでもう、今年中にやり残したことはなにもない。
「……あ、海風、やり残したことを、一つ思い出しました」
「このタイミングでか」
「はい」
「……で、それは何だ?」
「それはですね──」
彼女はこちらへ回り込むと、俺の太腿を跨ぎ、俺の胸板へと手を置いた。
その手を支えにして俺へ寄りかかりながら、俺をじっと見つめる。
「うみか……っ!?」
「っ……」
そして、ゆっくりと俺の唇へ、自身の唇を重ねてきた。
海風の渡す蜜は甘く、暖かさを感じる。
しばらくその蜜を享受してその気に戻った俺は、お返しにと言わんばかりに、彼女の口内へと舌を渡した。
そうしてしばらくの間、お互いの体液をお互いの舌で転がし合い、頃合いを付けて口を離した。
口を離すとお互いの唇から糸のように唾液が垂れ、伸びる。やがて自身の重みに耐えられなくなり、それはぷつりと切れた。
「提督と、こういうことがしたかったんです」
「海風……」
ふと、窓の外で鐘の音が響いた。
その音に釣られて時計を見ると、既に年が明けていた。
「あ、年が明けましたね」
「ああ…………そうだな」
除夜の鐘を聞いて今の煩悩が消え去ったのか、急に羞恥心に襲われた。
それは彼女も同じだったらしく、そっと俺の太腿から降りた。
「えっと、そのですね……」
「ああ、うん」
「今年も、海風と、皆の事をよろしくお願いします」
「……ああ、こちらこそよろしく頼む」
「で、では、初日の出を見に行く準備でもしましょうか」
「そ、そうするか」
そそくさと椅子から立ち上がり、資料と書類をファイリングしていく。
俺達の動きは素早く、着実に机の上が片付いていった。
──俺達は、案外似たもの同士なのかもしれない。
◇◆◇◆◇◆◇
「す、少し早すぎましたね……」
「……すまん。緊張してて日付が変わったばかりなのが抜けていた」
寝起き3時間の代物なのでムラがあったと思いますが、これはこれで気に入ってますので……
修正は気が向いたらします。