ストライク・ザ・ブラッド〜鬼の目にも涙〜   作:*天邪鬼*

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蚊がうざい


27話 遠泳

常夏の絃神島は夜になっても蒸し暑い。

太陽が真上にある昼よりかはマシなのだが、睡眠前の暑さはまた違ったストレスを与えてくるものだ。

天才的なハッカーという一面を持つ藍葉浅葱もそれは同様だった。

普段は纏めてある髪を下ろして窓は開けずエアコンを付けながら眠りに着こうとベッドの上で転がっていた。

 

「全く!二人で何をしてるのよ………!!」

 

しかし、昼間の出来事を思い返してしまって眠気が一向にやって来る気配が無い。

浅葱の中には古城と雪菜が良からぬことをしでかしているのではないかと様々な妄想が繰り広げていた。

眠気はむしろ遠ざかっていき、変な活気が憤りと一緒にこみ上げて来ることになる。

 

「____ぎさん」

 

だからなのか、周りの音があまり聞こえて無かった。

その声も浅葱の耳には一切入っていない。

ブツブツと呪言のような独り言を呟いているので自分の声で聞こえてないのもある。

 

「___あさぎさん」

 

その声は更に大きくはっきりと聞こえるようになる。

それでも自分の世界に入り込んでいる浅葱の耳は周囲の音を完全に遮断していた。

 

「浅葱さん!!」

 

「きゃあ!?」

 

声は痺れを切らした様子で遂に怒鳴り声の域に達する。

流石の浅葱も部屋全体が揺らぐ勢いの音量に飛び起きる。

 

「え!?何これ!?」

 

「あ………」

 

悲鳴を上げる浅葱の目の前には粉々に砕かれたガラス片が床に散らばっていた。

父が絃神島の評議会議員をしていることで中々の豪邸に住んでいる浅葱の家は防犯も完璧でガラスも強化ガラスとなっている。

更に魔族特区であることから魔族の危険も考えてそこいらの強化ガラスよりも強度は高い。

そのガラス窓を粉々に砕きことができる存在は限られてくる。

警報が鳴り響いて家の中では慌ただしい足音が駆け巡っている。

特区警備隊にも既に連絡が渡っているだろう。

数分もしない内に武装集団がやって来て家の周りを包囲する手筈だ。

阿鼻叫喚の緊急事態である。

 

「………」

 

その緊急事態を巻き起こした張本人は汗をダラダラと流して顔を真っ青にしていた。

拳が前に飛び出してまさに現行犯である。

反論や言い訳のの余地も無い状況に浅葱も思わず黙り込んでしまう。

 

「そ、その」

 

そして、犯人はゆっくりと動き出して逃げるなどせず膝を着いた。

 

「ごめんなさい………」

 

 

_________________________

 

 

「古城達の居場所?」

 

「はい。藍葉さんなら知ってるかなと」

 

ガラス片を片付けて浅葱に場を納めてもらった夜如は出された麦茶を手にとって一口飲むと本題に入った。

浅葱も相手が夜如だと分かるとすぐに呆れながら迎え入れてくれていた。

普段から夜如のことは弟のように接してご飯を奢るなどをしていたのもあり、浅葱が持つ夜如に対しての印象は良い。

だからこそ、こんな人の家の窓ガラスを割ってまで家に入り込む行動は違和感を感じ得なかった。

 

「何?あいつまた事件に巻き込まれてるの?」

 

「まぁ、あくまで可能性ですけど。それに本当の被害者は別にいますし」

 

「ふ〜ん………」

 

夜如は夏音のことを思い浮かべながら古城は二の次だと説明する。

第四真祖であることを隠している古城は何も知らない浅葱が事件に顔を突っ込むことを嫌がっている。

それを尊重して古城の元へ逸早く辿り着きたい夜如の言い訳はこれが最善であり限界だった。

対して浅葱は不信感を抱きながら夜如を睨む。

何かを隠していると察する浅葱の視線は鋭く天才ハッカーの実力が伊達では無いと示していた。

しかし、浅葱は自分が何を言ってもこの場で真相は掴めないと判断すると肩の力を抜いて諦めたように机に設置されているパソコンの電源を入れる。

 

「まぁいいわ。別に隠す理由もないし、後輩のお願いだからね」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ただし!終わったら古城を私のところに連れて来てね。あの転校生との関係を聞き出さなくっちゃ」

 

「了解です………」

 

パソコンを操作する浅葱の背中は謎のやる気に満ち溢れていた。

その姿を見る夜如は古城に申し訳ないと心の底で謝りながら、雪菜をどう説得しようか悩むことになる。

どうやっても雪菜は古城について行こうとするだろう。

夜如は悶々と悩んでいたがあるところで思考を止めて頭を振った。

 

(後のことは暁さんに全部押し付けよう)

 

_______________________________

 

 

絃神島から旧式プロペラ機で三十分弱の無人島。

所有者はメイガスクラフトというアメリカに本社を構える大企業。

浅葱から受け取ったデータにはその他の情報がずらりと並んでいた。

しかし、夜如の必要としている物はあくまで古城達の居場所だけで、メイガスクラフトという会社や会社がお掃除ロボットと偽って戦闘用自動人形をアメリカ軍に売ったことなどは正直何の事やらと専門外のことだらけだ。

 

「ともかく、暁さん達がこんな所にいる時点で何か知ってることは明らかなんだよな〜」

 

夜如は買ってもらったばかりのスマホのマップで古城達がいるであろう場所に旗を立てた。

旧式プロペラ機で三十分弱で着く場所だと鬼の夜如が全力で走れば飛行機の半分ほどの時間で辿り着けるだろう。

しかし、如何せん目指す場所は海に浮かぶ無人島である。

泳ぎの苦手な夜如が向かうには過酷すぎる場所だ。

ヘリコプターや飛行機をチャーターするにも深夜にそんなことをしている店はなく、船だって出ていない。

そこでどうしても島に行きたい夜如が取った行動はこうだ。

 

「よし、バタ足しよう」

 

頭がおかしくなったのかと疑うほど突拍子もない発想である。

しかし、世界には約160キロをビート板など無しで泳ぎ切った60代の女性がいると聞く。

決して不可能な話ではない。

夜如がビート板の代わりにしたのは浮き輪だった。

港にならそこら辺にあり、取られてもあまり気にされない。

無残にもゴミのように捨てられいたりする場合もある。

夜如はそんな浮き輪をいくつか拝借し、海へと飛び出した。

想像より冷たい海水に驚きながらビニール製でないことや硬いこともあり安定感がある浮き輪に安堵する。

濡れないように放り投げたスマホを上手くキャッチして、マップ機能から現在地から目的地の角度を確かめる。

 

「あっちかな」

 

夜如は大体の方向を見定めるとスマホを鬼気で覆って懐にしまった。

そして、深い深呼吸をした後に決死の覚悟で足を動かし始める。

泳げないことから最初はゆっくりと弱々しく遅い遠泳も徐々に慣れて来たことでスピードも上がる。

 

「うわ!怖!!!」

 

しかし、真夜中の海は怖いものだった。

結局、スピードは少しばかり落ちることになるが確実に前へと進んでいった。

 

 

 




お久しぶりです。
学校やばいです。
勉強ばかりです。
まじで辛いです。
ってね、言い訳しますが久しぶりに自分の小説見直したんですけど矛盾やらキャラぶれ酷いですね。
ちょっと直して行こうかなと考えております。(いや、考えてないで直せよ)
また、小説の書き方でいつも自分『。』の時に改行してるんですが変えた方がいいですかね?
まぁ、それを含めて、

評価と感想お願いします!!

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