白龍皇と姉妹猫の大海賊時代   作:しろろ

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やっと戦闘に入れました!






9話 白龍皇VS火拳のエース

 

 

 ━━━少し開けた場所

 

 その中心で向かい合うのは、愛刀“白火”を抜刀するヴァーリと笑みを浮かべているエース。

 

 他のメンバーは巻き込まれないように隅に移動し、黒歌と白音はヴァーリの頼みで人避け、防壁の結界を張っている。

 

「こんなの張っても意味あるのかにゃ?」

 

「そう言わずに、兄さまの頼みなんですから」

 

 獣人型のヴァーリの妹たち。

 黒歌が結界を張ることの意味に疑問を抱いているが、それもその筈。

 

 人避けの結界は、その名の通り“人を寄せ付けない”結界だ。

 それに強度を加えたものを彼女たちが張っている訳だが、はっきり言ってこの戦いには耐えられないだろう。

 エースの火力も当然ながら、ヴァーリが少し本気を出せば脆く崩壊してしまう。

 

 二人を見ている九重が、目を丸くして問いかける。

 

「何とも奇妙な技を・・・。お主たち()妖術の類いが使えるのか?」

 

「妖術、と言うのがどんなものか分かりませんが、多分同じ感じだと思います。まあ、どれだけ持つかわかりませんけど・・・・・」

 

 九重の問いに曖昧に答えた白音は、自分達で展開した結界に不安を抱かずにいられなかった。

 先程黒歌も口にしていたが、白音だって同じように考えていたのだ。けれど━━━

 

 ━━━兄の本気

 

 今までの修行では、ヴァーリの本当の本気を見たことが無かった黒歌と白音は、不安が渦巻く中で楽しみでもあった。

 

 

 同じく隅にいるスペード海賊団員は、ヴァーリに対して『船長を倒してしまえ』等と本音8割、冗談2割で言った。

 しかし、エースの側でずっと過ごし、戦いを間近で見てきた彼らは信じ切っていた。

 直ぐに勝ってしまうのだろう、と。

 

 

 ━━━━だからこそ、この戦いは彼らを驚愕させる事になるのだ。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「そう言えば、名乗るのが遅れたな。━━━俺の名はジュラキュール・ヴァーリ、今代の白龍皇だ」

 

「白龍皇?それにジュラキュール・・・どっかで聞いたことがあるような無いような。━━━まあいいか、俺は“ポートガス・D・エース”、海賊だ」

 

 互いに自己紹介を済ませる。

 火拳は俺の姓と白龍皇の異名に聞き覚えがあるらしく、頭を捻らせるが特に気にしない事にしたようだ。

 

「改めて感謝する、火拳のエース。殺す気は無いが、互いに殺すつもりで全力を出し切ろう」

 

「へっ、言ってること無茶苦茶だぜ。けどまあ、俺も初めからそのつもりだったけどな」

 

 俺は白火を両手で構えていつでも戦える状態でいるが、火拳は対照的に両手を広げた。

 

 その姿に、思わず眉をひそめる。

 

「一体何のつもりだ・・・?」

 

「サービスだ。一発だけ貰ってやるよ」

 

 彼の表情は自信に満ちたものだった。

 

 恐らく、海に出てから一度も敗北を味わったことがないのだろう。それか、自然系の『メラメラの実』を口にして、無駄に慢心しているだけなのか。

 

 どちらにせよ、俺を不愉快にさせるには変わり無い。

 

「そうか、分かった。ならばお言葉に甘えよう」

 

 そんな相手には、まず慢心を無くしてやる必要があるな。

 

 両手で構えていた白火を片手に持ち替え、天に向ける。日の光に照されて刀身が神々しく輝く姿は、美しくも力強さを感じさせた。

 

 自然系を相手にするには“武装色の覇気”が必要不可欠だ。まあ、彼相手なら覇気以外でも何とかなるが・・・・・。

 例えばそうだな、魔力を込めた攻撃なら自然系でも通用する。

 

 

 ━━━━こんな風に、な。

 

 

 俺は切っ先を天に向けたまま、刀身に魔力を纏わせる。青白いオーラが白火の輝きを一層引き立てて、辺りを照らし尽くす。

 

 火拳は怪訝そうに俺を見るが、広げた手はそのまま。

 

 ふん、俺が期待しすぎていたのかもしれない。

 悪いがアルビオン、今回も神器を展開するまでも無さそうだ。

 

『そうか・・・・それは残念だ』

 

 アルビオンの落胆のため息を聞いてから、俺は白火を降り下ろす。

 

 避けるか相殺させなきゃ、死ぬぞ?

 

 

 ズバアアアァァァァァアアアッ!!!

 

 

 魔力を纏っても親父の斬撃には遠く及ばないが、それなりに威力はある。

 

「━━━ッ!?く・・・ッ!“火拳”ッ!!!」

 

 

 ゴオオォォォォォオオオオッ!!!

 

 

 火拳は野生とも言える勘の良さでこの斬撃の脅威を感じ取ったのか、自身の右手から巨大な炎の拳を放ち、相殺させる。

 

 ふむ、あのまま無防備だったら期待外れも良いとこだが、流石にそこまでではなかったか・・・・・。

 

「はて、さっき俺の耳には『一発貰ってやる』と聞こえたんだが・・・・・あれは気のせいか?」

 

「は、ははっ・・・・あれは無かったことにしてくれ。それと悪かったな、正直お前を嘗めてたぜ・・・!」

 

「分かってくれたならいいさ。俺としては、君の代名詞である“火拳”を早々に見ることが出来たんだ。これでチャラにしよう」

 

 今の彼には油断の『ゆ』の字も見当たらない。どうやら先程の攻防で俺に対しての認識を改めたようだ。

 

 冷や汗を流す火拳の瞳には、まるで燃え盛る業火の如き闘志が宿っている。

 

 そう、それでいいんだ。

 油断、慢心なんてものは戦いの場に持ってくるべきじゃない。そんなのは死にたがりにだけ持たせてやれば良い。

 

「ではもう一度言おうか。━━━━互いに殺すつもりで全力を出し切ろう」

 

「ああッ!!」

 

 俺達は地を蹴り、ぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「“火銃(ヒガン)”ッ!!」

 

 

 ドドドドドッ!!

 

 

 火拳━━━エースは両手を銃の形に構え、その指先から小さな火球を連射する。

 俺は姿勢を低くして接近しつつ火球を避けていった。

 

 当たりそうなものだけ白火で斬り、それ以外は紙一重で、被害は最小限に。

 

 エースは俺の刀が火の体を斬れる事を知っているため、そう易々と接近を許してくれない。

 

 なら、隙を作って貰うしかないな!

 

「ふん!!」

 

 三日月型の小さな斬撃を、火球を全て呑み込む数だけ放つ。

 

「うおおぉぉッ!“火拳”ッ!!」

 

 彼の右腕から、視界を埋め尽くす巨大な炎の拳が迫り、斬撃が容易く消滅していく。距離は十メートル弱、迫り来る火拳のスピードはかなりのもの。

 

 俺は足に魔力を集中させて脚力を強化し、そのまま力を込めて上に向かって跳躍した。

 

 

 ヒュンッ!

 

 

 地面に足跡がくっきり残っていたが、直ぐに火拳が通りすぎて地面は深く抉られていた。

 

 火拳は巨大故、エース自身の視界すら奪ってしまう。

 

「あいつはどこいった・・・!?」

 

「広範囲過ぎるのも考えものだな、火拳のエース!!」

 

 エースがバッと上を見上げたときには、既に俺の魔力を纏わせた斬撃が真下に放たれた後だ。

 

 その威力は初めのものとは比較にならないぞ!

 

 島を両断する勢いで放った斬撃を目にしたエースは、戸惑うことなく次の行動に移る。

 

 しゃがみこんで地面に手を着いたと思ったら、彼の周囲に燃え盛る炎のサークルが形成された。

 

「“炎戒(えんかい)”━━━」

 

 サークルで波打つ炎は段々と高さを増していき・・・・・。

 

「“火柱(ひばしら)”ァァッ!!」

 

 

 ドウウゥゥゥゥゥンッ!!!

 

 

 エースの叫びと共に弾けるように特大の火柱が打ち上げられる。

 

 押し潰さんとする俺の斬撃と、押し返そうとするエースの火柱。拮抗する赤と白だが━━━━

 

 

「ぐっ・・・・押されてるっ!?」

 

 

 次第に俺の方が力負けし始めていた。

 

 う、ぐ・・・・何て火力だ!?

 少しでも気を抜いたら一気に持っていかれる!!

 

 その爆発力は噴火の如し。

 とうとう俺は抑えきれなくなり、咄嗟に防御の魔方陣を展開して備える。

 

「うおらぁぁぁあああぁぁッ!!」

 

 エースの雄叫びで火柱の大きさ、火力は跳ね上がって俺の魔方陣を攻め立てる。

 

 

 ピシピシッ・・・!

 

 

 魔方陣にヒビが生じるが、何とか耐えきった。

 

 エースと少し距離をとった場所に着地した俺は、一度深く息を吐く。

 

「危ない危ない・・・・・防御が間に合わなければ火傷じゃ済まなかったな」

 

「ハァッ、ハァッ・・・・フゥ。俺としては自信を無くしそうだぜ。手応えあったと思ったんだけど、まさか無傷とはなぁ」

 

「それはお互い様だろう?此方も中々に攻撃を当てさせてくれないじゃないか」

 

 未だに俺達の体に傷はない。

 俺も彼も、当たれば決定打になる威力を持っている為、普段より何倍も警戒を高めているんだ。

 

 ふむ、正直彼がここまで強いとは思わなかった・・・・。

 悪く言えば能力に感けている部分もあるが、良く言えば彼自身、能力を最大限駆使している。

 

 技のバリエーションも豊富。咄嗟の判断も機転も利く。

 瞬間的な威力なら彼の方がやや上だ。

 

 これなら━━━━

 

 

『俺の出番か?』

 

 

 アルビオン、やる気は十分みたいだな。

 

『ヴァーリ一人だけ楽しんでいるのを見て、どうもうずうずしてな・・・・・。俺から見てもあの小僧は中々筋が良い』

 

 アルビオンがそこまで言うなら、彼に見せなきゃ無礼ってものだ。

 俺としては、地力で決定打を与えられなかったことに若干の悔いが残るが、致し方ない。

 

「エース、君には俺の力を見せるに値する強者だと認識しよう」

 

「お前の力・・・?その言い方だと、今のが全力じゃなかったってことか?」

 

 静かな怒りを込めてエースは俺に問う。

 

「ああ、勘違いしないでくれ。確かに俺は全力でやっていた。というか、自分で言っておいて全力を出さない訳がないよ」

 

「まあ、確かにそうだな。俺もお前からは何処と無く敬意を感じてたし」

 

 それなら一体どういう事だ?と、頭を傾げるエースに俺は笑みを浮かべて答える。

 

 

()()()()では全力だったが、まだ力の全てを見せていた訳じゃない・・・・ということだよ」

 

 

 俺はそう言うと、背中に蒼白い光を放つ光翼を広げた━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 





神器無しだとヴァーリはエースと互角かそれ以上、という感じですかね。

それと、武装色の覇気の代用として魔力が有効という事にしました。しかし、それだと覇気が要らなくなってしまいそうなので、自然系に通用させるには多量の魔力を使わねばならない、と言うことにします。

因みに、ヴァーリくんは今のところ見聞色の覇気しか使えません!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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