無限の精霊契約者   作:ラギアz

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第十話「恐怖」

 フィニティと名乗った青髪蒼目の少女は、そう言って大きく笑みを浮かべた。

 俺とフィニティの、精神世界。この無限に続く白い世界は、実際には存在しない、いわば夢の様な者なのだろうか?

 そして、目の前の少女。あの単眼の巨人とは似てもつかない存在が『精霊』だと言う事に少し不信感を抱いていると、フィニティは少しだけ頬を膨らませた。

「……その顔は私の事を疑ってるね?」

 ジト目で俺を睨み付け、小さく少女は呟く。

「折角あの巨人の時、守ってあげたのになー? 酷いなー?」

「あれはやっぱりフィニティが?」

「私以外に居ないよー」

「そっか。……えっと、ありがとう」

「どういたしましてー!」

 にぱー、と笑みを浮かべるフィニティは、巨人から感じた悍ましい物は感じない。

 少女に対する恐怖はもう無く、『精霊』自体への恐怖も段々と薄まってきた。

 勿論、未だに『精霊』は怖いけど。

「さて、じゃあお話ししよっか!」

「……何を?」

「いやいや、呼び出しておいて何さ! 折角この白い世界に案内したのに!」

 感情の起伏が激しいフィニティは、腰に手を当てて憤る。

 その様子に慌てた俺は、学校長の言葉を思い出し、直ぐに話題に持ち出した。

「そういえば、フィニティは『精霊』だよね?」

「うん」

「俺と、契約出来る……って本当?」

「うん!」

 本当だった。

 学校長の言葉通り、本当に俺は『精霊』との契約が出来る状態。

 蒼い瞳を輝かせながら、フィニティはさっきまでの怒りはどこへやら、急に笑みを浮かべて話し始める。

「こう見えても、私は結構『精霊』としては大きな力を持ってるのです。さあさあ、契約しちゃおうよ! どんどんしちゃおう! 『精霊学科』でぶいぶい言わせよう!!」

 フィニティは元気よく、身振り手振りを交えて話す。

「……ごめん。まだ、それは無理だ」

 しかし。俺はそれを拒否した。

 フィニティが、動きを止めて驚いたように俺を見つめる。その視線に促されるように、俺はゆっくりと話し始めた。

「俺は、『精霊』が怖いんだ。フィニティは良い人……良い『精霊』? かもしれないけど、巨人の事もあるし、『精霊』の持つ人間を超えた力っていう存在自体が怖い」

 そこで言葉を一旦切る。

「それに、なんか分からないけど、『精霊』を見ると俺は何故か動けなくなるんだ。常人なら叫んで逃げるような場面で、俺は震えているだけだった。学校長が黒い弾丸を撃った時だって、汗が凄い出た。フィニティには悪いんだけど、頭の奥底で、どっかで『精霊』を根本的に拒否してるんだ」

 単眼の巨人の時もフィニティの時も黒い弾丸の時も。

 全て俺は動けなかった。冷汗がじっとりと背中を濡らし、震えているだけの状態。

 でも、それは異常な反応とも取れた。

 どうして俺は、単眼の巨人を見ただけでこんなに『精霊』に過剰反応するのか。その反応は明らかに異常なレベルだ。

 確かに俺は襲われた。殺されかけた。

 でもこの恐怖は、それだけじゃない。浅い記憶の表面、世界の情報から来る恐怖だけじゃない。もっと心の内側から支配するような恐怖が、『精霊』を目の当たりにするだけで俺を蝕むのだ。

 そんな俺に、『精霊』と契約する覚悟も何もない。

 覚悟の無い人は、『精霊』と契約し力の正しい使い方を学ぶ事は出来ない。

「ごめん、フィニティ。少し話したかっただけなんだ。でも、やっぱり『精霊』は……」

 そして、ゆっくりと俺は告げる。

「怖い」

 

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