無限の精霊契約者   作:ラギアz

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第二十一話「興味」

「『ゆうばりせんせー、お昼ご飯一緒に食べよー』っとかさ!! もっと気軽に話しかけて来いよ思春期ボーイ&ガール!!」

 やけに思いの籠った叫びを上げて、夕張先生は目の前の椅子にどかっと座った。

 呆然としている俺の前で、竜田揚げを一気に二つ頬張る夕張先生。ぐもぐもと頬を膨らませてリスの様にご飯を食べて、水と一緒に飲み込む。

「全く。草食系だよ最近の子は」

 そんな年寄りっぽい事を言っているが、夕張先生は大分若い。

 実年齢は知らないけれど、見た目から見れば20代前半。白米を物凄い勢いで食べる先生に少し気おされつつ、俺はお味噌汁に口をつけた。

「……ふう、疲れた。四時間ぶっ続けの授業とか鬼畜すぎ笑えないって」

「お疲れ様です……」

「うん、ありがとう。というか式君は友達居ないの?」

「……そんな事は無いですよ?」

「居ないのか」

「知りません」

 箸と口は止めずに会話する。そんな器用な事をしている途中で、夕張先生は箸を置いて突然切り出した。

「昨日の怪我は無い?」

「えっと、直してもらいました。『精霊学科』の矢代涼花さんに」

「へえ、[ツクヨミ]にか。……そう」

 氷水の入ったコップを傾けて、中に入っていた氷を口に含む。それを噛み砕く夕張先生は、徐に尋ねてきた。

「式君はさ、『精霊』に興味はある?」

「『精霊』にですか?」

「うん」

 夕張先生は頷くと、少し前のめりになって俺に答えを促す様に黙る。

 『精霊』。人間を超えた力を持つ存在。

 その彼らに、俺は異常とも言えるほどの恐怖を抱いている。しかし、それだけでは無い。

 昨日フィニティとも会って会話して、単眼の巨人以外にも良い『精霊』が居ることを俺は知った。恐怖はあるものの、『精霊』そのものへの興味は、

「……あります。『精霊』に襲われたりしたけど、それでも興味はあります」

「そっか。じゃあ、特別に少しだけ教えちゃおうかな」

 夕張先生はそう言うと、顎に手を当てて考え込んだ。

 何故急にこんな質問をしてきたのかは分からないけど、普段全く接す事の無い『精霊』の話を、分かりやすく面白い授業をした夕張先生から聞ける。

 それだけで十分価値はある。俺もお盆に箸を置くと、食堂の昼食時の喧騒の中、夕張先生にだけ意識を向けた。

「んーとね。人間を超えた力を持つ『精霊』なんだけど、その力を使うためには前提としてその『精霊』と契約していなきゃいけないんだ」

「はい」

 ここまでは昨日、フィニティにも学校長にも言われていた。

 しかし、ここから先の話は初耳であり、俺は思わず体を傾けて話に聞き入る。

「実はね、その契約にも幾つか種類があるんだよね」

「契約に、種類?」

「そう。一つ目は『精霊』と大前提として行う、普通の契約」

 そして、と夕張先生は言葉を続け、にやりと笑みを浮かべた。

「二つ目は、直前契約――――ステイ・リンク」

 直前契約。ステイ・リンク。

「これは、『精霊』の持つ能力を使うための前段階。この状態では身体能力が上がって、物凄く力の強い『精霊』ならほんの少しだけその『精霊』の持つ能力を使える程度なんだ。これはまだ未完成で、この上にもう一つ契約の段階があるの」

 例えるなら、下書きだね。と夕張先生は告げる。

 下書きならば、その次にやるのはペン入れ等。つまり、完成させる。

「その最上位段階が、憑依契約。ポゼッション・リンク」

 そこで言葉を切り、一拍間を置いてから先生は再度話し始めた。

「ポゼッション・リンクなら、自分が契約している『精霊』の力を全て使う事が出来る。ステイ・リンクとは比べ物にならないくらい強い力が手に入る。『精霊』と契約している人は、このポゼッション・リンクをして初めて認められる感じかな」

 ステイ・リンクは身体能力の強化と、『精霊』が強ければ少しの能力が使用可能。

 ポゼッション・リンクは身体能力強化に『精霊』の能力が完全に使える。

 直前契約と憑依契約、下書きと清書。

 どちらがより、完全に近いか。力を発揮できるか。

 契約の段階を全て語った夕張先生は、箸を取って再びご飯の入ったお茶碗を持ち上げた。

「ま、これが『精霊』との契約だよ。知っておいて損は無いと思う。さ、ご飯食べちゃいな! 五時間目遅れるぞー!」

 その声に急かされて、俺は急いで残りの竜田揚げを頬張り始めた。

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