停滞と赤いリボン   作:ポルックス


原作:アイドルマスター
タグ:オリ主 佐久間まゆ


新年を迎えたまゆとプロデューサーの話し

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停滞と赤いリボン

新年をむかえた、世の中の華やかさとは裏腹に、

とあるビル群の一角では煌々と明かりが灯っていた、東京の都市部の片隅に数々のアイドルが所属する346プロダクションは本拠を構えている。

346プロダクション所属のアイドルは18歳未満の者が大半なため、日が変わってすぐに仕事というスケジュールのアイドルは少ないため346プロダクション本社に残っている人間は片手で数えるほどしかいなかった。

 

「なんだ、もうこんな時間か。今年もアイドルたちの無病息災でも願いに後で初詣に行くとしよう、ついでに鷹富士にもお供え物あれば今年も少しは気が楽になあるだろ。」

 

 

 

 

偶然にも残業をしていた彼はアイドルたちのプロデューサーであり根っからの仕事人間(ワーカーホリック)だった。彼は入社4年目の新米ではあるがいろいろ経験を積ませてもらうために多くのアイドルのプロデュースを手掛けている。

いつもは幼い少女もいるからと仕事場では吸わないように決めていたが誰もいないのを再確認すると嬉々としてタバコの煙をくゆらせるとわずかばかりの休息に入った。

346プロダクションでは基本的にプロデューサー達は業績によって扱いが違う。

業績がいい者は専用の仕事場が用意されるがアイドル達もおしゃべりをする場所を求めているので担当アイドル達の私物が増え気が付いたら占領されていたなんて言う話を聞いたこともある。

その点彼の部屋には少し前までそもそも物が少なく、備え付けの小さなキッチンにコーヒーメーカーが置いてあるだけで生活感は一切しなかった。

今はオレンジ色とキャップが好きなアイドルが野球の試合を見たいとねだったため、

プロデューサーの懐から出たお金で小さなテレビが置かれたのを皮切りに応援グッズやらこたつやら、アロマテラピーが趣味のアイドルが持ってきたアロマポット(カモミールオイルが多く使われている)ついには失踪が趣味のアイドルが怪しい薬品まで持ち込み始めた。

 

今では食卓がきちんと(?)置かれており料理も食べることができる。

改めて考えるとだいぶやばい気もするが彼と最も長く付き合いのあるアイドルが定期的にプロデューサーの仕事場にあるものを整理し自分のものでプロデューサーを染めようというたくらみのおかげ(?)でこの部屋はまともな様相を保っている。

いつもは仕事で忙しくじっくりと眺めるできない自分の仕事場だが改めて見るとここに彼女がいてくれて助かったとしみじみと思う。一本だけと決めたタバコがなくなると少しだけ寝ようと決めいつの間にか気絶するかのように寝入っていた。

 

 

 

 

 

 

おいしそうな香りがしてきてようやく意識が覚醒すると自分が寝ていたことに気が付き二度三度頭を振る、時刻は既に午前1時になっており既に簡素だった夕食は消化が終わり本格的におなかが空いていた。

何か食べるものはないかと周りを見渡しても年末の大掃除のために片づけられてしまっていた、仕方ないと思いキッチンで何か作ると決めるとちょうどおいしそうな香りがしてきた。

香りの元と思われるキッチンへ引き寄せられたかのように向かうとそこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

「プロデューサーさん、こんな遅くまで何してるんですかぁ?年越し蕎麦っていうのには少し遅い時間になっちゃいましたよ。」

 

キッチンに入ると突然かけられた声に驚いているとそこには、ピンクのスカートに白のセーターを着ている、彼にとっての初めての担当アイドルである佐久間まゆがエプロンを付けて立っていた。エプロンまでして料理の準備をしてくれていたようだ。

 

・・・よく考えるとこんな時間にまゆがここにいて年越しそばを作っていること自体がおかしいのだがかわいい女

の子がエプロン姿で料理をしているのを見れたことで疑問を放っておく彼もたいがいである。基本的に男はみんな単純な生き物なのだ。

蕎麦が茹で上がったため食べる準備をすると二人で手を合わせ会話を挟みつつも蕎麦をすする、麺は市販のものだが湯で具合もよくそこそこおいしい。

 

 

 

「言いたいことはいろいろあるけれどこれだけ聞こう、何でここにいるんだ?」

 

「まゆがここにいたらおかしいですか?もともと元旦にプロデューサーさんと一緒にいるつもりでしたから自宅にも伺って冷蔵庫の中にあるものでお食事でも作ろうかなと思っていたんですが、冷蔵庫は空ですし食器も洗った形跡すらなかったのでまだ会社にいるかなと思って・・・」

 

これにはプロデューサーも驚いた、彼は一度としてアイドル達のプライベートには触れようとせず自宅も教えていなかったというのに、この女の子は知らないうちに住所を調べ上げて合鍵を作り冷蔵庫の中身までチェックされるとは思っていなかったらしい。

彼の疑問は至極まともなものだがまゆからしてみれば聞かれることすら思いつかなかったようだ。

可愛らしく首をかしげてキョトンとした顔のまま質問に答えたが彼女は犯罪すれすれの行為すら気にしないようだ。

薄暗い部屋で先ほどまで蕎麦をゆでていたことでわずかに火照った薄いピンクの頬を見ていると庇護欲を掻き立てられる。

 

 

「分かった、さっきの質問は答えなくていいが。親御さんのところに帰省しなくてもいいのか?」

 

「いいんです。先週お母さんに連絡したら帰ってこなくってもいいって言われました。でも一人でいるのは寂しいのでプロデューサーさんのところに来ちゃいました。」

「なんで俺がここにいるか分かったかは聞かない方が俺の身が守られる気がするのは気のせいか・・・」

 

 

 

彼のプライバシーがどうなっているのかという一抹の不安があるがやや遅めの夜食を終えた二人はご馳走様でしたと言うと食器を片付けて考え直す。

そもそもまゆはアイドルなのだ、いくら346プロダクションの中とはいえアイドルがこんな時間に男と二人っきりというのもまずいだろう、今すぐ寮へ送り届けよいうとするプロデューサーだが、この時間ではもう門限は過ぎているので怒られるのは決まっているだろうし男がこんな時間に女の子を家に連れて帰るというのも倫理的にもアウトな気がする。いろいろ考えた末に朝まで二人で起きていればいいという結論になった、いくら何でも自分はアイドルに手を出す勇気なんてものはない。

窓から見える辺りを確認すると少しだけ雪が降っている、プロデューサーはアイドルに風邪を引かれたら問題になると今更ながらに気がつき、こたつのヒーターを入れ。

 

 

 

 

「プロデューサーさん、さっきタバコ吸ってましたよね、スーツに臭い付いちゃうのでやめたほうがいいですよ。」

「そうは言うがいつもは吸えないんだ。今日ぐらいはいいだろ。」

「じゃあこれからはもうやめてくださいね、まゆも女の子なので気にするんです。」

「それは悪かった、友紀にも言われたしやめるとしよう。タバコの値段もバカにならんからな。」

 

笑いながらそんなこと言っていると明らかな失言に気がつき顔色を変える、嫌な予感がしてまゆの顔を見ると目のハイライトが消えかけている…かなりやばいのはわかっているがかける言葉が見つからない。女の子と二人きりの時に他の子の名前を出すのは知ってはいるだろうが、まさか自分がやるとは思っていなかったようだ。

 

 

 

「悪かった。わざわざまゆが残ってくれたのにこんな態度はあり得ないな、許してくれとは言わんが責めてこっちを向いてくれ。」

 

正直に謝ろると渋々といった様子で拗ねたような顔のまま自分の方を向くまゆに何か

 

 

「まゆは今年プロデューサーさんに相応しい女性になる為にトップアイドルになります…プロデューサーさんはどうするんですかぁ?」

 

「一日今年始   一年前事空   凄凉百年事   応与一年同 って言うしな、俺のやることは変わらないんだ。」

 

まるで自分は毎年面白みがないとでもいうように小さく笑う彼がまゆの怒りを誘ったのかだろう。

やや強め足取りでようにこたつを出るとプロデューサーの横に座り慌てる彼の制止も聞かずに真剣な表情で語りだす。

 

 

「いいですか。確かにプロデューサーさんは漢詩とかを引用したりするような変なところがあったりしますし、

デリカシーも少し欠けるかもしれません。いつも一歩引いたようにアイドルを見ているのもある意味では正しいのかもしれません、

でもまゆからすれば逃げているようにしか見えないです、だからこうします。」

 

 

そう言うとまゆは赤いリボンを取り出しプロデューサーの左の手首に巻いた、

プロデューサーは変なところと言われた矢先だったため抵抗する暇もなくあっさりと結ばれた。

結ばれたものはまゆと同じようなものだがこちらの方が少し長い。

プロデューサーの手首を見つめるまゆの内心はプロデューサーでは理解できないが、よっぽど大事な意味がこもっている事だけはわかるらしく真剣な表情でまゆを見つめる。しばしの沈黙ののちまゆはこれが何を意味するのかを告げる。

 

 

「・・・いいですかぁ、プロデューサーさん。これはまゆのリボンと同じものです、まゆはこれにトップアイドルになると誓いました。もちろん一人ではできないことだと思います、だからプロデューサーさんにも手伝ってもらいたいです。なのでプロデューサーさんにも誓って欲しいです、まゆと上に行くための協力を惜しまないと…」

 

やや一方的ともとれる宣言だがプロデューサーは穏やかな顔でその答えを返す…

彼は自分がここまで評価されているとは思ってもいなかった、自分ではなく他の人でもよかったのではないかとふと考えたこともあった。

それでも自分を認めてくれた佐久間まゆという女の子に多大な感謝をしている。

 

「女の子にここまで言わせといてやらないってのはあり得ないな。・・・まゆがトップアイドルになりたいと願うなら俺はどんな協力も惜しまない。必ず君と頂点に立つと誓おう。」

 

 

プロデューサーの話を聞き嬉しそうに笑うまゆとプロデューサー。

夜はまだまだこれからだと言わんばかりに楽しそうに笑いあう。

二人がお互いの目指すものを決めた時外は雪が止んでいた、朝には晴れるかもしれない。

二人三脚で進もうと決めた彼らの為・・・

 

 

 






作中の漢詩は 元稹の歳月という作品です。


一日 今年始まる 一年 前事は空し
    凄涼たり百年の事
    応に一年と同じなるべし
     この日で今年も始まるが
    かえりみれば去年のことは空しく感じられる
    百年を重ねてもこのさびしさは変わるまい
    この一年も同じことに違いない

                       という意味です読みにくくて申し訳ありません
   

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